魔王様は世界を支配したい!〜異世界で魔王になったので本気で魔王やる〜

ばにく

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予言の魔王編

第37話 悪戯

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 「なんだと…ケーレス!急いでホープシティに迎え!」


 「御意!」


 レオは焦りを何とか胸の奥に押し込んで状況を整理する。
 奴らの狙いはここじゃなくホープシティ、母さんが狙いだったのか…もしゴッドオブデケムが敵軍にいたら母さんが危ない。
 その時、レオが席をバッと立ち上がる。


 「エレーナ、俺も行ってくる。」


 「魔王様直々に?」


 「ケーレスのことは誰よりも信頼している。だが今回は我が母の命がかかってる。親衛隊に連絡しろ。」


 レオが手に持つ剣は血のように紅く光っていた。


 ーーーホープシティーーー


 レオ達が着いた頃には奴らの攻撃が始まっていた。街のあちらこちらから炎が立ち上がり、まさに地獄絵図であった。


 「ケーレスは住民の救助及び敵軍の制圧、ケルベロスは我に続いて母の元へ!」


 城からはここからでも見えるくらいの黒煙が舞い上がっていた。まるでここに来いと挑発してるかのような…。
 一行は城に到着し中に入る。外から見える炎や黒煙とは裏腹に、中は不気味なほど綺麗だった。
 玉座の間に着くと、異様な光景が目に入った。


 「来てくれたんですね。」


 そこには母と見知らぬ長身の男が茶を飲みながら話す姿があった。
 状況が呑み込めないレオに構わず男が話す。


 「僕はロキ・カテルワ、ロキの恩恵者。マートン。魔王レオ、君に話がある。大事な大事な話だ。」


 そう言って彼はスラッとした体を動かし席を用意し、机に茶を置いた。そして座ってと手で仕草した。
 聞きたいことは山ほどあるが、とりあえず言われた通りに話を聞くことにした。
 席に着くと彼は謝罪をし、話を始めた。


 「まず最初に申し訳ない。街を襲い、そして魔王直々に呼び出してしまって。だがこうでもしないと話を聞いてもらえないと思ってね。ただ安心して欲しい。煙や炎は言わば演出。死人、ましてや怪我人ですら誰1人出ていない。驚かしてしまって悪かった。」


 「謝罪はもういい、端的に話せ。」


 すると彼は茶を1口飲み本題に入り始めた。


 「君の敵は我々ゴッドオブデケムでもクアトル共和国でもない。メトゥス帝国皇帝、ジナ・ソーヴァだ。」


 「ジナ・ソーヴァ…アインの国の皇帝か。」


 「奴はこの魔王復活という混乱の中、全ての力を掌握しこの世界を我が物にしようと策略している。君たち魔王軍が勝とうと、共和国が勝とうと関係ない。最終的に玉座に座るのは奴だ。そこで君たち魔王軍にはここで死んでほしい。」


 「貴様、自分が今何を言ってるのか分かっているのか。」


 「正確には、にして欲しい。」


 「死んだこと?」


 「奴は魔王軍があと少しでも共和国に損害を与えればここぞとばかりに一斉に攻撃を開始するだろう。現にウングィス王国とは戦争状態に入っている。だから君たち魔王軍がここで死んだことにすれば、奴は攻撃の機会を見失い、頭を引っ込めるだろう。」


 「なるほど、貴様の言いたいことはわかった。だが1つ、なぜ貴様はそこまでして奴を止めたい?」


 すると彼はふっと笑って言った。


 「単純に、嫌いなんだよ。あのクズが。」


 清々しく言うその雰囲気に、レオは少し恐怖を感じた。だが直感で感じた、こいつは信用出来る。


 「君がもし協力してくれるなら、奴への手段は問わない。僕は、手段よりも結果を好む。やっている事が悪でも結果が善ならば、それは善だ。だからね、僕は虐殺を繰り返しているが平和の為に突き進む、そんな君が好きなんだよ。」


 そう言われたレオはすっかり警戒心を解き、心が落ち着いた。決して自分がやってることは無駄では無い、そう言い聞かしてきたが、こうして自分の行動を褒められると心の底から安心する。
 レオはふっと笑うと、茶を1口飲んだ。


 「いいだろう。力を貸そう。」


 「よかった、共和国には僕からきちんと報告しておくよ。魔王レオとその配下は死んだ、てね。」


 席を立つと同時に、マートンは紙を渡してきた。


 「ダビネスは恐らく共和国が抑えるから、この地図が示してる場所に向かって。僕のカテルワの拠点がある。」


 「母さんはどうするんだ。」


 そう聞くと傍で茶を飲んでいたシュナが口を開く。


 「私はもう少し彼と話しておかなければならない事があるから。」


 答えになっていない気もしたが、それ以上は何も聞かずにレオ達は城を後にした。


 「これで君の願いも叶うって訳でしょ。よく思いついたよね、死んだフリなんて。」


 そして茶を飲み終えたシュナは不気味な笑みを浮かべながら答えた。


 「魔王が死んだとなれば勇者は力をつけなくなる。そうすればもうあの子の邪魔をするものはいない。そしてあなたも皇帝を倒す鍵になる。お互いにとっての最善の手段じゃない?」


 広い玉座の間で、2人の笑い声だけが響き渡る。


 

 



 





 

 



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