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第九章 玄徳、第二のロマン

戻って来た日常

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 さて、『クーロン』に誘拐され数日が経過した。
 現在俺は、アーマーが射出されたことで天井に大穴が空いた会社の補修工事が終わったのを確認し、地下にアーマーを収納を終えた。
 呼び寄せる場合は、ちゃんとアーマー用の出入口が必要かもしれん……いちいち天井をブチ破るのだと被害が出過ぎる。
 俺は作業場に戻る。すると、ロッソたちが自転車でやって来た。

「おっさーん、遊びに来たよー」
「おう。まあ上がってくれ」
「ふふ、お邪魔しますわ」
「邪魔するわねー」

 数日ぶりにロッソたちが来た……って、あれ。

「アオは?」
「ああ、クーロンを潰すってさ。ウングと協力して、残り八人の『ドラゴン』を殺……やっつけるって。昨日聞いた話では四人は殺……倒したって。あと四人と、最後にボスを倒すって」
「そ、そうか……」

 残り八人の『ドラゴン』……これから先、末席のマオシンを倒したことで、俺を狙って刺客を送り込んでくる……なんて、異世界チックなイベントはなさそうだ。ってか四人もう死……やっつけたのかい。
 アオ、ウング……仲はよろしくないと思っていたけど、協力できるんだな。
 俺は三人を二階の事務所へ。すると、同じタイミングでユキちゃんたちも来た。

「「「おじちゃーん!!」」」
「おお、ちびっこたち。ちゃんとヒコロクの護衛もいるな」
『わう!!』

 子供たち三人が、三輪車でやってきた。
 いつもと違うのは、ユキちゃんが白玉、クロハちゃんがオオカミの子供、リーサちゃんが子狐を連れていることだ。
 子狼と子狐。クーロンのアジトにいた実験動物だ。
 ティガーさんに任せたけど、話によるとアメジスト清掃所属の獣人たちが引き取ったらしい。
 子狐、子狼は見ての通り、クロハちゃんたちのお友達になったようだ。

「さあ、上がっていいぞ。お菓子もあるからな」
「にゃうー」
「がうう」
「きゅうう」

 子供たちは嬉しそうに、相棒を連れて二階へ。
 俺は冷蔵庫からヒコロク用の骨付き肉を出し、ヒコロクに食べさせた。

『わううう』
「よしよし。はあ……やーっと日常が戻って来たなあ」

 俺はヒコロクを撫でながら、大きく伸びをした。

 ◇◇◇◇◇◇

 さて、『クーロン』がどうなったかというと。
 
 まず、ボスのマオシン……昨日、第四区の路地裏で遺体となって発見されたそうだ。
 野良犬やネズミに食われたのか、死体の損壊が酷く最初はわからなかったらしい……アオ、ウングがやったとは思うけど。
 そして、アオとウングはアジトを調べると言ってから見ていない。さっきロッソも言っていたが、断片的な情報だけで、『クーロン』の全てを二人で潰すようだ。

 魔道具技師、魔導武器職人は家に帰った。
 サンドローネがしばらく生活の面倒を見ると言っていた。復帰したらアレキサンドライト商会のために働いてもらう……みたいなことも言っていたような。
 みんな俺に感謝していた。元の生活に戻ったら、みんなで宴会をする約束もした。
 ホランドとは、今日あたり飲む予定だ。
 ホランドの店がどこにあるか聞いてみたが……驚いたことに、俺の会社から徒歩十五分もかからない場所にあった。新しい飲み仲間として、イェランたちに紹介しようと思ってる。

 それと、クーロンのアジトだが……ロッソとリーンドゥが破壊した。
 そりゃもう、隕石が激突したような破壊痕だけが残ってるらしい。
 俺は知らんけど、その破壊を見た人は恐怖したとか。

 とりあえず、もう俺の生活に『クーロン』が関わることはない。
 アオ、ウングが動いてるし、潰滅は時間の問題。
 というか……『頭は一つじゃない』とか言っていたホアキンだけど、途中でアオとウングに殺……やっつけられないか心配だ。
 なんだかんだで、人質を解放するのに、間接的に手を貸してくれたわけだし。

「はぁ……とりあえず、俺もアーマーを完成させたし、そこそこ戦えるようになった。バイクもあるし、装備関係では充実……そろそろ、洗濯機とか普通の魔道具作るかな」
『わうう』

 俺はヒコロクを撫でる。
 すると、お客さんがやって来た。

「どうもどうも、ゲントクさん」
「ああ、いらっ……」

 現れたのは、ホアキンだった。
 弁髪、猫目の格闘野郎。フツーに現れるからマジで驚いた。
 硬直していると、ホアキンは言う。

「ご安心ください。もう、あなたと敵対するつもりはございません」
「……はあ?」
「というか、『青』のアオと『紫』のウングが動いた時点で敗北しました。私の本来の主も昨日、消されました……というわけで、フリーの傭兵に逆戻りです」
「おま、傭兵だったのか?」
「ええ。雇われ傭兵です。ああ、この顔もここまでですね」
「へ?」
 
 と、ホアキンは顔をべりべりっと剥がした。
 そこに現れたのは、十七歳くらいの美少年だった。

「はぁ~暑苦しい『キャラ』だった。『ホアキン』はここまでかな」
「え、え……へ、変装!? おま、な、なんで」
「へへ、ビックリしたか?」

 驚いたなんてもんじゃない。
 ホアキン。弁髪、猫目、漢服っぽいのを着た、ややぽっちゃりしたカンフーキャラっぽかったのに、今目の前にいるのは、サラサラの髪、ぱっちりした目をした美少年だった。 
 少年は漢服を脱ぎ、身体に巻いていたスポンジみたいなのを取る。
 そして、なんというか……和風チックなジャケット、半ズボン、草履、腰には短刀を差す。
 ポカンとしていると、少年は言う。

「オッサン、オレを雇わないか?」
「……は?」
「ああ、自己紹介するぜ。オレはサスケ。アズマの『シノビ』だ。へへ、変装の名人で、ホアキンってのは『傭兵』で『武術家』の顔さ。オッサンのこと気に入ったし、信用を得るために、こうして素顔晒してんだぜ」
「…………」
「んだよ。なーに呆けてんだ?」
「いや、衝撃的なんだよ」

 サスケ……アズマ出身の、シノビ? 忍者?
 アオやウングとは違うのかな。ってか、草履っぽいブーツに、肩には武者鎧みたいな防具付けてるし、手甲も付けてる……忍者刀っぽいのも差してる。

「変装って、ホアキン……お前の、変装?」
「ああ。金稼ぐために、『クーロン』に入ったんだ。後継者争い始まってから辞めるタイミング探してたところで、オッサンが来たって感じか」
「……それで、俺に雇わないか、って?」
「そのまんまさ。護衛でも、情報収集でも、暗殺でも、なんでもやるぜ。どうだい?」
「どうだい? って言われても」
「んだよ、ノリ悪いな。護衛とかいらねぇの?」
「……うーん。ってか、いきなりすぎる。整理してからでいいか?」
「いいぜ。じゃ、その辺にいつもいるから、適当なときにでも呼んでくれや。じゃーな」

 サスケはいきなり消えた……な、なんだったんだ。
 
「……ホアキンがサスケ。変装の名人ねえ」

 そういや、アズマ出身とか言ってたっけ……あいつにいろいろ聞くのも、ありかもしれないな。
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