独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~

さとう

文字の大きさ
上 下
80 / 144
第六章 雪景色と温泉

温泉よいとこ一度はおいで

しおりを挟む
 一月になった。
 新年になったのだが……意外なことに、スノウデーン王国は変わりない。
 エーデルシュタイン王国では『新年祭り』とかやってるらしい。というかそんな面白そうな祭りやってるのついさっき知った……普通に見たいし興味あったわ。
 そして現在、ロッソたちを別荘に呼び、今後のことについて話す。

「そろそろ、王都に帰ろうと思うけど……どうだ?」
「そうねー、新年開けたし、そろそろ王都で冒険者活動しなきゃねー」
「そうですわね。きっと、指名依頼も来ていますわ」
「……温泉、気持ちよかった。でも、仕事もしなきゃ」
「ふふん。王都に『緑』のヴェルデの名を轟かせないとね!!」

 というわけで、三日後にエーデルシュタイン王国に帰ることになった。

 ◇◇◇◇◇◇

 この三日間、俺は不動産ギルドのハンクさんに別荘の管理を依頼、部屋の掃除、温泉の掃除をした。
 そして、ユキちゃんやスノウさん、イェランにお土産を買った。
 掃除を終えると、ちょうど来客が。

「すみません、こちらに伺うよう、サンドローネさんに言われてきたのですが」
「はいはーい。おお、よかった」

 来たのは、猫獣人の女性だ。
 アメジスト清掃から派遣された猫獣人女性で、俺がサンドローネに頼んで呼んでもらった。
 その理由は一つ。女性を別荘に上げ、部屋で寝転んでいる大福の元へ。

「大福、ちょっといいか」
『……にゃ』
「なんだ、と言っています」

 そう、通訳である。
 明日にはエーデルシュタイン王国に向けて出発する。
 大福、白玉は俺が世話をすると言った手前、このまま残るか、それとも一緒に行くかを聞くために、通訳として猫獣人の方を呼んだのだ。

「聞いてたかもしれんが……明日、俺はエーデルシュタイン王国に帰る。お前はどうする? ここに残るか、それとも俺と一緒に行くか……白玉も生まれたし、移動の不安はないだろ? 俺としては、一緒に来て欲しいけど……お前が決めてくれ」
『……にゃぁう』
「お前は、私を飼うと決めた。私はそれを了承した。なら、お前についていく。それに……白玉、大福と言う名を呼ばれるのは嫌いじゃない。ああ、新天地でも美味い食事、快適な環境を作るように、と言っています」

 にゃぁう、にそこまでの長文的な意味があるとは。
 まあ、一緒に来てくれるなら嬉しい。癒しはエーデルシュタイン王国でも発揮されそうだ。
 通訳の猫獣人さんにお礼を言いチップを渡した。
 
「よし。もろもろの準備は終えたし、最後の温泉でも堪能するとしますかね」

 俺は浴衣に着替え、離れにある温泉に向かうのだった。

 ◇◇◇◇◇◇

「はぁぁ~……」

 何度入っても温泉はいい。
 でも……今日が最後。明日は早朝出発だし、しばらくは入れない。

「また来年の冬、かなあ……」

 夏はリゾートでバカンス、冬は温泉地でまったり……ああ、俺の異世界生活。
 
「帰ったら……やるか」

 俺は、帰ったら一つ、やることを決めていた。
 異世界に来て、魔導具技師として経験を積んだ。いろんな伝手もできたし、金もある。
 それに、今の俺ならできる。

「作るぞ……バイク!!」

 俺は、魔道具でバイクを再現することを決意していた。
 まあ、時間はかかるかもしれん。
 昔、爺ちゃんが暴走族だった頃の友人たちが、こぞってバイクを持ち込みに来たことがあった。
 なんでも『五十年前にブイブイ言わせたワシら、人生最後にもう一度花を咲かせる』とかで、関東最強の暴走族『鬼殺愚連隊』を再結成、当時の特攻服とか着たり、リーゼントとかで着飾った老人たちがバイクで町を爆走するって事件があったっけ。
 ちなみに爺ちゃん、十二代目のヘッドとかで信奉されていた。

「あの頃、新型や古い型のバイク、二百台以上分解したりメンテしたりで、夢に見るくらいバイクに触ったからな……おかげで、その知識を総動員すれば、異世界で俺のオリジナルバイクを作ることができるかもしれない。くくく……やってやる」

 この世界、馬車がメインであとは馬とかに騎乗するのが一般的。
 交通ルールとかないし、免許制度もない。
 やべえ……かなりワクワクしている。

「……何か、面白い話?」
「え?」

 と、声が聞こえてきた。
 女湯の扉が開き、バスタオルを巻いたサンドローネが露天に入ってきた。

「え、おま」
「……ベル、鳴らしたわ。大福が入っていいって」
「……な、なんか用か?」
 
 平静を装う。
 サンドローネはバスタオルを巻いたまま、俺から少し離れた場所で湯舟に浸かる。
 ちらっと見る……長い髪はまとめられ、真っ白な首筋には赤みが差している。
 うちは濁り湯だけど、そこまで白いわけじゃない。よく見ると体のライン……って、アホか俺は。
 平静、平静……よし。

「で、なんか用か?」
「……あなたに、一応言っておこうと思って」
「何を? ってかお前、リヒターは?」
「今日は休み。私たちは三日後に王都へ戻るから、最後は自由時間よ」
「そ、そうか……で、なんだ?」
「……昨日のこと」

 ちゃぷ、と……サンドローネは肩に湯をかけた。

「クライン魔導商会……」
「ああ。世界最大の、魔道具専門商会だっけ」

 正直、俺とは縁がなさそうなところだ。

「クライン魔導商会の商会長、ミカエラは……私の幼馴染なの」
「え」
「私、彼女にだけは負けたくない」
「なんかあったのか?」
「……大したことじゃないわ。ただ、あの子は誰よりも賢くて……そして、ずるいの」
「……?」

 意味がよくわからんが……どうやら、因縁の相手っぽい。
 バトル展開にはならないよな? バリオンの時みたいなのは正直もう御免だ。

「……ごめんなさい。久しぶりにミカエラの名前を聞いてね。ところで……あなた、ミカエラに会ったのね?」
「ああ。アベルと、護衛二人連れて観光してたぞ。デカい仕事が終わったから寄ったとか」
「……そう」

 ……なんか暗いな。
 あまり踏み込んじゃいけない気がする。でも、言っておく。

「悪いが、俺にできることは魔道具づくりだけ。俺に何か期待してんなら」
「馬鹿ね。そんなこと、私が期待するわけないじゃない。それと……何か作るなら、ちゃんと仕様書を用意しておきなさいよ」
「あー、悪いが、今考えてるのは、まだ実用化とか考えていない。まず、俺だけの楽しみとして作るつもりだ」
「はあ?」
「ふふん。男のロマンってやつだ」
「……へんなの」

 サンドローネはクスっと笑った。
 よくわからんが、少しは元気になったかな?

「さて、上がるか。なあ、このあと酒でも飲みに行くか?」
「いいわね、少し飲みたい気分」

 と、サンドローネはざばっと立ち上がり……。

「……おお」
「あ」

 素で立ち上がってしまったのか、身体を隠すのを忘れ、その肢体を俺の前に晒すのだった。

 ◇◇◇◇◇◇

 翌日。
 俺は荷物を用意し、商業ギルドが用意した荷車の前にいた。
 すると、ヒコロク、ロッソたち、ヴェルデ、そしてシュバンとマイルズが来た。
 
「おっさん、おはよー」
「おはようございます。おじさま」
「……おはよ、おじさん」
「ゲントク。いい朝ね」
「おう。四人は相変わらず元気いっぱいだな」

 ヒコロクを荷車にドッキングさせ、荷物を積む。
 ドアを開けると、俺の足元にいた大福、白玉が室内へ。さっそくソファーに飛び乗ってくつろぎ始めた。
 シュバンとマイルズは最初に乗って来た馬車に乗り、ヴェルデはロッソたちの馬車へ。
 俺も馬車に乗り、ロッソたちに言う。

「じゃあ、帰るか」
「うん!! 楽しかった温泉ともお別れかあ……」
「ふふ、別荘はありますし、また冬に来ましょうか」
「……お土産、いっぱい買った」
「ふふ。いい思い出がたくさんできたわ。それも……ゲントク、あなたのおかげかもね」
「ははは。さて……エーデルシュタイン王国に帰るとするか!!」

 アオが「ヒコロク、出発」と言うと、ヒコロクが遠吠えし歩き出した。
 温泉の町レレドレ……一か月ちょいだけだが、いい思い出になった。

「さて、帰ったらバイク作り、始めるか」

 温泉の町レレドレ、また来るからな!!
しおりを挟む
感想 62

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

流石に異世界でもこのチートはやばくない?

裏おきな
ファンタジー
片桐蓮《かたぎりれん》40歳独身駄目サラリーマンが趣味のリサイクルとレストアの資材集めに解体業者の資材置き場に行ったらまさかの異世界転移してしまった!そこに現れたのが守護神獣になっていた昔飼っていた犬のラクス。 異世界転移で手に入れた無限鍛冶 のチート能力で異世界を生きて行く事になった! この作品は約1年半前に初めて「なろう」で書いた物を加筆修正して上げていきます。

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

処理中です...