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第一章
第二話 やっぱり落ち込む婚約破棄令嬢
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その後、お父様にもう戻ってもいいと言われたので戻ったわけだが。
「よく考えたら、いや考えなくてもですけど、残りのチャンスと言えば王妃を決めるパーティーだけじゃないですか」
「そ、そんなことはないかと存じます。特にお嬢様は年齢的にも、王妃決定の場に参加できる最低年齢なので有利なのではないでしょうか」
「嘘ですよ! 婚約破棄された女なぞ若かろうが侯爵の爵位があろうが、お断りされますっ! それに、私が王妃に選ばれるわけはないし、それに王子は冷酷無慈悲とうわさされる人物ではないですか。もう無理ですよ!」
冷静に考えたら結構ピンチな状況なので、再び絶望感が押し寄せてきたのを専属メイドのエリナにぶつけていた。
そんなエリナはミルクティー色の髪の毛を焦ったように動かし、何とか言葉を紡ごうとしているようだ。桃色の瞳には明らかに動揺が見える。
さすがに、主人が婚約破棄されて絶望を感じているときの接しかたは教わらなかったらしい。それも当たり前か、と思うが。
「いいのです、エリナ。私が、私が魅力的であればよかっただけの話ですから」
そう言うも、一向にエリナは部屋から出て行ってくれない。もう何度も催促しているのだが。離れたら自殺すると思っているのだろうか。
だけど、気にかけてくれる人がここにもいたことは純粋に嬉しい。
そう、私が嬉しさを感じつついると。
「何を言いますか、ソフィア様っ!」
エリナが珍しく大きな声を出す。
それに驚いていると、エリナはさらに言葉を紡ぎ出し。
「そのシャンデリアの燈のごとき金髪! 透き通るような碧い瞳! 陶器のごとくなめらかな雪肌! 貴族に相応しい高潔な精神! これのどこが魅力的でないと言えますか!」
「……ありがとう、エリナ」
ほぼ同年齢の十八歳という若さなのにも関わらず、今まで声を荒げたことがなかった彼女から発される大声は、しっかりと私の心に響いていた。
「ソフィア様ならば、これ幸いと婚約の申し込みが殺到しますから」
「そうですね……」
にこりと笑うエリナの言葉は現実離れしたものだったが、いつまでも落ち込んでいる場合でもないな、とも思う。
王妃パーティーはどうなるか分からない。でも、私にはその次がある。
まだ外に出て婚約破棄のリアクションを受けるのは辛くてできないけども、どうせ王妃パーティーがあるから一時的な逃避でしかないけれども。
最低限でも、やれることはやっておこう。
「エリナ。ダンス講師を呼んで頂戴」
「承知いたしましたっ!」
私なんか参加しても、レッテルのせいで誰とも踊れないかもしれない。
しかし、いざ踊って『うわ、こいつダンス下手すぎだろ』と思われるのは絶対に嫌だ。
未来の王妃を決めるパーティーまで、あと半年ほど。未婚・未婚約の十六歳から二十二歳までの貴族令嬢が召集されるというので、今からでも参加を決められることだろう。婚約破棄でも、未婚約に入るはずだから。
今あるドレスで参加してもいいものの、やはり王子の前だ。新しく仕立てたもので行ったほうがよいだろう。
これもエリナに行っておいたほうがいい。半年前でもかなりキツいスケジュールとなるはずだから。
「エリナ。ドレスの仕立てもお願いできますか」
「ええ、ええ!」
私が少しずつ前を向きだしたことが嬉しいのだろうか、エリナが感極まったように声を出す。
「今はこれくらいですかね……。ほかに何かあったなら、またあとで言います」
「承知いたしました。では!」
そう言うと、エリナはにこやかな笑顔を浮かべ、退室する。
それまでやることがないので、心を落ち着けるためにも私は詩集を開いた。
「よく考えたら、いや考えなくてもですけど、残りのチャンスと言えば王妃を決めるパーティーだけじゃないですか」
「そ、そんなことはないかと存じます。特にお嬢様は年齢的にも、王妃決定の場に参加できる最低年齢なので有利なのではないでしょうか」
「嘘ですよ! 婚約破棄された女なぞ若かろうが侯爵の爵位があろうが、お断りされますっ! それに、私が王妃に選ばれるわけはないし、それに王子は冷酷無慈悲とうわさされる人物ではないですか。もう無理ですよ!」
冷静に考えたら結構ピンチな状況なので、再び絶望感が押し寄せてきたのを専属メイドのエリナにぶつけていた。
そんなエリナはミルクティー色の髪の毛を焦ったように動かし、何とか言葉を紡ごうとしているようだ。桃色の瞳には明らかに動揺が見える。
さすがに、主人が婚約破棄されて絶望を感じているときの接しかたは教わらなかったらしい。それも当たり前か、と思うが。
「いいのです、エリナ。私が、私が魅力的であればよかっただけの話ですから」
そう言うも、一向にエリナは部屋から出て行ってくれない。もう何度も催促しているのだが。離れたら自殺すると思っているのだろうか。
だけど、気にかけてくれる人がここにもいたことは純粋に嬉しい。
そう、私が嬉しさを感じつついると。
「何を言いますか、ソフィア様っ!」
エリナが珍しく大きな声を出す。
それに驚いていると、エリナはさらに言葉を紡ぎ出し。
「そのシャンデリアの燈のごとき金髪! 透き通るような碧い瞳! 陶器のごとくなめらかな雪肌! 貴族に相応しい高潔な精神! これのどこが魅力的でないと言えますか!」
「……ありがとう、エリナ」
ほぼ同年齢の十八歳という若さなのにも関わらず、今まで声を荒げたことがなかった彼女から発される大声は、しっかりと私の心に響いていた。
「ソフィア様ならば、これ幸いと婚約の申し込みが殺到しますから」
「そうですね……」
にこりと笑うエリナの言葉は現実離れしたものだったが、いつまでも落ち込んでいる場合でもないな、とも思う。
王妃パーティーはどうなるか分からない。でも、私にはその次がある。
まだ外に出て婚約破棄のリアクションを受けるのは辛くてできないけども、どうせ王妃パーティーがあるから一時的な逃避でしかないけれども。
最低限でも、やれることはやっておこう。
「エリナ。ダンス講師を呼んで頂戴」
「承知いたしましたっ!」
私なんか参加しても、レッテルのせいで誰とも踊れないかもしれない。
しかし、いざ踊って『うわ、こいつダンス下手すぎだろ』と思われるのは絶対に嫌だ。
未来の王妃を決めるパーティーまで、あと半年ほど。未婚・未婚約の十六歳から二十二歳までの貴族令嬢が召集されるというので、今からでも参加を決められることだろう。婚約破棄でも、未婚約に入るはずだから。
今あるドレスで参加してもいいものの、やはり王子の前だ。新しく仕立てたもので行ったほうがよいだろう。
これもエリナに行っておいたほうがいい。半年前でもかなりキツいスケジュールとなるはずだから。
「エリナ。ドレスの仕立てもお願いできますか」
「ええ、ええ!」
私が少しずつ前を向きだしたことが嬉しいのだろうか、エリナが感極まったように声を出す。
「今はこれくらいですかね……。ほかに何かあったなら、またあとで言います」
「承知いたしました。では!」
そう言うと、エリナはにこやかな笑顔を浮かべ、退室する。
それまでやることがないので、心を落ち着けるためにも私は詩集を開いた。
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