41 / 57
次の町へ
しおりを挟む
「主」
「あ、セイヤ……終わった?」
「ああ。聖女は全員始末した」
ヴェンとヒジリの元へ戻ったセイヤ。
まず目についたのが、赤銅色の肌に真っ白な髪を持つ『不死者』たち……セイヤはバニッシュの前に立ち、頭を下げた。
「本当に、申し訳ございませんでした……今回の件、全て俺の責任です」
「あーあーやめろっつの、誰のせいでもねぇよ。それに、こうしてみんな生きてるんだ。堅苦しいことはナシにしようぜ」
「でも……」
「いいって。それに、おめーはヴェンを守って、オレらを生き返らせてくれたしな」
傭兵たちは、全員が「そうだそうだ」と笑っていた。
生き返ったのではない。ヴェンの魔法で『不死者』になっただけ……ヴェンを見ると、なぜか笑っていた。
「ま、そういうこと。あたしは大丈夫。パパもラーズもみんなも、こうして蘇ったんだし。それに……あんたには感謝してる。あんたが来なかったらあたし、殺されてた」
「ヴェン……でもそれは、俺がいたから」
「あーもう!! いいって言ってるでしょ!! 男のくせに細かいっての!!」
「お、おお……」
ヴェンに圧倒され、セイヤはたじろぐ。
そんな姿を見たバニッシュはゲラゲラ笑う。
「ははは。尻に敷かれてやがる。なぁセイヤ、ヴェンを嫁にどうよ?」
「え」
「主、うれしそうです」
「ちょ、ヒジリってば!! もう……パパも変なこと言わないでよ!!」
傭兵たちは、みんな笑っていた。
◇◇◇◇◇◇
これだけの騒ぎがあったので、もう町にはいられない。
バニッシュたちはこの町のアジトを放棄し、次の町へ向かう準備をした。
俺とヒジリも準備を手伝いながらヴェンに聞く。
「これからどうするんだ?」
「……たぶん、あんたと同じ。ウェイクリンデ大森林の近くにある町にアジトがあるの。そこに行く……それに、あたしたちが買う鉱山も、その近くにあるの」
「……ウェイクリンデ大森林?」
「主。私の復讐相手がそこにいます……どうか」
「わかった」
セイヤは察し、そこへ行くことに決めた。
バニッシュたちが戻り、すぐに出発することになったのだが……傭兵の一人がいつものように大荷物を積んだリヤカーを引こうとして気が付いた。
「……なんか、軽いですね」
五人がかりで引いていたリヤカーが、たった一人で軽く弾けることに気付く。
すると、ヴェンが言う。
「みんなはもう『不死者』の身体だからね。筋力や体力は人間だったころの数倍。怪我をしても血は出ないしすぐに治っちゃうよ」
ヴェンの魔法、『不死者』
死体を影に取り込んで自在に作り替え使役することができる。
死体は最大で百人ほど影に収納可能。現在は傭兵団三十人、聖女部隊三十人、ジョカ、そして……ミカボシの死体を収納してある。
ミカボシは、廃屋の壁に磔にされ、心臓がえぐり出されていたところを見つけ、収納した。
最強の聖女の死体。使い道がある……もちろん、セイヤに説明したら「あっそ」としか言わなかった。
バニッシュは、傭兵たちに言う。
「おめーら、次の町がオレらの終着点だ……気合い入れ行くぞ!!」
「「「「「オウ!!」」」」」
セイヤたちは、次の町に出発した。
◇◇◇◇◇◇
「これは……」
「……全滅っぽいね」
アナスタシアとクレッセンドは、セイヤたちから遅れること一日、シアンの町に到着した。
ここで聖女と傭兵の戦いがあったと町中の噂で、井戸端会議をしているおばさん集団に話を聞くと、これでもかと説明してくれた。
「あのね、傭兵団さんと聖女さんが大暴れしたのよ!」
「聖女たち、『カミノコ』さんを探してたみたい。そんな人いないって傭兵さんたちが言うと、聖女の一人が剣を出して……ああ野蛮。聖女って本当に野蛮!」
「驚いたのが……ふふ、聞きたい? なんと男の子が女の子にキスしたのよ! きっとあれは命を懸けたプロポーズに違いないわ!」
「でも、キスした直後ね……死んだ傭兵の皆さんが立ち上がったのよ」
「それで、とんでもない強さで聖女たちを殺して……」
「町長に挨拶して町を去ったわねぇ」
言葉を挟む間もなくべらべら話すおばさんたち。
アナスタシアとクレッセンドは疲れながらも最後まで聞き、セイヤが『聖女任命』を使って少女を聖女に変え、ミカボシたちを退けたことを知った。
二人は宿を取り、一息入れる。
「最強の聖女ミカボシがやられちゃうなんてね……お姉ちゃん、どうする?」
「どうするもなにも、決まってるわ。セイヤに会わないと」
「……まーだお婿さんにするとか言ってんの? セイヤはもう聖女を敵ってみなしているし、下手すりゃお姉ちゃんも死んじゃうかもよ?」
「死なないわ。私はセイヤを夫に迎える」
「はぁ~……」
クレッセンドは頭を抱えた。
この姉。頭が固すぎるところがあるのだ。
「とりあえず……北に向かったみたいだし、行く?」
「当然」
二人の旅は、まだまだ続く。
「あ、セイヤ……終わった?」
「ああ。聖女は全員始末した」
ヴェンとヒジリの元へ戻ったセイヤ。
まず目についたのが、赤銅色の肌に真っ白な髪を持つ『不死者』たち……セイヤはバニッシュの前に立ち、頭を下げた。
「本当に、申し訳ございませんでした……今回の件、全て俺の責任です」
「あーあーやめろっつの、誰のせいでもねぇよ。それに、こうしてみんな生きてるんだ。堅苦しいことはナシにしようぜ」
「でも……」
「いいって。それに、おめーはヴェンを守って、オレらを生き返らせてくれたしな」
傭兵たちは、全員が「そうだそうだ」と笑っていた。
生き返ったのではない。ヴェンの魔法で『不死者』になっただけ……ヴェンを見ると、なぜか笑っていた。
「ま、そういうこと。あたしは大丈夫。パパもラーズもみんなも、こうして蘇ったんだし。それに……あんたには感謝してる。あんたが来なかったらあたし、殺されてた」
「ヴェン……でもそれは、俺がいたから」
「あーもう!! いいって言ってるでしょ!! 男のくせに細かいっての!!」
「お、おお……」
ヴェンに圧倒され、セイヤはたじろぐ。
そんな姿を見たバニッシュはゲラゲラ笑う。
「ははは。尻に敷かれてやがる。なぁセイヤ、ヴェンを嫁にどうよ?」
「え」
「主、うれしそうです」
「ちょ、ヒジリってば!! もう……パパも変なこと言わないでよ!!」
傭兵たちは、みんな笑っていた。
◇◇◇◇◇◇
これだけの騒ぎがあったので、もう町にはいられない。
バニッシュたちはこの町のアジトを放棄し、次の町へ向かう準備をした。
俺とヒジリも準備を手伝いながらヴェンに聞く。
「これからどうするんだ?」
「……たぶん、あんたと同じ。ウェイクリンデ大森林の近くにある町にアジトがあるの。そこに行く……それに、あたしたちが買う鉱山も、その近くにあるの」
「……ウェイクリンデ大森林?」
「主。私の復讐相手がそこにいます……どうか」
「わかった」
セイヤは察し、そこへ行くことに決めた。
バニッシュたちが戻り、すぐに出発することになったのだが……傭兵の一人がいつものように大荷物を積んだリヤカーを引こうとして気が付いた。
「……なんか、軽いですね」
五人がかりで引いていたリヤカーが、たった一人で軽く弾けることに気付く。
すると、ヴェンが言う。
「みんなはもう『不死者』の身体だからね。筋力や体力は人間だったころの数倍。怪我をしても血は出ないしすぐに治っちゃうよ」
ヴェンの魔法、『不死者』
死体を影に取り込んで自在に作り替え使役することができる。
死体は最大で百人ほど影に収納可能。現在は傭兵団三十人、聖女部隊三十人、ジョカ、そして……ミカボシの死体を収納してある。
ミカボシは、廃屋の壁に磔にされ、心臓がえぐり出されていたところを見つけ、収納した。
最強の聖女の死体。使い道がある……もちろん、セイヤに説明したら「あっそ」としか言わなかった。
バニッシュは、傭兵たちに言う。
「おめーら、次の町がオレらの終着点だ……気合い入れ行くぞ!!」
「「「「「オウ!!」」」」」
セイヤたちは、次の町に出発した。
◇◇◇◇◇◇
「これは……」
「……全滅っぽいね」
アナスタシアとクレッセンドは、セイヤたちから遅れること一日、シアンの町に到着した。
ここで聖女と傭兵の戦いがあったと町中の噂で、井戸端会議をしているおばさん集団に話を聞くと、これでもかと説明してくれた。
「あのね、傭兵団さんと聖女さんが大暴れしたのよ!」
「聖女たち、『カミノコ』さんを探してたみたい。そんな人いないって傭兵さんたちが言うと、聖女の一人が剣を出して……ああ野蛮。聖女って本当に野蛮!」
「驚いたのが……ふふ、聞きたい? なんと男の子が女の子にキスしたのよ! きっとあれは命を懸けたプロポーズに違いないわ!」
「でも、キスした直後ね……死んだ傭兵の皆さんが立ち上がったのよ」
「それで、とんでもない強さで聖女たちを殺して……」
「町長に挨拶して町を去ったわねぇ」
言葉を挟む間もなくべらべら話すおばさんたち。
アナスタシアとクレッセンドは疲れながらも最後まで聞き、セイヤが『聖女任命』を使って少女を聖女に変え、ミカボシたちを退けたことを知った。
二人は宿を取り、一息入れる。
「最強の聖女ミカボシがやられちゃうなんてね……お姉ちゃん、どうする?」
「どうするもなにも、決まってるわ。セイヤに会わないと」
「……まーだお婿さんにするとか言ってんの? セイヤはもう聖女を敵ってみなしているし、下手すりゃお姉ちゃんも死んじゃうかもよ?」
「死なないわ。私はセイヤを夫に迎える」
「はぁ~……」
クレッセンドは頭を抱えた。
この姉。頭が固すぎるところがあるのだ。
「とりあえず……北に向かったみたいだし、行く?」
「当然」
二人の旅は、まだまだ続く。
0
お気に入りに追加
216
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる