独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~

さとう

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第十章 アズマ、東方の国

連結馬車

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 ヒコロクは、列車のような連結馬車を、特に苦労することもなく引っ張り出した。
 アオ、そしてサンドローネとリヒター、サスケが地図を見せながら指示を出しての出発だ。ヒコロクなら道を間違えることもなく、アズマまで引っ張ってくれるだろう。

 さて、連結馬車について紹介しよう。
 まず一両目。ここは二階建ての休憩室だ。
 簡易キッチンがあり、冷蔵庫や製氷機、本棚などもある。二階にはソファが並び、四方は全て窓になっているので景色も楽しめる。
 サンドローネは、一階のソファに座る。

「ふう……しばらくはのんびりできそう」
「えへへ、お姉様。楽しい休暇にしましょうね!!」

 イェランがサンドローネの隣に座って甘える。
 そしてリヒターが飲み物を用意。リラックスしていた。
 俺は二階に上がり、ソファでくつろぐスノウさん、ユキちゃんを見る。

「いい景色。ふふ、楽しい旅行になるね、ユキ」
「にゃうー、たのしみ……クロハ、リーサもいればよかったー」
「そうね。でも二ヵ月の旅行は、さすがにね……」

 クロハちゃん、リーサちゃんか。
 最初は、ティガーさんたち家族も誘ったんだが、仕事が忙しいと丁重にお断りされた。子供たちだけ……って話も出たけど、さすがに二ヵ月も両親に会えないのは寂しいだろう。
 ユキちゃんはソファに転がると、スヤスヤ眠り始めた。白玉を抱っこしながら。

『にゃ』
「あら、大福さん」
『ニャァァ』
「ふふ、そうですね。お互い大変ですね」

 スノウさんは、いつの間にか乗り込んでいた大福とおしゃべりしていた。
 そうか……よく考えたら、大福も子持ちのお母さんなんだよな。ユキちゃん、白玉が一緒にいるのを見て、同じお母さんのスノウさんとは仲良しなのかもしれない。
 大福は、スノウさんの太腿の上で寝そべり、優しく撫でられていた。
 邪魔しちゃ悪い。俺は二号者へ行くことにした。

 ◇◇◇◇◇◇

 二号車は食堂車だ。
 簡易キッチン、バーカウンターがあり、椅子テーブルもちゃんと配置されている。ズレないようにテーブルはしっかり固定されている。
 定員は三十名。なかなかの広さである。
 現在、シュバンとマイルズさんがキッチンで確認をしている。

「シュバン、調味料の確認は」
「終わりました。食材の確認、お嬢様の好きなワインなどもちゃんとあります」
「よろしい。ふふ……」
「マイルズさん……楽しそうですね」
「ええ。料理長の役目を頂きましたので。この旅で、皆さんを満足させる料理を振舞うつもりです。シュバン、お手伝いをお願いしますね」
「もちろん。料理はお任せしますが、酒はオレに任せて下さいよ」
「ええ、楽しい旅になりそうですね」

 シュバンはソムリエ、マイルズさんは料理人としての役目があった。
 なので、二人はこの食堂車の管理を一手に引き受ける。
 食事に関しては問題なさそうだ……ふふふ、お酒も楽しみである。

 ◇◇◇◇◇◇

 三号車は、男子用の寝台車だ。
 二階建てで、一階は計四部屋の個室。二階は大部屋でベッドが十二個ある。
 個室といっても、ベッドに小さい椅子テーブル、窓くらいしかない。でも個室というだけでありがたいモンがある。
 二階の大部屋は、カーテンの仕切りがあるだけの二段ベッドは六つあるだけ。まさに寝るだけの部屋だ。
 
 そして四号車は女子用寝台車。
 男子と同じ間取りだ。今回、女子が多いので誰が個室を使うのかで話している。
 するとロッソたちがいた。

「まず、おねーさんが個室決定でしょ? スノウさんはユキと一緒のベッドでいいって。ユキ、一人で寝れないし個室のがいいよね。イェランはこの乗り物作った人だし、個室のがいいよね」
「つまり、あと二部屋……わたくしたちの誰か」
「……私、個室がいい」
「私も!!」
「アタシも!!」
「わたくしもですわ。となると……ここはくじ引きですわね」

 と、ブランシュがいつの間にか棒を四本持っていた。
 ロッソ、アオ、ブランシュ、ヴェルデがそれぞれ棒を掴み、一斉に引く。

「……やった」
「わたくしもですわ!!」
「ぐぬぬぅ、負けた~」
「あう、私も……仕方ない、負けを認めるわ」

 ロッソ、ヴェルデが二階の大部屋になった。

「あれ? でもさ、広い部屋を二人での方が楽しくない?」
「そうかも!! ロッソ、夜は遊ぶわよ!!」
「いいわね。アタシ、カード持ってきた」
「よーし、楽しむわよ!!」

 なんだか楽しそうだ。
 ちなみに、俺も個室だ。シュバンとマイルズさんが二階でいいって言うので、甘えることにした。

 ◇◇◇◇◇◇

 さて、五号車は貨物車だ。
 ここにはワインセラーや食材、俺たちの着替えや荷物などがある。
 サスケはここにいた。荷物のチェックをしている。

「へー、すっげぇ乗り物だな。なあオッサン」
「だろ? 足回りや頑丈さにもこだわった乗り物だ。荒れ道でも揺れが少ないし、走りながらも寝れる」
「だな。とりあえず、二週間はこいつの世話になるのか」
「一応、町を経由するルートだろ。そこでは宿に泊まる予定だ」
「ああ。と……こんな乗り物見たことないし、驚かれることは間違いないぜ」
「まあそれは仕方ない」

 サスケは荷物のチェックを終え、大きく伸びをする。

「いや~……緊張したぜ。『青』のアオ、オレを見て何か勘付いたのか、微妙に警戒してる」
「まあ、仕方ないな……アオの勘はかなり鋭いから」
「オレも『シノビ』としての意地はあるからバレるようなことはしないけど、クーロンにいたなんて知られたら怒るかもな。まあ、戦って負けるつもりは……ギリ、ないけど」
「ギリかよ」
「へへ、オレもけっこう強いからな」

 サスケは俺の腕をコツっと叩く。
 ホアキンだったこいつは、俺の攻撃を軽くいなしていた。全力で挑んでも勝てないだろう。
 するとサスケ、隅っこにあるモノを指さす。

「ところで、アレ……なんか使うのか?」
「いや、念のため……せっかく作ったんだしな」

 倉庫の隅っこには、体育座りをしている『魔導アーマー』があった。
 体育座りだとけっこう小さく見える。
 念のために持ってきたのだが、果たして使う機会はあるのだろうか。

「まあいいや。とりあえず、二週間の移動、楽しもうぜ。なあオッサン、バーカウンターで酒でもどうだ?」
「いいね。お前がみんなに慣れるよう、みんなも誘ってみるか」

 こうして、片道二週間の馬車の旅が始まるのだった。
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