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予言の魔王編
第30話 欲望の赴くままに
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後悔はしていない。俺が冒険者になったのも、クランを作って伝説の魔物を倒してきたのも全てシアを守るため。俺が強くなるために…。
ーーー3日後ーーー
ようやくベッドで横になっていたシアが目覚めた。
「シア?聞こえるかい?」
「お兄ちゃん…?」
久しぶりに声を聞いたアインは目から涙を流した。
「よかった…!本当によかった。」
「でも…どうして?」
「魔王様が生き返らせてくださった。」
隣にいるレオの事を見ると、彼女は震え上がる。
そのおぞましい眼差しは彼女を一瞬にして恐怖で固まらせた。
だが勇気を振り絞って言葉を発しようとする。
「ま、魔王…様。ありがとうございます!生き返らせてくれて…。」
「感謝すべき相手はお前の兄だ。貴様を生き返らせるために自身の魂を売り渡したんだ。」
「どういうこと?」
するとアインの表情が暗くなる。
「魔王様、2人だけで話してもいいでしょうか?」
「ふっ、好きにしろ。」
そうして部屋を出ると、しばらくしてからシアの怒鳴り声が響く。
だがそれは怒っているものではなく、悲しみに溢れていた。
声が聞こえなくなると、アインが寂しげな表情で部屋から出てきた。
「彼女はなんと?」
「そんなことしてまで生き返りたくなかった…と。今はそっとしておくべきだと思います。」
アインの決断に正解はないが、奴は苦しい思いをしてまで妹を生き返らせることを選んだ。少なくとも俺は尊敬する。形はどうであれ、妹に対する愛は本物だ。
奴の言う通り今はそっとしておくか。
「アイン、貴様は我が親衛隊に入れ。」
「ユア・フィアット。」
さてと、片付いたことだしウングィスを正式に支配下に置くとしよう。
俺はその後ラドルフと話し合い(相手は「はい」しか言わなかった)をしてウングィス王国の王都ギニスとその他の領地を我が支配下にした。
そして倉庫にたくさん武器があると言われて見に行くと、そこにはあの忌々しいものがあった。
「おい、なぜこれがここにある…。」
「ああこれですか、これはデストロイヤーと言いまして。」
「そんなことは知っている!なぜここにあるのかと聞いているのだ!」
「ひっ、こ、これはウングィス王国が共和国に頼まれて制作したものでして…。」
そうか…お前らが作ったのか。
煮えたぎる怒りが喉から溢れそうになる。これを作った元凶を、エルフたちを殺した兵器を作ったウングィスの奴らを殺したいという衝動が止まらない。
だが彼らを殺してもなんの意味もない。使ったのは共和国だ。悪いのは作った者ではなく使った者なのだ。
レオは込み上げてくる殺意をぐっと押しこらえると、ようやく落ち着きを取り戻した。
「これは1つ残らず破壊しておけ。我々には必要ない。」
「しょ、承知致しました。」
レオはそう言って倉庫を見ずに帰ってしまった。
ーーー帝都トリニタスーーー
「クソが!」
怒り狂ったジナが机の上の物を投げ飛ばした。
「なぜだなぜだ!なぜギニスは落ちなかった!ウングィスにはそれほど脅威となるものはないはずだ!」
ジナは深呼吸して、今の状況をふりかえった。
「ウングィス王国にはウルブズに対抗できる戦力はないはずだ。つまり第三者が関わっている…だが誰だ。あいつに対抗できるのはゴッドオブデケムかいくつかのクランだけだが、ゴッドオブデケムはありえない。他の冒険者がウングィスに手を貸したか。いや待て、もうひとつあるじゃないか!そうか…そういうことだったのか。ハッハッハッ!まさか魔王と手を組んだとはな!貴様にそれほどまでの勇気があったとはなラドルフ!魔王が関わっているのなら話は早い…。」
そしてバートンが部屋をノックして入ってきた。
「バートン、至急連合国に伝えてこい。少しばかり手を貸してほしいと。」
ーーー3日後ーーー
ようやくベッドで横になっていたシアが目覚めた。
「シア?聞こえるかい?」
「お兄ちゃん…?」
久しぶりに声を聞いたアインは目から涙を流した。
「よかった…!本当によかった。」
「でも…どうして?」
「魔王様が生き返らせてくださった。」
隣にいるレオの事を見ると、彼女は震え上がる。
そのおぞましい眼差しは彼女を一瞬にして恐怖で固まらせた。
だが勇気を振り絞って言葉を発しようとする。
「ま、魔王…様。ありがとうございます!生き返らせてくれて…。」
「感謝すべき相手はお前の兄だ。貴様を生き返らせるために自身の魂を売り渡したんだ。」
「どういうこと?」
するとアインの表情が暗くなる。
「魔王様、2人だけで話してもいいでしょうか?」
「ふっ、好きにしろ。」
そうして部屋を出ると、しばらくしてからシアの怒鳴り声が響く。
だがそれは怒っているものではなく、悲しみに溢れていた。
声が聞こえなくなると、アインが寂しげな表情で部屋から出てきた。
「彼女はなんと?」
「そんなことしてまで生き返りたくなかった…と。今はそっとしておくべきだと思います。」
アインの決断に正解はないが、奴は苦しい思いをしてまで妹を生き返らせることを選んだ。少なくとも俺は尊敬する。形はどうであれ、妹に対する愛は本物だ。
奴の言う通り今はそっとしておくか。
「アイン、貴様は我が親衛隊に入れ。」
「ユア・フィアット。」
さてと、片付いたことだしウングィスを正式に支配下に置くとしよう。
俺はその後ラドルフと話し合い(相手は「はい」しか言わなかった)をしてウングィス王国の王都ギニスとその他の領地を我が支配下にした。
そして倉庫にたくさん武器があると言われて見に行くと、そこにはあの忌々しいものがあった。
「おい、なぜこれがここにある…。」
「ああこれですか、これはデストロイヤーと言いまして。」
「そんなことは知っている!なぜここにあるのかと聞いているのだ!」
「ひっ、こ、これはウングィス王国が共和国に頼まれて制作したものでして…。」
そうか…お前らが作ったのか。
煮えたぎる怒りが喉から溢れそうになる。これを作った元凶を、エルフたちを殺した兵器を作ったウングィスの奴らを殺したいという衝動が止まらない。
だが彼らを殺してもなんの意味もない。使ったのは共和国だ。悪いのは作った者ではなく使った者なのだ。
レオは込み上げてくる殺意をぐっと押しこらえると、ようやく落ち着きを取り戻した。
「これは1つ残らず破壊しておけ。我々には必要ない。」
「しょ、承知致しました。」
レオはそう言って倉庫を見ずに帰ってしまった。
ーーー帝都トリニタスーーー
「クソが!」
怒り狂ったジナが机の上の物を投げ飛ばした。
「なぜだなぜだ!なぜギニスは落ちなかった!ウングィスにはそれほど脅威となるものはないはずだ!」
ジナは深呼吸して、今の状況をふりかえった。
「ウングィス王国にはウルブズに対抗できる戦力はないはずだ。つまり第三者が関わっている…だが誰だ。あいつに対抗できるのはゴッドオブデケムかいくつかのクランだけだが、ゴッドオブデケムはありえない。他の冒険者がウングィスに手を貸したか。いや待て、もうひとつあるじゃないか!そうか…そういうことだったのか。ハッハッハッ!まさか魔王と手を組んだとはな!貴様にそれほどまでの勇気があったとはなラドルフ!魔王が関わっているのなら話は早い…。」
そしてバートンが部屋をノックして入ってきた。
「バートン、至急連合国に伝えてこい。少しばかり手を貸してほしいと。」
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