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第二章 鮮血の赤椿
対等な関係
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さて、製氷機は終わり……あとはデザインとか、細かい装飾関係はイェランがやり、製品化されたらロイヤリティが入るだろう。
時間はもう夜だし、飲食店街でメシ食って、そのまま家に帰るとするかな。
職場を出て、しっかりカギを掛けると、警備員のおじさんがいた。
「お疲れ様です。お仕事、終わりですか?」
「ええ、一仕事終えたんで、メシ食って帰ります。おじさんは警備の仕事?」
「ええ、夜勤なモンでね。兄さん、ここって新しい魔道具製作所かい?」
「そうです。ま、何かあれば御贔屓に」
と、気付いた。
警備員のおじさんは、松明を手に見回りしていた。
なんとなく聞いてみた。
「あの、その松明って」
「ん? ああ、うちは倉庫街一帯の警備だからね。各商会が雇う金持ち警備員みたいに、『光』を出す魔道具なんて高級品は持ってねぇのさ。でも、マッチのおかげで、簡単に松明を作れるようになったからありがたいもんだ。アレキサンドライト商会様様だね」
「……『光』か」
町には街灯がある。これは商業ギルドが設置した『街灯』の魔道具で、使われている魔導文字は『光』だったはず。
明かり関係の魔導文字はいくつかあった。
「…………ふむ」
「兄さん?」
「……ちょっとだけ残業するか」
俺は職場に戻り、資材置き場から『革の帽子』と『いい感じの筒』を引っ張り出し、ゴブリンの魔石を二つ加工する。
そして、それを筒と帽子にセット。簡易的な『懐中電灯』と『ヘッドライト』を作ってみた。
せっかくなので、警備員のおじさんに試してもらう。
「警備員さん、ちょっといいかな」
「ん? ああ兄さん、急に職場戻ってどうしたんだい?」
「ちょっとこれ使ってみて」
革の帽子と、簡易懐中電灯を渡す。
おじさんは首を傾げたが、俺が帽子を被せ、松明を預かって懐中電灯を渡す。
「スイッチに触れて魔力流してみてくれ」
「どれ……おお!? なんじゃこりゃあ!!」
いい驚きだ。昔の刑事ドラマみたいな驚き方。
警備員さんは、懐中電灯の光と、ヘッドライトの光に驚いている。
そう、これは『明』と魔石に刻み、スイッチでオンオフできるように作った簡易の明かりだ。
ゴブリンの魔石だからそんなに明るくないけど、前を照らすくらいなら松明より明るいな。
「兄さん、これ魔道具? なんだってこんな」
「思い付きを試してみただけ。今日、それ使って警備して、明日に感想聞かせてくれ。もしうまくいけば、商品化できるかもしれん」
「……あんた、魔道具技師だっけ。すごいなあ」
「いやいや。じゃあ、また明日」
さて、ちょっといいことした気分だ。酒場でぬるい酒でも飲もうかね。
◇◇◇◇◇◇
翌日。
今日も天気がいい。のんびり歩きながら出社。
今日は何しようかと考えていると。
「いる?」
と、いきなりサンドローネが入ってきた。
その後ろには、昨日の警備員のおじさんが、懐中電灯とヘッドライトを手にしている。
「おお、警備員の……あ、まさか昨日の感想を?」
「あなた、勝手にこういうことされちゃ困るわ」
と、いきなりサンドローネ……なんだよ急に。
「あのね、これの話聞いたわよ。簡易的な魔道具……これ、昨日あなたが作って渡したの?」
「そうだけど」
「全く、こういうのは、お手軽にポンポン出しちゃダメよ。まずは私を通して」
「待った」
と、俺はストップをかける。
そして、サンドローネの後ろで小さくなっている警備員さんに聞いた。
「警備員さん。昨日、使ってみてどうだった?」
「え、ああ……すごかった。首を動かすだけで見たい方向が明るいし、手に持った明かりは、細かいところまで見える」
「何か問題はあったか?」
「そうだな。夜通しの警備をしてが……夜明け前くらいには魔石にヒビ入ったな」
「なるほど。ゴブリンの魔石じゃ厳しいか……二つ星くらいの、魔石のがいいな。明るさは?」
「そっちは問題ない。松明とは桁違いの明るさだ」
「うん。ノズルみたいなの付けて、明るさを収束したり、拡散できるようにするのもいいな……軍用ライトみたいに。よし、アイデアまとまったぞ」
「兄さん、ありがとうな。製品化したら、ぜひうちの警備でも使わせてくれ」
「ああ、実験代として、製品化したら無償で送るよ」
警備員さんは出て行った。
サンドローネはため息を吐く。
「全く……あなたね」
「一つだけ言わせろ」
俺は振り返り、サンドローネに顔を近づける。
「確かにお前には感謝してる。この世界のことも、商売のことも、仕事も、住むところも手を借りた。これは立派な借りだ。でもな……それはそれ、これはこれだ。俺はお前の都合のいい道具になるつもりはない」
「…………」
「マッチ、製氷機だけでもけっこうな儲けになる。借りは返したとは言わないけど……俺らの関係はあくまで対等だ。俺が作る製品に関してアレコレ言われる筋合いはない。今回は、あの警備員さんが松明で周囲を照らしたからこそ、思いついた。これからも俺は、思いついたら実行するし、お前を通さないであんな風に人に魔道具貸すこともある。それに関しては口出ししないでくれよ」
「…………」
サンドローネは俺をジッと見て、小さくため息を吐いた。
「この私にそこまで言える男、あなただけよ?」
「どうも。サンドローネ……俺は感謝してるんだ。だから、これからもよろしく頼むぜ」
と、『懐中電灯』と『ヘッドライト』の仕様書とサンプルを渡す。
「……わかった。ふふ、これって独占欲かしら? 私、あなたの才能が外に漏れることや、あなたが誰かのために仕事するの、見たくないのかもね?」
「ははは。なんだそれ、俺のこと愛してんのか?」
「愛? ふふ、それはないわ。私たちはあくまで『対等』だから、ね」
サンドローネは仕様書をひったくり、ずっと黙っていたリヒターに渡す。
そして、軽く手を振って出て行った。
「……申し訳ございません。お嬢がいろいろと」
「気にすんな。さっきも言ったけど、俺は感謝してるし、もし他の商会が声かけてきても、アレキサンドライト商会以上の条件出さない限りは手ぇ貸すつもりないしな。もう俺は独立したし、商売人だし、対等にいこうぜ」
「……本当に、今のお嬢に対してそこまで強気で言えるのは、エーデルシュタインでもあなただけでしょうね」
「はっはっは。そりゃどうも」
では、と言ってリヒターはサンプルを抱えて行った。
魔導文字の確認、登録は俺がやると言ったので、今日は商業ギルドへ向かうことにした。
◇◇◇◇◇◇
商業ギルドにて。
俺の作った『明』の魔導文字は登録されていなかったので、そのまま申請した。
申請書に文字、効果を書き提出。サンプルの魔石も一緒に出す。
「グロリア、頼む」
「はいよ。ほお、またかい、ゲントク」
「なにが? 魔導技師が、魔導文字の登録するなんてありふれた光景だろ?」
商業ギルドの職員、グロリア。
四十代前半で、大工の息子と花屋の娘を持つ『お母さん』である。
文句は言わんし別にいいけど……異世界のギルド系職員って、美女のイメージ強かったせいか……いろいろ現実を見たわ。
グロリアは申請書を確認、魔石を受け取る。
「一人の魔導技師が生涯で提出する魔導文字の申請書、あんたはもう三枚目だしねえ……フフフ、独立したんだって?」
「まあな。あんたの娘も、独立して花屋になったんじゃなかったのか?」
「あら詳しいね。そうそう、うちの娘も夢だった花屋になってねえ。小さいけど、そりゃもう繁盛して……あんたまさか、うちの娘狙ってるんじゃないだろうね」
「ないない。あんたに似て美人なんだろうけど、俺は結婚願望なんてないさ」
「嬉しいこと言うね。旦那がいなけりゃ飲みに誘ってたところだ」
冗談を言い合い、笑う。
まあ、下手な独身美女受付より、こういう冗談言える方がいい。
申請を終え、俺は商業ギルド隣にある魔道具店へ……せっかくだし、なにかインスピレーション湧きそうな魔道具でも見て行くか。
「……お?」
と、魔道具店に、若い三人の女の子がいた。
何やら話し合っている……あ、この子たち『鮮血の赤椿』じゃん。
確か、ロッソ、ブランシュ、アオだったかな。
「あーもう。キラータイガーのやつ、アタシらのテント破ってマジむかつくし」
「ねえロッソ、次はもう少し、軽い素材のテントがいいですわ」
「……今までの、重いし」
「うー、確かにね」
テントか。
この世界のテント、金属製の棒に布を被せたスタイルなんだよな。
布だけ持ち歩いて、支えとなる柱は現地調達する人もいる。
そもそも、この世界に『キャンプ』という概念はない。俺……キャンプとか大好きなんだけどなあ。
「……テントか」
そういや、ワンタッチ式のテントとかあったな。ポップアップテントとかも構造は簡単だし。
キャンプギア。魔道具で作るの面白いかもしれん。
と、少女たちを見て考え込んでいたら、青髪の忍者少女と目が合った。
「……なに、おじさん」
「え? ああ、すまん。ちょっとテントで思いついたことがあって」
「……思いついた?」
「ん? なにアオ、誰そのおっさん」
「あらあら、どちらさま?」
やばい。近づいてきた。
逃げるわけにもいかんし、俺は言う。
「あ、ああ。俺はしがない魔道具技師でな……その、きみたちの『もっと軽いテント』って言葉で、いろいろ思いついたことがあって」
「え? じゃあおっさん、軽いテント作るの!?」
「ロッソ。まずは自己紹介……はじめましておじ様。私は『鮮血の赤椿』の『白魔術師』のブランシュです」
「……『アサシン』のアオ」
「アタシ、『剣士』ロッソね。おっさんは?」
「あ、ああ……ゲントクだ。『オダ魔道具開発所』のゲントク。よろしくな」
おおう、挨拶しちまった……若い女の子三人も。しかもS級冒険者チームに。
「で、軽いテントって?」
「あ、ああ……」
「ぜひ、作ったら売って欲しいですわねえ」
「……欲しい」
こ、これ……作らなきゃいけないパターン、だよな?
時間はもう夜だし、飲食店街でメシ食って、そのまま家に帰るとするかな。
職場を出て、しっかりカギを掛けると、警備員のおじさんがいた。
「お疲れ様です。お仕事、終わりですか?」
「ええ、一仕事終えたんで、メシ食って帰ります。おじさんは警備の仕事?」
「ええ、夜勤なモンでね。兄さん、ここって新しい魔道具製作所かい?」
「そうです。ま、何かあれば御贔屓に」
と、気付いた。
警備員のおじさんは、松明を手に見回りしていた。
なんとなく聞いてみた。
「あの、その松明って」
「ん? ああ、うちは倉庫街一帯の警備だからね。各商会が雇う金持ち警備員みたいに、『光』を出す魔道具なんて高級品は持ってねぇのさ。でも、マッチのおかげで、簡単に松明を作れるようになったからありがたいもんだ。アレキサンドライト商会様様だね」
「……『光』か」
町には街灯がある。これは商業ギルドが設置した『街灯』の魔道具で、使われている魔導文字は『光』だったはず。
明かり関係の魔導文字はいくつかあった。
「…………ふむ」
「兄さん?」
「……ちょっとだけ残業するか」
俺は職場に戻り、資材置き場から『革の帽子』と『いい感じの筒』を引っ張り出し、ゴブリンの魔石を二つ加工する。
そして、それを筒と帽子にセット。簡易的な『懐中電灯』と『ヘッドライト』を作ってみた。
せっかくなので、警備員のおじさんに試してもらう。
「警備員さん、ちょっといいかな」
「ん? ああ兄さん、急に職場戻ってどうしたんだい?」
「ちょっとこれ使ってみて」
革の帽子と、簡易懐中電灯を渡す。
おじさんは首を傾げたが、俺が帽子を被せ、松明を預かって懐中電灯を渡す。
「スイッチに触れて魔力流してみてくれ」
「どれ……おお!? なんじゃこりゃあ!!」
いい驚きだ。昔の刑事ドラマみたいな驚き方。
警備員さんは、懐中電灯の光と、ヘッドライトの光に驚いている。
そう、これは『明』と魔石に刻み、スイッチでオンオフできるように作った簡易の明かりだ。
ゴブリンの魔石だからそんなに明るくないけど、前を照らすくらいなら松明より明るいな。
「兄さん、これ魔道具? なんだってこんな」
「思い付きを試してみただけ。今日、それ使って警備して、明日に感想聞かせてくれ。もしうまくいけば、商品化できるかもしれん」
「……あんた、魔道具技師だっけ。すごいなあ」
「いやいや。じゃあ、また明日」
さて、ちょっといいことした気分だ。酒場でぬるい酒でも飲もうかね。
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今日も天気がいい。のんびり歩きながら出社。
今日は何しようかと考えていると。
「いる?」
と、いきなりサンドローネが入ってきた。
その後ろには、昨日の警備員のおじさんが、懐中電灯とヘッドライトを手にしている。
「おお、警備員の……あ、まさか昨日の感想を?」
「あなた、勝手にこういうことされちゃ困るわ」
と、いきなりサンドローネ……なんだよ急に。
「あのね、これの話聞いたわよ。簡易的な魔道具……これ、昨日あなたが作って渡したの?」
「そうだけど」
「全く、こういうのは、お手軽にポンポン出しちゃダメよ。まずは私を通して」
「待った」
と、俺はストップをかける。
そして、サンドローネの後ろで小さくなっている警備員さんに聞いた。
「警備員さん。昨日、使ってみてどうだった?」
「え、ああ……すごかった。首を動かすだけで見たい方向が明るいし、手に持った明かりは、細かいところまで見える」
「何か問題はあったか?」
「そうだな。夜通しの警備をしてが……夜明け前くらいには魔石にヒビ入ったな」
「なるほど。ゴブリンの魔石じゃ厳しいか……二つ星くらいの、魔石のがいいな。明るさは?」
「そっちは問題ない。松明とは桁違いの明るさだ」
「うん。ノズルみたいなの付けて、明るさを収束したり、拡散できるようにするのもいいな……軍用ライトみたいに。よし、アイデアまとまったぞ」
「兄さん、ありがとうな。製品化したら、ぜひうちの警備でも使わせてくれ」
「ああ、実験代として、製品化したら無償で送るよ」
警備員さんは出て行った。
サンドローネはため息を吐く。
「全く……あなたね」
「一つだけ言わせろ」
俺は振り返り、サンドローネに顔を近づける。
「確かにお前には感謝してる。この世界のことも、商売のことも、仕事も、住むところも手を借りた。これは立派な借りだ。でもな……それはそれ、これはこれだ。俺はお前の都合のいい道具になるつもりはない」
「…………」
「マッチ、製氷機だけでもけっこうな儲けになる。借りは返したとは言わないけど……俺らの関係はあくまで対等だ。俺が作る製品に関してアレコレ言われる筋合いはない。今回は、あの警備員さんが松明で周囲を照らしたからこそ、思いついた。これからも俺は、思いついたら実行するし、お前を通さないであんな風に人に魔道具貸すこともある。それに関しては口出ししないでくれよ」
「…………」
サンドローネは俺をジッと見て、小さくため息を吐いた。
「この私にそこまで言える男、あなただけよ?」
「どうも。サンドローネ……俺は感謝してるんだ。だから、これからもよろしく頼むぜ」
と、『懐中電灯』と『ヘッドライト』の仕様書とサンプルを渡す。
「……わかった。ふふ、これって独占欲かしら? 私、あなたの才能が外に漏れることや、あなたが誰かのために仕事するの、見たくないのかもね?」
「ははは。なんだそれ、俺のこと愛してんのか?」
「愛? ふふ、それはないわ。私たちはあくまで『対等』だから、ね」
サンドローネは仕様書をひったくり、ずっと黙っていたリヒターに渡す。
そして、軽く手を振って出て行った。
「……申し訳ございません。お嬢がいろいろと」
「気にすんな。さっきも言ったけど、俺は感謝してるし、もし他の商会が声かけてきても、アレキサンドライト商会以上の条件出さない限りは手ぇ貸すつもりないしな。もう俺は独立したし、商売人だし、対等にいこうぜ」
「……本当に、今のお嬢に対してそこまで強気で言えるのは、エーデルシュタインでもあなただけでしょうね」
「はっはっは。そりゃどうも」
では、と言ってリヒターはサンプルを抱えて行った。
魔導文字の確認、登録は俺がやると言ったので、今日は商業ギルドへ向かうことにした。
◇◇◇◇◇◇
商業ギルドにて。
俺の作った『明』の魔導文字は登録されていなかったので、そのまま申請した。
申請書に文字、効果を書き提出。サンプルの魔石も一緒に出す。
「グロリア、頼む」
「はいよ。ほお、またかい、ゲントク」
「なにが? 魔導技師が、魔導文字の登録するなんてありふれた光景だろ?」
商業ギルドの職員、グロリア。
四十代前半で、大工の息子と花屋の娘を持つ『お母さん』である。
文句は言わんし別にいいけど……異世界のギルド系職員って、美女のイメージ強かったせいか……いろいろ現実を見たわ。
グロリアは申請書を確認、魔石を受け取る。
「一人の魔導技師が生涯で提出する魔導文字の申請書、あんたはもう三枚目だしねえ……フフフ、独立したんだって?」
「まあな。あんたの娘も、独立して花屋になったんじゃなかったのか?」
「あら詳しいね。そうそう、うちの娘も夢だった花屋になってねえ。小さいけど、そりゃもう繁盛して……あんたまさか、うちの娘狙ってるんじゃないだろうね」
「ないない。あんたに似て美人なんだろうけど、俺は結婚願望なんてないさ」
「嬉しいこと言うね。旦那がいなけりゃ飲みに誘ってたところだ」
冗談を言い合い、笑う。
まあ、下手な独身美女受付より、こういう冗談言える方がいい。
申請を終え、俺は商業ギルド隣にある魔道具店へ……せっかくだし、なにかインスピレーション湧きそうな魔道具でも見て行くか。
「……お?」
と、魔道具店に、若い三人の女の子がいた。
何やら話し合っている……あ、この子たち『鮮血の赤椿』じゃん。
確か、ロッソ、ブランシュ、アオだったかな。
「あーもう。キラータイガーのやつ、アタシらのテント破ってマジむかつくし」
「ねえロッソ、次はもう少し、軽い素材のテントがいいですわ」
「……今までの、重いし」
「うー、確かにね」
テントか。
この世界のテント、金属製の棒に布を被せたスタイルなんだよな。
布だけ持ち歩いて、支えとなる柱は現地調達する人もいる。
そもそも、この世界に『キャンプ』という概念はない。俺……キャンプとか大好きなんだけどなあ。
「……テントか」
そういや、ワンタッチ式のテントとかあったな。ポップアップテントとかも構造は簡単だし。
キャンプギア。魔道具で作るの面白いかもしれん。
と、少女たちを見て考え込んでいたら、青髪の忍者少女と目が合った。
「……なに、おじさん」
「え? ああ、すまん。ちょっとテントで思いついたことがあって」
「……思いついた?」
「ん? なにアオ、誰そのおっさん」
「あらあら、どちらさま?」
やばい。近づいてきた。
逃げるわけにもいかんし、俺は言う。
「あ、ああ。俺はしがない魔道具技師でな……その、きみたちの『もっと軽いテント』って言葉で、いろいろ思いついたことがあって」
「え? じゃあおっさん、軽いテント作るの!?」
「ロッソ。まずは自己紹介……はじめましておじ様。私は『鮮血の赤椿』の『白魔術師』のブランシュです」
「……『アサシン』のアオ」
「アタシ、『剣士』ロッソね。おっさんは?」
「あ、ああ……ゲントクだ。『オダ魔道具開発所』のゲントク。よろしくな」
おおう、挨拶しちまった……若い女の子三人も。しかもS級冒険者チームに。
「で、軽いテントって?」
「あ、ああ……」
「ぜひ、作ったら売って欲しいですわねえ」
「……欲しい」
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