魔王様は世界を支配したい!〜異世界で魔王になったので本気で魔王やる〜

ばにく

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予言の魔王編

第19話 慈悲

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 狂ったふたりの笑いに呆れたリリスが口を開く。


 「まったく、あなた達のその笑い声を聞いてると頭が痛くなってくるわ。そろそろ魔王様が来られるんだから準備しなさい?」


 「りょーかい!リリス姉さん。」


 ポコは奴に近づいて拘束した。


 「ちょっと痛くなるけど、まあしょうがないよね!」


 ポコは逃げられないように奴の両足を真逆の方向に折り曲げた。奴は想像を絶する痛みで叫びもがく。


 「そんなに騒がないでよ。リノのほうが君よりも痛い思いしたんだからさ。」


 そこへ邪悪な気配がひとつ近づいてきた。


 「魔王様!とりあえずネメシスの掃討とターゲットの拘束に成功しました!」


 「よくやったケーレス。」


 レオを見た途端、狂っていた奴はそのヤバさに咄嗟に我に返る。レオから放たれるオーラは闇そのもの。おぞましい恐怖の権化だった。


 「ああ、悪魔!」


 「お前如きの腰抜けが俺のリノを殺しやがって。お前が想像したことのない地獄を見せてやる。」


 そう言うと街中に奴の悲鳴が鳴り響いた。数分後、レオ達が拠点から出てくる。


 「ローズ、もう魔法を解いていいぞ。」


 するとローズはパチンと指を鳴らした。
 これは神級魔法のサイレント。ドーム状の空間を召喚し、その空間から外へは一切の音が盛れることがない。


 「ケーレス、お前らの仕事はここまでだ。あとはゆっくり休め。」
 

 「了解致しました。」


 そうしてケーレスは各自離脱した。


 「我が親衛隊よ、行動を開始せよ。」


 「「御意!」」


 ーーーアクアイーリス ギルドーーー


 「ほう、ここがギルドか。」


 その言葉を聞いた者は、全員その場で動けなくなった。


 (なんだ…!この威圧感!いや、これは恐怖か…!?)


 レオは受付の女に話しかける。


 「この街のSランク冒険者を全て集めろ。今すぐだ。」


 彼女は酷く脅えながらも了承した。
 しばらくして、数十人のSランク冒険者が街の広場に集められた。いきなりのことで困惑する中、1人の男が喋った。


 「これはなんかのイベントなのかよ?クエストやりてぇからさっさと終わらせてくれよ。」


 その時、広場の奥からレオが歩いてくる。


 「すぐ終わるかどうかは貴様ら次第だ。」


 その姿を見た奴らが一斉に怯える。


 「ま、魔王!?」


 「どうしてここに…!」
 

 奴らの大半が怯えて腰を抜かしたが、中には何人か骨のある奴らもいた。


 「ちっ、何ビビってんだよ!立て!」


 奴はそう言って武器を抜き、レオに攻撃する。


 「魔王だかなんだか知らねえが、Sランク冒険者の力を見せてやれ!」


 「甘いな…」


 レオは不気味な笑みを浮かべた。


 (なんだこれ?前に進めねえ。あ…?)


 奴が下を見ると、そこには血だらけの切断された両足が転がっていた。奴はそれを見て苦痛の叫びをあげる。
 その攻撃は誰にも見えなかった。
 奴らは一斉に攻撃を仕掛ける。


 「テネブラエ・プルヴィス。」


 襲いかかってきた奴らは瞬時に塵と化していった。
 奴らは死を受けいれた。こんなの誰も勝てるはずがない理不尽だと。そして、奴は死そのものなのだと理解した。


 「貴様らが生き残る道はただ1つ。この街の住民を皆殺しにしろ。そうすれば我が駒として利用してやろう。これは貴様らへの最大の慈悲だぞ?」


 どうすることも出来ない奴らはしぶしぶ受け入れるしかなかった。だが数人は、そんな非道な行為をするよりも自害を選んだ。賢い選択なのかもしれない。


 「さあ、駒としての道を選んだ貴様ら外道共よ。仕事にかかれ。」


 天気はどんどん曇っていき、やがて雨が降り始めた。


 「冒険者さん、さっき広場のほうが騒がしかったけどなにかあったのかい?」


 お婆さんの返答に男は何も答えずに武器を振る。婆さんは真っ二つに切られ、その場で死んだ。


 「母さん!何してんだお前!」


 家から慌てて飛び出してきた息子も無慈悲に切り殺された。次々と冒険者が住民を襲っていき、街は大混乱に陥った。
 騒ぎを察知した騎士たちが急いで城から降りてきた。


 「貴様ら何してる!?」


 「今すぐ投降しろ!」


 騎士に囲まれた冒険者が泣きながら叫ぶ。


 「黙れえ!お前らが投降しろ!あれは…あれには誰も勝てねえんだよ!…許してくれ。」


 そう言って男は騎士に魔法を放つ。魔法を避けれなかった騎士は次々と燃え尽きて死んでいく。


 「熱い!誰かだずけてぐれ!!!」


 Sランクという肩書きは本物のようだった。そこらの騎士では相手にすらならないようだ。
 その光景をレオは空から見下ろして楽しんでいた。
 その時、トッツォから連絡が入った。


 「魔王様、100人規模の軍勢が街へ接近しています。恐らくゴッドオブデケムかと。」


 ゴッドオブデケム!
 レオはその言葉を聞いて興奮した。


 「わかった。それは俺が相手する。」


 「ジーン様!街から炎が!」


 大勢の馬車に乗った兵士達の向こうには、地獄のように激しく燃え上がるアクアイーリスの姿があった。


 「準備が出来てる者たちは直ちに街へ向かえ!」


 「ハッ!」


 その時、凄まじい爆音と共に馬が鳴く。


 「何事だ!?」


 「前方で攻撃を受けたようです!」


 ジーンが馬車から降りると、前方でものすごい煙が上がっていた。


 「我に続け!」


 奴らが煙をかき分けて前に進むと、そこにはその場で倒れている何人もの兵士と、その兵士の首を持ち上げてこちらを凝視する邪悪な存在が。


 「魔王レオ…!」


 「貴様、なかなか強そうな目をしてるな。カリウスよりも楽しめそうだ。」


 「お前らは今すぐ街へ行け。」
 

 「しかし、ジーン様は!」


 「黙れ!我はいいからさっさと行くんだ!」


 「分かりました…」
 

 そうして他の奴らは馬を街へと走らせた。


 「俺は魔王レオ。貴様の名を聞こう。」


 「我はジーン・シンド。ゴッドオブデケムの1人、ポセイドン様の恩恵者だ。」


 一体どんな攻撃をしてくるか分からない。用心しよう。


 「パレント・ポセイドン、マジック・オーグメント!」


 オーグメント。ブリザードの腕力強化と同じやつだな。


 「さあ来い神の子よ!貴様をこの手で我が父の元へ送ってやろう!」


 悪魔と神の子、2人が対峙するその場所に雷鳴が轟いた。




 
 
 
 
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