35 / 44
予言の魔王編
第35話 伝説の魔術師
しおりを挟む
先に進むと森の中、陽の射した開けた空間の真ん中に、家がぽつんと建っていた。
「着いたぞ。」
それはなんとも神秘的な空間だった。
さっそく中に入る。中は綺麗だが、どこか不気味だった。
「それで、なぜあんな化け物に襲われていたのか説明してもらおう。」
全員が席に座るとアーサーが口を開く。
「正直まだわからない。相手が何者で、なぜ俺を狙うのか。だが奴らは相当の手練だ。あれほどのバケモンはそうそういない。」
「そうだな、それだけでも正体について絞れそうだ。あいつと会ったのは初めてか?」
「ああ、だが数日前あいつとは別に2人のドラゴニュートに狙われたことがある。あの2人もバケモン級の強さだった。」
「そこまでの実力者を従わせられる存在はあれしか…」
「魔王レオ、ですね?」
「そうだ、だがそれだとおかしい。」
「何がですか?」
「もし、あのドラゴニュートの小娘を送り込んだのが魔王だとしたら、なぜ真っ先に勇者であるカイトを狙わない?」
「確かに、あいつは用があるのは俺だって言ってたな。でもなんで俺を狙うんだ?」
「アーサー、お前が初めて襲われたのはいつだ?」
「俺とカイトが初めて会った日、光の魔法を扱う特訓をした日だな。」
「つまり、相手の目的は唯一光の魔法を使えるアーサーということか。だがだとしたらなぜ今になって襲った?襲う機会ならいくらでもあったはず。もしや、相手が恐れているのは光の魔法を使えるアーサーではなく、それを使えるようになるカイトのほうか?」
「俺ですか?でもなんで俺を殺さないんでしょう?」
「それにはきっとなにか訳があるのかもしれない。とにかく今考えられることはこのくらいか。もう日が暮れる。夕飯の準備をしよう。」
太陽が落ち、辺りには虫の声が響き渡る。
夕飯を終え皆就寝した中、ランタンの火が灯す部屋でカイトがマーリンに話しかける。
「マーリンさん。」
「起きていたか、どうした。」
「マーリンさんとアーサーさんが出会った時のことを聞いてもいいですか?」
その時、見えないはずのマーリンの顔がなんとなく笑みを浮かべた気がした。
「そうだな、私が魔物だということは知っているだろう?」
「はい。」
「実はな、私はダンジョンのボスだったんだ。」
そう言って懐かしそうに話し始める。
「その昔、いつものようにダンジョンに入ってきた冒険者達を殺していた時、あるパーティーが入ってきてな。それが若かりし頃のアーサーなんだ。私は彼の眩しく光る魔法と正義感に心動かされ、忠誠を誓った。当然、他の者は魔物を仲間にするなんてイカれてるって反対した。ましてや国を貶める魔女なんてと。だが彼はそれを無視し、私をキャメロット親衛隊の隊長にしたのだ。まったく、今思えばぶっ飛んでいる。」
「たしかに、あの人ならしそうです。」
「それが彼のいいところでもあり、欠点だった。」
するとマーリンの表情が暗くなる。
「それから彼は、私のような魔物や異種族であろうとも仲間にしていった。そんなある日、仲間が奴隷として人間に仕えていると勘違いした魔物が、アーサーの家族を襲った。彼が駆けつけたときにはもう遅かった。ボロボロに壊された家には妹の無惨な亡き骸が捨ててあった。両親を若い頃に失った彼にとって、妹のキャスは最後の肉親だった。」
「そんな…」
「彼は守れなかった怒りと後悔に苛まれ、キャメロットの王の座を手放した。そして私たちは散り散りに。ひとつの無惨な事件によって、キャメロットの黄金期は幕を下ろしたんだ。」
マーリンは、カイトにキャスの面影を感じていた。なぜアーサーが嫌っていた光の魔法を教えることに決めたのか、その理由がなんとなくわかった気がした。
「さあ、もう寝よう。明日は長い旅になるぞ。」
「ありがとうございました、おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ…」
ーーーリベルタス王国 ホープシティーーー
嵐によって大雨が窓を強く叩く。
雷鳴が轟く深夜、城ではシュナとセレーナが話していた。
「いやーまさか伝説の魔術師マーリンが出てくるとは思わなかったっす~。」
「マーリン…あの時いた魔物ね。」
「ふえ!?シュナ様マーリンを知ってるっすか!?」
「ええ、かつて魔王ハデスに仕えていた者がいてね、あれはその子供なの。」
「そうだったんすかー!いやぁ世界は狭いっすね~。」
「ええ、そうね…」
シュナは不気味に微笑んだ。
「着いたぞ。」
それはなんとも神秘的な空間だった。
さっそく中に入る。中は綺麗だが、どこか不気味だった。
「それで、なぜあんな化け物に襲われていたのか説明してもらおう。」
全員が席に座るとアーサーが口を開く。
「正直まだわからない。相手が何者で、なぜ俺を狙うのか。だが奴らは相当の手練だ。あれほどのバケモンはそうそういない。」
「そうだな、それだけでも正体について絞れそうだ。あいつと会ったのは初めてか?」
「ああ、だが数日前あいつとは別に2人のドラゴニュートに狙われたことがある。あの2人もバケモン級の強さだった。」
「そこまでの実力者を従わせられる存在はあれしか…」
「魔王レオ、ですね?」
「そうだ、だがそれだとおかしい。」
「何がですか?」
「もし、あのドラゴニュートの小娘を送り込んだのが魔王だとしたら、なぜ真っ先に勇者であるカイトを狙わない?」
「確かに、あいつは用があるのは俺だって言ってたな。でもなんで俺を狙うんだ?」
「アーサー、お前が初めて襲われたのはいつだ?」
「俺とカイトが初めて会った日、光の魔法を扱う特訓をした日だな。」
「つまり、相手の目的は唯一光の魔法を使えるアーサーということか。だがだとしたらなぜ今になって襲った?襲う機会ならいくらでもあったはず。もしや、相手が恐れているのは光の魔法を使えるアーサーではなく、それを使えるようになるカイトのほうか?」
「俺ですか?でもなんで俺を殺さないんでしょう?」
「それにはきっとなにか訳があるのかもしれない。とにかく今考えられることはこのくらいか。もう日が暮れる。夕飯の準備をしよう。」
太陽が落ち、辺りには虫の声が響き渡る。
夕飯を終え皆就寝した中、ランタンの火が灯す部屋でカイトがマーリンに話しかける。
「マーリンさん。」
「起きていたか、どうした。」
「マーリンさんとアーサーさんが出会った時のことを聞いてもいいですか?」
その時、見えないはずのマーリンの顔がなんとなく笑みを浮かべた気がした。
「そうだな、私が魔物だということは知っているだろう?」
「はい。」
「実はな、私はダンジョンのボスだったんだ。」
そう言って懐かしそうに話し始める。
「その昔、いつものようにダンジョンに入ってきた冒険者達を殺していた時、あるパーティーが入ってきてな。それが若かりし頃のアーサーなんだ。私は彼の眩しく光る魔法と正義感に心動かされ、忠誠を誓った。当然、他の者は魔物を仲間にするなんてイカれてるって反対した。ましてや国を貶める魔女なんてと。だが彼はそれを無視し、私をキャメロット親衛隊の隊長にしたのだ。まったく、今思えばぶっ飛んでいる。」
「たしかに、あの人ならしそうです。」
「それが彼のいいところでもあり、欠点だった。」
するとマーリンの表情が暗くなる。
「それから彼は、私のような魔物や異種族であろうとも仲間にしていった。そんなある日、仲間が奴隷として人間に仕えていると勘違いした魔物が、アーサーの家族を襲った。彼が駆けつけたときにはもう遅かった。ボロボロに壊された家には妹の無惨な亡き骸が捨ててあった。両親を若い頃に失った彼にとって、妹のキャスは最後の肉親だった。」
「そんな…」
「彼は守れなかった怒りと後悔に苛まれ、キャメロットの王の座を手放した。そして私たちは散り散りに。ひとつの無惨な事件によって、キャメロットの黄金期は幕を下ろしたんだ。」
マーリンは、カイトにキャスの面影を感じていた。なぜアーサーが嫌っていた光の魔法を教えることに決めたのか、その理由がなんとなくわかった気がした。
「さあ、もう寝よう。明日は長い旅になるぞ。」
「ありがとうございました、おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ…」
ーーーリベルタス王国 ホープシティーーー
嵐によって大雨が窓を強く叩く。
雷鳴が轟く深夜、城ではシュナとセレーナが話していた。
「いやーまさか伝説の魔術師マーリンが出てくるとは思わなかったっす~。」
「マーリン…あの時いた魔物ね。」
「ふえ!?シュナ様マーリンを知ってるっすか!?」
「ええ、かつて魔王ハデスに仕えていた者がいてね、あれはその子供なの。」
「そうだったんすかー!いやぁ世界は狭いっすね~。」
「ええ、そうね…」
シュナは不気味に微笑んだ。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
強制フラグは、いりません! ~今いる世界が、誰かの二次小説の中だなんて思うかよ! JKと禁断の恋愛するなら、自力でやらせてもらうからっ!~
ハル*
ファンタジー
高校教師の俺。
いつもと同じように過ごしていたはずなのに、ある日を境にちょっとずつ何かが変わっていく。
テスト準備期間のある放課後。行き慣れた部室に向かった俺の目の前に、ぐっすり眠っているマネージャーのあの娘。
そのシチュエーションの最中、頭ん中で変な音と共に、俺の日常を変えていく声が聞こえた。
『強制フラグを、立てますか?』
その言葉自体を知らないわけじゃない。
だがしかし、そのフラグって、何に対してなんだ?
聞いたことがない声。聞こえてくる場所も、ハッキリしない。
混乱する俺に、さっきの声が繰り返された。
しかも、ちょっとだけ違うセリフで。
『強制フラグを立てますよ? いいですね?』
その変化は、目の前の彼女の名前を呼んだ瞬間に訪れた。
「今日って、そんなに疲れるようなことあったか?」
今まで感じたことがない違和感に、さっさと目の前のことを終わらせようとした俺。
結論づけた瞬間、俺の体が勝手に動いた。
『強制フラグを立てました』
その声と、ほぼ同時に。
高校教師の俺が、自分の気持ちに反する行動を勝手に決めつけられながら、
女子高生と禁断の恋愛?
しかも、勝手に決めつけているのが、どこぞの誰かが書いている某アプリの二次小説の作者って……。
いやいや。俺、そんなセリフ言わないし!
甘い言葉だなんて、吐いたことないのに、勝手に言わせないでくれって!
俺のイメージが崩れる一方なんだけど!
……でも、この娘、いい子なんだよな。
っていうか、この娘を嫌うようなやつなんて、いるのか?
「ごめんなさい。……センセイは、先生なのに。好きに…なっちゃ、だめなのに」
このセリフは、彼女の本心か? それともこれも俺と彼女の恋愛フラグが立たせられているせい?
誰かの二次小説の中で振り回される高校教師と女子高生の恋愛物語が、今、はじまる。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~
エール
ファンタジー
古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。
彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。
経営者は若い美人姉妹。
妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。
そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。
最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

セリオン共和国再興記 もしくは宇宙刑事が召喚されてしまったので・・・
今卓&
ファンタジー
地球での任務が終わった銀河連合所属の刑事二人は帰途の途中原因不明のワームホールに巻き込まれる、彼が気が付くと可住惑星上に居た。
その頃会議中の皇帝の元へ伯爵から使者が送られる、彼等は捕らえられ教会の地下へと送られた。
皇帝は日課の教会へ向かう途中でタイスと名乗る少女を”宮”へ招待するという、タイスは不安ながらも両親と周囲の反応から招待を断る事はできず”宮”へ向かう事となる。
刑事は離別したパートナーの捜索と惑星の調査の為、巡視艇から下船する事とした、そこで彼は4人の知性体を救出し獣人二人とエルフを連れてエルフの住む土地へ彼等を届ける旅にでる事となる。

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる