魔王様は世界を支配したい!〜異世界で魔王になったので本気で魔王やる〜

ばにく

文字の大きさ
上 下
30 / 44
予言の魔王編

第30話 欲望の赴くままに

しおりを挟む
 後悔はしていない。俺が冒険者になったのも、クランを作って伝説の魔物を倒してきたのも全てシアを守るため。俺が強くなるために…。


 ーーー3日後ーーー


 ようやくベッドで横になっていたシアが目覚めた。


 「シア?聞こえるかい?」


 「お兄ちゃん…?」


 久しぶりに声を聞いたアインは目から涙を流した。


 「よかった…!本当によかった。」


 「でも…どうして?」


 「魔王様が生き返らせてくださった。」


 隣にいるレオの事を見ると、彼女は震え上がる。
 そのおぞましい眼差しは彼女を一瞬にして恐怖で固まらせた。
 だが勇気を振り絞って言葉を発しようとする。


 「ま、魔王…様。ありがとうございます!生き返らせてくれて…。」


 「感謝すべき相手はお前の兄だ。貴様を生き返らせるために自身の魂を売り渡したんだ。」


 「どういうこと?」


 するとアインの表情が暗くなる。


 「魔王様、2人だけで話してもいいでしょうか?」


 「ふっ、好きにしろ。」


 そうして部屋を出ると、しばらくしてからシアの怒鳴り声が響く。
 だがそれは怒っているものではなく、悲しみに溢れていた。
 声が聞こえなくなると、アインが寂しげな表情で部屋から出てきた。


 「彼女はなんと?」


 「そんなことしてまで生き返りたくなかった…と。今はそっとしておくべきだと思います。」


 アインの決断に正解はないが、奴は苦しい思いをしてまで妹を生き返らせることを選んだ。少なくとも俺は尊敬する。形はどうであれ、妹に対する愛は本物だ。
奴の言う通り今はそっとしておくか。


 「アイン、貴様は我が親衛隊に入れ。」


 「ユア・フィアット仰せのままに。」


 さてと、片付いたことだしウングィスを正式に支配下に置くとしよう。
 俺はその後ラドルフと話し合い(相手は「はい」しか言わなかった)をしてウングィス王国の王都ギニスとその他の領地を我が支配下にした。
 そして倉庫にたくさん武器があると言われて見に行くと、そこにはあの忌々しいものがあった。


 「おい、なぜこれがここにある…。」


 「ああこれですか、これはデストロイヤーと言いまして。」


 「そんなことは知っている!なぜここにあるのかと聞いているのだ!」


 「ひっ、こ、これはウングィス王国が共和国に頼まれて制作したものでして…。」


 そうか…お前らが作ったのか。
 煮えたぎる怒りが喉から溢れそうになる。これを作った元凶を、エルフたちを殺した兵器を作ったウングィスの奴らを殺したいという衝動が止まらない。
 だが彼らを殺してもなんの意味もない。使ったのは共和国だ。悪いのは作った者ではなく使った者なのだ。
 レオは込み上げてくる殺意をぐっと押しこらえると、ようやく落ち着きを取り戻した。


 「これは1つ残らず破壊しておけ。我々には必要ない。」


 「しょ、承知致しました。」
 

 レオはそう言って倉庫を見ずに帰ってしまった。


 ーーー帝都トリニタスーーー


 「クソが!」


 怒り狂ったジナが机の上の物を投げ飛ばした。


 「なぜだなぜだ!なぜギニスは落ちなかった!ウングィスにはそれほど脅威となるものはないはずだ!」


 ジナは深呼吸して、今の状況をふりかえった。


 「ウングィス王国にはウルブズに対抗できる戦力はないはずだ。つまり第三者が関わっている…だが誰だ。あいつに対抗できるのはゴッドオブデケムかいくつかのクランだけだが、ゴッドオブデケムはありえない。他の冒険者がウングィスに手を貸したか。いや待て、もうひとつあるじゃないか!そうか…そういうことだったのか。ハッハッハッ!まさか魔王と手を組んだとはな!貴様にそれほどまでの勇気があったとはなラドルフ!魔王が関わっているのなら話は早い…。」


 そしてバートンが部屋をノックして入ってきた。


 「バートン、至急連合国に伝えてこい。少しばかり手を貸してほしいと。」



 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

転移したら女神さまと暮らすことになった件

月城 夕実
ファンタジー
僕は立河颯太15歳だ。学校の帰り道、突然異世界召喚される。女神に心配されしばらく一緒に暮らすことになった。冒険者ギルドで少女と知り合い、一緒のパーティを組むことになる。彼女は鑑定スキル持ちで僕が異世界転移者だとバレてしまって・・・。

回帰した最強の敗者──世界の理すら変える力で、今度は神をも跪かせて支配から自由を取り戻す──

よいち
ファンタジー
フィリアスは、神々に支配された世界で戦い続けていた。生まれながらに与えられた力では限界を感じながらも、命じられた通りに戦場を駆け抜けてきた。その心には常に疑念があった。なぜ戦い続けなければならないのか、なぜ自分は神々の意志に従い続けるのか。 神の使徒との戦いで致命傷を負い、死を迎える寸前、その前に現れる一人の存在がフィリアスの運命を変える。フィリアスは本来の力を覚醒させ、過去に戻るチャンスを与えられる。再び訪れた過去の世界で、フィリアスはもう一度戦いの舞台に立つ。 今度こそフィリアスは自分の力を完全に使いこなし、神々の支配に抗う覚悟を決める。フィリアスが抱える力の本質とは?そして、フィリアスの行動が世界をどう変えていくのか。

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売です!】 早ければ、電子書籍版は2/18から販売開始、紙書籍は2/19に店頭に並ぶことと思います。 皆様どうぞよろしくお願いいたします。 【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

処理中です...