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第六章 雪景色と温泉

大温泉水脈

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 さて、俺の別荘に戻って来た。

「へえ……立派ね」
「十二億セドルの物件だ」
「じゅ……あ、あなた思い切ったわね。よし決めた、リヒター、今日はここに泊まるわよ」
「はい、お嬢」
「別にいいけど、風呂は温泉で混浴だ。俺と一緒でもいいか?」
「……べ、別にいいわ。家主のあなたの家だし、裸くらいどうってことないわ」
「いや冗談だけど……お前、この手の冗談に弱いよな」
「……殴るわよ」

 あまり煽ると本気でキレるかもしれないのでこれ以上は言わない……まあ、混浴はマジだしちょっとだけ本気だった。
 エアリーズは、部下二人と一緒に来た。
 二人とも女性のエルフだ。外見は二十歳くらいだけど……やっぱ仕事できそうな感じだ。
 屋敷に入り、コタツが置いてある居間へ。

「ま、適当に座ってくれ」
「……これ、コタツよね。椅子は?」
「コタツってのは本来、座敷で座って温まるモンだ」

 俺はエアコンのスイッチを入れる。すると、寝ていた大福、白玉が起きた。

『…………にゃ』
『みー、みー』
「おお悪い。起こしちまったか」
「……猫? あなた、猫飼ってるの?」
「ああ。ここの守り神みたいな猫だ。百年猫って知ってるか?」
「聞いたことあるわ。でも、初めて見た……真っ白で可愛いわね」
『みー』

 白玉がサンドローネに擦り寄ると、サンドローネは顔を綻ばせて白玉を撫でた。
 大福は相変わらずクッションで寝そべって動かない。俺たちを一瞥すると、また目を閉じた。
 サンドローネは、しばし白玉を愛でていたが、エアリーズたちが待っているのを見てハッとなり、慌ててコタツに入った。
 俺は紅茶を淹れ、全員に出す……ちなみにリヒターはコタツに入らず、サンドローネの後ろに控えた。
 エアリーズはさっそくいう。

「では、相談だ。実は……スノウデーン王国領内に、大規模な温泉水脈が発見されてな。その地を開発することが決まった」
「おお~、いいじゃん」
「なるほど……開発ですか」
「ああ。そして、その水脈の位置が、ちょうどエーデルシュタイン王国とスノウデーン王国の間にあってな、せっかくなのでそこに町を作り、王国と国境を結ぶ中継地点にしようという案が出た」
「おお、そりゃいい……で、何が問題なんだ?」

 首を傾げる俺。正直、問題がないように思える。
 エアリーズは言う。

「まず……国王の希望でな、『これまでにない温泉地にしたい』と言っている。そして二つ目は問題だ……新天地を開拓し町を作るのはいいが、移住希望者がいない」

 話を聞くと、わざわざこの厳しい雪国で、苦労して開拓した町や村を出て、新たな地でゼロから開拓をして家を建てて住もうなんて住人は、スノウデーン王国にはいないそうだ。

「そしてもう一つ。水脈には討伐レートSSの大型魔獣、『キングロックタイタン』がいる。これを排除するのも依頼でな……まあ、私に倒せないことはないが、かなり手間がかかる」

 キングロックタイタン……名前からしてヤバそうだな。
 すると、サンドローネがニヤリと笑う。

「エアリーズ様。先の話ですが、開拓に関しての手は足りていますか?」
「……いや、手を貸してくれる商会はあるけどね。そこまで規模は大きくない。二千年以上生きているけど、私は自分のことばかりだったから、ラスラヌフやファルザンのような人脈はないんだ」

 ファルザンって誰だろう……まあ、今この場で出た名前からして、十二星座の魔女なんだろうけど。
 サンドローネが言う。

「開拓の手なら、私にお任せください」
「手があるのかな?」
「ええ。とびっきりの」
「……あ、まさかお前」

 すると、サンドローネが微笑んで頷いた。

「ええ。アメジスト清掃に依頼するわ。獣人の力なら開拓で大いに役立つでしょうね」
「そりゃいい案だ」
「リヒター、話は聞いていたわね? 私の名前で手紙を一筆、至急バリオンに届けて」
「かしこまりました」

 リヒターは俺に「隣の部屋を借りても?」と言って出て行った。
 そして俺が言う。

「魔獣に関しては、ロッソたちに頼むのはどうだ? バカンス中だけど……まあ、俺からも頼んでやるよ」
「ああ、『鮮血の赤椿スカーレット・カメリア』か……すごい大物だ。やってくれるだろうか」
「まあ、頼んでみないとな。それに今はヴェルデもいるし、『七虹冒険者《アルカンシエル》』が四人もいれば問題ない……かな」

 そのキングロックタイタンがどのくらいの強さか知らんけど、なんとかなりそうな気がする。
 さて、最後の問題だ。

「あとは、住人の問題、そして温泉地のアイデアか……」

 ふむ、温泉地か。
 俺は少し考える。

「家を建て、住人を募集……仕事も考えないといけないし、商人などに依頼して店を出すことも考えないといけない。他にもやるべきことが山ほどある」

 エアリーズが考え込む。部下二名もウンウン唸っていた。
 サンドローネも考えつつ言う。

「他国や他の町から『新しい温泉が見つかったので町を作ります、ぜひ来てください』って募集したら来るかしら……新天地を求めて移住希望する人はいるかもしれないけど、わざわざ真冬の、うすら寒い土地に住むというのはね……」

 と、俺は少し思った。

「…………待てよ?」
「なに? あなた、何か思いついたの?」
「まあ、なんというか」

 俺は、考えたことをそのまま言ってみた。
 すると、サンドローネもエアリーズも驚いていた。

「……なるほど。確かに、それはいいかもしれん」
「へえ……いいわね」
「まあ、最初は問題あるかもしれんがな。検討する価値あるんじゃないか?」
「……いいね。よし、その案で行こう。サンドローネ、アレキサンドライト商会に依頼していいのかな?」
「もちろんです。アレキサンドライト商会、スノウデーン支店にお任せください」
「よし、話は終わったか。じゃ、まだ少し早いけど酒でも……」
「待ちなさい。あなた、『鮮血の赤椿スカーレット・カメリア』に助力を願うって自分で言ったんだから、ちゃんとお願いしてきなさい」
「……ああ、そうだった。じゃあ、行くわ」

 うう、メシでも行こうと思ったんだが……まあ、仕方ない。
 俺は立ち上がり、ロッソたちに会うべく別荘を出るのだった。

「ゲントク、この部屋打ち合わせで少し使わせてもらうわよ」
「ああ、好きにしろ」

 なんだか俺……温泉地なのに、ぜんぜん観光してないし仕事してるわ!!
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