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第一章

第十話 王子が侵入してきました×2

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 コンコン、という音が窓の外から聞こえてくる。
 半ば反射的にカーテンを開けると、全身タイツを身に纏ったハルトの姿が見える。

「毎晩毎晩好きねえ、あなたも」
「毎晩毎晩好んで来ているのはあなたですよね?」

 まるで私が呼んだような言い方をするのはやめて欲しい。しかも言い方が際どいし。

「本当に来たらダメな時には窓に厳重なロックを掛けるよね? 今晩はそれがなかったからエリスちゃんは僕に来て欲しいって思ってたに違いないよ!」
「約束してただけです。なるべくさっさと帰って欲しいところではありますが、すぐ追い返すのもかわいそうなので中に入ってください」

 いつまでも外にいては見つかるかもしれないし。王子とはいえこんなザル警備で大丈夫なのか。

「えへへへへ、エリスちゅわんスメルぅ……」
「やっぱり帰っていただけませんでしょうか」
「待って、やめて追い返さないで!」

 夜だというのにやかましいヤツだな。逆に夜だからかな?

「ふふふ、今日はとっておきの品を用意してきたのに追い返すなんて酷いじゃないか」
「あなたが持ってきたとっておきの品で健全なモノが一つも出てきたことがないのでやはりお引き取り下さい」
「待って! 見捨てないで!!」

 不倫をしでかした妻が旦那に許してもらうかのように泣きつくハルト。今までとっておきの品を100以上も見てきた私が言うのだからきっと今回も健全じゃないグッズが来るのだろう。もう動じない。

「分かりましたよ。さっさと出してください」
「カツアゲ風もドンピシャですううう!」

 変態矯正施設なるものが出来たら真っ先に収容されそうな変態性を見せびらかしてから腰に付けていた袋に手を入れる。

「ペペローション」
「お引き取り下さい」
「待って、本当に待って! やだらめえええ!!」

 私がローションを窓から投げ捨ててついでにギャーギャー騒ぐハルトも投げ捨てようとしていたときだった。

「よう」

 窓から第二王子、ハルキが訪れたのは。

「フッ、貴様もエリスちゅわんとぬぷぬぷしてかったのだろうけれど、先ほどエリスちゃんにローションを窓から投げ捨てられてしまったのだ……」

 しゅんとするハルト。ハルキが普段着な故に余計に全身タイツが目立つ。
 あと弟をダークサイドに誘うでない。

「安心しろ兄貴。この俺が何の備えもなしにここに来ると思うか?」
「まさかお前っ!」
「ペペローション、だろ?」
「ハルキっ……!」

 感動している様子だったが、マトモだと思ってたハルキ像が段々と崩れていくのが分かった。この国の王族は変態でなければいけないルールでもあるのだろうか。

「ごめん、俺お前の事ただのカメムシだと思ってた。だけど違うんだな、ごめんな!」
「俺って兄貴にカメムシだと思われてたの?」
「今はお前の事ワラジムシだと思ってる」
「それってランクアップしてるのか……?」

 ハルキはしきりに首を傾げていたが、ハルトはそんな弟を華麗に無視して。

「さあ、ハルキも来たことだしレッツぬぷぬぷっ!」
「お引き取り下さい」

 私だけはダークサイドに落ちぬよう決意するのだった。
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