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予言の魔王編
第35話 伝説の魔術師
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先に進むと森の中、陽の射した開けた空間の真ん中に、家がぽつんと建っていた。
「着いたぞ。」
それはなんとも神秘的な空間だった。
さっそく中に入る。中は綺麗だが、どこか不気味だった。
「それで、なぜあんな化け物に襲われていたのか説明してもらおう。」
全員が席に座るとアーサーが口を開く。
「正直まだわからない。相手が何者で、なぜ俺を狙うのか。だが奴らは相当の手練だ。あれほどのバケモンはそうそういない。」
「そうだな、それだけでも正体について絞れそうだ。あいつと会ったのは初めてか?」
「ああ、だが数日前あいつとは別に2人のドラゴニュートに狙われたことがある。あの2人もバケモン級の強さだった。」
「そこまでの実力者を従わせられる存在はあれしか…」
「魔王レオ、ですね?」
「そうだ、だがそれだとおかしい。」
「何がですか?」
「もし、あのドラゴニュートの小娘を送り込んだのが魔王だとしたら、なぜ真っ先に勇者であるカイトを狙わない?」
「確かに、あいつは用があるのは俺だって言ってたな。でもなんで俺を狙うんだ?」
「アーサー、お前が初めて襲われたのはいつだ?」
「俺とカイトが初めて会った日、光の魔法を扱う特訓をした日だな。」
「つまり、相手の目的は唯一光の魔法を使えるアーサーということか。だがだとしたらなぜ今になって襲った?襲う機会ならいくらでもあったはず。もしや、相手が恐れているのは光の魔法を使えるアーサーではなく、それを使えるようになるカイトのほうか?」
「俺ですか?でもなんで俺を殺さないんでしょう?」
「それにはきっとなにか訳があるのかもしれない。とにかく今考えられることはこのくらいか。もう日が暮れる。夕飯の準備をしよう。」
太陽が落ち、辺りには虫の声が響き渡る。
夕飯を終え皆就寝した中、ランタンの火が灯す部屋でカイトがマーリンに話しかける。
「マーリンさん。」
「起きていたか、どうした。」
「マーリンさんとアーサーさんが出会った時のことを聞いてもいいですか?」
その時、見えないはずのマーリンの顔がなんとなく笑みを浮かべた気がした。
「そうだな、私が魔物だということは知っているだろう?」
「はい。」
「実はな、私はダンジョンのボスだったんだ。」
そう言って懐かしそうに話し始める。
「その昔、いつものようにダンジョンに入ってきた冒険者達を殺していた時、あるパーティーが入ってきてな。それが若かりし頃のアーサーなんだ。私は彼の眩しく光る魔法と正義感に心動かされ、忠誠を誓った。当然、他の者は魔物を仲間にするなんてイカれてるって反対した。ましてや国を貶める魔女なんてと。だが彼はそれを無視し、私をキャメロット親衛隊の隊長にしたのだ。まったく、今思えばぶっ飛んでいる。」
「たしかに、あの人ならしそうです。」
「それが彼のいいところでもあり、欠点だった。」
するとマーリンの表情が暗くなる。
「それから彼は、私のような魔物や異種族であろうとも仲間にしていった。そんなある日、仲間が奴隷として人間に仕えていると勘違いした魔物が、アーサーの家族を襲った。彼が駆けつけたときにはもう遅かった。ボロボロに壊された家には妹の無惨な亡き骸が捨ててあった。両親を若い頃に失った彼にとって、妹のキャスは最後の肉親だった。」
「そんな…」
「彼は守れなかった怒りと後悔に苛まれ、キャメロットの王の座を手放した。そして私たちは散り散りに。ひとつの無惨な事件によって、キャメロットの黄金期は幕を下ろしたんだ。」
マーリンは、カイトにキャスの面影を感じていた。なぜアーサーが嫌っていた光の魔法を教えることに決めたのか、その理由がなんとなくわかった気がした。
「さあ、もう寝よう。明日は長い旅になるぞ。」
「ありがとうございました、おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ…」
ーーーリベルタス王国 ホープシティーーー
嵐によって大雨が窓を強く叩く。
雷鳴が轟く深夜、城ではシュナとセレーナが話していた。
「いやーまさか伝説の魔術師マーリンが出てくるとは思わなかったっす~。」
「マーリン…あの時いた魔物ね。」
「ふえ!?シュナ様マーリンを知ってるっすか!?」
「ええ、かつて魔王ハデスに仕えていた者がいてね、あれはその子供なの。」
「そうだったんすかー!いやぁ世界は狭いっすね~。」
「ええ、そうね…」
シュナは不気味に微笑んだ。
「着いたぞ。」
それはなんとも神秘的な空間だった。
さっそく中に入る。中は綺麗だが、どこか不気味だった。
「それで、なぜあんな化け物に襲われていたのか説明してもらおう。」
全員が席に座るとアーサーが口を開く。
「正直まだわからない。相手が何者で、なぜ俺を狙うのか。だが奴らは相当の手練だ。あれほどのバケモンはそうそういない。」
「そうだな、それだけでも正体について絞れそうだ。あいつと会ったのは初めてか?」
「ああ、だが数日前あいつとは別に2人のドラゴニュートに狙われたことがある。あの2人もバケモン級の強さだった。」
「そこまでの実力者を従わせられる存在はあれしか…」
「魔王レオ、ですね?」
「そうだ、だがそれだとおかしい。」
「何がですか?」
「もし、あのドラゴニュートの小娘を送り込んだのが魔王だとしたら、なぜ真っ先に勇者であるカイトを狙わない?」
「確かに、あいつは用があるのは俺だって言ってたな。でもなんで俺を狙うんだ?」
「アーサー、お前が初めて襲われたのはいつだ?」
「俺とカイトが初めて会った日、光の魔法を扱う特訓をした日だな。」
「つまり、相手の目的は唯一光の魔法を使えるアーサーということか。だがだとしたらなぜ今になって襲った?襲う機会ならいくらでもあったはず。もしや、相手が恐れているのは光の魔法を使えるアーサーではなく、それを使えるようになるカイトのほうか?」
「俺ですか?でもなんで俺を殺さないんでしょう?」
「それにはきっとなにか訳があるのかもしれない。とにかく今考えられることはこのくらいか。もう日が暮れる。夕飯の準備をしよう。」
太陽が落ち、辺りには虫の声が響き渡る。
夕飯を終え皆就寝した中、ランタンの火が灯す部屋でカイトがマーリンに話しかける。
「マーリンさん。」
「起きていたか、どうした。」
「マーリンさんとアーサーさんが出会った時のことを聞いてもいいですか?」
その時、見えないはずのマーリンの顔がなんとなく笑みを浮かべた気がした。
「そうだな、私が魔物だということは知っているだろう?」
「はい。」
「実はな、私はダンジョンのボスだったんだ。」
そう言って懐かしそうに話し始める。
「その昔、いつものようにダンジョンに入ってきた冒険者達を殺していた時、あるパーティーが入ってきてな。それが若かりし頃のアーサーなんだ。私は彼の眩しく光る魔法と正義感に心動かされ、忠誠を誓った。当然、他の者は魔物を仲間にするなんてイカれてるって反対した。ましてや国を貶める魔女なんてと。だが彼はそれを無視し、私をキャメロット親衛隊の隊長にしたのだ。まったく、今思えばぶっ飛んでいる。」
「たしかに、あの人ならしそうです。」
「それが彼のいいところでもあり、欠点だった。」
するとマーリンの表情が暗くなる。
「それから彼は、私のような魔物や異種族であろうとも仲間にしていった。そんなある日、仲間が奴隷として人間に仕えていると勘違いした魔物が、アーサーの家族を襲った。彼が駆けつけたときにはもう遅かった。ボロボロに壊された家には妹の無惨な亡き骸が捨ててあった。両親を若い頃に失った彼にとって、妹のキャスは最後の肉親だった。」
「そんな…」
「彼は守れなかった怒りと後悔に苛まれ、キャメロットの王の座を手放した。そして私たちは散り散りに。ひとつの無惨な事件によって、キャメロットの黄金期は幕を下ろしたんだ。」
マーリンは、カイトにキャスの面影を感じていた。なぜアーサーが嫌っていた光の魔法を教えることに決めたのか、その理由がなんとなくわかった気がした。
「さあ、もう寝よう。明日は長い旅になるぞ。」
「ありがとうございました、おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ…」
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「ふえ!?シュナ様マーリンを知ってるっすか!?」
「ええ、かつて魔王ハデスに仕えていた者がいてね、あれはその子供なの。」
「そうだったんすかー!いやぁ世界は狭いっすね~。」
「ええ、そうね…」
シュナは不気味に微笑んだ。
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