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第四章 海の国ザナドゥでバカンスを
メタルオーク討伐
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戦いを終え、再び出発した。
気分が悪いのも収まって来た。俺は歩きながら思う。
やっぱ俺、異世界で魔獣なり人間なりを殺すことができるヤツ、異常としか思えねぇ……平和な現代日本で生まれた俺が、転移なり転生で記憶持ったまま異世界に来て、そう簡単に「殺し」ができるわけがない。たとえそれがゴブリンだろうとも、躊躇いなく殺すことができるやつは、間違いなく異常者だ。
きっと、そこが現実とフィクションの違い……殺さなきゃ物語は進まないし、盛り上がるにかける。
だから、軽い葛藤を挟んで切り替えられる。いちいち抱え込んだら面白くないから。
ダメだ。やっぱ俺、主人公には向いてないわ。
すると、ロッソが言う。
「おっさんって、冒険者には向かないね」
「だな。つくづく俺は、主人公には向かない。安全な街でモノづくりしてる方がいい」
「そうかもね。ま、こういう危険なことは、アタシらの仕事……ねえおっさん、アオのこと怒らないであげて」
「え?」
「アオ、おっさんが強くて頼りになるってずっと言ってるし、その紫っぽい爆ぜる魔法もあるからきっと大丈夫って思ってたみたい。でも……覚悟がないまま戦わせて、命のやり取りをさせちゃった……ごめん」
「気にすんなって。てか、別に気にすることじゃないだろ? 運動不足なのは事実だし、アオも俺に気を遣って言ってくれたんだしな」
アオは、やや気落ちしたように前を歩いている。
気にしていないのに……あとでフォローするか。
「おっさん。これからは、危険なところに行かせないから。素材集めとかは、アタシらの仕事。相互契約したし、おっさんには戦わせない」
「ありがとな。でも、少しはカッコいいところ、見せたかったぜ」
「気付いてないの? おっさん、もう充分カッコいいところ見せてくれたじゃん。アタシらみんな、おっさんのこと気に入ってるし、かなり好きだよ?」
「ははは。そりゃどうも。俺も、お前らみたいな冒険者と知り合えて感謝してる。はは、愛してるぜ」
「あっはっは!! そだね、愛してる愛してる」
ロッソと笑い合うと、ようやく肩の力が抜けるのだった。
◇◇◇◇◇◇
『グオオオオオオ──……ンンン』
ズズン……と、俺とユキちゃんの目の前で、銀色の肌を持つ巨人……メタルオークが倒れた。
現在、オークが生息する森。
そこに堂々と踏み込み、集落化していたオークたち総勢三十匹、リーダー各であるメタルオークを、ロッソがあっさりと討伐した。
いやはや……つ、強い。
「攫われた人、いる?」
「……ダメですわね。全員、食べられたようですわ」
「村を襲うオークの集団、これで討伐終わり……」
すごすぎる。
戦いが日常にないと、こうは動けない。
つくづく、俺はとんでもない少女たちと知り合ったもんだ。
「にゃあー」
「こらこら、危ないから近付いちゃダメだぞ」
ユキちゃんを抱っこし、ヒコロクの傍で待つ俺。
すると、ブランシュがオークをひとまとめに積み、ロッソが火を着けた。
オークは一気に炎上……残ったのは、すでに首を斬られ死んでいるメタルオークだけ。
「おじさんごめん。メタルオーク、ヒコロクに運んでもらうから、帰りは徒歩」
「ああ、いいぞ」
「にゃ」
「ユキはヒコロクの頭の上。いい?」
「にゃあう」
死骸を燃やし終えると、ロッソが欠伸をした。
「じゃ、近くの泉で汗流して、そのままお昼にしよっか」
こうして、メタルオークを討伐……残りはメシ食って帰るだけ。
なんというか、あっさりと終わってしまったな。
◇◇◇◇◇◇
さて、その後は特に何もなかった。
メシ食って、休憩して、徒歩で町まで戻る……ずっとメタルオークの首チョンパ死体と一緒だったが、歩いているうちに慣れた。
そして、俺の別荘前に到着。
「おじさん、今日はごめんね……」
「まーだ言ってんのか? もう気にすんなって。ほれほれ」
「あう」
俺はアオの頭を撫でる。
セクハラかもしれんが、この世界では普通に許された。
「おじさま。今回の依頼は討伐で、素材などはわたくしたちの自由ですの。いつもは素材を売って、三人で分けるんですけど……今回は全ての素材を、おじさまに譲りますわ」
「え? いやいや、必要なぶんだけでいいぞ」
「だめだめ。水中スクーターの代金だって思えばいいよ。ね」
「……じゃあ、ありがたく」
「では、解体後、素材をここにお届けします。早ければ明日にはお持ちしますので」
「ああ、頼む」
「うにゃあ」
「よしよし。じゃあユキちゃん、またな」
俺はユキちゃんを撫でる。すると、ネコミミがぴこぴこ動いた。
ロッソたちは冒険者ギルドへ行き、俺は別荘へ。
時間は夕方……腹減ったけど、あんまり外食する気分にならないな。
「なんかあったかな……」
冷蔵庫を見ると、野菜に肉が少し、卵くらいしかない。
ザツマイは山ほどある。あ、そうだ。
「よーし、久しぶりにチャーハンでも作るかな」
中華鍋……はないからフライパン。
米を焚き、その間に肉を細かく切り、野菜も少し切る。
野菜はレタス、玉ねぎだ。異世界の野菜で名前は忘れた。
肉は豚肉……まあ、これも魔獣の肉。卵はフツーにニワトリだ。
米が炊きあがり、俺は油を敷いて肉野菜と卵を炒め、米を投入……塩コショウ、そして少しだけ魚醤を入れ、強火で炒めた。
パラパラのチャーハンが完成。ちょっと多く作りすぎた……四人前くらいある。
「あら、いい香り」
「ほう……知らん料理じゃな」
「お邪魔いたします、ゲントクさん」
「タイミングいいな。お前ら、俺の特製チャーハン食うか?」
サンドローネ、ラスラヌフ、リヒターの三人は、もちろん断ることはなかった。
◇◇◇◇◇◇
「へえ、美味しいわね……ザツマイって家畜や動物のエサとしか思ってなかったけど」
「うむ。そういえば二千年前……アツコも似たようなものを作っていたような」
「美味しいですね。ザツマイがここまで美味しくなるとは」
「ふっふっふ」
俺のチャーハンを美味そうに食う三人……正直、かなり嬉しい。
そりゃ一人暮らし長いし料理できるし、爺ちゃんが昔、中華料理店で修業したことあるから、俺もその料理を習ったことあるけどさ。
すると、リヒターが少し考え込み、俺に言う。
「……ゲントクさん。これ、商売になりませんか?」
「ん?」
「ザツマイは家畜のエサ。それはエーデルシュタイン王国では変わることのない事実です。ですが、アズマという国では普通に食用で用いられていますし……」
「それよ!! さすがね、リヒター」
サンドローネはビシッとスプーンを俺に付き付ける。おい、行儀悪いぞお嬢様。
「ザツマイ農家は現在、家畜用のエサとしてザツマイを育てているわ。契約金もそう高くない……専属契約をして、ザツマイ料理専門店を立ち上げれば儲かるかもしれないわ」
「それは俺も考えていた。このチャーハンに、ザナドゥの魚を乗せた海鮮丼、分厚い肉を乗せて食べるステーキ丼や豚丼とか、アイデアはいくらでもある」
「……アレキサンドライト商会の新事業になるわ。飲食業に殴り込みね」
おお、サンドローネが嫌らしい顔をしている。
「魚。ザナドゥからエーデルシュタイン王国までは一週間かかるから、海の魚をエーデルシュタイン王国に運ぶのは難しかった。でも、今は製氷機……いや、冷凍庫がある。魚を冷凍すれば、だいたい二週間は持つはずだ。海の魚をエーデルシュタイン王国でも食えるぞ」
「その手もあるわね!! ゲントク、あなたが思いつくかぎりのレシピを書き出して。リヒター、エーデルシュタイン王国に戻ったら不動産ギルドで土地と建物を買うわ」
「おいマテ。俺はバカンス中はやらんぞ」
「……すごくやりがいがありそうなんだけど。もう」
「お嬢。まずはザナドゥ支店を安定させてからにしましょう。もうすぐ支店長となるヘカーテさんも到着しますので」
「そうね……ふふ、ふふふ。なんだか楽しいことがいっぱいね」
「ふむ。ワシは口を挟めんかったが、いずれエーデルシュタイン王国に顔を出すのも面白そうじゃのう」
こうして、アレキサンドライト商会は新事業の一歩を踏み出した。
飲食業。ザツマイを使った専門店。
外食ばかりだけど、せっかくだしいろいろ作ってみようかな。
「ゲントク、そのザツマイをふわふわにする魔道具だけど……」
「炊飯器な。アズマに同じのあるんじゃないのか? あっちじゃ主食らしいし」
「リヒター、探しておいて」
「はい、お嬢」
新事業についてワイワイ話していると、ラスラヌフが言う。
「そうだゲントク、ところで……船の方はどうなったかの」
「とりあえずアイデアはできた。今日は『鮮血の赤椿』と必要な素材を取りにいったんだ。明日あたり、素材が届くから作業するよ」
「感謝する。ふふふ、楽しみじゃの」
「今夜にでも、しっかりした仕様書を作る。試作機は二日くらいで完成させるから、二日後に来てくれ」
「わかった。ふふ、仕事が早く腕のいい魔道具技師は女子供に好かれるぞ。結婚相手もすぐに見つかるじゃろ」
「悪いが、結婚願望ないんでね。一人で気ままに遊び暮らすさ。子供にはまあ、好かれてると思うがな」
この日、俺は珍しく酒を飲まずにベッドに入り、朝までぐっすり眠るのだった。
気分が悪いのも収まって来た。俺は歩きながら思う。
やっぱ俺、異世界で魔獣なり人間なりを殺すことができるヤツ、異常としか思えねぇ……平和な現代日本で生まれた俺が、転移なり転生で記憶持ったまま異世界に来て、そう簡単に「殺し」ができるわけがない。たとえそれがゴブリンだろうとも、躊躇いなく殺すことができるやつは、間違いなく異常者だ。
きっと、そこが現実とフィクションの違い……殺さなきゃ物語は進まないし、盛り上がるにかける。
だから、軽い葛藤を挟んで切り替えられる。いちいち抱え込んだら面白くないから。
ダメだ。やっぱ俺、主人公には向いてないわ。
すると、ロッソが言う。
「おっさんって、冒険者には向かないね」
「だな。つくづく俺は、主人公には向かない。安全な街でモノづくりしてる方がいい」
「そうかもね。ま、こういう危険なことは、アタシらの仕事……ねえおっさん、アオのこと怒らないであげて」
「え?」
「アオ、おっさんが強くて頼りになるってずっと言ってるし、その紫っぽい爆ぜる魔法もあるからきっと大丈夫って思ってたみたい。でも……覚悟がないまま戦わせて、命のやり取りをさせちゃった……ごめん」
「気にすんなって。てか、別に気にすることじゃないだろ? 運動不足なのは事実だし、アオも俺に気を遣って言ってくれたんだしな」
アオは、やや気落ちしたように前を歩いている。
気にしていないのに……あとでフォローするか。
「おっさん。これからは、危険なところに行かせないから。素材集めとかは、アタシらの仕事。相互契約したし、おっさんには戦わせない」
「ありがとな。でも、少しはカッコいいところ、見せたかったぜ」
「気付いてないの? おっさん、もう充分カッコいいところ見せてくれたじゃん。アタシらみんな、おっさんのこと気に入ってるし、かなり好きだよ?」
「ははは。そりゃどうも。俺も、お前らみたいな冒険者と知り合えて感謝してる。はは、愛してるぜ」
「あっはっは!! そだね、愛してる愛してる」
ロッソと笑い合うと、ようやく肩の力が抜けるのだった。
◇◇◇◇◇◇
『グオオオオオオ──……ンンン』
ズズン……と、俺とユキちゃんの目の前で、銀色の肌を持つ巨人……メタルオークが倒れた。
現在、オークが生息する森。
そこに堂々と踏み込み、集落化していたオークたち総勢三十匹、リーダー各であるメタルオークを、ロッソがあっさりと討伐した。
いやはや……つ、強い。
「攫われた人、いる?」
「……ダメですわね。全員、食べられたようですわ」
「村を襲うオークの集団、これで討伐終わり……」
すごすぎる。
戦いが日常にないと、こうは動けない。
つくづく、俺はとんでもない少女たちと知り合ったもんだ。
「にゃあー」
「こらこら、危ないから近付いちゃダメだぞ」
ユキちゃんを抱っこし、ヒコロクの傍で待つ俺。
すると、ブランシュがオークをひとまとめに積み、ロッソが火を着けた。
オークは一気に炎上……残ったのは、すでに首を斬られ死んでいるメタルオークだけ。
「おじさんごめん。メタルオーク、ヒコロクに運んでもらうから、帰りは徒歩」
「ああ、いいぞ」
「にゃ」
「ユキはヒコロクの頭の上。いい?」
「にゃあう」
死骸を燃やし終えると、ロッソが欠伸をした。
「じゃ、近くの泉で汗流して、そのままお昼にしよっか」
こうして、メタルオークを討伐……残りはメシ食って帰るだけ。
なんというか、あっさりと終わってしまったな。
◇◇◇◇◇◇
さて、その後は特に何もなかった。
メシ食って、休憩して、徒歩で町まで戻る……ずっとメタルオークの首チョンパ死体と一緒だったが、歩いているうちに慣れた。
そして、俺の別荘前に到着。
「おじさん、今日はごめんね……」
「まーだ言ってんのか? もう気にすんなって。ほれほれ」
「あう」
俺はアオの頭を撫でる。
セクハラかもしれんが、この世界では普通に許された。
「おじさま。今回の依頼は討伐で、素材などはわたくしたちの自由ですの。いつもは素材を売って、三人で分けるんですけど……今回は全ての素材を、おじさまに譲りますわ」
「え? いやいや、必要なぶんだけでいいぞ」
「だめだめ。水中スクーターの代金だって思えばいいよ。ね」
「……じゃあ、ありがたく」
「では、解体後、素材をここにお届けします。早ければ明日にはお持ちしますので」
「ああ、頼む」
「うにゃあ」
「よしよし。じゃあユキちゃん、またな」
俺はユキちゃんを撫でる。すると、ネコミミがぴこぴこ動いた。
ロッソたちは冒険者ギルドへ行き、俺は別荘へ。
時間は夕方……腹減ったけど、あんまり外食する気分にならないな。
「なんかあったかな……」
冷蔵庫を見ると、野菜に肉が少し、卵くらいしかない。
ザツマイは山ほどある。あ、そうだ。
「よーし、久しぶりにチャーハンでも作るかな」
中華鍋……はないからフライパン。
米を焚き、その間に肉を細かく切り、野菜も少し切る。
野菜はレタス、玉ねぎだ。異世界の野菜で名前は忘れた。
肉は豚肉……まあ、これも魔獣の肉。卵はフツーにニワトリだ。
米が炊きあがり、俺は油を敷いて肉野菜と卵を炒め、米を投入……塩コショウ、そして少しだけ魚醤を入れ、強火で炒めた。
パラパラのチャーハンが完成。ちょっと多く作りすぎた……四人前くらいある。
「あら、いい香り」
「ほう……知らん料理じゃな」
「お邪魔いたします、ゲントクさん」
「タイミングいいな。お前ら、俺の特製チャーハン食うか?」
サンドローネ、ラスラヌフ、リヒターの三人は、もちろん断ることはなかった。
◇◇◇◇◇◇
「へえ、美味しいわね……ザツマイって家畜や動物のエサとしか思ってなかったけど」
「うむ。そういえば二千年前……アツコも似たようなものを作っていたような」
「美味しいですね。ザツマイがここまで美味しくなるとは」
「ふっふっふ」
俺のチャーハンを美味そうに食う三人……正直、かなり嬉しい。
そりゃ一人暮らし長いし料理できるし、爺ちゃんが昔、中華料理店で修業したことあるから、俺もその料理を習ったことあるけどさ。
すると、リヒターが少し考え込み、俺に言う。
「……ゲントクさん。これ、商売になりませんか?」
「ん?」
「ザツマイは家畜のエサ。それはエーデルシュタイン王国では変わることのない事実です。ですが、アズマという国では普通に食用で用いられていますし……」
「それよ!! さすがね、リヒター」
サンドローネはビシッとスプーンを俺に付き付ける。おい、行儀悪いぞお嬢様。
「ザツマイ農家は現在、家畜用のエサとしてザツマイを育てているわ。契約金もそう高くない……専属契約をして、ザツマイ料理専門店を立ち上げれば儲かるかもしれないわ」
「それは俺も考えていた。このチャーハンに、ザナドゥの魚を乗せた海鮮丼、分厚い肉を乗せて食べるステーキ丼や豚丼とか、アイデアはいくらでもある」
「……アレキサンドライト商会の新事業になるわ。飲食業に殴り込みね」
おお、サンドローネが嫌らしい顔をしている。
「魚。ザナドゥからエーデルシュタイン王国までは一週間かかるから、海の魚をエーデルシュタイン王国に運ぶのは難しかった。でも、今は製氷機……いや、冷凍庫がある。魚を冷凍すれば、だいたい二週間は持つはずだ。海の魚をエーデルシュタイン王国でも食えるぞ」
「その手もあるわね!! ゲントク、あなたが思いつくかぎりのレシピを書き出して。リヒター、エーデルシュタイン王国に戻ったら不動産ギルドで土地と建物を買うわ」
「おいマテ。俺はバカンス中はやらんぞ」
「……すごくやりがいがありそうなんだけど。もう」
「お嬢。まずはザナドゥ支店を安定させてからにしましょう。もうすぐ支店長となるヘカーテさんも到着しますので」
「そうね……ふふ、ふふふ。なんだか楽しいことがいっぱいね」
「ふむ。ワシは口を挟めんかったが、いずれエーデルシュタイン王国に顔を出すのも面白そうじゃのう」
こうして、アレキサンドライト商会は新事業の一歩を踏み出した。
飲食業。ザツマイを使った専門店。
外食ばかりだけど、せっかくだしいろいろ作ってみようかな。
「ゲントク、そのザツマイをふわふわにする魔道具だけど……」
「炊飯器な。アズマに同じのあるんじゃないのか? あっちじゃ主食らしいし」
「リヒター、探しておいて」
「はい、お嬢」
新事業についてワイワイ話していると、ラスラヌフが言う。
「そうだゲントク、ところで……船の方はどうなったかの」
「とりあえずアイデアはできた。今日は『鮮血の赤椿』と必要な素材を取りにいったんだ。明日あたり、素材が届くから作業するよ」
「感謝する。ふふふ、楽しみじゃの」
「今夜にでも、しっかりした仕様書を作る。試作機は二日くらいで完成させるから、二日後に来てくれ」
「わかった。ふふ、仕事が早く腕のいい魔道具技師は女子供に好かれるぞ。結婚相手もすぐに見つかるじゃろ」
「悪いが、結婚願望ないんでね。一人で気ままに遊び暮らすさ。子供にはまあ、好かれてると思うがな」
この日、俺は珍しく酒を飲まずにベッドに入り、朝までぐっすり眠るのだった。
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