魔王様は世界を支配したい!〜異世界で魔王になったので本気で魔王やる〜

ばにく

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帝国編

第1話 張り巡らされた糸

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 ある日、魔王が復活するという予言が世界中に広まり、そして予言通りその魔王は復活した。
そしてまたある日、今度は魔王が死んだという話が世界中に広まった。魔王がいなくなった世界は元の平和を取り戻した、ように思えた。だがしかし、人の世とは常に争い、殺し合い、憎み合う。この平穏の中、それを崩すように争いを始める男がいた…。


 「ジナ・ソーヴァ、奴が今回の最重要ターゲットだ。帝国に、皇帝に!絶対なる死をもたらしてこい!」


 目的の教会へ着くと、厳重な帝国兵士の警備が辺りを彷徨いていた。


 「この人数で突破するのは厳しい。前のようにまず私が潜入する。今回はケーレスとケルベロスで二手に別れる。ケルベロスは私が潜入したら続け。残ったケーレスは我々がターゲットを始末する間、援軍及び敵軍の制圧を。」


 「んもぉー、私達は居残りってこと?せっかく来たのにつまんないじゃないの。」


 「シモンは、もしゼウスとやらがいたらワシらに倒してほしいと言っておるのじゃこのポンコツ女。」


 「その役目承ったよ!頑張ってきてね、ケルベロス!」


 そうして二手に別れた魔王軍は、各々行動を開始する。
風のように警備の目を掻い潜りなんなく潜入したシモン。それに続いてケルベロス達が施設内に入っていく。


 「デルタ1-1だ。潜入に成功した。教会の中に入る。」


 中は薄暗く、崩れた天井からは眩しい日差しが差し込み、緑がいっぱいなっていた。もうずいぶん使われていなかったようだ。
 その時、奥の方から男の話声が聞こえてきた。


 「だ…ら!なんでそ…んだ!いま…と…にならな…ぞ!」


 ここではよく聞こえない。もう少し近付こうとした時だった。
 ドン!と教会の扉が勢いよく開いた。入ってきたのは他でもない。最重要ターゲット、ジナ・ソーヴァ!


 「シモン、あれ…!」


 「ええ、ジナ・ソーヴァですね。」


 そして無線を取り出しシモンが合図をする。


 「ケーレス各員へ。最重要ターゲットを確認。行動を開始しろ。」


 「やっと来たね!」


 「久しぶりだ。派手に暴れるとしよう。」


 呑気に鼻歌を歌う上機嫌な兵士の元へ、禍々しい存在が4人向かっていた。
 その存在に気づくも、呑気な男はその邪悪さに気付かない。


 「おい、ここは立ち入り禁止だ。とっとと失せろ!」


 「こいつ、僕たちに向かって失せろだって!生意気だね!」


 「ええ、生意気ね。」


 「ああ、生意気じゃな。」


 「生意気な貴様は万死に値する。」


 ガルムがその大きな大剣を振り下ろす。


 「え?」


 次の瞬間、グチャ!と音を立てて男は豪快に潰れて肉片となった。その音を聞いた兵士が次々と駆けつけてくる。


 「なんだ!?」


 「あれって…!」


 「魔王軍の精鋭…ケーレス…?」


 「なんでいるんだよ!?」


 「死んだはずだろ!」


 パニックなった兵士たちは、弱々しい体でケーレスに襲いかかる。だがそんな攻撃が効くはずもなく、奴らは次々と肉片になっていった。
 一方教会では、攻撃が開始したのを察知したシモンが動き出す。


 「ターゲットは私が。他の者は頼みました。」


 そして蛇のように地をするすると這いつくばって皇帝の元まで移動する。するといとも簡単にターゲットの背後を取ることができた。


 (何かおかしい。こんなにも簡単に…)


 そして次の瞬間、その疑問は確信に変わる。
 皇帝は後ろをゆっくりと振り向くと、その満面の笑みと目が合った。


 (違う、バレている!いや、バレていた!?)


 その時だった。


 「イラデウス。」


 突如、眩い光とともに激しい雷撃がシモンに襲いかかる。背後からの攻撃に一手遅れたシモンだったが、間一髪で防御をしその魔法を防いだ。


 「ふーん、今のを防ぐんだ。」


 そこに立っていたのは青い髪の少年のような男だった。
防いだには防いだが、効いていない訳ではない。シモンは今の一撃でかなりの痛手を食らってしまった。


 「このために僕をここに呼んだんでしょ、皇帝。」


 「ああそうとも。あとは頼むよ。ゼウス。」


 急いでケルベロスが追いかけようとするも、皇帝を逃がしてしまった。


 「クソ!奴が!」


 「大丈夫ですリノ。ゴホッ!外にはケーレスがいる。そう簡単には逃げれません。」


 「そうだな。それよりも…」


 ケルベロスが全員戦闘態勢になる。


 「今はゼウスに集中すべきだ!」


 6対1。だが奴は不意打ちとはいえシモンを一撃で弱らせるほどの魔力の持ち主。そんな相手を前に、彼らは初めて緊張をする。初めて勝てないかもしれないと思う敵が今、目の前にいる…。
 
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