独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~

さとう

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第一章 独身おじさん、織田玄徳

さっそく

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「早速だけど……これ、どうしたら作れる?」
「ジッポライター? いや無理。ってか、俺も知らん事だらけだし、いろいろ教えてくれ」

 サンドローネは、俺のジッポライターをいじり、シュッと火を着けてみる。
 
「まさか、熾火屋で火をもらわなくても、こんな簡単に火を熾せるなんて……」
「異世界ならではって感じだな。なあ、こっちではどうやって火を熾すんだ? おきび屋って何だ?」
「ハスター、説明」
「はい、お嬢」

 ハスター……って言うのか。
 けっこうなガタイで、上下のスーツ、帽子を被ってグローブまでしてる。
 こいつ、格闘技やってるな。サンドローネの護衛か何かか?

「初めまして。アレキサンドライト商会、サンドローネ商会長の秘書兼護衛、リヒターです」
「ああどうも、玄徳です」
「さっそく火について説明します」
「……火もだけど、この国とか、文化とかも教えてくれよ」
「わかりました」
「じゃ、私はシャワー浴びて寝るわ。ハスター、ゲントクに部屋を用意してあげて。おやすみなさい」
「「え」」

 そう言い、ジッポライターを持って部屋を出て行った……なんだあいつは。

「……なんかすみません」
「いや、あんた苦労してそうだな……なあ、酒飲めるんなら飲もうぜ」
「ぜひ」

 なんかハスターとは仲良くなれる気がした。

 ◇◇◇◇◇◇

「まず、火ですが……『熾火屋』でもらい火します。熾火屋ってのは、魔法の火を取り扱う店で、お金を払って、火を買うんです」

 なんでも、この世界で『火』は魔法か、付きにくい火打石で付けるかしかないようだ。なので、魔法で火を熾し、暖炉で常に燃えている状態で保存、お金を払い、ランプみたいなのに灯して買うそうだ。
 買った火は、各家庭の暖炉や調理場で使う。使い終わると消すのが一般的らしい……ずっと火を着けておくのも危険だし、薪とかで燃やし続けるのも金がかかるから。

「各家庭にランプは必ず一つはあります。だいたい、日中や夕方には『熾火屋』が忙しくなりますね」
「ほう……日本じゃあり得ない光景、異世界っぽいな」
「ゲントクさんの住んでいるところでは、熾火屋がないんですか?」
「ない。コンロあるし、ライターも……あ、そういえば」
 
 俺はポケットから百円ライターを出す。
 シュッと火を着けると、リヒターは「おお」と驚いていた。

「こんなモンがいくらでもある。火で困ったことなんてないぞ」
「す、すごい……これを開発し、販売したら、アレキサンドライト商会は安泰ですね……!!」
「……あのさ、ちょっと思ったんだが……仮にこれを商品化して販売したら、熾火屋から猛反発されるんじゃないか?」
「まあそうですね。でも、商会長は気にしないと思います」
「……確かに、なんか女王様っぽいしな、あいつ。なあ、あいつ何歳だ?」
「二十一歳です。ちなみに私は二十九歳」
「わっか……」

 二十一歳であの風格とは……大物になるな。まあ胸は大物だが。

「とりあえず、火に関してはわかった。で……順序的に逆かもしれんが、ここどこだ?」
「ここは、大陸一の大国家、エーデルシュタイン王国です」

 リヒターは、部屋から地図を取り出し広げた。
 見たことのない、歪な形をした大陸の中央にある国で、人口は一億人くらい……そして、この大陸で最大の大きさを誇る大国家。
 目算だが、国の大きさもデカい……異世界パネェな。
 で、俺がいるのは、第十三区画『倉庫街』だ。エーデルシュタイン王国で開業している商会の倉庫が集まる区画。
 
「魔法による探知フィールドが張られているので侵入は困難。アレキサンドライト商会が雇っている魔法警備兵も独自に探知魔法を展開していますが、ゲントクさんはそのどちらの探知もすり抜け、倉庫前に立っていたので驚きました」
「俺も驚き……マジで。で、魔法ってのは、俺の知る魔法でいいのか?」
「え?」

 話を聞くと、ファンタジー的な意味の魔法でいいようだ。
 攻撃魔法、防御魔法と始まり、探知魔法や精神魔法なんかもあるらしい。まあ、魔法があるってことだけで面白そうだ。
 
「アレキサンドライト商会では、魔道具開発と販売を手掛けています。商会長が開発した『魔法適正判別キット』は、魔法教会での正式採用が認められたほどの商品なんですよ。それと、煙草の販売も手掛けています……実は商会長、かなりのヘビースモーカーなんです」
「へえ、そりゃいいな。俺もけっこう吸うぞ」

 紙巻きたばこ……買ったばかりの入れておいてよかった。でも、これ無くなったら強制禁煙かと思ったけど、サンドローネがいれば何とかなるか……というか、異世界の煙草ちょっと興味ある。

「これは……どういう煙草ですか?」
「えーと、俺の世界の煙草。まあ、安モンだけど」
「ほほう。商会長に見せたら喜びそうですね」
「隠す。ジッポライターもいつの間にか取られたし、見つかってたまるか」
「ははは……」

 こうして、雑談を交えつつリヒターからいろいろ聞いた。
 エーデルシュタイン王国。王政国家。魔法。魔道具……そして魔獣もいる。聞けば聞くほど、異世界ファンタジーの世界である。
 これ、もしかしたらアレか? 日本知識で異世界無双ってか? まあ……悪い気はしない。

「なあリヒター、ここって……税金とか確定申告ある?」
「なんですかそれは?」
「あの、王政なんだろ? 国に支払う金とか」
「よくわからりませんが……年に一度、収入の一部を税として納めていますね。他にはないと思いますけど……」
「……マジ? 年一回?」
「え、ええ。一年の収入を計算して、一割を税金として国家税務機関に支払います」
「い、一割!? ウッソ!?」
「ほ、本当ですけど……」

 超絶ホワイト国家じゃねぇか!! 一割って嘘だろ!?
 ね、年に一度、収入の一割を国に納めるだけ……マジか。
 やべえ、これってまさか……す、スローライフできる?

「……なあ、俺も独立ってできるかな?」
「それは難しいかと……ゲントクさんは知らないことが多すぎますし、サンドローネお嬢が手放すとは思えないのですが……」
「……まあ確かに。でも、ちょっとやる気出てきたぞ。まず、俺は何をすると思う?」
「その、ジッポライター、でしたっけ? それに関する仕事だとは思います」
「……よし」

 やってやろうじゃないか。
 ジッポライターは厳しいが……マッチとかなら作れるかもしれん。
 
「リヒター、火打石ってあるか? まずは、この世界の着火道具を知りたい」
「は、はい……あの、私はその、そろそろ寝たいんですが……明日にしませんか?」
「あ、そうか……悪い。じゃあ、今日はもう寝ようぜ」

 こうして、俺は異世界へ……どういうわけか来てしまった。
 さてさて、いろいろ忙しくなりそうだが、ちょっとワクワクしてきたぜ。
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