魔王様は世界を支配したい!〜異世界で魔王になったので本気で魔王やる〜

ばにく

文字の大きさ
上 下
8 / 44
予言の魔王編

第8話 東洋の桜

しおりを挟む
 「この泥棒猫が!」


 村に着くなり凄まじい罵声が聞こえる。声のほうへ向かっていくと、村の広場へと着いた。そこには檻を囲むように人だかりができていた。
 檻の中に人がいるな。あれは…?
 檻の中にいたのは黒髪の女だった。
 あの顔立ち、日本人か?
 その時檻に石が投げられる。


 「この泥棒めが!」


 「お前は地獄に堕ちろ!」


 仕方ない。助けてやるとするか。


 「トッツォ、檻の鍵を開けろ。」


 「御意。」


 そう言うとトッツォは素早く人だかりをすり抜けていき、一瞬で檻の前まで行った。
 カキン!
 短剣で鍵を壊すと、檻の扉をゆっくりと開ける。


 「おいお前!何してんだこの野郎!」


 「誰だお前はよお!」


 罵声を浴びせてる奴らに俺が殺気を放つ。後ろから殺気を感じた奴らは振り返ることもできずに固まった。
俺は奴らの間を堂々と歩いていく。檻まで行くと、そこにはボロボロの女がいた。その表情はどこか諦めているように感じた。


 「女よ、我と共に来い。」


 俺は固まってる奴らを無視して彼女を連れダビネスへと帰る。


 ーーー魔王国家アサイラム領域 ダビネスーーー


 俺は彼女を連れ魔王城(仮)に入る。元はコロシアムだったが、広く頑丈ということで仮の魔王城として使うことにした。俺は彼女を椅子に座らせ話を聞くことにした。


 「名前は?なぜ捕まっていた?」


 「私の名はリノ、リノ・スズキです。捕まっていた理由は飯が無くて盗み食いをした。ただそれだけです。」


 その返事は愛想のない、感情のない話し方だった。
 この子は強い。そう直感で感じた。


 「飯が無いなら俺がやろう。家がないならここに住め。俺の配下となれ。」


 それを聞いた彼女はキョトンとした顔をした。驚いたのか、恐怖したのか、それとも喜んだのか。とにかく彼女の返事は、


 「このリノ・スズキ、助けていただいた御恩に報いるためにも喜んで貴方様に忠誠を誓います。」


 だった。
 とりあえず彼女の強さを知るためにトッツォと戦ってもらうことにした。彼女はどうやら刀の使い手らしい。侍みたいでかっこいいな…!


 「手加減は致しません。」


 「ああ。本気で来なさい。」


 トッツォが短剣を抜く。それに合わせてリノが刀を抜く。その姿はまさしく歴史の侍。そして桜のように繊細で美しかった。
 次の刹那、電光石火の如くリノが斬撃を放つ。


 (速い…!)


 だが間一髪トッツォはそれを受け流した。だがそれもつかの間、リノは次の攻撃の姿勢に入っていた。
 素早さがずば抜けてるな…。はっきり言ってここまでの剣術ならゴッドオブデケムと張り合えるだけの実力はあるな。


 (くっ!まずい。1度距離を取らないと。)


 「スティーリア!」


 (氷の魔法?避けた方が良さそう…。)


 リノはひらりと風のようにかわすと同時にトッツォの背後をとる。


 「なに!?」


 トッツォがすぐさま短剣に持ち替え振りかざす。それはリノの刀によって止められる。その後リノはがら空きのトッツォの腹を蹴り飛ばす。


 「ぐはっ!」


 距離を詰められないように魔法を放つトッツォ。それに反応したリノはすぐさま距離をとる。距離は離した、だが状況はトッツォが圧倒的に不利。そんな絶望の中
リノが喋る。


 「その魔法、危ないからちょっと本気出すね。」


 リノが刀を構え、詠唱を始める。


 「その大いなる力で数多の悪を打ち砕け。その大いなる力で数多の仲間を救い出せ。その大いなる力で平和を手にしたまえ。パレント・タケミカヅチ。グラディウス!」


 詠唱と共に凄まじい魔力が辺り一面に広がる。
 タケミカヅチ。やっぱり日本人なのか…?
 さっきとは比べ物にならないスピードでトッツォとの距離を詰めていく。


 (速すぎる…!)


 「スティーリア!」


 氷柱をするりとかわすその姿はまさに風に靡く桜そのものだった。距離を詰められたトッツォはまた短剣に持ち替える。だが、もう持ち替えるほどの余裕はなかった。
持ち替える瞬間で彼女は刀で短剣を手から吹き飛ばしたのだ。唖然とするトッツォに刀を向け彼女は勝ちを宣言した。


 「私の勝ちです。」


 間違いない、彼女はゴッドオブデケムに匹敵する強さを持っている。彼女ならいい戦力になってくれる…!


 「参りました…。」


 俺は席を立ち彼女の元へ向かう。


 「見事だったよ、リノ。」


 「ありがとうございます、魔王様。」


 「君にはブリザードと共に俺の側近をしてもらう。これから俺がどこかに行く時や戦う時、共に来てくれ。」


 「はは、承知致しました。」


 「ところで君は日本人なのか?」


 俺がそう言うと彼女はハッとした顔をする。


 「知っているのですか…!?日本を。」


 「ああ。」


 彼女はそうなのかと安心したような顔をした。


 「私は残念ながら日本人ではありません。少なくとも貴方様のような…。ですがとある日本人を知っています。私は、彼に出会って刀の道を極めました。」


 「その者の名は?」


 「タカ・シゲノブ。」


 ーーークアトル共和国 首都 ペンタクルーーー


 「あなたの名前をお聞かせください勇者様。」


 ここはどこだ?薄暗い。さっきまで学校にいたはずだが…。誰だこの人たちは…これは演劇なのか?


 「バ、バルボロ。勇者バルボロです…。」


 それを聞いた賢者が目を見開いて驚く。


 「勇者バルボロ…!お目覚めになられたのですね。300年ぶりではありますが是非我々にお力をお貸しくださいませ…!」


 そう言うとその場にいた賢者が全員膝をつく。
 何が起きてるんだ!?誰なんだこの人たちは!ここはどこなんだよ!


 「違う、俺の名前はカイトで…。」


 「カイト・バルボロ様ですね!承知致しました。」


 なんでこうなったんだああ!!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~

エール
ファンタジー
 古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。  彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。  経営者は若い美人姉妹。  妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。  そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。  最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

強制フラグは、いりません! ~今いる世界が、誰かの二次小説の中だなんて思うかよ! JKと禁断の恋愛するなら、自力でやらせてもらうからっ!~

ハル*
ファンタジー
高校教師の俺。 いつもと同じように過ごしていたはずなのに、ある日を境にちょっとずつ何かが変わっていく。 テスト準備期間のある放課後。行き慣れた部室に向かった俺の目の前に、ぐっすり眠っているマネージャーのあの娘。 そのシチュエーションの最中、頭ん中で変な音と共に、俺の日常を変えていく声が聞こえた。 『強制フラグを、立てますか?』 その言葉自体を知らないわけじゃない。 だがしかし、そのフラグって、何に対してなんだ? 聞いたことがない声。聞こえてくる場所も、ハッキリしない。 混乱する俺に、さっきの声が繰り返された。 しかも、ちょっとだけ違うセリフで。 『強制フラグを立てますよ? いいですね?』 その変化は、目の前の彼女の名前を呼んだ瞬間に訪れた。 「今日って、そんなに疲れるようなことあったか?」 今まで感じたことがない違和感に、さっさと目の前のことを終わらせようとした俺。 結論づけた瞬間、俺の体が勝手に動いた。 『強制フラグを立てました』 その声と、ほぼ同時に。 高校教師の俺が、自分の気持ちに反する行動を勝手に決めつけられながら、 女子高生と禁断の恋愛? しかも、勝手に決めつけているのが、どこぞの誰かが書いている某アプリの二次小説の作者って……。 いやいや。俺、そんなセリフ言わないし! 甘い言葉だなんて、吐いたことないのに、勝手に言わせないでくれって! 俺のイメージが崩れる一方なんだけど! ……でも、この娘、いい子なんだよな。 っていうか、この娘を嫌うようなやつなんて、いるのか? 「ごめんなさい。……センセイは、先生なのに。好きに…なっちゃ、だめなのに」 このセリフは、彼女の本心か? それともこれも俺と彼女の恋愛フラグが立たせられているせい? 誰かの二次小説の中で振り回される高校教師と女子高生の恋愛物語が、今、はじまる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

初めて入ったダンジョンに閉じ込められました。死にたくないので死ぬ気で修行したら常識外れの縮地とすべてを砕く正拳突きを覚えました

陽好
ファンタジー
 ダンジョンの発生から50年、今ではダンジョンの難易度は9段階に設定されていて、最も難易度の低いダンジョンは「ノーマーク」と呼ばれ、簡単な試験に合格すれば誰でも入ることが出来るようになっていた。  東京に住む19才の男子学生『熾 火天(おき あぐに)』は大学の授業はそれほどなく、友人もほとんどおらず、趣味と呼べるような物もなく、自分の意思さえほとんどなかった。そんな青年は高校時代の友人からダンジョン探索に誘われ、遺跡探索許可を取得して探索に出ることになった。  青年の探索しに行ったダンジョンは「ノーマーク」の簡単なダンジョンだったが、それでもそこで採取できる鉱物や発掘物は仲介業者にそこそこの値段で買い取ってもらえた。  彼らが順調に探索を進めていると、ほとんどの生物が駆逐されたはずのその遺跡の奥から青年の2倍はあろうかという大きさの真っ白な動物が現れた。  彼を誘った高校時代の友人達は火天をおいて一目散に逃げてしまったが、彼は一足遅れてしまった。火天が扉にたどり着くと、ちょうど火天をおいていった奴らが扉を閉めるところだった。  無情にも扉は火天の目の前で閉じられてしまった。しかしこの時初めて、常に周りに流され、何も持っていなかった男が「生きたい!死にたくない!」と強く自身の意思を持ち、必死に生き延びようと戦いはじめる。白いバケモノから必死に逃げ、隠れては見つかり隠れては見つかるということをひたすら繰り返した。  火天は粘り強く隠れ続けることでなんとか白いバケモノを蒔くことに成功した。  そして火天はダンジョンの中で生き残るため、暇を潰すため、体を鍛え、精神を鍛えた。  瞬発力を鍛え、膂力を鍛え、何事にも動じないような精神力を鍛えた。気づくと火天は一歩で何メートルも進めるようになり、拳で岩を砕けるようになっていた。  力を手にした火天はそのまま外の世界へと飛び出し、いろいろと巻き込まれながら遺跡の謎を解明していく。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華
ファンタジー
 愛犬(ポチ)の散歩中にトラックにはねられた主人公。  白い空間で女神様に、愛犬は先に転生して異世界に旅立った、と聞かされる。  すぐに追いかけようとするが、そもそも生まれる場所は選べないらしく、転生してから探すしかないらしい。  転生すると、最初からポチと従魔契約が成立しており、ポチがどこかで稼いだ経験値の一部が主人公にも入り、勝手にレベルアップしていくチート仕様だった。  うちのポチはどこに行ったのか、捜索しながら異世界で成長していく物語である。 ・たまに閑話で「ポチの冒険」等が入ります。  ※ 2020/6/26から「閑話」を従魔の話、略して「従話」に変更しました。 ・結構、思い付きで書いているので、矛盾点等、おかしなところも多々有ると思いますが、生温かい目で見てやって下さい。経験値とかも細かい計算はしていません。 沢山の方にお読み頂き、ありがとうございます。 ・ホトラン最高2位 ・ファンタジー24h最高2位 ・ファンタジー週間最高5位  (2020/1/6時点) 評価頂けると、とても励みになります!m(_ _)m 皆様のお陰で、第13回ファンタジー小説大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます。 ※ 2020/9/6〜 小説家になろう様にもコッソリ投稿開始しました。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

処理中です...