悪役令嬢のはずがなぜ王子様に溺愛されているのでしょう

第二章

第58話 煩悩シュヴァリエ

「で、何？　思っちゃったわけね？　中学生ノリで突っ切っちゃおうとしたわけね？」
「そうです」
「あなたの身分言ってみなさいな」
「第一王子です」
「うん、夜這いしちゃだめでしょ？　というか普通の中学生でも夜這いしたら捕まるわよ」

　パンイチで正座して俯いているのはカイル。
　雰囲気的に『おっ、これワンチャン行けるんじゃね？』って思ったらしい。自重しろよ。

「いや、でも俺の権力で夜這いの一つくらい隠ぺ――」
「あ？」
「なんでもございません」

　カイルが私の目力によってすっかり委縮してしまっている。お可愛いこと……。

「聞いてください。俺にはちゃんとした根拠があるんです」
「なんやねん」

　気分はすっかり取り立て屋だ。別に金を取り立ててる訳じゃないけど。

「王妃が子どもを産む年齢は1000年前から統計を取ると14歳なわけで。で、俺もその風習に乗っかろうぜヒャッハー！　みたいな感じでしてハイ」
「……10年で統計を取ったら？」
「17歳でしたごめんなさい」

　根拠ボロボロすぎだろ。

「……ラミちゃん、５万円あげるからイッパツ」
「金で釣ろうとしてんじゃないわよ。というかそれって援助交際――」
「援助交際の一つや二つや三つや百くらい隠ぺいできなくてなにが王族なんだろうね？」
「まずお前修行して来いよ」

　煩悩まみれだぞ。あと百ってどんだけ隠ぺいするつもり？

「なーんてねっ☆　嘘だょ☆」
「これほど嘘に聞こえない言葉も珍しいわよ」
「うっそ、俺、レア……？」

　そのポジティブさを私にもちょっと分けてくれないだろうか。

「さあ、ラミちゃん。気を取り直しておいで……」
「どさくさに紛れもしないでフル●ンになるの止めて貰っていい？」
「やめられない、とまらないのがフル●ンの恐ろしいところだよね……分かるでしょ？」
「分かるか服着ろ」
「ふぁい」

　…………寮の管理者さんに頼んで洗濯か交換してもらおう。このベッド……。