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第一章
第二話 王城へ
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「さあ、ようこそ僕の城へ!」
「間違ってはないですけれど言い方が異様に腹立ちますね」
目を爛々と輝かせて私の王城訪問を全力で祝うハルト。それは嬉しいんだけどね。
「ふふふふ、わざわざ来てくれたという事は僕に会いたくて会いたくて仕方がなかったという事だよね? 相変わらず最初から素直になれないんだからぁ」
「違いますよ。希望的観測も甚だしいですねこの野郎」
「この野郎!?」
ガビーン、という効果音が聞こえてきそうなほど分かりやすくショックを受けるハルト。お前いつももっと酷い事言ってるだろ。
「だけどこれって俗に言う『ツンデレ』ってやつだよね! 可愛いなあ」
そのポジティブシンキングを少しばかり分けてもらう事は出来ないのだろうか。人生が楽しくなりそうである。
「全く……。いいですか? もうちょっと態度を和らげないと身内が裏切ることも充分にあり得るんですよ。さっさとソフトな言い方を身に着けてもらわないと困るんですよ」
「んー、でも僕はエリスちゃんさえ味方でいてくれればそれでいいかな」
サラッとはにかみながら恥ずかしいセリフを口にするな。後で黒歴史になっても知らないぞ。
それとも恥ずかしいのは私だけなのか? そうだったら凄くズルいなハルト。
「と、とにかく困るんです! あなたのお父様からも言われていますし!」
何年経っても殺されそうな気配がないから任命された。任命される基準ユルユルだな。
「んー、じゃあ始めようか。僕がモテモテになっちゃってもいいならねっ☆」
「ハイハイヨカッタネー」
「適当!? あっ、そっか。いくらモテモテになったとしても僕が好きなのはエリスちゅわんただ一人という事実は変わらないという事を知ってるからだね。さすがマイハニー! 抱いていいかな!?」
私は幼稚園児よろしくハイテンションで騒ぐハルトを無視して、国王様から渡された『ハルトに身に着けて欲しい会話』という冊子を開く。
教科書的な受け答えならば一応は出来るらしいのだが、クラスメイト相手ともなると一言余計なモノを付けたしにかかるらしく、基本的にクラスメイトと話す場合を想定して作られているらしい。
「では始めますね」
「無視!?」
ひとまず一番最初のシチュエーションでやってみることにした。
「えっと……私をただのクラスメイトだと思って言ってくださいね。『あなたの名前は何ですか?』」
「俺の名前を知らないだと? ほざけ、幼稚舎から出直してこい」
「あの、いくらなんでも塩対応通り越して爆弾対応やめてくれませんか? その場で殺されても文句は言えませんよ?」
「だって舐められたらおしまいなのに俺の名前知らないって言うから! インパクト強くて後生忘れなくて済むでしょう!?」
「名乗ってもないですけど」
「ホントだ! それに気が付くとは注意力に関しては天賦の才があるみたいだね。やっぱり未来の王妃の看板は伊達じゃないなあ」
誰でも気づくだろこんなの。
名前聞いただけで幼稚舎から出直してこい発言とは……これは前途多難だな。
「ねえねえ、経験値アップした気がするからご褒美に頭撫でてよ」
「あなたは犬ですか」
「エリスちゃんの犬にならなれる気がするよ」
私に頭を撫でられるだけで幸せそうになるハルトを見ながら、私はこれからどうすればいいか考えていた。
「間違ってはないですけれど言い方が異様に腹立ちますね」
目を爛々と輝かせて私の王城訪問を全力で祝うハルト。それは嬉しいんだけどね。
「ふふふふ、わざわざ来てくれたという事は僕に会いたくて会いたくて仕方がなかったという事だよね? 相変わらず最初から素直になれないんだからぁ」
「違いますよ。希望的観測も甚だしいですねこの野郎」
「この野郎!?」
ガビーン、という効果音が聞こえてきそうなほど分かりやすくショックを受けるハルト。お前いつももっと酷い事言ってるだろ。
「だけどこれって俗に言う『ツンデレ』ってやつだよね! 可愛いなあ」
そのポジティブシンキングを少しばかり分けてもらう事は出来ないのだろうか。人生が楽しくなりそうである。
「全く……。いいですか? もうちょっと態度を和らげないと身内が裏切ることも充分にあり得るんですよ。さっさとソフトな言い方を身に着けてもらわないと困るんですよ」
「んー、でも僕はエリスちゃんさえ味方でいてくれればそれでいいかな」
サラッとはにかみながら恥ずかしいセリフを口にするな。後で黒歴史になっても知らないぞ。
それとも恥ずかしいのは私だけなのか? そうだったら凄くズルいなハルト。
「と、とにかく困るんです! あなたのお父様からも言われていますし!」
何年経っても殺されそうな気配がないから任命された。任命される基準ユルユルだな。
「んー、じゃあ始めようか。僕がモテモテになっちゃってもいいならねっ☆」
「ハイハイヨカッタネー」
「適当!? あっ、そっか。いくらモテモテになったとしても僕が好きなのはエリスちゅわんただ一人という事実は変わらないという事を知ってるからだね。さすがマイハニー! 抱いていいかな!?」
私は幼稚園児よろしくハイテンションで騒ぐハルトを無視して、国王様から渡された『ハルトに身に着けて欲しい会話』という冊子を開く。
教科書的な受け答えならば一応は出来るらしいのだが、クラスメイト相手ともなると一言余計なモノを付けたしにかかるらしく、基本的にクラスメイトと話す場合を想定して作られているらしい。
「では始めますね」
「無視!?」
ひとまず一番最初のシチュエーションでやってみることにした。
「えっと……私をただのクラスメイトだと思って言ってくださいね。『あなたの名前は何ですか?』」
「俺の名前を知らないだと? ほざけ、幼稚舎から出直してこい」
「あの、いくらなんでも塩対応通り越して爆弾対応やめてくれませんか? その場で殺されても文句は言えませんよ?」
「だって舐められたらおしまいなのに俺の名前知らないって言うから! インパクト強くて後生忘れなくて済むでしょう!?」
「名乗ってもないですけど」
「ホントだ! それに気が付くとは注意力に関しては天賦の才があるみたいだね。やっぱり未来の王妃の看板は伊達じゃないなあ」
誰でも気づくだろこんなの。
名前聞いただけで幼稚舎から出直してこい発言とは……これは前途多難だな。
「ねえねえ、経験値アップした気がするからご褒美に頭撫でてよ」
「あなたは犬ですか」
「エリスちゃんの犬にならなれる気がするよ」
私に頭を撫でられるだけで幸せそうになるハルトを見ながら、私はこれからどうすればいいか考えていた。
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