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予言の魔王編
第38話 始まる戦い、終わる平穏
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城を出ると、すぐさまケーレスが集まってきた。
「魔王様、住民は全員無事。そして妙なことに敵軍が1人も見当たりませんでした。」
「ああ、それならもう大丈夫だ。我が母も無事だった。詳しい話は道中で話す。まずはここに向かうぞ。」
地図に示された場所は険しい山を越えた先にある大きい石造りのコテージだった。中からはランタンの灯火がこぼれていた。
辺りは暗くなっていき徐々に静寂が訪れる中、ドン!と音を立て勢いよくドアを開ける。
「なんだ!?」
中にいたカテルワのメンバーが臨戦態勢になるが、入ってきたレオの姿を見てすぐに武器を下ろした。
こんなに禍々しく邪悪な存在は見たことがない。これほどまでの魔力を放てるのは魔王しかいないと気付いたのだ。それと今目の前にいる邪悪な存在が敵だとしても、勝てるわけがない。と怖気付いていた。
そんな彼らにレオが話しかける。
「我の名は魔王レオ、ロキ・カテルワの拠点で間違いないな?」
すると手前にいた金髪の若い男が口を開く。
「ああ、ロキ・カテルワの拠点はここで合ってるぜ。俺はザイール。よろしく。」
そう言って陽気なテンションで彼は握手を求めてきたが、レオは冷たくスルーした。
「さっそくこの後の流れを説明してもらおうか。」
そう言って席に座ると、ザイールも向かいの席に座った。
「奴の頭は引っ込めた。次は奴の尻尾を掴む。」
「具体的には?」
「今帝国にロキ・カテルワのスパイを送り込ませてる。スパイから奴の企み、行動、些細なことでも情報が入ってき次第行動を開始する。今はとりあえず待機だ。」
「貴様のカテルワは騙すことが大好きなようだな。」
「ロキ様は悪戯と裏切りの神様だからな。大好きどころじゃない。」
「なぜお前はこのカテルワに入った?」
そう聞くと、ザイールは険しい顔をして話し始めた。
「俺はちっちゃい頃、両親から殺されるほどの虐待を受けていた。毎日毎日、1本ずつ骨が折れてく日々に耐えれなくて、いっその事死のうと思った。そんな時マートンと出会った。彼は俺の姿を見て全てを察したんだ。そして、家はどこ?って聞いてきた。死のうと思ってた俺はそんなの聞いてどうすんだって思いながらも答えたんだ。そしたら1時間したら家に帰ってきて、とだけ言って去ってったんだ。言われた通りに1時間経って家に帰ると、死んでたんだよ。胴体をぐちゃぐちゃに引き裂かれた両親が。俺はその光景に言葉が出なかった。俺は必死に彼を探した。そして見つけたんだ、血だらけの手で紅茶を飲む彼の姿を。俺はその姿を見るなり怒りをぶつけたんだ。なんで殺した?なんで唯一の家族を無惨に殺したんだって。そしたら彼は、『僕は手段よりも結果を好む。やり方は酷くても結果として君が幸せになるなら、そう思ってやっただけのこと。それと、僕は単純にクズが嫌いなんだよ。』って言って笑ったんだ。当時は理解できなかったけど今になってわかる。彼には彼なりの正義を持ってるって。それで行先のない俺を拾って育ててくれた。あの2人よりも愛を込めてね。」
そう言って何かを思い出す彼の表情は少し明るくなった。
「ごめんな、少し語りすぎちまった。」
「いや、いいさ。聞いたのはこっちだ。」
そこへちょうどよくスパイからの連絡が来た。
「ザイール!映像カラスが飛んできた。出力するから集まってくれ。」
会議室のような少し広いところへ移ると、映像カラスの映像を映し始めた。
映し出されたそれは、どこかの教会のようだった。
「それと、カラスにメモが付いていた。『教会の場所はヘイデンの森を抜けた少し先、川の上流にある。奴はそこで奴が何をしているのかはわからないが、とある名を口にしていた。』…ゼウス。」
その名を聞いたレオ以外の皆が驚愕する。
「まずいことになったな…奴が本当にゼウスと接触したのなら急いでマートンに伝えないと。」
ゼウスの名を聞いてその場にいた者達は慌て始めた。
そんな時、ザイールが落ち着かせるように皆に言う。
「でもこっちには魔王がいるんだ。いくらゼウスと接触していたとしても、魔王軍を倒せるほどの力をまだ手に入れていないはず。ならこのまま先制攻撃すべきだ。」
ザイールの話を聞いた皆は落ち着きを取り戻し、その意見に賛同した。
「という訳で、次の作戦はこの教会への先制攻撃だ。魔王様、いけるか?」
ようやく重い腰を持ち上げ席を立つと、レオが口を開く。
「無論だ。ケーレス!ケルベロス!今聞いた通り、教会への先制攻撃をする。敵に神がいようと関係ない。帝国に、皇帝に!絶対なる死をもたらしてこい!」
「「ユア・フィアット!!」」
「魔王様、住民は全員無事。そして妙なことに敵軍が1人も見当たりませんでした。」
「ああ、それならもう大丈夫だ。我が母も無事だった。詳しい話は道中で話す。まずはここに向かうぞ。」
地図に示された場所は険しい山を越えた先にある大きい石造りのコテージだった。中からはランタンの灯火がこぼれていた。
辺りは暗くなっていき徐々に静寂が訪れる中、ドン!と音を立て勢いよくドアを開ける。
「なんだ!?」
中にいたカテルワのメンバーが臨戦態勢になるが、入ってきたレオの姿を見てすぐに武器を下ろした。
こんなに禍々しく邪悪な存在は見たことがない。これほどまでの魔力を放てるのは魔王しかいないと気付いたのだ。それと今目の前にいる邪悪な存在が敵だとしても、勝てるわけがない。と怖気付いていた。
そんな彼らにレオが話しかける。
「我の名は魔王レオ、ロキ・カテルワの拠点で間違いないな?」
すると手前にいた金髪の若い男が口を開く。
「ああ、ロキ・カテルワの拠点はここで合ってるぜ。俺はザイール。よろしく。」
そう言って陽気なテンションで彼は握手を求めてきたが、レオは冷たくスルーした。
「さっそくこの後の流れを説明してもらおうか。」
そう言って席に座ると、ザイールも向かいの席に座った。
「奴の頭は引っ込めた。次は奴の尻尾を掴む。」
「具体的には?」
「今帝国にロキ・カテルワのスパイを送り込ませてる。スパイから奴の企み、行動、些細なことでも情報が入ってき次第行動を開始する。今はとりあえず待機だ。」
「貴様のカテルワは騙すことが大好きなようだな。」
「ロキ様は悪戯と裏切りの神様だからな。大好きどころじゃない。」
「なぜお前はこのカテルワに入った?」
そう聞くと、ザイールは険しい顔をして話し始めた。
「俺はちっちゃい頃、両親から殺されるほどの虐待を受けていた。毎日毎日、1本ずつ骨が折れてく日々に耐えれなくて、いっその事死のうと思った。そんな時マートンと出会った。彼は俺の姿を見て全てを察したんだ。そして、家はどこ?って聞いてきた。死のうと思ってた俺はそんなの聞いてどうすんだって思いながらも答えたんだ。そしたら1時間したら家に帰ってきて、とだけ言って去ってったんだ。言われた通りに1時間経って家に帰ると、死んでたんだよ。胴体をぐちゃぐちゃに引き裂かれた両親が。俺はその光景に言葉が出なかった。俺は必死に彼を探した。そして見つけたんだ、血だらけの手で紅茶を飲む彼の姿を。俺はその姿を見るなり怒りをぶつけたんだ。なんで殺した?なんで唯一の家族を無惨に殺したんだって。そしたら彼は、『僕は手段よりも結果を好む。やり方は酷くても結果として君が幸せになるなら、そう思ってやっただけのこと。それと、僕は単純にクズが嫌いなんだよ。』って言って笑ったんだ。当時は理解できなかったけど今になってわかる。彼には彼なりの正義を持ってるって。それで行先のない俺を拾って育ててくれた。あの2人よりも愛を込めてね。」
そう言って何かを思い出す彼の表情は少し明るくなった。
「ごめんな、少し語りすぎちまった。」
「いや、いいさ。聞いたのはこっちだ。」
そこへちょうどよくスパイからの連絡が来た。
「ザイール!映像カラスが飛んできた。出力するから集まってくれ。」
会議室のような少し広いところへ移ると、映像カラスの映像を映し始めた。
映し出されたそれは、どこかの教会のようだった。
「それと、カラスにメモが付いていた。『教会の場所はヘイデンの森を抜けた少し先、川の上流にある。奴はそこで奴が何をしているのかはわからないが、とある名を口にしていた。』…ゼウス。」
その名を聞いたレオ以外の皆が驚愕する。
「まずいことになったな…奴が本当にゼウスと接触したのなら急いでマートンに伝えないと。」
ゼウスの名を聞いてその場にいた者達は慌て始めた。
そんな時、ザイールが落ち着かせるように皆に言う。
「でもこっちには魔王がいるんだ。いくらゼウスと接触していたとしても、魔王軍を倒せるほどの力をまだ手に入れていないはず。ならこのまま先制攻撃すべきだ。」
ザイールの話を聞いた皆は落ち着きを取り戻し、その意見に賛同した。
「という訳で、次の作戦はこの教会への先制攻撃だ。魔王様、いけるか?」
ようやく重い腰を持ち上げ席を立つと、レオが口を開く。
「無論だ。ケーレス!ケルベロス!今聞いた通り、教会への先制攻撃をする。敵に神がいようと関係ない。帝国に、皇帝に!絶対なる死をもたらしてこい!」
「「ユア・フィアット!!」」
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