魔王様は世界を支配したい!〜異世界で魔王になったので本気で魔王やる〜

ばにく

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予言の魔王編

第34話 強襲

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 「申し訳ございませんシュナ様。」


 「ターゲットは頭が切れるようです。こちらの襲撃に気づいておりました。」


 玉座に座るシュナの姿は、魔王にも引けを取らないほどの威圧感を放っていた。
 そこへ一人の小柄なドラゴニュートの女性が入ってきた。


 「ただいま戻ったっすよー。」


 「おかえりセレーナ。収穫は?」


 「ターゲットはもう街を出てるみたいっすね。勇者のパーティーを含めた5人で移動中っす。」


 「ご苦労。これ以上奴に力をつけさせるわけにはいかない。セレーナ、頼んだわよ。」


 「おまかせくださいっすー。」


 ーーーとある草原ーーー


 「そのマーリンさんってどんな方なんですか?」


 「マーリンは人間じゃないんだ。」


 「人間じゃない?」


 「マーリンは、俺がダンジョンで偶然見つけた魔物なんだよ。」


 「魔物!?」


 「だが理性がある。なによりあいつには善良な心があるんだ。」


 (魔物だから悪いってわけでもないのか…)


 「もうすぐ目的地だ。」


 すると奥に森が見えてきた。


 「マーリンはあの森に住んでる。」


 一行が森に入ろうとしたその時だった。
 前方に一人のドラゴニュートが立ち塞がる。


 「アーサーさん、あれ!」


 「クソ、またドラゴニュートのバケモンか。」
 

 すると彼女が可愛こぶった口調で話す。


 「そんな酷いこと言ったらえんえんっすよ?うちにはセレーナっていう名前があるんすから。」


 「そんなことはどうでもいい。」


 「まあまあそう言わずに、ひとつ提案を持ってきたっす。」


 「提案?」


 「ご主人様は君に用があるんすよ、アーサー・ペンドラゴン。」


 「そのご主人様ってのは誰だ。」


 「それは言えないっすね~。とにかく、大人しく殺されてくれれば他の4人には手を出さないと誓うっす。」


 「ふっ、自分から命を差し出すバカがどこにいるんだよ。」


 「そうっすか、それは残念っすね~。」


 次の瞬間、凄まじい速さの斬撃が飛ぶ。


 「じゃあ死んでくださいっす。」


 それはまさに稲妻。電光石火のごとくアーサーの額に傷をつける。


 (速い!あと一歩遅れていたら確実に死んでいた…!)


 「あれ、避けれるすか。通りであの2人が手こずるわけっすねー。」


 すると後ろにいたカイト達も武器を抜く。


 「アーサーさん、俺らも戦います!」


 「気をつけろ、相手は相当の猛者だ。」


 「猛者だなんて嬉しいっすね、でもまだまだこんなもんじゃないっすよ!」
 

 彼女は身の丈ほどあるハサミのような剣を片手で振ると、鋭い斬撃を何回も放つ。


 「俺に任せろ!」


 ジョーがそれを盾で防ぐ。だが斬撃の威力が凄まじく、一発受け止めるごとに後ろに下がっていく。


 「どうしたっすか?まだまだこれからっすよ!」


 すると斬撃を放つスピードがさらに増した。


 「ぐう…!そろそろ限界だっ!」


 「クリス、俺に防御魔法と俊敏の魔法をかけてくれ。」


 「わかった!」


 「アーサーさん、合図したら左右から奴のところへ距離を詰めましょう。」


 「ああ。」


 「どうしたっすかー!もうくたばっちゃうんすか!?」


 「今だ!」


 同時に2人が盾の左右から飛び出す。


 「やっと出てきたっすね。」


 魔法がかかったカイトはものすごいスピードで距離を詰める。だが冷静にセレーナはアーサーを狙う。


 「まずい!」


 凄まじい斬撃の嵐がアーサーを襲う。
 避けることの出来ないアーサーはなんとか剣で斬撃を弾いてしのぐ。
 そしてとうとうカイトが彼女の元まで着く。


 「くらえ!」
 

 カイトは剣を大きく振り下ろす。


 「甘いっすねー。」


 セレーナは背中からもう一本の剣を取り出すと、軽々しくカイトの剣を弾き返す。
 その衝撃でカイトは体制を崩す。
 

 「クリス!」


 カイトがそう言うと、クリスが奥から魔法を放つ。


 「ドラゴン・イーラ!」


 烈火の如く熱く燃える炎の球がセレーナに目掛けて飛んでくる。


 「これは避けれないっすね。」


 すると、彼女はたった1本の剣で神級魔法のドラゴン・イーラを受け止める。
 激しい爆風の中、アーサーが黒煙を突っ切ってセレーナに斬り掛かる。
 金属が激しく鳴る音がする。アーサーは物凄い剣さばきで連撃を放つ。


 「さすがは勇者の血を引く者。凄い剣術っすね。」


 だが彼女は余裕の表情で全て剣で受け止めていく。


 「でももうそろ飽きたっす。しつこい男は嫌われるっすよ。」


 そして彼女は受け止めると同時にカウンターを放った。
 横から無防備なところに飛んでくる一撃。それは避けられるものではなかった。


 (まずい!)


 その時だった。


 「アーエルフィックス。」


 突如剣だけがその場で動かなくなった。


 「あれ、剣が動かなくなっちゃったすね。」


 森から現れたそれは、マントで身を隠した異次元の魔力を放つ存在だった。


 「あれは…!」


 「来たか…マーリン!」


 「爆音がしたから来てみれば…一体なんの騒ぎだ?」


 その魔力はゴッドオブデケムをも凌駕する。凄まじい魔力だった。


 「あちゃー、来ちゃったっすか。」


 「ドラゴニュートの娘、貴様の正体を教えてもらおうか。」


 「さすがにそれは無理すね。あーでも好きな食べ物なら教えてあげてもいいっすよ?」


 「ふざける余裕があるのか?」


 「正直ないっすねー…だから逃げるっす!」


 すると彼女は背中に生えた赤い大きな翼で空へと羽ばたく。


 「また近いうちに会おうっすー!」


 そう言って彼女は飛び去っていってしまった。


 「いいのか?逃がして。」


 「ああ。」


 (むしろ逃がさなければこの場で全員死んでいた。)


 「アーサーさん、無事ですか!」


 そこへ4人が駆けつける。


 「ああ、無事だ。それと紹介しよう。こいつが探してる奴らの一人、マーリンだ。」


 「よろしく勇者。」


 「よろしくお願いします、マーリンさん。」


 「長旅で疲れただろう。家まで案内しよう。」


 そうして一行は森へと入っていった。


 


 


 


 






 
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