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第36話 戦力拡大

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 まったく昨日は散々な目にあった。未だに転んだ時に打った頭が痛い。そしてあの光景が頭から離れない…このままじゃ魔王としての威厳が無くなってしまう。
 その時、エレーナが部屋に入ってくる。


 「魔王様、ここから10km離れた地点でゴッドオブデケムが確認されました。相手はアポロンの恩恵者、ルシウスです。」


 「かなり近いな。ケーレスは別の任務に出ているしここは我が親衛隊に任せるとしよう。」


 その後すぐにレオの元へ親衛隊がやってくる。


 「お呼びでしょうか、魔王様。」


 「ああ、この近くでアポロンの恩恵者が現れた。今回の任務は奴の目的の解明とその排除だ。いいか、貴様らはこれからの我が軍の代表となり鑑となる存在だ。失敗は許されない。」


 「御意。」


 「では行け、我が番犬ケルベロスよ!」


 「ユア・フィアット。」


 ーーーアポロン・カテルワの野営地ーーー


 「ジーンもアランもビビりすぎなんだよ。魔王だかなんだか知らねえけど燃やしちまえば終わりだろ。」


 ルシウス。彼はアポロンの恩恵者でありアポロン・カテルワのリーダー。彼の放つ熱は獄炎よりも熱く燃える。


 「ルシウス様、周辺の大まかな情報が取れました。そろそろ帰還致しましょう。」


 「ご苦労さん、んじゃとっとと帰るぞ。」


 荷物をまとめて野営地を後にする。


 「御者はどこだ?」


 「さあ?ここに止めておくよう言っといたのですが。」


 「ったく使えねえ奴をよこすんじゃねえよ。ジェイク!ジェイクはどこだ!」


 辺りにはルシウスの声だけが響く。風の音すらも聞こえないほどの静けさ。何かがおかしい…。


 「どうなってんだ。」


 するとその時、1発の銃声と共に隣にいた手下の首から勢いよく血が吹き出る。


 「クソ!なんだ!?」


 闇から出てきたのは邪悪な5人の影。


 「魔王軍…!」


 「我らはケルベロス。こそこそと嗅ぎ回るネズミ共を駆除しに来た番犬だ。」


 「へっ、所詮は犬だ。丁度いい、魔王軍の強さ試してやるよ…。」


 そう言ってはいるが、奴は内心脅えていた。ジーンはゴッドオブデケムの中でも上位の強さを持っている。なのにジーンは完膚なきまでにボコボコにされた。俺が勝てるのか?と不安に押しつぶされていた。


 「アイン、我々はまだ貴様を認めていない。今ここで貴様の力と忠義を示してみろ。」


 「御意。」


 崖からアインが飛び降り、すっと静かに着地する。その姿は小柄なくせに堂々としており、尋常じゃない殺気を放っていた。


 「お前か、アインとかいう冒険者は。ドニーの奴が言ってたのは本当だったのか。」


 その名を聞いて驚愕する。


 「ドニーだと…?生きているのか。」


 「ああ、お前に裏切られてカンカンのようだぞ。」


 「そうか…それは最高だなぁ!俺があいつを殺さないといけなくなっちまった。なんて最高な事なんだ!」


 その狂った喜びにルシウスはドン引きしていた。


 「ちっ、笑ってんじゃねえぞ!」


 次の瞬間、ルシウスの体が真っ赤に光り出す。


 「デイ・ソル!」


 まさしく太陽のような燃えたぎる球体がアインに放たれる。


 「パレント・レオ、コルプス・ロリカ身体硬化。」


 球体はアインに触れると瞬く間に爆散し、周囲の木々を大きく揺らした。


 「バカが!正面からまともに食らうとは…やっぱ魔王軍は大したことねえな!」


 煙が消え辺りが見え始めると、そこには無傷のアインが堂々と立っていた。


 「は…?」


 「太陽ってのは熱いものだろ?貴様のはお日様だ。ポカポカして眠くなってしまう。」


 「ありえない!あれをまともに食らって生きてるなんて…どんな魔力量してやがんだよ!」


 奴がもう一度技を放とうとする。すかさずアインが距離を詰める。


 「うわあああ!来るなぁ!!」


 まるで海を泳ぐカジキのようなスピードで奴の懐に潜り込むと、手に持っていた剣で奴の腹を豪快にかっさばいた。


 「ぐああ…」


 血飛沫をあげて奴はその場で倒れ死んだ。
 事が片付くと他のみんなが駆け寄ってきた。


 「やるじゃんかよ新入り!」

 
 「ま、ジョーカーよりかは強いかな。」


 「なんだよそれ!?」
 

 そこへトッツォが話しかける。


 「アイン、ようこそ親衛隊へ。君はもう立派な番犬だ。」


 「光栄です。」


 「それじゃあ、奴がここで何をしてたのか調べようか。」


 部隊は大きなテントの中に入る。中に入るといくつかの物資や魔道具などが置かれていた。


 「隊長、これ!」


 リノが急ぐような声でそう言うと、他の者がリノのところへ集まる。
 リノが指さすところには地図があり、ある場所に赤い丸がしてあった。


 「こ、これは…!?」


 その場所はリベルタス王国、ホープシティだった。


 「奴らの目的はダビネスじゃない!リベルタス王国だ!」


 「このままではシュナ様が危ない、急いで魔王様に連絡を!」


 部隊は大急ぎで荷物をまとめ、撤収した。
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