魔王様は世界を支配したい!〜異世界で魔王になったので本気で魔王やる〜

ばにく

文字の大きさ
上 下
3 / 44
予言の魔王編

第3話 エルフの娘

しおりを挟む
僕を助けようとしてくれた。



ウイプルの、リガード竜騎士団の騎士と国王兵達。



古のバライン文字が刻まれた剣で、僕を斬りつけ、その血を剣が吸い、腐神皇アーデの復活に捧げるのだろう。



僕の周り80体程度が群がり、襲いかかる骸兵に、表情などなかった。



だから、手加減は無用なんだ。



僕は、力を溜め、一撃一撃の重い斬撃を繰り返し、それを受けた骨だけの骸兵は、骨を散らし、バラバラになっていく。



僕のその一撃一撃の間、僕の隙は大きくなり、奴らの斬撃もかわしきれなかった。

それでも、何とか直撃を避け、致命傷はもらいはしない。



そして、僕の治癒力は、人を超越している。



ただ、大きな体格のゴブリンの一撃は、受けたらまずいのは、わかっていた。



僕は、骸兵の絡みつく骨に邪魔をされて、奴の一撃を何度か食らってしまった。



目の前の骸兵の白い骨が、僕の血で赤く染まる。



まだ、僕は、死ねないんだ、と。



僕は、こうやって、人から嫌われていくんだ。



僕の中の竜の血が覚醒して、感覚が獣に近くなる。

ゴブリン達を相手に、ウイプル兵のみんなが戦慄を覚える様な戦い方をしてしまった。



ゴブリンの内臓は飛び散り、腕や頭が転がる。



こういう戦い方をしているから、僕の事、いつまでもそう呼ぶんだろう。



ドラゴンバスターと。



________

ウイプル兵の1人につき応急処置をしてもらい、日が昇ったら、僕はヘンターの岩場先の岩山へ向かおうとした。

この岩場から消えた黒装束の男も、あの岩山にいるかも知れない。

リガード竜騎士団の騎士ソフヴェスに止められたけど、やり遂げなければならない。

僕の治癒能力で、比較的深い傷口以外は、もうほとんど塞がっているんだ。

国王兵は、30数人が生き残っている。



僕が敵の標的になっているのなら、この人数でもやれるのか。

いや、岩山の中に敵の住処があれば、その数にもよるだろう。

でも、

まずは僕が1人で行く方がいいだろう、と。



岩山で異変を感じたなら、全滅するよりはいいと思って、僕を気にせず、ウイプルへ帰っていいと、言った。



その場合のこの作戦の指揮権は、ソフヴェスに摂ってもらう。



ソフヴェスは、僕の腕を引っ張り、一度帰ろうと言った。

ヘンターの岩場に出没したゴブリンの掃討作戦、その役割は果たした、と。

あの岩山には、古のバライン文字の入った剣が落ちていた。何かあると思うけど。

ソフヴェスは、僕に優しい顔を見せて、僕の背中をさすっていた。



ソフヴェス。



僕の心が、傷ついていると、感じていたのか、気遣いの言葉を言われた。



そうか。



聖バハール王国との戦いの中、混乱したウイプル兵達に、僕が貴覇竜を殺したからこんな目に遭うのだと、僕が背後から斬られた事があった。



その戦場で僕から比較的近い位置にいたソフヴェスは、異変に気づき、声を上げて、騎士長アーマンを呼んでくれたんだ。



彼は、教えてくれた。



そして、大丈夫だよ、と。



アスカを、裏切ったりはしないよ、と。



ヘンターの岩場で、残虐な戦い方を見せた後に言われたからか、心が揺らいだ。



今回の件、一度国王に報告しておくべきか。ここは一度、冷静になろう、と。



ソフヴェスの提案に従った。



ペテロの29日
             ヘールベータ地区の家にて
________

ヘンターの岩場には、コーリオ王国に滞在している奇術師が、骸兵の発生を防ぐ事ができるかも知れないという話だ。

遠くの国から来た奇術師。

何をやる気だ。

それで事が収まるのなら、今回の件で命を落としたウイプルの兵は、無駄死と言われる。

慰め程度の処置をするだけだろう。





ダルレアス自治領の威厳山いげんざんから侵攻してきたゴブリン大部隊を寄越した国がわかった。

ジーダペンス王国。

そんなに前の話じゃないけど、確かにその国がウイプルを狙っているという話は出ていた。

北東の方角にある国だけど、ここから相当の距離がある。

邪教国ではないはず。

もしかしたら、遥か遠い空に浮かぶ巨大な影、最近は近づいてきてるとは感じていたけど。

ジーダペンス王国の守護獣か。



ペテロの30日
             ヘールベータ地区の家にて
________
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~

エール
ファンタジー
 古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。  彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。  経営者は若い美人姉妹。  妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。  そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。  最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

強制フラグは、いりません! ~今いる世界が、誰かの二次小説の中だなんて思うかよ! JKと禁断の恋愛するなら、自力でやらせてもらうからっ!~

ハル*
ファンタジー
高校教師の俺。 いつもと同じように過ごしていたはずなのに、ある日を境にちょっとずつ何かが変わっていく。 テスト準備期間のある放課後。行き慣れた部室に向かった俺の目の前に、ぐっすり眠っているマネージャーのあの娘。 そのシチュエーションの最中、頭ん中で変な音と共に、俺の日常を変えていく声が聞こえた。 『強制フラグを、立てますか?』 その言葉自体を知らないわけじゃない。 だがしかし、そのフラグって、何に対してなんだ? 聞いたことがない声。聞こえてくる場所も、ハッキリしない。 混乱する俺に、さっきの声が繰り返された。 しかも、ちょっとだけ違うセリフで。 『強制フラグを立てますよ? いいですね?』 その変化は、目の前の彼女の名前を呼んだ瞬間に訪れた。 「今日って、そんなに疲れるようなことあったか?」 今まで感じたことがない違和感に、さっさと目の前のことを終わらせようとした俺。 結論づけた瞬間、俺の体が勝手に動いた。 『強制フラグを立てました』 その声と、ほぼ同時に。 高校教師の俺が、自分の気持ちに反する行動を勝手に決めつけられながら、 女子高生と禁断の恋愛? しかも、勝手に決めつけているのが、どこぞの誰かが書いている某アプリの二次小説の作者って……。 いやいや。俺、そんなセリフ言わないし! 甘い言葉だなんて、吐いたことないのに、勝手に言わせないでくれって! 俺のイメージが崩れる一方なんだけど! ……でも、この娘、いい子なんだよな。 っていうか、この娘を嫌うようなやつなんて、いるのか? 「ごめんなさい。……センセイは、先生なのに。好きに…なっちゃ、だめなのに」 このセリフは、彼女の本心か? それともこれも俺と彼女の恋愛フラグが立たせられているせい? 誰かの二次小説の中で振り回される高校教師と女子高生の恋愛物語が、今、はじまる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華
ファンタジー
 愛犬(ポチ)の散歩中にトラックにはねられた主人公。  白い空間で女神様に、愛犬は先に転生して異世界に旅立った、と聞かされる。  すぐに追いかけようとするが、そもそも生まれる場所は選べないらしく、転生してから探すしかないらしい。  転生すると、最初からポチと従魔契約が成立しており、ポチがどこかで稼いだ経験値の一部が主人公にも入り、勝手にレベルアップしていくチート仕様だった。  うちのポチはどこに行ったのか、捜索しながら異世界で成長していく物語である。 ・たまに閑話で「ポチの冒険」等が入ります。  ※ 2020/6/26から「閑話」を従魔の話、略して「従話」に変更しました。 ・結構、思い付きで書いているので、矛盾点等、おかしなところも多々有ると思いますが、生温かい目で見てやって下さい。経験値とかも細かい計算はしていません。 沢山の方にお読み頂き、ありがとうございます。 ・ホトラン最高2位 ・ファンタジー24h最高2位 ・ファンタジー週間最高5位  (2020/1/6時点) 評価頂けると、とても励みになります!m(_ _)m 皆様のお陰で、第13回ファンタジー小説大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます。 ※ 2020/9/6〜 小説家になろう様にもコッソリ投稿開始しました。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

庭園の国の召喚師

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 おばあちゃんが先日亡くなった。そのおばあちゃんの言いつけで男として過ごしていたリーフは、魔術師の国ラパラル王国の王都グラディナで、男性として魔術師証を取得。金欠でお金に困り、急募・男性の方に飛びついた。  驚く事に雇い主は、リーフが知っている騎士のアージェという男だった!  だが男としての接触だった為、彼は気づかない。そして、引き受けた仕事により、魔獣騒ぎに巻き込まれ――。

処理中です...