魔王様は世界を支配したい!〜異世界で魔王になったので本気で魔王やる〜

ばにく

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予言の魔王編

第16話 黒豹

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 ーーーメトゥス帝国 帝都トリニタスーーー


 薄暗い部屋に1人、皇帝がワインを嗜んでいた。そこへひとりの男が入ってくる。


 「失礼します。お呼びでしょうか?」


 「まあ座れ。」


 皇帝の言葉は氷のように冷たかった。皇帝がひとつ質問をする。


 「バートンよ、我々人類は今ピンチだと思うか?」


 少し戸惑いながらもバートンは答える。


 「いえ、貴方様がいればどんなピンチもチャンスに変えると信じております。」


 それを聞くと狂ったように笑う。


 「ふはははは!そうだ、今こそ絶好のチャンスなんだよ。」


 豪快に椅子から立ち上がると、バートンに顔を近づけて話す。


 「なぜ私が同盟を拒んだかわかるか?チャンスを作ったんだよ。我ら帝国が更なる高みへ行けるように…そしていつしか魔王軍でさえ圧倒できる力を手に入れるためにな…。」


 「では、既に策はあると…?」


 「当たり前じゃないか。さあ、早速第1段階に移ろう。」


 そういうと奴はニヤリと笑みを浮かべた。


 ーーーホープシティから3kmの地点ーーー


 「ちょっとたんまだって!」


 「黙れええ!!」


 凄まじい力とスピードでジョーカーに切りかかる。奴の攻撃を全てギリギリでかわしきる。だがさすがはSランク冒険者。攻撃する隙が一切ない。次から次へと攻撃が飛んでくる。
 その時、奥から数人の冒険者が走ってきた。


 「大丈夫か!俺らも戦う!」


 「おいおい冗談きついぜ…!」


 (さすがにあいつらの相手をするのはちとキツイ。なら残すはひとつ…)


 するとジョーカーは武器をしまって回れ右した。


 「逃げまぁす!!」


 奴はジェット機よりも早いスピードでその場から逃げた。冒険者たちは呆気にとられた表情で呆然と立ち尽くしていた。


 「逃げたのはいいけど魔王様になんて報告しようか…」


 ーーーアサイラム領 ダビネスーーー


 「誰一人救えなかった!?」


 報告を終えるとリノは呆れと驚きが混ざっていた。


 「まだ魔王様には言ってないのね?」


 そう言うと彼はこくりと頷いた。
 ため息をつくリノ。彼女がこんな反応なのだから、魔王様がこれを聞いたら何をされるか分からない。


 「とりあえず魔王様には本当のことを言いなさい。」


 「そしたら俺の命が危ないぜ!?」


 「そんなこと言ったってあなたが悪いでしょ、親衛隊員の名が廃るぞ…。」


 するとジョーカーは泣いてリノにしがみつく。


 「頼むよー!なんとか誤魔化せねえかなぁ!?」


 彼女は無理と即答した。


 「そんなぁ…じゃあ、一緒にあいつを倒しに行ってくれねぇか!」


 「まあ、それならいいよ。そうすれば上手く説明できるだろうし。」


 彼女が仕方なく承諾すると、ジョーカーは子供のようにはしゃいで喜んだ。


 「それじゃあ早速出発だ!」


 そう言って彼はリノの手を掴んで爆速で最後の戦闘場所へと向かっていった。


 ーーー最後の戦闘場所ーーー


 「それで、相手はどんな奴だったの?」


 「男だったな。黒髪でピカッと光ってる剣を振り回しててよ。そんで動きがめっちゃ速いんだよ!まるで豹だな。」


 するとリノは何かを思い出したようだ。


 「そういえば、冒険者に黒豹の名で有名な冒険者がいたな…たしかネメシスってクランのメンバーだった。」


 「ネメシス?」


 「そう、ギルドに加入している冒険者はクランっていう派閥に加入することができるの。その中でもネメシスは共和国ギルドのトップ3に入る実力を持ってるクランなの。」


 「ってことは相当強いのか。逃げて正解だったな…」


 ふたりが話していると前方に人集りが見えてきた。
 その中には目的の黒豹もいた。


 「よっしゃ!先手必勝!」


 ジョーカーが撃とうとしたその時だった。


 「獄炎!」


 突如紫色の炎がこちらに向かってくる。2人は間一髪それを避ける。


 「あっちち!なんだ!?」


 炎の奥には金髪の男が立っていた。


 「ダメだろ?ルイン。よそ見なんかしてたらさあ。」


 奴は黒豹にそう言うと、臨戦態勢に入る。


 「すみません、ルーシアさん。」


 そう言って黒豹も臨戦態勢になる。


 「クソ!また失敗しちまった!」


 「しかも相手はネメシス副団長、煉獄のルーシア。かなりまずい状況になったかも。」


 「うちのメンバーを狙う不届き者には死んでもらう。」


 次の刹那、再び奴が攻撃する。


 「獄炎!」


 奴が繰り出す魔法は炎系魔法の最高ランク。黒魔法の獄炎だ。その炎はアダマンタイトすら一瞬で溶かしてしまうほどの威力。まともに喰らってしまったらそこで終わりだ。


 「くっ!」


 またもや間一髪避けるが、2人は炎によって分断されてしまう。


 「ルーシアさん、俺はあのマスク野郎をやります。」


 「どーぞお好きに。」


 ジョーカーの元へ奴が歩いてくる。それはまさしく獲物に忍び寄る獣。ゆっくりと剣を抜くと、凄まじい踏み込みを見せる。


 「くらえ、魔王の手下め!」


 次の瞬間ものすごいスピードで距離を詰めると、そのまま剣を振り下ろす。なんとか攻撃を銃で防ぐが、その力は強大だった。


 「なんて力だよ…!ドラゴンかてめぇは!?」


 ジョーカーは奴の腹を蹴って距離をとると同時に、2発の弾丸を発射した。だが奴は2つとも剣で弾いたのだった。しかも、弾いた弾丸はジョーカーに向かって一直線で飛んでいく。次の瞬間、彼の腰に凄まじい痛みが走る。


 「ぐっ…!」


 (まずい、態勢が崩れた!)

 
 ジョーカーが奴のほうを向いた頃には、既に奴は目の前まで迫っていた。


 「近寄んじゃねぇぞ!」


 何発もの弾を至近距離で撃ちまくる。だが奴の勢いは殺せない。
 次の瞬間、斬撃音と共に血飛沫が辺りに飛び散る。ジョーカーは胸を深く切られたしまったのだった。
 だが奴が見せたのは凄まじい執念だった。


 「あと1発残ってんだよ…!」


 吐血しながらそう言うと、残りの1発に文字通り命をかけて撃つ。


 「なに!?」


 1発の銃声が鳴り響く。その弾丸は、確実に奴の脳天を撃ち抜いた。
 奴のその姿を見たジョーカーは安堵し、笑ってその場で倒れた。




 



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