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第187話・希望の女神パティオン、そして
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「フリアエ!! これはどういうことなの!?」
「…………」
ファーレン王国・祝福の女神フリアエの住む神殿に、一人の美女がいた。
美女は長い黒髪を揺らし、怒りと悲しみに顔を歪めながら、フリアエに詰め寄る。だがフリアエは涼しい顔で美女を出迎えた。
「久し振りねパティオン……あなたも人間界に?」
「そんなことどうでもいいわ!! あなた、一体何を考えているの!? 人間界に来るだけならまだしも、リリティアとラスラヌフの気配が消えた……肉体が朽ちたなら魂は神界に戻るはずなのに……二人は戻らない」
「喰われたわ」
「……っ、相手は【暴食】ね」
「ええ。見ていたんでしょ? 私に何を聞きたいの?」
「……とぼけないで」
黒髪の美女こと『希望の女神パティオン』は、ついにフリアエの胸倉を掴む。
「あなた、何をしたいの? リリティアとラスラヌフが消滅した……女神が消滅するなんて、お母さんの時以来じゃない……あなたが人間界に干渉を始めて二人の女神が消えた。あなたが関係してるに決まってる!!」
「…………」
「答えなさい!! フリアエ、あなたは何を企んでいるの!?」
「…………」
フリアエは、薄く微笑むだけ。
答える気がないフリアエに、パティオンはキレた。
「……あっそ、あんた、あたしに逆らうつもりなのね……ああ、そっかそっか、そういう態度取るんだ……」
ビシビシ、ビシビシと、パティオンの額に青筋が浮かぶ。
「フリアエ、おめぇ……死にてぇようだなぁ?」
「パティオン、落ち着いて。ちゃんと話してあげるわ」
「…………」
すぅーっと、パティオンの青筋が引いていく。
女神の中で最もキレやすいと言われているパティオンは、短気だが誰よりも思いやりがあるとも言われていた。
フリアエはクスクス笑う。
「私の目的は、お母様を蘇らせること……そのために人間の信仰心を集めているの」
「お、お母さんの復活? 何を言ってるの?」
「お母様……母なる女神テレサを復活させる。それが私の目的よ。ラスラヌフとリリティアが死んだのは、あの子たちが【暴食】を怒らせただけ」
「怒らせたって……大罪神器は女神を狙っているんじゃ……」
「そうね。大罪神器の所有者の家族を目の前で殺しちゃったから、かなり恨まれているわ……でも、そんなことは些細な事。お母様の復活だけが私の悲願」
「あ、あなた……なにを」
「パティオン。私はお母様を復活させる。人間界に受肉できるほど強力な女神は、あなたとキルシュ、ブリザラの三人だけ……お願い。大罪神器の所有者を何とかして?」
「…………」
パティオンは、ワケが分からなかった。
人間界に受肉するにはかなりの力が必要だ。女神本人の力と信仰心が合わさり、始めて人間界に来ることができる。
今の神界でそれが可能なのは、死んでしまった2人を除けばパティオン、白銀の女神ブリザラ、キルシュの3人しかいない。
「……わかった。私としても、これ以上女神が喰われるのを黙って見ているわけにはいかない……私が、直々に出向くわ。ブリザラとキルシュの3人で【暴食】を倒す」
「【暴食】の周りには【色欲】、【怠惰】、【嫉妬】の3人がいるわ。彼らが階梯を上げれば厄介な存在になる……早めの対処を」
「ええ。ブリザラを呼ぶ。キルシュは――――」
ここで、パティオンとフリアエは感じた。
「―――え」
「―――あ」
戦の女神キルシュが――――――死んだ。
◇◇◇◇◇◇
フリアエの神殿の扉が開いた。
長い黒髪をなびかせた全裸の美少女が、手に刀を持ちゆっくり歩いてきた。
全身は血に濡れている……でも、それは少女の血ではない。
「……リリカ」
「私、生まれ変わりました……」
全裸の少女は、リリカ。
血は……女神キルシュの物だった。
パティオンは、戦慄していた。
「な、なんで……ど、どうして」
どうして、どうして。
どうして目の前の少女から、女神の気配がするのだ?
フリアエは、何故か微笑んでいた。
「キルシュを食べたのね?」
「はい。戦い、勝ち……喰らいました」
「そう……強くなったわね」
「ありがとうございます。私は……女神になれましたか?」
「ええ。リリカ、あなたは女神の力を得た」
パティオンは、人間が女神を殺したことにショックを受けた。
ただの人間に女神を殺せるはずがない。
女神を殺す事ができるのは、魔神か女神だけ……。
そして、女神の力を持った人間だけ……《ギフト》の力を持つ人間だけ。
「ふ、フリアエ……あなた」
「どうしたの? パティオン」
女神フリアエは、何を考えているのか。
女神を殺せる武器を人間に与えた理由は、一体何なのか。
「…………」
果たして、フリアエに付いていいのだろうか。
「リリカ、今日からあなたは『戦刃の女神リリカ』を名乗りなさい。あなたに相応しい名前だわ」
「戦刃……ありがとうございます!」
パティオンは、フリアエがとても恐ろしく見えた。
「…………」
ファーレン王国・祝福の女神フリアエの住む神殿に、一人の美女がいた。
美女は長い黒髪を揺らし、怒りと悲しみに顔を歪めながら、フリアエに詰め寄る。だがフリアエは涼しい顔で美女を出迎えた。
「久し振りねパティオン……あなたも人間界に?」
「そんなことどうでもいいわ!! あなた、一体何を考えているの!? 人間界に来るだけならまだしも、リリティアとラスラヌフの気配が消えた……肉体が朽ちたなら魂は神界に戻るはずなのに……二人は戻らない」
「喰われたわ」
「……っ、相手は【暴食】ね」
「ええ。見ていたんでしょ? 私に何を聞きたいの?」
「……とぼけないで」
黒髪の美女こと『希望の女神パティオン』は、ついにフリアエの胸倉を掴む。
「あなた、何をしたいの? リリティアとラスラヌフが消滅した……女神が消滅するなんて、お母さんの時以来じゃない……あなたが人間界に干渉を始めて二人の女神が消えた。あなたが関係してるに決まってる!!」
「…………」
「答えなさい!! フリアエ、あなたは何を企んでいるの!?」
「…………」
フリアエは、薄く微笑むだけ。
答える気がないフリアエに、パティオンはキレた。
「……あっそ、あんた、あたしに逆らうつもりなのね……ああ、そっかそっか、そういう態度取るんだ……」
ビシビシ、ビシビシと、パティオンの額に青筋が浮かぶ。
「フリアエ、おめぇ……死にてぇようだなぁ?」
「パティオン、落ち着いて。ちゃんと話してあげるわ」
「…………」
すぅーっと、パティオンの青筋が引いていく。
女神の中で最もキレやすいと言われているパティオンは、短気だが誰よりも思いやりがあるとも言われていた。
フリアエはクスクス笑う。
「私の目的は、お母様を蘇らせること……そのために人間の信仰心を集めているの」
「お、お母さんの復活? 何を言ってるの?」
「お母様……母なる女神テレサを復活させる。それが私の目的よ。ラスラヌフとリリティアが死んだのは、あの子たちが【暴食】を怒らせただけ」
「怒らせたって……大罪神器は女神を狙っているんじゃ……」
「そうね。大罪神器の所有者の家族を目の前で殺しちゃったから、かなり恨まれているわ……でも、そんなことは些細な事。お母様の復活だけが私の悲願」
「あ、あなた……なにを」
「パティオン。私はお母様を復活させる。人間界に受肉できるほど強力な女神は、あなたとキルシュ、ブリザラの三人だけ……お願い。大罪神器の所有者を何とかして?」
「…………」
パティオンは、ワケが分からなかった。
人間界に受肉するにはかなりの力が必要だ。女神本人の力と信仰心が合わさり、始めて人間界に来ることができる。
今の神界でそれが可能なのは、死んでしまった2人を除けばパティオン、白銀の女神ブリザラ、キルシュの3人しかいない。
「……わかった。私としても、これ以上女神が喰われるのを黙って見ているわけにはいかない……私が、直々に出向くわ。ブリザラとキルシュの3人で【暴食】を倒す」
「【暴食】の周りには【色欲】、【怠惰】、【嫉妬】の3人がいるわ。彼らが階梯を上げれば厄介な存在になる……早めの対処を」
「ええ。ブリザラを呼ぶ。キルシュは――――」
ここで、パティオンとフリアエは感じた。
「―――え」
「―――あ」
戦の女神キルシュが――――――死んだ。
◇◇◇◇◇◇
フリアエの神殿の扉が開いた。
長い黒髪をなびかせた全裸の美少女が、手に刀を持ちゆっくり歩いてきた。
全身は血に濡れている……でも、それは少女の血ではない。
「……リリカ」
「私、生まれ変わりました……」
全裸の少女は、リリカ。
血は……女神キルシュの物だった。
パティオンは、戦慄していた。
「な、なんで……ど、どうして」
どうして、どうして。
どうして目の前の少女から、女神の気配がするのだ?
フリアエは、何故か微笑んでいた。
「キルシュを食べたのね?」
「はい。戦い、勝ち……喰らいました」
「そう……強くなったわね」
「ありがとうございます。私は……女神になれましたか?」
「ええ。リリカ、あなたは女神の力を得た」
パティオンは、人間が女神を殺したことにショックを受けた。
ただの人間に女神を殺せるはずがない。
女神を殺す事ができるのは、魔神か女神だけ……。
そして、女神の力を持った人間だけ……《ギフト》の力を持つ人間だけ。
「ふ、フリアエ……あなた」
「どうしたの? パティオン」
女神フリアエは、何を考えているのか。
女神を殺せる武器を人間に与えた理由は、一体何なのか。
「…………」
果たして、フリアエに付いていいのだろうか。
「リリカ、今日からあなたは『戦刃の女神リリカ』を名乗りなさい。あなたに相応しい名前だわ」
「戦刃……ありがとうございます!」
パティオンは、フリアエがとても恐ろしく見えた。
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