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第四章 海の国ザナドゥでバカンスを
モーターボートエンジン
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「おっさーん!!」
「おじさま、失礼しますわ」
「おじさん、入るよ」
「にゃあ。おじちゃーん」
早朝、朝日を浴びながら、ウッドデッキでコーヒーを飲みつつ新聞を読んでいると、異なる呼び方で俺を呼ぶ声がした。
ドアを開けると、ロッソたち、木箱を背負ったヒコロクと、ヒコロクの頭の上にいるユキちゃんがいた。
「おお、朝っぱらからどうした」
「嫌ですわ。素材を届けに来ましたのよ」
ブランシュがヒコロクが背負っていた木箱を下ろすと、そこには魔獣の素材が入っていた。
確認すると、銀色に輝く骨……メタルオークの骨が入っている。
指を滑らせ、コンコン叩いて確認。うん、硬さも申し分ないし、軽さもいい。
「これはいいな。よし、さっそく地下に運ぼう」
「お手伝いしますわ」
「私も」
「アタシも!!」
「にゃー」
みんな手伝ってくれたので、一回で運び終えた。
一階に戻り、みんなに果実水を出す。
「ところで、今日は……ユキちゃんがいるってことは、休みか?」
「うん。ユキにも水中スクーターで遊んでもらおうと思ってね。ねーユキ」
「にゃーう」
「ふふ、かわいいですわね」
「……ちなみにスノウさん、別荘のお掃除してから来るって」
「なるほどな。じゃあ、昼飯は……そうだ、俺が作ってもいいか? ちょっと試してみたいことがあるんだ」
「お? おっさんの手料理か。いいね。みんないい?」
「もちろんですわ」
「……楽しみ」
「うにゃ」
さっそくみんなは空き部屋で水着に着替え、プライベートビーチへ向かった。
俺ものんびりしたいが、約束を果たさねば。
「さて、モーターボートエンジン、やっちまうか」
◇◇◇◇◇◇
地下室へ移動し、俺はさっそく仕事を始める。
「魔石とかの下準備は終わってるから、素材加工だな」
エンジンとなる魔石、魔力を伝えるドライブシャフトに、プロペラを回転させるピニオンギア。そしてスクリュー部分……魔石だと、冷却とか考える必要ないから楽でいいし、構造もシンプルだ。
「ドライブシャフト……メタルオークの骨は理想的だ。軽いし頑丈……チタン合金くらい硬いかも。でも……俺の魔法なら」
指先に炎を集中させ、バーナーのようにする。
シャフトに加工し、設計し、測量もした通りピニオンギアも作成する。土魔法の金属錬成で型を作り、ドロドロに溶かしたメタルオークの骨を注ぎ込んで完成させる。
俺の火魔法……溶鉱炉をイメージしながら発動させたら、メタルオークの骨も軽々と焼き切れた。魔法ってイメージなんだな。
「……よし。素材加工はこんなもんか。あとは、図面通り組む」
パーツを組み、魔力操作舵と名付けた舵を取り付ける。
この舵に魔力を流すことでドライブシャフトが回転し、ピニオンギアと連動してスクリューが回転する仕組みだ。
魔力操作舵は二本ある。それぞれ前進、後退用だ。
魔力を流すとドライブシャフトが回転、スクリューも回転する……大めに魔力を流すと回転数も上がり、速度も増すだろう。
「よし、いい感じ……とりあえず、外に運んで始動テストだ」
試作機を担ぎ、俺は外に出た。
◇◇◇◇◇◇
外に出ると、波打ち際でロッソたちが遊んでいた。
ユキちゃんを抱っこしているブランシュと、貝殻を見せているアオ、ロッソは……お、浮上してきた。どうやら海に潜ってたみたいだな。
「ゲントクさん」
「ん? おお、スノウさん」
スノウさんが、パラソルの下で座っていた。
うーん、水着がまぶしい……正直言うが、メチャクチャ俺の好みドストライクなんだよな。
「お疲れ様です。何か、お手伝いしますか?」
「ああいや、大丈夫です。あ、そうだ……あの~、お願いしてもいいですか?」
「ええ、もちろん」
俺はスノウさんに買い物をお願いすると、スノウさんは「お任せください」と出て行った。あとでしっかり給料支払うか。
そして、波打ち際にあったボートへ向かい、取り付け作業する。
「おじさん」
「ん? アオ、どうした?」
「ううん、見に来ただけ」
今日の水着はタンクトップビキニだ。俺がしゃがんで作業しているせいか、胸の谷間が見えている。まあ……見てしまうのは男のサガなので許してくれ。
俺はボートに台座を作り、金槌でカンカン打つ。外れないようにしっかりと固定し、そこにモーターボートエンジンを取り付けた。
「うし、こんなもんか。さて……起動実験だ」
「魔道具?」
「ああ。モーターボートエンジン……船を動かす魔道具だ」
「おおー」
俺はボートを押し、海へ。
そして、ボートに乗り込み、魔力操作舵を握ると。
「……おいアオ、なんで乗る?」
「ダメ?」
「まだ実験だし、危ないかもしれないぞ」
「なおさら乗る。私、水魔法大得意。船が転覆しても、魔法でおじさんを助けられる」
「……まあ、確かに。じゃあ、掴まってろ」
俺は魔力操作舵にゆっくり魔力を流し込む……すると、スクリューが回転し、ゆっくり船が動き出した。いいね、始動は上々だ。
「よし、少しずつ速度を出す……」
「おじさん、プライベートビーチを出て、一般開放されてるビーチに行ったらどうかな」
「そういや、行ったことないな……よし、行ってみるか」
魔力を少しずつ増やしていくと、スクリューの回転数も上がる。
そして、ロッソたちが気付いた。
「あー!! なんか楽しそう!!」
「にゃ」
「あらあら、アオってばずるいですわ!!」
アオはボートの上で手を振り、「おじさん、速度上げて」と言う。
まあいいか。魔力を多く流すと、時速四十キロくらいまで上がった。
「……うん、これくらい出れば、船の速度としては上々だろう」
「おじさん……綺麗」
「ん? おお……」
プライベートビーチから出て、一般ビーチを走る。
水平線が見えた。太陽が輝き、とても美しい。
そして一般ビーチ。人が多くいるし、出店もあるのかいい匂いがする。
何人かこっちに気付き、驚いているようにも見え、アオが手を振っていた。
プライベートビーチからけっこう離れ、俺は舵の操作もする。
右、左、急カーブ、後退と操作……問題はない。
だが、最後の問題がある。
「あの、アオ」
「なに?」
「起動試験、最後にやらなくちゃいけないことがあるんだが……」
「なにをするの?」
「……最高速度」
そう、最高速度に耐えられるかどうかチェックする。
ボートは木材、そして金属の補強がしてあるのでかなり頑丈だ。メタルオークの骨を使ったエンジンも頑丈だろう。
だからこそ、最高速度も試さないといけない。
「ちょっと怖いかもしれんが、直線距離で速度を出す……掴まっててくれ」
目算で、プライベートビーチまで直線距離で三キロくらいある。
まっすぐ、全速力で戻ってみる。アオは頷いた。
「わくわくする。おじさん、おねがい」
「ああ……しっかり掴まってろ。マジで」
「うん、おねがい」
俺は深呼吸し、魔力操作舵を強く握り、思い切り魔力を流した。
すると、スクリューが暴れるように高回転。
「───っ!!」
「おお」
速度が一気に出た。
やばい、速すぎる。百キロ以上出てる。まずい。
ビュィィィィィィン!! と、ウィリーするように、跳ねるようにボートが海面を進む。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
「おおおおおー!!」
ドパン!! と、ボートが跳ねた。
俺は魔力操作舵を離しボートに掴まる。ジャンプ台もないのにマジで飛んだ。
上空十メートル以上、マジで飛んでる。
「やべええええええええええええ!!」
「任せて、『水の柱』!!」
アオが魔法を使うと、海面から水の柱が突き上げ、ボートが着水……そのままゆっくりと水の柱が下がり、別荘前のプライベートビーチに着水した。
砂浜にボートが上がり、俺は放心。
「……死ぬかと思った」
「楽しかった。まさか飛ぶなんて」
「想定外。波がジャンプ台みたいになって跳ねた……うぉぉ、こ、怖かった」
船から降りると、ロッソたちが来た。
「ずるい!! おっさん、アタシも乗りたいっ!!」
「すごく楽しそうでしたわ!!」
「にゃうう」
「ふっふっふ。楽しかった」
「……怖かったぜ、マジで」
ロッソ、ブランシュが俺の腕を掴んで揺らす。
「ずるいー!! ね、ね、もう一回やろ!!」
「だ、ダメだって。今のは起動試験で、これは試作機で渡すやつなんだ」
「むうう、アオばっかりずるいですわ!!」
「ふふふ。おじさんの動きを見てたから乗れた。ごめんね」
「勝ち誇ってるのムカつくぅ!! おっさんー!!」
「だ、ダメだって。製品出たら買ってくれ」
というか、ロッソもブランシュも胸を押し付けないでくれ!! 子供だから興味ないとか思ってたが、身体は立派な女なんだから!!
こうして、スノウさんが買い物から戻ってくるまで、俺は二人に追い回されるのだった。
「にゃあ」
「ふっふっふ。私、勝ち組」
アオは、いつの間にかユキちゃんを抱っこし、勝ち誇っているのだった。
「おじさま、失礼しますわ」
「おじさん、入るよ」
「にゃあ。おじちゃーん」
早朝、朝日を浴びながら、ウッドデッキでコーヒーを飲みつつ新聞を読んでいると、異なる呼び方で俺を呼ぶ声がした。
ドアを開けると、ロッソたち、木箱を背負ったヒコロクと、ヒコロクの頭の上にいるユキちゃんがいた。
「おお、朝っぱらからどうした」
「嫌ですわ。素材を届けに来ましたのよ」
ブランシュがヒコロクが背負っていた木箱を下ろすと、そこには魔獣の素材が入っていた。
確認すると、銀色に輝く骨……メタルオークの骨が入っている。
指を滑らせ、コンコン叩いて確認。うん、硬さも申し分ないし、軽さもいい。
「これはいいな。よし、さっそく地下に運ぼう」
「お手伝いしますわ」
「私も」
「アタシも!!」
「にゃー」
みんな手伝ってくれたので、一回で運び終えた。
一階に戻り、みんなに果実水を出す。
「ところで、今日は……ユキちゃんがいるってことは、休みか?」
「うん。ユキにも水中スクーターで遊んでもらおうと思ってね。ねーユキ」
「にゃーう」
「ふふ、かわいいですわね」
「……ちなみにスノウさん、別荘のお掃除してから来るって」
「なるほどな。じゃあ、昼飯は……そうだ、俺が作ってもいいか? ちょっと試してみたいことがあるんだ」
「お? おっさんの手料理か。いいね。みんないい?」
「もちろんですわ」
「……楽しみ」
「うにゃ」
さっそくみんなは空き部屋で水着に着替え、プライベートビーチへ向かった。
俺ものんびりしたいが、約束を果たさねば。
「さて、モーターボートエンジン、やっちまうか」
◇◇◇◇◇◇
地下室へ移動し、俺はさっそく仕事を始める。
「魔石とかの下準備は終わってるから、素材加工だな」
エンジンとなる魔石、魔力を伝えるドライブシャフトに、プロペラを回転させるピニオンギア。そしてスクリュー部分……魔石だと、冷却とか考える必要ないから楽でいいし、構造もシンプルだ。
「ドライブシャフト……メタルオークの骨は理想的だ。軽いし頑丈……チタン合金くらい硬いかも。でも……俺の魔法なら」
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俺の火魔法……溶鉱炉をイメージしながら発動させたら、メタルオークの骨も軽々と焼き切れた。魔法ってイメージなんだな。
「……よし。素材加工はこんなもんか。あとは、図面通り組む」
パーツを組み、魔力操作舵と名付けた舵を取り付ける。
この舵に魔力を流すことでドライブシャフトが回転し、ピニオンギアと連動してスクリューが回転する仕組みだ。
魔力操作舵は二本ある。それぞれ前進、後退用だ。
魔力を流すとドライブシャフトが回転、スクリューも回転する……大めに魔力を流すと回転数も上がり、速度も増すだろう。
「よし、いい感じ……とりあえず、外に運んで始動テストだ」
試作機を担ぎ、俺は外に出た。
◇◇◇◇◇◇
外に出ると、波打ち際でロッソたちが遊んでいた。
ユキちゃんを抱っこしているブランシュと、貝殻を見せているアオ、ロッソは……お、浮上してきた。どうやら海に潜ってたみたいだな。
「ゲントクさん」
「ん? おお、スノウさん」
スノウさんが、パラソルの下で座っていた。
うーん、水着がまぶしい……正直言うが、メチャクチャ俺の好みドストライクなんだよな。
「お疲れ様です。何か、お手伝いしますか?」
「ああいや、大丈夫です。あ、そうだ……あの~、お願いしてもいいですか?」
「ええ、もちろん」
俺はスノウさんに買い物をお願いすると、スノウさんは「お任せください」と出て行った。あとでしっかり給料支払うか。
そして、波打ち際にあったボートへ向かい、取り付け作業する。
「おじさん」
「ん? アオ、どうした?」
「ううん、見に来ただけ」
今日の水着はタンクトップビキニだ。俺がしゃがんで作業しているせいか、胸の谷間が見えている。まあ……見てしまうのは男のサガなので許してくれ。
俺はボートに台座を作り、金槌でカンカン打つ。外れないようにしっかりと固定し、そこにモーターボートエンジンを取り付けた。
「うし、こんなもんか。さて……起動実験だ」
「魔道具?」
「ああ。モーターボートエンジン……船を動かす魔道具だ」
「おおー」
俺はボートを押し、海へ。
そして、ボートに乗り込み、魔力操作舵を握ると。
「……おいアオ、なんで乗る?」
「ダメ?」
「まだ実験だし、危ないかもしれないぞ」
「なおさら乗る。私、水魔法大得意。船が転覆しても、魔法でおじさんを助けられる」
「……まあ、確かに。じゃあ、掴まってろ」
俺は魔力操作舵にゆっくり魔力を流し込む……すると、スクリューが回転し、ゆっくり船が動き出した。いいね、始動は上々だ。
「よし、少しずつ速度を出す……」
「おじさん、プライベートビーチを出て、一般開放されてるビーチに行ったらどうかな」
「そういや、行ったことないな……よし、行ってみるか」
魔力を少しずつ増やしていくと、スクリューの回転数も上がる。
そして、ロッソたちが気付いた。
「あー!! なんか楽しそう!!」
「にゃ」
「あらあら、アオってばずるいですわ!!」
アオはボートの上で手を振り、「おじさん、速度上げて」と言う。
まあいいか。魔力を多く流すと、時速四十キロくらいまで上がった。
「……うん、これくらい出れば、船の速度としては上々だろう」
「おじさん……綺麗」
「ん? おお……」
プライベートビーチから出て、一般ビーチを走る。
水平線が見えた。太陽が輝き、とても美しい。
そして一般ビーチ。人が多くいるし、出店もあるのかいい匂いがする。
何人かこっちに気付き、驚いているようにも見え、アオが手を振っていた。
プライベートビーチからけっこう離れ、俺は舵の操作もする。
右、左、急カーブ、後退と操作……問題はない。
だが、最後の問題がある。
「あの、アオ」
「なに?」
「起動試験、最後にやらなくちゃいけないことがあるんだが……」
「なにをするの?」
「……最高速度」
そう、最高速度に耐えられるかどうかチェックする。
ボートは木材、そして金属の補強がしてあるのでかなり頑丈だ。メタルオークの骨を使ったエンジンも頑丈だろう。
だからこそ、最高速度も試さないといけない。
「ちょっと怖いかもしれんが、直線距離で速度を出す……掴まっててくれ」
目算で、プライベートビーチまで直線距離で三キロくらいある。
まっすぐ、全速力で戻ってみる。アオは頷いた。
「わくわくする。おじさん、おねがい」
「ああ……しっかり掴まってろ。マジで」
「うん、おねがい」
俺は深呼吸し、魔力操作舵を強く握り、思い切り魔力を流した。
すると、スクリューが暴れるように高回転。
「───っ!!」
「おお」
速度が一気に出た。
やばい、速すぎる。百キロ以上出てる。まずい。
ビュィィィィィィン!! と、ウィリーするように、跳ねるようにボートが海面を進む。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
「おおおおおー!!」
ドパン!! と、ボートが跳ねた。
俺は魔力操作舵を離しボートに掴まる。ジャンプ台もないのにマジで飛んだ。
上空十メートル以上、マジで飛んでる。
「やべええええええええええええ!!」
「任せて、『水の柱』!!」
アオが魔法を使うと、海面から水の柱が突き上げ、ボートが着水……そのままゆっくりと水の柱が下がり、別荘前のプライベートビーチに着水した。
砂浜にボートが上がり、俺は放心。
「……死ぬかと思った」
「楽しかった。まさか飛ぶなんて」
「想定外。波がジャンプ台みたいになって跳ねた……うぉぉ、こ、怖かった」
船から降りると、ロッソたちが来た。
「ずるい!! おっさん、アタシも乗りたいっ!!」
「すごく楽しそうでしたわ!!」
「にゃうう」
「ふっふっふ。楽しかった」
「……怖かったぜ、マジで」
ロッソ、ブランシュが俺の腕を掴んで揺らす。
「ずるいー!! ね、ね、もう一回やろ!!」
「だ、ダメだって。今のは起動試験で、これは試作機で渡すやつなんだ」
「むうう、アオばっかりずるいですわ!!」
「ふふふ。おじさんの動きを見てたから乗れた。ごめんね」
「勝ち誇ってるのムカつくぅ!! おっさんー!!」
「だ、ダメだって。製品出たら買ってくれ」
というか、ロッソもブランシュも胸を押し付けないでくれ!! 子供だから興味ないとか思ってたが、身体は立派な女なんだから!!
こうして、スノウさんが買い物から戻ってくるまで、俺は二人に追い回されるのだった。
「にゃあ」
「ふっふっふ。私、勝ち組」
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