魔王様は世界を支配したい!〜異世界で魔王になったので本気で魔王やる〜

ばにく

文字の大きさ
上 下
20 / 44
予言の魔王編

第20話 偉大なる存在

しおりを挟む
朝、偽ゲーベルドンの姿はなかった。

生贄を渡す役割の本物のゲーベルドンが死に、その事をさっそく、仲間である紫の海賊に伝えにでも行ったのか。

看守らの姿に、特別いつもとは違った行動は見られない。僕を見る目も、いつも通りだ。

僕は、いつも通り、カインハッタ牢獄内の回廊を歩き、異変がないかどうかを、見回った。

囚人部屋001の二重人格者であるアタフ、リョウバを小窓から覗き、前と変わらずおかしな言葉を使うアタフがいる。

こういう状態になれば、もう以前の様に何かの情報を訊き出す事はできないだろう、そう思った。

そして、僕は何も気にせず、再び歩き出したんだ。

次に囚人部屋の小窓を覗いたのが、0053だった。

貴族階級で罪名不明で、常に瞑想していた中年男。でも、その瞑想しないるはずの男の目が開き、こちらを見ている。

僕は、彼の目に違和感を感じ、声をかけてみた。

そうしたら、もうじきに、私はこの場所を去る事になるだろう、そう言ったんだ。脱走宣言、そんなものが許されると思っているのか、と。

悪しき魔石をよく破壊したな、そう言っていた。

この男の目は、罪人の様な目ではなく、とても澄んだ目をしている。


彼は、僕に一言告げたら、再び瞑想に入り、口を開く事はなかった。

何を考えているのか、よくはわからなかったけど、目を離すべきではないだろう。何故、魔物化したゲーベルドンの心臓部の宝石破壊を知っているのかも、気になる。



でも、この男の言葉を訊いた後、僕は急いでアタフの元へ向かったんだ。



額に何か描かれ、消した様な跡があったアタフ。それ以降、意味のわからない事ばかり言う様になった。



アタフがまた何かを語る。



もう一度、語り出す言葉をよく訊く。




お母様から昔、各地方に出向いた時に、持ち帰り、僕に与えた本。





その1冊に、忌まわしい島として記されていた、ケツァル島の特殊言語だ。





ただ一度だけ、お母様が本に記されていた文章を一部、読んでくれた事があって、そこから幼少時、僕なりに解読した事があった。



だけど、遥か遠くの記憶だ、はっきりとその言葉の意味が思い出せなかったんだ。



次に、僕が思い出したのは、囚人部屋に記されていたあの象形文字だった。



ベリオストロフ・グリーンディの部屋。




あれも、ケツァル島の特殊言語だ。





間違いなく、このカインハッタ牢獄内にケツァル島の者がいる。






誰に何かを伝えようとしている。






誰にだ。






各囚人部屋から出て、他の囚人と交流する機会はない。だとしたら、看守か、囚人アタフの仲間か。




アタフは盗賊団ガリンシャにいた、その仲間か家族か。でも、ここに来て、アタフは誰一人面会に来た者はいないはずだ。





囚人部屋で唯一、出入りができる囚人は、ベリオストロフ・グリーンディ。






彼にアタフのケツァル島の特殊言語を伝えるには、あまりにも回りくどい。







看守に伝えようとしているのか。







まさか、









僕が、ベリオストロフ・グリーンディのいない時に、彼の囚人部屋に入って、壁の象形文字を見入っていたその姿を見た者が、










僕を試そうとしているのか。







ジスマリアの25日
     カインハッタ牢獄内にて
_________________________

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

転生幼女の異世界冒険記〜自重?なにそれおいしいの?〜

MINAMI
ファンタジー
神の喧嘩に巻き込まれて死んでしまった お詫びということで沢山の チートをつけてもらってチートの塊になってしまう。 自重を知らない幼女は持ち前のハイスペックさで二度目の人生を謳歌する。

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売です!】 早ければ、電子書籍版は2/18から販売開始、紙書籍は2/19に店頭に並ぶことと思います。 皆様どうぞよろしくお願いいたします。 【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

処理中です...