乙女ゲームの世界に転生したらアホ王子と婚約することになってしまった

プロローグ

プロローグ アホな王子と婚約することになってしまった

「ルア。このお方が、我が国の第一王子であり、お前の婚約者であるウェントゥス・セキュリテ様だ――」
「よろしくね！」

　青髪を煌めかせ、藍の瞳をアホ色に染めながら挨拶するのは私の婚約者となる第一王子。
　ぶっちゃけ私はもう、この場で婚約破棄を言い渡してトンズラしたいところなのだが、周りの目がそうさせてはくれなかった。

「わ、私の名はルア・ラファームソードと申します。よろしくお願いします……」
「そっか！　じゃあ庭で鬼ごっこしようぜ！」

　うむ、この王子うわさに違わずアホだな。

　公爵家から来たメイドは王子の繰り出した言動にザワついているが、王城のメイドはそれはもう嬉しそうにニコニコしている。日常茶飯事だというのだろうか。帰りたい。

　ああもう、どうしてこうなってしまったのだろうか。
　いくら私が悪役令嬢だからって酷くないだろうか――って、うん？

「あ、う、うあっ」
「どうした!?　お腹痛いのっ!?」
「い、あ」

　悪役令嬢。
　その言葉が頭に浮かんだ瞬間、濁流のように記憶が脳を駆け巡った。と同時に、頭痛も激しいものへと変わってゆく。

「非常事態なのか!?　運んだほうが――」

　当然皆焦り、パニック状態になるなかで私は王子が、私のために行動しようとしてくれたところを見て、意識を失った。