独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~

さとう

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第六章 雪景色と温泉

エアリーズの秘湯

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「あぁ~、かわの、ながれの、よぉぉぉぉ~にぃぃぃ~……ってかあ」

 スーパー銭湯計画が始まって一週間……俺の仕事は終わり、ただひたすら温泉を満喫していた。
 現在、別荘の露天風呂でデカい声で歌を歌いながら湯を満喫。
 いい感じに温まり、俺は風呂を出た。

「あぁぁ~……朝風呂最高」

 浴衣に着替え、タオルで髪を拭きながらキッチンへ。
 冷蔵庫に入れておいた自己流の浅漬け(野菜を適当に塩漬けしただけ)と、キンキンに冷えたミニ樽からジョッキにエールを注ぎ、コタツに入る。
 そして、まずはエールを一気飲み。

「っかぁぁ!! 朝ビール最高ぅぅ……ぉう」

 この背徳感……最高。
 俺は浅漬けを食べる。異世界の白菜、人参、キュウリなどを漬けてみたが、意外にも美味い。
 でも、白菜は青く、キュウリは黄色、人参は桃色なんだよな……異世界じゃこれが当たり前だけど、形だけ俺の知ってる野菜で色だけ違うのは、ちょっと食うのに勇気が必要だった。
 鍋とかで使う野菜は普通の色なんだが……この辺でしか収穫されない野菜らしい。
 まあ、うまいからいいや。

「はぁ~……今日は何すっかなあ」
『みー、みー』
「ん? おう白玉。今日は何する?」

 この辺はだいぶ散策した。
 観光地なので、酒場よりは土産物店やカフェが多い。
 細道を通って隣の区画に行くと、飲み屋が豊富にあったのでよく利用している。
 昼間から飲み歩くのも悪くない。それか、別荘の反対側にある温泉スポットを巡るのもいいなあ。

『……にゃ』
「ん? おう大福。珍しいな」

 考えていると、大福が俺の元へ。
 頭を撫でると、そのままコタツに座る俺の胸元へ潜り込み、白玉と一緒に丸くなった。
 コタツに猫……最強の組み合わせだ。
 しばし、猫二匹を撫でていると、インターホンが鳴った。

「はいはーい。悪いなお前ら、来客だ」

 猫たちをどかして玄関へ行くと、そこにいたのは。

「おっさん、やっほー!!」
「ふふ、おじさま、遊びに来ましたわ」
「……おじさん、飲んでる?」
「もう、だらしない生活ね!!」

 ロッソ、ブランシュ、アオ、ヴェルデ。もはやおなじみとなった四人だ。
 四人を居間に案内すると、アオがさっそくコタツに入り大福を抱っこする。
 ブランシュ、ヴェルデが並んで座り、ロッソがその向かい側、俺はアオの向かい側に座る。
 果実水を出し、俺はロッソに聞いた。

「今日はどうした? 何か用事か?」
「うん。あのさ、エアリーズお姉さんから『レレドレの秘湯』の話聞いてさ、おっさんのこと誘いに来たのよ」
「……レレドレの、秘湯?」
「うん。えーっと、なんだっけ……ブランシュ、お願い」
「はいはい。エアリーズ様曰く、『温泉の町レレドレで一番の名湯』らしいですわ。そこはエアリーズ様が管理している場所で、エアリーズ様が認めた方しか入ることのできない湯だそうです」
「そんな湯があるのか……すげえな」

 一番の名湯……なんか、聞くだけでワクワクする。
 アオは、大福を撫でながら言う。

「エアリーズ様、おじさんを誘ってみんなで入っていいって。鍵もらった」

 アオの手には、ゴツイ金属のカギがあった。
 
「ふふん、ゲントク。最高の温泉を味わいに行きましょう!!」
「いいね。よし、今日は最高の温泉でゆっくりするか」

 さっそく、俺たちは最高の温泉とやらに向かうのだった。

 ◇◇◇◇◇◇

 エアリーズが管理している温泉地は、レレドレの北部、エアリーズが住む区画にある。
 やはりエアリーズもエルフ。エアリーズの管理する土地は森に包まれ、入口には木製の門があった。
 アオは、その門に鍵を差して捻り、門を開ける。
 その先には道があった。

「この奥みたい」
「すごいな……町の中なのに、森の中みたいだ」

 森の道を進むと、小さな建物が見えた。
 掘っ立て小屋……と言うにはしっかりした作りだ。一軒家なのか二階建て。
 家に入ると、そのまま脱衣所になっていた。二階は休憩所で、そのまま寝れそうだ。
 脱衣所の奥に扉があり、開けてみると。

「「「「「おお~……!!」」」」」

 俺たち五人、驚いた。
 そこにあったのは、二十五メートルプールほどの大きさの岩風呂だった。
 目隠しも何もない、森の中にポツンとある巨大な温泉。
 濁り湯。乳白色の湯だ。触れてみると温かく、トロッとしている。不思議と甘い香りもした。

「すっげえな。どういう成分なんだ?」
「ね、ね、入ろうよ!!」
「ちょ、おばか!! 服を脱ぐのが早いですわ!!」

 ロッソが脱ぎ始めたので、俺は二階へ避難……。

「あれ? おっさん、どこ行くの?」
「二階で寝てる。四人でゆっくり入ってくれ」
「えー? いいじゃん、みんなで入ろうよ!! ね、いいよね!!」

 いやいやいやいや、何言ってんだお前は。

「ね、いいよねブランシュ」
「う、うーん……まあ、湯気がすごいですし、広いですし……うーん」
「アオ、どう?」
「……恥ずかしいけど、見ないならいい」
「ヴェルデは?」
「い、嫌よ!! み、未婚の女性が、婚約者でもない男性と一緒に、お風呂なんて!!」

 ヴェルデの反応が正しいぞ。
 というか、そんな美味しいイベント、俺には相応しくない!!

「じゃ、三対一で、おっさんも一緒で決定!! よっしゃいちばーん!!」
「うおっ!?」

 ロッソ、素っ裸になると湯舟に飛び込んで泳ぎ始めた。
 いやいやいやいや、さすがにまずいだろ。

「……おじさん」
「お、おう。悪い、二階にいるから」
「……服脱ぐからあっち向いてて。お風呂入ったら、入ってきていいよ」
「え」
「……はあ。まあ、わたくしもいいですわ。おじさまには感謝していますし、サービスしてあげますわ」
「さ、サービス?」
「……ふ、二人とも、本気?」

 アオ、ブランシュが脱ぎ始めたので、俺は慌てて後ろを向いた……って、なんだこのイベントは!? こ、混浴イベント!? マジで!?
 二人が湯舟へ向かい、残ったのは俺とヴェルデ。

「…………」
「あ、あ~……シュバンとマイルズ、今日はいないんだな」
「……別荘の掃除をしてるわ。というか、本気で入るの?」
「……はぁ。お前が嫌なら行かないよ。ロッソたちはまあ、そこそこ付き合いあるし、なんというか……距離近いしな」
「はあ……で、あなたは皆さんのこと、どう思ってるの?」
「友人、それと相互契約相手かな。まあ、俺おっさんだし、間違っても恋愛感情とかはないぞ」
「……はあ、仕方ないわね。言っておくけど、私はロッソたちみたいに甘くないので。不埒な真似をしようものなら、ぶっ飛ばしますからね……はい、後ろ向く!!」
「お、おう」

 後ろを向くと、ヴェルデが服を脱ぐ音が聞こえてきた。
 そして、ドアが開き言う。

「じゃ、ロッソたちを浴槽の奥へ誘導しますから、あなたは手前の方ね」
「……ああ、悪いな」

 なんか混浴することになってしまった……まあ、別にいいか。

 ◇◇◇◇◇◇

 服を脱ぎ、しっかり腰にタオルを巻いて浴場へ。
 さすがに浴槽がデカい。プールサイズの浴槽の奥に、ロッソたちがいる……が、湯気でよく見えない。
 俺は素早く身体を洗い、浴槽へ。

「う、ォォォ……なんっじゃこりゃあ」

 とろっとろの湯。すごい、なんだこれ……甘い香り、そして沁み込むような心地よさ。
 ヤバイ、溶けそう。身体がドロドロになりそう。

「あぁぁ~……おっさん、ヤバいねこれ」
「おう……って、ロッソ!? おま、近いっての!!」

 ロッソが一メートルくらい隣にいた。
 
「ちょっと、近い!! ロッソ、バカ!!」
「ろ、ロッソ!! あなた。こっちに戻って来なさい!!」

 ヴェルデ、ブランシュが遠くで叫んでいる。

「……きもちいい」
「うおお!?」

 なんと、アオも近くにいた。
 首まで湯に浸かってるおかげで見えない。だが近い!!
 ロッソは俺の前を湯に浸かったまま横切り、アオの元へ。

「きもちいいね~……最高の湯ってのも納得だわ~」
「……同感。不思議な湯」

 ……まあいいや。
 肌が見えるわけじゃないし、俺も手ぬぐいを頭に乗せた。

「なぁ、ここ出たら冷たいエール飲み行かないか?」
「行く!! ね、アオもたまには飲まない?」
「……うん。おじさん、おごって」
「ああ、いいぞ」

 と……ここで、ブランシュが這うようにこっちへ。
 首から下が見えない状態で、アオの隣へ来た。

「お、おじさま……こっちを見ないでくださいね」
「おう。安心しろ、全然見えないから」
「う~……やっぱり、少し恥ずかしいですわね」
「ブランシュ、おじさんは見えても気にしないと思う。大丈夫」

 ……そ、それはどうかな。
 まあ、正直なところ……ロッソたちの裸より、温泉の気持ちよさが遥かに上だ。今はこの快楽に身をゆだねたいとおもうのが、しぜん。

「あぁぁ……なあ、今日って何日だっけ」
「えっと……十二月の、二十日くらいだったかなあ」
「そっかあ……とりあえず、今月いっぱいは温泉堪能するかあ」

 温泉、別荘、美味い物に、温泉まんじゅうに……やべえ、思考が蕩ける。
 すると、ヴェルデがすすーっとやって来た。

「こ、こっち見たら殺しますから!!」
「お~」
「……なんか適当な返事ね」

 悪い、裸より温泉だわ。
 エアリーズ、いい温泉ありがとう……今度会ったらおごってやるか。
 するとロッソ。

「あれれ、ヴェルデ……アンタ恥ずかしいんじゃなかったの?」
「だ、だって……みんな楽しそうだし、仲間外れ嫌だし」
「ふふ。ヴェルデって、とってもかわいい子ねえ」
「……女の子みたい」
「な、み、みんなして馬鹿にしないで!! この『緑』のヴェルデ、寂しいとかないし!!」
「「「ヴェルデ、かわいい~」」」
「う、うるさーい!! もう、バカにしないでよー!!」

 ヴェルデ、ざばっと立ち上がり、両手を上げて猫のように威嚇。
 俺はぼーっとしつつも、その身体をじっくり見てしまった。

「おお……」
「え? あ」

 揺れる胸、白い肌、そして見えちゃいけない部分……いやあ、お約束では湯けむりとか、謎の光が入って隠れるんだが……これ、リアルなのよね。

「…………っひ」
「すまん」

 ヴェルデの絶叫が周囲に響き渡り、森の木々を揺らすのだった。
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