独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~

さとう

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第二章 鮮血の赤椿

軽いテント

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 さて、職場に戻ってきたぞ。

「へー、ここおっさんの商会?」
「商会ではなく倉庫では?」
「商会なら物売ってる……ここ、作業場しかないよ」

 若い女の子三人も連れて……人生、何があるかわからんな。
 改めて、女の子三人。
 一人はビキニアーマーで赤髪ツインテールのロッソ、年齢十七歳。
 二人目は白い修道女のブランシュ。髪は白いロングヘアで年齢十七歳。
 三人目は青系の忍者服で、青髪ショートのアオ。
 三人合わせて、S級冒険者にして、S級冒険者チーム『鮮血の赤椿スカーレット・カメリア』だ。そんな超強い子供たちが、俺の職場へ……なんじゃこりゃ。
 まあ、いい。せっかくだし、思いついたことやってみるか。

「さて。少し時間かかるけど……」
「あ、じゃあ作業見ていい? 魔道具技師の仕事ってあんまり見たことないのよねー」
「わたくしも興味ありますわ」
「……私も」

 みんな属性の違う美少女だな。なんか異世界転生した主人公がハーレムメンバーとして加えるために存在するような子たちだぞ。
 まあいい。とりあえず、俺は軽く設計図を書く……んだが、三人がめちゃのぞき込んでくる。

「……あの」
「おっさん、絵うまいねー」
「字も綺麗ですわねぇ」
「これ、テントの絵?」

 お、落ち着かねぇ……ああ、こういう時のために茶菓子とか用意しておくか。
 とりあえず、パパッと設計図を書き、素材室から骨組みに合う素材を探す。

「う~ん、柔軟性のある素材……アルミとかスチールだといいんだけど、軽さを追求したいから……よし、こいつにするか」

 俺は素材室から、細長い一本の棒を持ってくる。
 それを見てロッソが言う。

「それ、ジュラルミンスネークの骨じゃん。それが素材?」
「見てわかるのすごいな。さすが冒険者」
「ま、S級ともなればね~」

 胸を張る……子供のくせにデカいじゃねぇか。
 俺はそれを曲げてみる。

「うん、いい弾力だ」
「ジュラルミンスネーク……柔軟性のある長い一本の骨しかない魔獣」

 アオが言う。
 そう、このジュラルミンスネーク、骨の関節がない。そして硬く柔軟性があり、テントの骨組みにはぴったりの素材なのだ。
 武器にするには脆く、盾にするにも脆い……細かく砕いて畑にまいたり、おじいちゃんの杖に加工されたりするのが一般的だ。
 俺は、人差し指に魔力を込め、火魔法を使う。
 指先からバーナーのように火が出て、ジュラルミンスネークの骨を少し炙った。

「まあ、おじさま……火属性持ち?」
「まあな。よし、後は水に浸けて……」

 俺は加工用の土を使い、魔法で細長い『桶』を作り、風魔法で乾燥させ、水魔法で桶に水を入れる。

「「「……え」」」
「よし、少し水に浸けて柔らかくしたら、テントのガワを付けるか……素材、水弾く素材のがいいかな。あ、そうだ」

 俺は素材室から、水槽に入れてある『アクアスライム』をバケツに入れて持って来た。
 
「う~……嫌だけど我慢。ていっ」

 俺はスライムに手を突っ込み、バチンと『雷』で感電死させる……こうすると、素材に傷がつかず、そのままの姿で殺せるのだ。
 
「「「…………」」」
「うし。アクアスライムは、死ぬとドロドロに溶ける。で……こいつの面白いところは」

 俺はバケツの中に、ワイルドフロッグっていうカエル魔獣の皮を入れる。すると、皮が死んだスライムを吸い込んで青く変色。
 それを取り出して干し、風魔法に火を少し混ぜるイメージで温風を出して乾かした。

「ドライヤーとかあれば楽だな……これもあとで試作してみるか」

 さて、いい感じにふやけたジュラルミンスネークの骨を取り出し、ぐにゃっと曲げて加工……先端と尾の部分をくっつける。
 そして、くっつけた部分に手を当て、パチンと『光』を当ててくっつけた。
 イメージは、歯医者で詰め物をした時に当てる青い光。レジンだったかな……それを硬化させる光だ。
 
「よし、一つ完成……これを三つ作る」

 俺は手早く、三つ、ジュラルミンスネークの骨で『輪』を作る。
 そして、それらを組み合わせ、折り畳み……テントの骨組みを完成させた。
 あとは、加工した骨組みにワイルドフロッグの皮を被せてさらに加工。テントの形を作る。
 けっこうな重労働だ。いつの間にか汗も掻いたし、昼も過ぎている。
 被せた皮を縫い合わせ、骨組みを折り畳み、簡易的なベルトで固定し、持ち運びできるように取っ手も付け、完成した。

「ふ~完成。と……なんだみんな、さっきから黙り込んで」
「……おっさん、あんた何属性持ち?」
「え? あ」

 サーっと背中が冷たくなった。
 し、しまった……普通に魔法を使ってた。
 えと、火、水、土、風……雷、あと光も使っちまった!! しまった、つい夢中になって周り見ていなかった……これまでは、アレキサンドライト商会の作業場で、イェランと二人で仕事してたから周りとかあんまり気にしてなかったし!!
 冷や汗を流すと、ブランシュが言う。

「火、水、土、風、光……そしてアクアスライムを殺した何か。すごいですわねぇ……まるで『賢者』様のようですわ」
「あ、いや、その……まあ、その、いろいろあって。あ~……すまん!! 内緒にしてくれ!!」

 俺は頭を下げた。
 まずい。全属性、そして『雷』まで使えるなんてバレたら面倒なことになるに決まってる!! サンドローネは内緒にしていたが、この子たちは……ど、どうかな。

「すっごいの見ちゃったね……ねえ、どう思う?」
「わたくし、三属性持ちですけど、こんな手早くポンポンと属性を切り替えられませんわ」
「私、二属性……なんか負けた気分」
「とりあえず、気にしなくていっか。で、おっさん、テントは?」
「あ、ああ」

 俺は、折り畳み式のポップアップテントを見せた。
 脇で抱えられる『円形』の包み。俺はベルトを外し、その場に放ってみると……グニャンと一気に広がり、三人寝れるくらいのテントが完成した。

「「「おお!!」」」
「ポップアップテント。折り畳み式で、こうやって……ぐにゃっと曲げて、ベルトで固定する。ジュラルミンスネーク骨は見ての通り軽いし、アクアスライムに漬けたワイルドフロッグの皮は水をはじく。雨が降っても問題ない」
「すっごい!! ね、やらせて!!」

 ロッソは、折りたたんだテントをポイっと投げると、グニャンと一気に形が変わりテントとなる。
 アオが中に入って寝転び、ブランシュも真似をして入った。

「……三人で寝るなら十分」
「ですわね。基本的に、テントを使う場合は夜警もしますし、実際は二人ですけど」
「寝やすくていい……」

 どうやら気に入ったようだ。
 ふう、魔道具じゃない道具を作るのって大変だけど面白いな。でも、修理工で縫物とかしたことあるし、壊れたテントの修理をた経験が役に立った。
 ロッソも中に入り、三人でキャッキャしながら喜んでいた。
 なんか微笑ましい気持ちになるな。

「おっさん、これ最高!! で、いくら?」
「ん? ああ~……そうだな、それは試作だし、使い心地とか、使ってみて気になるところとか報告してくれ。お題はその情報でいい」
「え、そんなのでいいの?」
「ああ。お前たちがそれを使って問題点を炙り出して、俺はそれを改善する。で、完成したら商品として売りに出す」
「……この時点ですでに問題はない」

 アオがウンウン頷く。
 でも、使ってみないとわからないこともある。

「とりあえず、しばらく使ってみてくれ」
「……わかった!! よし、ブランシュにアオ、これ持ってしばらく冒険に行こう!!」
「はい!! ふふ、おじさま……おじさまの魔法、わたくし興味が出たかもしれませんわ」
「私、このテント気に入った……ねえ、商品化したら買う」
「ああ、その時はアレキサンドライト商会で買うといい」

 こうして、ポップアップテントを作ってみた。
 異世界の素材でも、けっこうできるもんだなーと思った。
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