魔王様は世界を支配したい!〜異世界で魔王になったので本気で魔王やる〜

ばにく

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予言の魔王編

第13話 真実

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 2人が睨み合う。その目はまさしく獣のようだ。
 次の刹那、2人が一斉に走り出す。


 「その美人な顔を傷つけたくないんだけどなっ!」


 アランのブロードソードとリリスのスピアが激しくぶつかる。その衝撃波は近くの草木を大きく揺らした。


 「美人の上に力まで強いなんて最高の女じゃねえか!」


 「そんなに褒めたって勝たしてあげないわよ。」


 奴はリリスのスピアを弾くと、後ろに下がって距離をとる。リリスは奴を追うように距離を詰める。


 「すばやさもピカイチなのかよ!」


 リリスは奴の目の前まで行くと、スピアを奴に振り下ろす。しかし次の瞬間、奴は腰から取りだした謎の玉を思い切り振ってから地面に投げつけた。すると煙が勢い良く吹き出し、辺り一面見えなくなる。必死で探すが、奴の姿は見えない。突如、後方から矢が飛んでくる。


 「弓!?」


 リリスは間一髪矢を防ぐ。だがそのわずかな隙で、奴が懐に入ってくる。


 「ダメでしょ?矢に浮気したら。」


 リリスは咄嗟に後ろにバク転して避ける。だが、ギリギリ奴の刃がリリスの太ももを切る。そのせいで、着地の時に少しよろけてしまう。リリスは舌打ちすると、足から出る血をペロリと舐めて笑みを浮かべた。


 「やっぱり神の子って魅力的だわ♡」


 「今さら手のひら返しかよ?」


 「違うわよ。あなたのおかげで強者ってのを思い出せたのよ。」


 彼女はそう言うと、スピアを捨てて凄まじい咆哮をあげる。それはまさしくライオンのような迫力だった。
 咆哮が終わると彼女の尻尾の先は鋭利に尖り、角はさらに大きくなり、爪は鋭く伸び、目は黒く塗りつぶされたようになった。
 魔獣化プレーナ・ポテスターテ。それは魔物特有のスキルであり、自身の魔力を大幅に活性化させて全ての身体能力を向上させるスキルだ。しかし時間制限があり、それを過ぎると体に急速に負荷がかかり、意識を失ってしまう。


 「魔獣化か。なら俺も…」


 そう言うと奴の周りが赤く光り始める。


 「パレント・プロメテウス、インテリジェンス。」


 次の瞬間、奴の目は赤くなり、奴の髪は炎のように燃え始めた。


 ーーーダビネス 魔王城ーーー


 「そろそろ制圧が終わる頃か。」


 俺は椅子から立ち上がり、街に行く準備を始める。


 「トッツォ、リノ、サバス。行くぞ。」


 「「御意。」」


 俺たちはホープシティへと向かい始める。


 ーーー同時刻 ホープシティーーー


 誰一人いないバーで1人のエルフの女が、静かに酒を飲んでいた。グラスをカランと傾ける。そのグラスに反射する彼女の顔には、ワクワクしてるような笑みがこぼれていた。


 「さあ、第2ラウンドを始めようか。」


 「ガルルルル…!」


 「理性を失った君も可愛いらしいね。」


 次の瞬間リリスが奴に飛びつく。だがそれは奴のブロードソードによって防がれる。奴がリリスを思い切り蹴飛ばすと、剣から弓に持ち変え、彼女目掛けて矢を放つ。
リリスはそれを見て横に避ける…が、避けると同時に矢の軌道がグンと曲がり、彼女に向けて一直線で向かってきたのだ。それを避けられるわけが無いリリスは、腕に矢が刺さってしまう。だが彼女は今や一種の興奮状態。たかが矢が1本腕に刺さったところでビクともしない。


 「まじか…」
 

 驚いた奴は少し動作が遅れた。もう一度弓を引こうとしてるところに、疾風の如くリリスが飛びついて引っ掻く。その爪で奴の弓を破壊し、なおかつ奴の胴体を切り裂くことができた。


 「痛ってぇ!まったく激しいな。」


 そして両者がまた睨み合った時だった。街全体に放送が流れたのだ。


 「こんにちはみなさん!思う存分死ぬことはできましたか!?みなさんに朗報です。我らが魔王レオ様が街にご到着されました!」


 南門の空から街に入ってくる邪悪な気配が…
 フライの魔法はいいな。簡単に空が飛べて楽しい。
 レオはゆっくりと浮遊しながら街の中心に着く。


 「皆の者よ、よく聞け。我は魔王レオ。魔王国家アサイラムの王である。この街ホープシティは今を持って我ら魔王軍の物となった。貴様らがこれ以上この街にいるのなら全勢力をもってして貴様らを殺す。」


 レオの言葉を聞いた1人のエルフは、バーから出てきてゆっくりとレオに近づいていく。彼女の背から生えた羽は虹のように輝いていた。
 ん?エルフか。


 「こんにちは、魔王レオ。いえ、こう言うべきかしら。」


 彼女はフフっと笑いながらこう言った。


 「藤堂レオ。」


 それを聞いたレオははっと驚く。


 「なぜ、その名を…」


 「私の名前はシュナ・フォン・ヴァンダルク。そしてこの世界に来る前の名前は、藤堂アケミ。私はあなたの母親よ。」


 それを聞いたレオは信じられないと目を見開いて絶句した。


 「今から話すのは真実よ。よく聞いて。」


 そんなレオを置いてくかのように彼女は話し出す。


 「今から約400年前、元の世界だと15年前に私は事故で死に、この世界に転生した。私はエルフ王国の王女として生まれた。最初は戸惑いながらも、この世界にも慣れてきた頃、エルフ王国は帝国に攻められた。私の父や母が血を流して死んでいく中、私は必死に城の地下に逃げた。そこには、異世界人を呼び出す召喚魔法の研究をしていた。そう、あなたが呼び出されたのはこの魔法よ。そして私は1人の男を呼び出した。それこそがあなたのお父さんであり、先代魔王ハデスなの。」


 ちょっと待て。父さんがハデス?母さんが呼び出した?頭が追いつかない。


 「彼に私はありのままの事実を話した。そしたら彼はなんなく受け入れて、私を助けることにしたの。彼は私を助けるために自ら魔王になることを望んだ。そして、争いを無くすために世界の全てを支配しようとしたの。そして今から約300年前、神話の時代と呼ばれていたあの日、戦争が始まった。魔王軍は優勢だった、けど勇者バルボロの加勢によって魔王軍はどんどん押され、最後には魔王城まで乗り込まれた。あの人は最期に私にこう言った。あの子を頼むと。そして彼は殺された。貴方は彼の恩恵を持っているの。魔王ハデスの恩恵を。」


 「父さんはこの世界に来てたのか…?そして死んだだって?」


 そんなの、信じられるわけないだろう…


 「いい?レオ。私はあなたに彼のようになってほしくない。だからもうこんな事やめて、お母さんと一緒に暮らしましょう?」


 シュナはレオの手を優しく掴む。だがレオはその手を振り払い、彼女にこう言う。


 「たとえ母さんが相手だとしても、俺はもう引き下がるつもりはない。それに、果たせなかった父さんの無念を俺が引き継ぐんだ。」


 それは断固とした表情で、真っ直ぐな気持ちだった。


 「それを聞いて安心したわ。」


 彼女はそう言うとふっと笑った。


 「それじゃ1つお願いを聞いてくれる?」


 そう言うと彼女はレオの耳元で囁く。
 話し終えると、シュナが話し出す。


 「皆の者よ、よく聞け。私の名はシュナ・フォン・ヴァンダルク。今は亡きエルフ王国第12代国王の娘であり、魔王ハデスの王妃である。そしてこの魔王レオの実の母である!」


 それをは映像カラスによって全世界へと放送され、それを聞いた人々は驚愕した。
 もちろんこれは共和国の連中の耳にすぐに入る。


 「あの逃げた女がシュナだったとは…おのれエルフ如きが。今すぐアランに奴の抹殺を命じろ!ついでに魔王の首もだ!」


 それからすぐにアランのところに共和国の兵士がやってくる。兵士から内容を聞くと、アランは度肝を抜く。


 「なんだって!?今すぐやる!すまん、お姉さん。この戦いはまた今度な!」


 そう言うと奴はそそくさとその場を後にした。取り残されたリリスは時間が来て、その場でぐったり倒れ込んでしまった。
 屋根から屋根へと飛び移っていくアラン。しばらくすると空に浮遊する2人の姿が見えた。
 優先目標はあのエルフの女か!
 屋根から高くジャンプすると、シュナに目掛けてナイフを投げようとする。だが、隣にいる魔王がこちらをギロリと睨んだ。それは凍てつくような殺気。後1cmでも動けばすぐにでも殺される。アランはそう直感で感じた。


 (俺が生きてきた中で今までにないほどの殺気…!これは俺が勝てる相手じゃねぇ!悪魔だ…!)


 体が震えて固まってしまったアランはそのまま下へと落下していった。


 「そして今ここに、リベルタス王国の建国を宣言し、同時に我らリベルタスは、魔王国家アサイラムと同盟を組むことをここに宣言する。」


 「同盟だと!?あのエルフのクソアマが…!今すぐ全冒険者とゴッドオブデケムを招集しろ!あと各国の外交官もだ!」


 「このリベルタス王国は、平和と自由を望む全ての人々を歓迎します。そして、その中には魔物も含まれることを許可します。」


 このリベルタス王国建国宣言は、良くも悪くも全世界を驚愕させる一大事件となり、新聞の記事は両面この件で埋め尽くされた。


 「会えて嬉しい。ありがとう、レオ。」


 母さんはそう言ってニコッと笑った。それは俺に懐かしさを感じさせた。まるで今まで人間の心を失ってたみたいな気持ちにさせた。いや、実際そうだったのかもしれない。


 「俺も生きててくれてありがとう、母さん!」


 俺たちはその場で強く抱き締めあった。
 今までの分を解き放つように。

 
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