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第一章
第三話 王妃パーティー直前
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「お嬢様、とても綺麗ですよ」
「そ、そうですかね?」
いよいよ明日が王妃を決めるパーティーとなった。エリナがお父様と結託して人気のデザイナーにドレスを頼んだらしいが、それでも無事仕立てることができたようで何よりだ。
白をベースに、金色の刺繍が施されたドレスはどの人の目から見ても美しく、目を引くものだった。
エリナも例外ではないようで、ドレスを着た私からずっと目を逸らさずに、嬉しそうにしながら賛辞の言葉を並べている。
「ええ。これは王妃間違いなしです!」
「そ、それは言いすぎですよ」
「いや、言い過ぎではないぞ」
褒められっぱなしで恥ずかしくなってきたところに、仕事がひと段落ついたらしいお父様が会話に割って入る。
えらく自信満々な言葉はまだ続いて。
「何せ私の娘だ。かわいくないわけがなかろう。公爵なんぞに渡さなくて正解だ」
「お、お父様。それはいくら何でも不敬では」
もう半年が経つので、私の怒りや喪失感はかなり薄れているのだが、お父様の怒りは引く様子を見せず。
今もことあるごとに公爵家の悪口を言い、王妃パーティーへのモチベーションを上げるような言葉を吐く。エリナから聞いたところ、元友人であったノアールステラ公爵家当主にも文句を言いに行ったらしい。
当主は普通に常識があるかたらしく、誤っていたらしいが許す気配はなさそうだ。
「いいえ、ソフィア」
「お母様もですか……」
だが、怒っているのはお父様だけではなく。
公爵家夫人に相応しいふるまいを教育してきたお母様も、かなり怒り心頭といった様子を見せていた。この声からも、容易に怒りが感じ取れる。
「侯爵家としても、ソフィアとしても、名誉を傷つけられただけです。多少何か言ったところで、雪げるようなものではありません。むしろもっと罵っても――」
「それではいたちごっこになるだけです、お母様!」
何事もやりすぎはいけないのだ。赤い眼には怒りの炎が燃え、金髪が少し逆立っているようにも見えるが気のせいだろうか。
「では、もう私から何か言うことはありません。見返してきなさい。ソフィア」
「はい、お母様!」
しかし、それも一瞬の話。
今は娘を見守る母親の表情になり、赤い瞳には愛情が見えた。
「ソフィアが王妃になるのは嬉しいが、お父さんは冷酷ともいわれる王子に酷いことをされないかと心配になるなぁ」
「お父様、まだ決まっていません」
私が王妃になることが決定したような口ぶりに、思わず苦笑してしまう。見ると、目には薄く涙が張っていた。
しかし、その心配はある。
王妃になるならない以前に、パーティーは無事に終了できるのだろうか、といった心配が。
いくらなんでもこれは心配しすぎだろうか。さすがに相手は王族。
優しさを売りにするような王にはならない、といった情報が曲げられ続けてこんなことになってしまった可能性もあるのだ。
きっと、大丈夫だろう。
「ではソフィア様。向かいましょう」
エリナがそっと私の手を引く。
周りから向けられるであろう視線を考えたら胃が痛くなってくるが、それでも私は向かった。
前へ、進むために。
「そ、そうですかね?」
いよいよ明日が王妃を決めるパーティーとなった。エリナがお父様と結託して人気のデザイナーにドレスを頼んだらしいが、それでも無事仕立てることができたようで何よりだ。
白をベースに、金色の刺繍が施されたドレスはどの人の目から見ても美しく、目を引くものだった。
エリナも例外ではないようで、ドレスを着た私からずっと目を逸らさずに、嬉しそうにしながら賛辞の言葉を並べている。
「ええ。これは王妃間違いなしです!」
「そ、それは言いすぎですよ」
「いや、言い過ぎではないぞ」
褒められっぱなしで恥ずかしくなってきたところに、仕事がひと段落ついたらしいお父様が会話に割って入る。
えらく自信満々な言葉はまだ続いて。
「何せ私の娘だ。かわいくないわけがなかろう。公爵なんぞに渡さなくて正解だ」
「お、お父様。それはいくら何でも不敬では」
もう半年が経つので、私の怒りや喪失感はかなり薄れているのだが、お父様の怒りは引く様子を見せず。
今もことあるごとに公爵家の悪口を言い、王妃パーティーへのモチベーションを上げるような言葉を吐く。エリナから聞いたところ、元友人であったノアールステラ公爵家当主にも文句を言いに行ったらしい。
当主は普通に常識があるかたらしく、誤っていたらしいが許す気配はなさそうだ。
「いいえ、ソフィア」
「お母様もですか……」
だが、怒っているのはお父様だけではなく。
公爵家夫人に相応しいふるまいを教育してきたお母様も、かなり怒り心頭といった様子を見せていた。この声からも、容易に怒りが感じ取れる。
「侯爵家としても、ソフィアとしても、名誉を傷つけられただけです。多少何か言ったところで、雪げるようなものではありません。むしろもっと罵っても――」
「それではいたちごっこになるだけです、お母様!」
何事もやりすぎはいけないのだ。赤い眼には怒りの炎が燃え、金髪が少し逆立っているようにも見えるが気のせいだろうか。
「では、もう私から何か言うことはありません。見返してきなさい。ソフィア」
「はい、お母様!」
しかし、それも一瞬の話。
今は娘を見守る母親の表情になり、赤い瞳には愛情が見えた。
「ソフィアが王妃になるのは嬉しいが、お父さんは冷酷ともいわれる王子に酷いことをされないかと心配になるなぁ」
「お父様、まだ決まっていません」
私が王妃になることが決定したような口ぶりに、思わず苦笑してしまう。見ると、目には薄く涙が張っていた。
しかし、その心配はある。
王妃になるならない以前に、パーティーは無事に終了できるのだろうか、といった心配が。
いくらなんでもこれは心配しすぎだろうか。さすがに相手は王族。
優しさを売りにするような王にはならない、といった情報が曲げられ続けてこんなことになってしまった可能性もあるのだ。
きっと、大丈夫だろう。
「ではソフィア様。向かいましょう」
エリナがそっと私の手を引く。
周りから向けられるであろう視線を考えたら胃が痛くなってくるが、それでも私は向かった。
前へ、進むために。
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