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第十一章 独身おじさんの平和な日々
にゃんこと一緒
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さて、大食い大会も終わり、俺も翌日から仕事を再開した。
久しぶりに一階のシャッターを開け、やや埃が被っている『魔導具修理します』の看板を出し、軽く掃除を始めて事務所へ。
事務所も綺麗に掃除をし、持ち込んだコーヒーを飲みながら朝刊を読んでいると、魔導具修理の依頼人が何人か来た。
「お~ゲントク、よーやく仕事再開かあ」
「お、ボーマンの爺さんじゃねぇか。腰痛治ったか?」
「馬鹿たれ。この歳でそう簡単に治るもんか。それより、ウチの冷蔵庫を見てくれや」
「はいよ。出張修理の依頼な」
「おーいゲントク。うちのミスト噴霧器、孫が落として割れちゃったよ。見ておくれ」
「はいはい、そっちの台において」
「すみません。アレキサンドライト商会の商品なんですけど、動かなくなっちゃって」
「はいはい。ああ、ドライヤー……そういや商品化するって言ってたな」
久しぶりなのに、出張修理、持ち込みの依頼が来た。
午前中だけで七件……アレキサンドライト商会が多くの魔導具を取り扱うようになったから、修理の依頼も増えてるんだ。それに、魔石の交換程度ならどの魔導具工房でもやるし。
それともう一つ。
「すみません。自転車がパンクしちゃって……」
そう、自転車の商品化により、トラブルも増えた。
主にパンク、そしてチェーンの破損だ。けっこう無茶な乗り方する人もいるようだ。
特にパンクが多い……よく見ると、老ラバーコブラの皮ではなく、より安価で加工のしやすいリトルスネークの皮を使っている。
大量生産なので安価なリトルスネークの皮に切り替えたのか。イェランのアイデアかな?
俺はパンクを修理するため、穴の開いた部分にラバーコブラの皮を切ったパッチを、ベタースライムっていうベタベタする粘液のスライムの接着剤で貼る。
そして、空気穴に魔法で空気を入れ、蓋をしっかりしめた。
「修理完了だ。でも、荒れ道とか走らない方がいいな……リトルスネークの皮は頑丈だけど、砂利道や荒れ道は得意じゃない。街中だけで乗るようにしてくれ」
「はい。そういえば、これは街乗り用って言ってました……野外を少しだけ走ったせいですね」
自転車の持ち主は「ありがとうございました」と言って去っていった。
さて、午前は持ち込み魔導具の修理して、午後は出張修理に行きますかね。
◇◇◇◇◇◇
午後、冷蔵庫修理から戻ると、お昼をやや過ぎた頃だった。
昼飯食って行こうと思ったが、喫茶店を営むボーマン爺さんの頼みで、とにかく早くということで向かって修理したのだ。
冷蔵庫、食材がパンパンで冷気の循環が悪く、魔力の流しすぎで魔力を伝えるパイプが破損……さらに魔石も劣化していた。
とりあえず、修理をして冷蔵庫をパンパンにするなと言っておいた。
ボーマン爺さんの淹れる紅茶は美味いんだけど、俺はコーヒー派なのであまり行かないんだよな。
俺は自分専用の自転車から降りると、隣の空き地からユキちゃんが出てきた。
「にゃああ、おじちゃーん」
『わうう』
『ニャア』
ユキちゃん、ヒコロク、白玉だ。
「ユキちゃんか。今日は一人かい?」
「にゃうう、みんな忙しいの。おしごとなの。わたし、ヒコロクのおさんぽなの」
「なるほどな。お昼は食べたかい?」
ユキちゃんは首を振る。
俺はユキちゃんを抱っこし、会社の二階へ向かう。
「よし、おじちゃんがお昼を作ってやろう。あ、そうだ」
「にゃ」
そうそう、今日は家で作ったとっておきの調味料があるんだった。
◇◇◇◇◇◇
ユキちゃんをソファに座らせると、大福がソファに移動した。
白玉も大福に甘え、ユキちゃんも大福を撫ではじめる。
俺はその様子を見て安心し、調理に取り掛かる。
「ふっふっふ。家で作ってみたら意外と美味くできたんだよな……トマトケチャップ」
異世界トマト、砂糖、酢、塩、スパイス、異世界玉ねぎなどで作ってみた。ケチャップというよりはトマトピューレに近い。
ザツマイを焚き、トマトケチャップと混ぜてケチャップご飯を作る。
そして、卵を二個使ってオムレツを作る……自慢じゃないが、このオムレツを作るのはかなり得意。店に出してもいいレベルだと自負している。
そして、皿にケチャップライスを形を整えて盛り、その上にオムレツを乗せる。
「さあ、できたぞ」
「にゃあ……にゃ!? なにそれー」
「ふふふ、見ててごらん」
俺はオムレツに切れ込みを入れると、オムレツが綺麗に割れてパカッと開き、ケチャップライスを綺麗に包み込んだ。
最後に、ケチャップをオムライスにかけて完成だ。
「さあ、召し上がれ」
「にゃああ!! おいしそうー!!」
ユキちゃんはスプーンでオムライスをモグモグ食べ始めた。
「おいしい!!」
「ははは、よかった」
美味しそうに食べてくれる……それが何よりうれしいぜ。料理人冥利に尽きる……って、別に俺は料理人でも何でもなかったわ。
食後、ユキちゃんはお昼寝……と、思ったら。
「にゃあ、おじちゃん。あそぼー」
今日はすっごく元気だ。
一階の作業場で魔道具の修理をしていると、俺の背中に飛びついて登ってくる。
いつもはお昼寝なんだが、どうしたんだろう。
「ユキちゃん、お昼寝しないのか?」
「にゃ、ねむくない」
「そうか。うーん……空き地で遊んできたらどうだ? ほら、ボールもフライングディスクもあるし」
「にゃうう、ヒコロク、おひるねしてる」
ヒコロクは確かに寝ていた。
暇なのね……クロハちゃん、リーサちゃんもいないし。
仕方ないな、ここは俺の出番か。
ユキちゃんを背中にくっつけたまま隣の空地へ。
「ふーむ……」
俺の買った空き地。
本来は、車庫用の建物を作るのに必要だっただけ。分割売りとかしていなかったので、空き地を丸ごと買ったわけだが……まあ、見事に何もない。
バイク用の車庫なんてたかがしれてる大きさだし、大部分が何もない原っぱだ。
確かに、ここで一人遊びは……待てよ?
「公園の遊具とかあればいいか。でも、モノが大きいし……待てよ?」
魔法。
俺は地面に触れてイメージする。
大地の鉄分を集めて、脳内イメージに反映……土魔法でいつも作る、パーツの金型みたいに、鉄分を集めてモノを作る。
「……できた!!」
「にゃあ」
できた。
俺の手には、金属製の招き猫が完成していた。
色は銅みたいな茶色。でも、脳内イメージそのままの招き猫だ。片手で持てる大きさだ。
というか……あれ、なんか少し違うぞ。
「……違う。これ、土の鉄分を集めたんじゃない。土そのものを鉄に変換したんだ」
招き猫を作った部分の土が消えていた。だいたい、手で一つまみくらいの量だ。
詳しいことはわからんけど……俺の勘違い?
これまでは、土にある鉄を取り出すイメージで作ったけど、これは土そのものを鉄にしている。
「え、れ、錬金術? 等価交換、ってやつ? 鋼の? ウッソだろ……真理の扉とか行きたくねぇし見たくねえぞ」
「にゃああ」
「おっと……ま、まあいいや。よし、見ててなユキちゃん」
「にゃうー」
俺を両手をパンと合わせ、地面に両手で触れる……いや合わせる意味はないけど、錬金術師っぽいし、まあ誰もが通る道……ユキちゃんしかいないしいいよね。
「イメージ、イメージ……よし、来い!!」
すると、土が盛り上がっていく。
そして、徐々に、徐々に形となり……土が金属化していく。
階段、支柱、手すり……そして、滑らかに滑るような……よし!!
「できた……滑り台!!」
「……にゃあ、なにこれ」
俺が作ったのは滑り台。
公園にあるド定番の遊具。ちょっとイメージとずれたのかデカい……ま、まあいいか。
地面に深く支柱が刺さるイメージで錬成したので、安定性も抜群だ。
俺はユキちゃんを降ろし、滑り台の階段を上る。
「いいかい、これはこうやって……滑る!!」
ツツーっと滑り台を滑り地上へ。
ってか、砂場とかあった方がいい。滑った先が地面じゃ危ない。
俺は再び両手を合わせ、滑り台の着地部分を砂場にした。
「にゃあ、たのしそう!!」
「さあ、滑っていいぞ。その間、俺はもう少し遊具を作るからね」
「にゃああー」
ユキちゃんが滑っている間、俺は両手をパンと合わせた。
「せっかくだ。空き地……公園みたいにしてやろうかね」
◇◇◇◇◇◇
数時間後。
「こんにちは、ゲントクさん、ユキは……え」
「がうう!!」「きゅううん!!」
誰か来た……ああ、スノウさんか。
それに、クロハちゃん、リーサちゃんを抱いたリュコスさん、ルナールさんだ。
俺は疲労感を感じつつ立ち上がり、スノウさんの元へ。
「どうも、お迎えですか」
「え、ええ……あ、あの、ここは、公園ですか?」
「ははは……ちょっと張り切りすぎました」
そう、公園。
滑り台から始まり、ジャングルジム、ブランコ、シーソー、クライミング遊具、バスケットゴールに鉄棒、砂場、雲梯、登り棒にロープと、とにかく遊具を作りまくった。
というか……子供のころ遊んだ、今じゃ危険だと撤去された遊具も作ってしまった……いやだって、ジャングルジム辺りでもう懐かしさマックス、考え付く限りやってしまった。
おかげで、空き地はもう立派な公園。最後に東屋と椅子テーブル作って限界を迎え、そこで休んでいたってわけよ。
「にゃああー!!」
ユキちゃんは、ジャングルジムで遊んでいる。
危険かと思ったが、さすが猫の獣人……めちゃくちゃ飛び跳ねてるし、高いところから落ちてもクルっと回転し着地した。
「がうう、あそびたい!!」
「きゅるる、おろしてー!!」
クロハちゃん、リーサちゃんも遊びたがったが、今日はもう夕方なのでダメだった。
スノウさんがユキちゃんを捕まえ、深々とお辞儀。
「ゲントクさん、いつもいつも子供たちのために、ありがとうございます」
「いえいえ」
「おじちゃん、おむらいすまた食べたい―」
「ははは、いいぞ。今度はクロハちゃんたちもな」
「がるる、明日遊びにくるぞ」「きゅるるる」
ユキちゃんたちは帰って行った。
俺はため息を吐き、やりすぎた遊具を眺める。
「……こんなところに公園?」
そして、サンドローネ登場。
俺は肩を竦め、サンドローネに言った。
「俺さ、結婚願望はないし、するつもりないけど……子供は好きなんだよね」
「はあ?」
「今日からこの空き地、公園にするわ」
とりあえず、今日の仕事終わり。
さーて、サンドローネたちも来たし、飲みに行くとしますかね!!
久しぶりに一階のシャッターを開け、やや埃が被っている『魔導具修理します』の看板を出し、軽く掃除を始めて事務所へ。
事務所も綺麗に掃除をし、持ち込んだコーヒーを飲みながら朝刊を読んでいると、魔導具修理の依頼人が何人か来た。
「お~ゲントク、よーやく仕事再開かあ」
「お、ボーマンの爺さんじゃねぇか。腰痛治ったか?」
「馬鹿たれ。この歳でそう簡単に治るもんか。それより、ウチの冷蔵庫を見てくれや」
「はいよ。出張修理の依頼な」
「おーいゲントク。うちのミスト噴霧器、孫が落として割れちゃったよ。見ておくれ」
「はいはい、そっちの台において」
「すみません。アレキサンドライト商会の商品なんですけど、動かなくなっちゃって」
「はいはい。ああ、ドライヤー……そういや商品化するって言ってたな」
久しぶりなのに、出張修理、持ち込みの依頼が来た。
午前中だけで七件……アレキサンドライト商会が多くの魔導具を取り扱うようになったから、修理の依頼も増えてるんだ。それに、魔石の交換程度ならどの魔導具工房でもやるし。
それともう一つ。
「すみません。自転車がパンクしちゃって……」
そう、自転車の商品化により、トラブルも増えた。
主にパンク、そしてチェーンの破損だ。けっこう無茶な乗り方する人もいるようだ。
特にパンクが多い……よく見ると、老ラバーコブラの皮ではなく、より安価で加工のしやすいリトルスネークの皮を使っている。
大量生産なので安価なリトルスネークの皮に切り替えたのか。イェランのアイデアかな?
俺はパンクを修理するため、穴の開いた部分にラバーコブラの皮を切ったパッチを、ベタースライムっていうベタベタする粘液のスライムの接着剤で貼る。
そして、空気穴に魔法で空気を入れ、蓋をしっかりしめた。
「修理完了だ。でも、荒れ道とか走らない方がいいな……リトルスネークの皮は頑丈だけど、砂利道や荒れ道は得意じゃない。街中だけで乗るようにしてくれ」
「はい。そういえば、これは街乗り用って言ってました……野外を少しだけ走ったせいですね」
自転車の持ち主は「ありがとうございました」と言って去っていった。
さて、午前は持ち込み魔導具の修理して、午後は出張修理に行きますかね。
◇◇◇◇◇◇
午後、冷蔵庫修理から戻ると、お昼をやや過ぎた頃だった。
昼飯食って行こうと思ったが、喫茶店を営むボーマン爺さんの頼みで、とにかく早くということで向かって修理したのだ。
冷蔵庫、食材がパンパンで冷気の循環が悪く、魔力の流しすぎで魔力を伝えるパイプが破損……さらに魔石も劣化していた。
とりあえず、修理をして冷蔵庫をパンパンにするなと言っておいた。
ボーマン爺さんの淹れる紅茶は美味いんだけど、俺はコーヒー派なのであまり行かないんだよな。
俺は自分専用の自転車から降りると、隣の空き地からユキちゃんが出てきた。
「にゃああ、おじちゃーん」
『わうう』
『ニャア』
ユキちゃん、ヒコロク、白玉だ。
「ユキちゃんか。今日は一人かい?」
「にゃうう、みんな忙しいの。おしごとなの。わたし、ヒコロクのおさんぽなの」
「なるほどな。お昼は食べたかい?」
ユキちゃんは首を振る。
俺はユキちゃんを抱っこし、会社の二階へ向かう。
「よし、おじちゃんがお昼を作ってやろう。あ、そうだ」
「にゃ」
そうそう、今日は家で作ったとっておきの調味料があるんだった。
◇◇◇◇◇◇
ユキちゃんをソファに座らせると、大福がソファに移動した。
白玉も大福に甘え、ユキちゃんも大福を撫ではじめる。
俺はその様子を見て安心し、調理に取り掛かる。
「ふっふっふ。家で作ってみたら意外と美味くできたんだよな……トマトケチャップ」
異世界トマト、砂糖、酢、塩、スパイス、異世界玉ねぎなどで作ってみた。ケチャップというよりはトマトピューレに近い。
ザツマイを焚き、トマトケチャップと混ぜてケチャップご飯を作る。
そして、卵を二個使ってオムレツを作る……自慢じゃないが、このオムレツを作るのはかなり得意。店に出してもいいレベルだと自負している。
そして、皿にケチャップライスを形を整えて盛り、その上にオムレツを乗せる。
「さあ、できたぞ」
「にゃあ……にゃ!? なにそれー」
「ふふふ、見ててごらん」
俺はオムレツに切れ込みを入れると、オムレツが綺麗に割れてパカッと開き、ケチャップライスを綺麗に包み込んだ。
最後に、ケチャップをオムライスにかけて完成だ。
「さあ、召し上がれ」
「にゃああ!! おいしそうー!!」
ユキちゃんはスプーンでオムライスをモグモグ食べ始めた。
「おいしい!!」
「ははは、よかった」
美味しそうに食べてくれる……それが何よりうれしいぜ。料理人冥利に尽きる……って、別に俺は料理人でも何でもなかったわ。
食後、ユキちゃんはお昼寝……と、思ったら。
「にゃあ、おじちゃん。あそぼー」
今日はすっごく元気だ。
一階の作業場で魔道具の修理をしていると、俺の背中に飛びついて登ってくる。
いつもはお昼寝なんだが、どうしたんだろう。
「ユキちゃん、お昼寝しないのか?」
「にゃ、ねむくない」
「そうか。うーん……空き地で遊んできたらどうだ? ほら、ボールもフライングディスクもあるし」
「にゃうう、ヒコロク、おひるねしてる」
ヒコロクは確かに寝ていた。
暇なのね……クロハちゃん、リーサちゃんもいないし。
仕方ないな、ここは俺の出番か。
ユキちゃんを背中にくっつけたまま隣の空地へ。
「ふーむ……」
俺の買った空き地。
本来は、車庫用の建物を作るのに必要だっただけ。分割売りとかしていなかったので、空き地を丸ごと買ったわけだが……まあ、見事に何もない。
バイク用の車庫なんてたかがしれてる大きさだし、大部分が何もない原っぱだ。
確かに、ここで一人遊びは……待てよ?
「公園の遊具とかあればいいか。でも、モノが大きいし……待てよ?」
魔法。
俺は地面に触れてイメージする。
大地の鉄分を集めて、脳内イメージに反映……土魔法でいつも作る、パーツの金型みたいに、鉄分を集めてモノを作る。
「……できた!!」
「にゃあ」
できた。
俺の手には、金属製の招き猫が完成していた。
色は銅みたいな茶色。でも、脳内イメージそのままの招き猫だ。片手で持てる大きさだ。
というか……あれ、なんか少し違うぞ。
「……違う。これ、土の鉄分を集めたんじゃない。土そのものを鉄に変換したんだ」
招き猫を作った部分の土が消えていた。だいたい、手で一つまみくらいの量だ。
詳しいことはわからんけど……俺の勘違い?
これまでは、土にある鉄を取り出すイメージで作ったけど、これは土そのものを鉄にしている。
「え、れ、錬金術? 等価交換、ってやつ? 鋼の? ウッソだろ……真理の扉とか行きたくねぇし見たくねえぞ」
「にゃああ」
「おっと……ま、まあいいや。よし、見ててなユキちゃん」
「にゃうー」
俺を両手をパンと合わせ、地面に両手で触れる……いや合わせる意味はないけど、錬金術師っぽいし、まあ誰もが通る道……ユキちゃんしかいないしいいよね。
「イメージ、イメージ……よし、来い!!」
すると、土が盛り上がっていく。
そして、徐々に、徐々に形となり……土が金属化していく。
階段、支柱、手すり……そして、滑らかに滑るような……よし!!
「できた……滑り台!!」
「……にゃあ、なにこれ」
俺が作ったのは滑り台。
公園にあるド定番の遊具。ちょっとイメージとずれたのかデカい……ま、まあいいか。
地面に深く支柱が刺さるイメージで錬成したので、安定性も抜群だ。
俺はユキちゃんを降ろし、滑り台の階段を上る。
「いいかい、これはこうやって……滑る!!」
ツツーっと滑り台を滑り地上へ。
ってか、砂場とかあった方がいい。滑った先が地面じゃ危ない。
俺は再び両手を合わせ、滑り台の着地部分を砂場にした。
「にゃあ、たのしそう!!」
「さあ、滑っていいぞ。その間、俺はもう少し遊具を作るからね」
「にゃああー」
ユキちゃんが滑っている間、俺は両手をパンと合わせた。
「せっかくだ。空き地……公園みたいにしてやろうかね」
◇◇◇◇◇◇
数時間後。
「こんにちは、ゲントクさん、ユキは……え」
「がうう!!」「きゅううん!!」
誰か来た……ああ、スノウさんか。
それに、クロハちゃん、リーサちゃんを抱いたリュコスさん、ルナールさんだ。
俺は疲労感を感じつつ立ち上がり、スノウさんの元へ。
「どうも、お迎えですか」
「え、ええ……あ、あの、ここは、公園ですか?」
「ははは……ちょっと張り切りすぎました」
そう、公園。
滑り台から始まり、ジャングルジム、ブランコ、シーソー、クライミング遊具、バスケットゴールに鉄棒、砂場、雲梯、登り棒にロープと、とにかく遊具を作りまくった。
というか……子供のころ遊んだ、今じゃ危険だと撤去された遊具も作ってしまった……いやだって、ジャングルジム辺りでもう懐かしさマックス、考え付く限りやってしまった。
おかげで、空き地はもう立派な公園。最後に東屋と椅子テーブル作って限界を迎え、そこで休んでいたってわけよ。
「にゃああー!!」
ユキちゃんは、ジャングルジムで遊んでいる。
危険かと思ったが、さすが猫の獣人……めちゃくちゃ飛び跳ねてるし、高いところから落ちてもクルっと回転し着地した。
「がうう、あそびたい!!」
「きゅるる、おろしてー!!」
クロハちゃん、リーサちゃんも遊びたがったが、今日はもう夕方なのでダメだった。
スノウさんがユキちゃんを捕まえ、深々とお辞儀。
「ゲントクさん、いつもいつも子供たちのために、ありがとうございます」
「いえいえ」
「おじちゃん、おむらいすまた食べたい―」
「ははは、いいぞ。今度はクロハちゃんたちもな」
「がるる、明日遊びにくるぞ」「きゅるるる」
ユキちゃんたちは帰って行った。
俺はため息を吐き、やりすぎた遊具を眺める。
「……こんなところに公園?」
そして、サンドローネ登場。
俺は肩を竦め、サンドローネに言った。
「俺さ、結婚願望はないし、するつもりないけど……子供は好きなんだよね」
「はあ?」
「今日からこの空き地、公園にするわ」
とりあえず、今日の仕事終わり。
さーて、サンドローネたちも来たし、飲みに行くとしますかね!!
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