37 / 44
予言の魔王編
第37話 悪戯
しおりを挟む
「なんだと…ケーレス!急いでホープシティに迎え!」
「御意!」
レオは焦りを何とか胸の奥に押し込んで状況を整理する。
奴らの狙いはここじゃなくホープシティ、母さんが狙いだったのか…もしゴッドオブデケムが敵軍にいたら母さんが危ない。
その時、レオが席をバッと立ち上がる。
「エレーナ、俺も行ってくる。」
「魔王様直々に?」
「ケーレスのことは誰よりも信頼している。だが今回は我が母の命がかかってる。親衛隊に連絡しろ。」
レオが手に持つ剣は血のように紅く光っていた。
ーーーホープシティーーー
レオ達が着いた頃には奴らの攻撃が始まっていた。街のあちらこちらから炎が立ち上がり、まさに地獄絵図であった。
「ケーレスは住民の救助及び敵軍の制圧、ケルベロスは我に続いて母の元へ!」
城からはここからでも見えるくらいの黒煙が舞い上がっていた。まるでここに来いと挑発してるかのような…。
一行は城に到着し中に入る。外から見える炎や黒煙とは裏腹に、中は不気味なほど綺麗だった。
玉座の間に着くと、異様な光景が目に入った。
「来てくれたんですね。」
そこには母と見知らぬ長身の男が茶を飲みながら話す姿があった。
状況が呑み込めないレオに構わず男が話す。
「僕はロキ・カテルワ、ロキの恩恵者。マートン。魔王レオ、君に話がある。大事な大事な話だ。」
そう言って彼はスラッとした体を動かし席を用意し、机に茶を置いた。そして座ってと手で仕草した。
聞きたいことは山ほどあるが、とりあえず言われた通りに話を聞くことにした。
席に着くと彼は謝罪をし、話を始めた。
「まず最初に申し訳ない。街を襲い、そして魔王直々に呼び出してしまって。だがこうでもしないと話を聞いてもらえないと思ってね。ただ安心して欲しい。煙や炎は言わば演出。死人、ましてや怪我人ですら誰1人出ていない。驚かしてしまって悪かった。」
「謝罪はもういい、端的に話せ。」
すると彼は茶を1口飲み本題に入り始めた。
「君の敵は我々ゴッドオブデケムでもクアトル共和国でもない。メトゥス帝国皇帝、ジナ・ソーヴァだ。」
「ジナ・ソーヴァ…アインの国の皇帝か。」
「奴はこの魔王復活という混乱の中、全ての力を掌握しこの世界を我が物にしようと策略している。君たち魔王軍が勝とうと、共和国が勝とうと関係ない。最終的に玉座に座るのは奴だ。そこで君たち魔王軍にはここで死んでほしい。」
「貴様、自分が今何を言ってるのか分かっているのか。」
「正確には、死んだことにして欲しい。」
「死んだこと?」
「奴は魔王軍があと少しでも共和国に損害を与えればここぞとばかりに一斉に攻撃を開始するだろう。現にウングィス王国とは戦争状態に入っている。だから君たち魔王軍がここで死んだことにすれば、奴は攻撃の機会を見失い、頭を引っ込めるだろう。」
「なるほど、貴様の言いたいことはわかった。だが1つ、なぜ貴様はそこまでして奴を止めたい?」
すると彼はふっと笑って言った。
「単純に、嫌いなんだよ。あのクズが。」
清々しく言うその雰囲気に、レオは少し恐怖を感じた。だが直感で感じた、こいつは信用出来る。
「君がもし協力してくれるなら、奴への手段は問わない。僕は、手段よりも結果を好む。やっている事が悪でも結果が善ならば、それは善だ。だからね、僕は虐殺を繰り返しているが平和の為に突き進む、そんな君が好きなんだよ。」
そう言われたレオはすっかり警戒心を解き、心が落ち着いた。決して自分がやってることは無駄では無い、そう言い聞かしてきたが、こうして自分の行動を褒められると心の底から安心する。
レオはふっと笑うと、茶を1口飲んだ。
「いいだろう。力を貸そう。」
「よかった、共和国には僕からきちんと報告しておくよ。魔王レオとその配下は死んだ、てね。」
席を立つと同時に、マートンは紙を渡してきた。
「ダビネスは恐らく共和国が抑えるから、この地図が示してる場所に向かって。僕のカテルワの拠点がある。」
「母さんはどうするんだ。」
そう聞くと傍で茶を飲んでいたシュナが口を開く。
「私はもう少し彼と話しておかなければならない事があるから。」
答えになっていない気もしたが、それ以上は何も聞かずにレオ達は城を後にした。
「これで君の願いも叶うって訳でしょ。よく思いついたよね、死んだフリなんて。」
そして茶を飲み終えたシュナは不気味な笑みを浮かべながら答えた。
「魔王が死んだとなれば勇者は力をつけなくなる。そうすればもうあの子の邪魔をするものはいない。そしてあなたも皇帝を倒す鍵になる。お互いにとっての最善の手段じゃない?」
広い玉座の間で、2人の笑い声だけが響き渡る。
「御意!」
レオは焦りを何とか胸の奥に押し込んで状況を整理する。
奴らの狙いはここじゃなくホープシティ、母さんが狙いだったのか…もしゴッドオブデケムが敵軍にいたら母さんが危ない。
その時、レオが席をバッと立ち上がる。
「エレーナ、俺も行ってくる。」
「魔王様直々に?」
「ケーレスのことは誰よりも信頼している。だが今回は我が母の命がかかってる。親衛隊に連絡しろ。」
レオが手に持つ剣は血のように紅く光っていた。
ーーーホープシティーーー
レオ達が着いた頃には奴らの攻撃が始まっていた。街のあちらこちらから炎が立ち上がり、まさに地獄絵図であった。
「ケーレスは住民の救助及び敵軍の制圧、ケルベロスは我に続いて母の元へ!」
城からはここからでも見えるくらいの黒煙が舞い上がっていた。まるでここに来いと挑発してるかのような…。
一行は城に到着し中に入る。外から見える炎や黒煙とは裏腹に、中は不気味なほど綺麗だった。
玉座の間に着くと、異様な光景が目に入った。
「来てくれたんですね。」
そこには母と見知らぬ長身の男が茶を飲みながら話す姿があった。
状況が呑み込めないレオに構わず男が話す。
「僕はロキ・カテルワ、ロキの恩恵者。マートン。魔王レオ、君に話がある。大事な大事な話だ。」
そう言って彼はスラッとした体を動かし席を用意し、机に茶を置いた。そして座ってと手で仕草した。
聞きたいことは山ほどあるが、とりあえず言われた通りに話を聞くことにした。
席に着くと彼は謝罪をし、話を始めた。
「まず最初に申し訳ない。街を襲い、そして魔王直々に呼び出してしまって。だがこうでもしないと話を聞いてもらえないと思ってね。ただ安心して欲しい。煙や炎は言わば演出。死人、ましてや怪我人ですら誰1人出ていない。驚かしてしまって悪かった。」
「謝罪はもういい、端的に話せ。」
すると彼は茶を1口飲み本題に入り始めた。
「君の敵は我々ゴッドオブデケムでもクアトル共和国でもない。メトゥス帝国皇帝、ジナ・ソーヴァだ。」
「ジナ・ソーヴァ…アインの国の皇帝か。」
「奴はこの魔王復活という混乱の中、全ての力を掌握しこの世界を我が物にしようと策略している。君たち魔王軍が勝とうと、共和国が勝とうと関係ない。最終的に玉座に座るのは奴だ。そこで君たち魔王軍にはここで死んでほしい。」
「貴様、自分が今何を言ってるのか分かっているのか。」
「正確には、死んだことにして欲しい。」
「死んだこと?」
「奴は魔王軍があと少しでも共和国に損害を与えればここぞとばかりに一斉に攻撃を開始するだろう。現にウングィス王国とは戦争状態に入っている。だから君たち魔王軍がここで死んだことにすれば、奴は攻撃の機会を見失い、頭を引っ込めるだろう。」
「なるほど、貴様の言いたいことはわかった。だが1つ、なぜ貴様はそこまでして奴を止めたい?」
すると彼はふっと笑って言った。
「単純に、嫌いなんだよ。あのクズが。」
清々しく言うその雰囲気に、レオは少し恐怖を感じた。だが直感で感じた、こいつは信用出来る。
「君がもし協力してくれるなら、奴への手段は問わない。僕は、手段よりも結果を好む。やっている事が悪でも結果が善ならば、それは善だ。だからね、僕は虐殺を繰り返しているが平和の為に突き進む、そんな君が好きなんだよ。」
そう言われたレオはすっかり警戒心を解き、心が落ち着いた。決して自分がやってることは無駄では無い、そう言い聞かしてきたが、こうして自分の行動を褒められると心の底から安心する。
レオはふっと笑うと、茶を1口飲んだ。
「いいだろう。力を貸そう。」
「よかった、共和国には僕からきちんと報告しておくよ。魔王レオとその配下は死んだ、てね。」
席を立つと同時に、マートンは紙を渡してきた。
「ダビネスは恐らく共和国が抑えるから、この地図が示してる場所に向かって。僕のカテルワの拠点がある。」
「母さんはどうするんだ。」
そう聞くと傍で茶を飲んでいたシュナが口を開く。
「私はもう少し彼と話しておかなければならない事があるから。」
答えになっていない気もしたが、それ以上は何も聞かずにレオ達は城を後にした。
「これで君の願いも叶うって訳でしょ。よく思いついたよね、死んだフリなんて。」
そして茶を飲み終えたシュナは不気味な笑みを浮かべながら答えた。
「魔王が死んだとなれば勇者は力をつけなくなる。そうすればもうあの子の邪魔をするものはいない。そしてあなたも皇帝を倒す鍵になる。お互いにとっての最善の手段じゃない?」
広い玉座の間で、2人の笑い声だけが響き渡る。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
世界中にダンジョンが出来た。何故か俺の部屋にも出来た。
阿吽
ファンタジー
クリスマスの夜……それは突然出現した。世界中あらゆる観光地に『扉』が現れる。それは荘厳で魅惑的で威圧的で……様々な恩恵を齎したそれは、かのファンタジー要素に欠かせない【ダンジョン】であった!
※カクヨムにて先行投稿中

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる