上 下
1 / 214

1・プロローグ

しおりを挟む

 『ファーレン王国』の平民街。
 似たような建物が並ぶ町並みは、今日も変わらない。

 ありふれた建物の1つ、その裏庭に、木剣がぶつかり合う音が響いた。

 「はっ‼ ていっ‼」
 「甘いっ、とりゃあっ‼」
 「わわわっ⁉」
 「勝負あり‼ 勝者ライト‼」

 木剣を振るのは俺ことライト、そしてもう一人が幼馴染の少女リリカ。
 さらにもう一人の幼馴染である少女セエレを加え、俺たち3人は父さんに剣を習っていた。

 「ライト、焦ると大振りをするクセが直ってきたな。その調子だ」
 「へへへっ」
 「だが、まだ甘い。全ての剣を受けるんじゃなくて、身体を使い躱すことも大事だ」
 「は~い」

 俺の父さんは元騎士。
 現在は王国騎士団の武具の整備工をやっている。
 剣や鎧の手入れをしたり、折れた剣などを打ち直したり。団員の誰よりも上手く出来たので、騎士団長直々に整備工への配属をお願いされた。
 父さんとしても、危険な任務よりよっぽど安全な整備工のほうが性に合ったらしく、喜んで転職した。
 こうして空いた時間は、俺達に剣の指導をしてくれる。

 「リリカ、お前はもっと剣をよく見るんだ。目を瞑ったら剣が見えないだろ?」
 「は~い······」
 「だが、才能はある。剣を握って3年のライトにここまで着いてくるとはな」
 「えへへ······」

 リリカは、俺と同じ8歳。
 女の子らしく髪を伸ばし、可愛らしいリボンで結んでる。だけど着てる服はラフな物だ。
 家が隣同士の幼馴染で、寝るとき以外は殆ど一緒だ。
 俺が5歳で剣を習い始めたころ、最初は見てるだけだったが、1年ほど前から一緒に習うようになった。
 しかも上達が早く、父さん曰く才能があるとのこと。なんか悔しいぜ。

 「セエレは······本当にそれでいいのか?」
 「はい、先生」

 セエレは俺の家の隣に住む少女。つまり、セエレ・俺んち・リリカという感じで家が並んでる。
 セミロングの金髪に、着てる服も男みたいな物だが、れっきとした女の子。
 しかもその両手には、2本の木剣が握られていた。

 「1本より2本のほうが強いでしょ?」
 「バカだな。それは達人だけだよ。現にセエレは弱いじゃん‼」
 「よ、弱くないし‼ ライトより強いもん‼」
 「うっそだーっ‼ お前、俺に勝ったことないじゃん‼」
 「これから勝つもん‼」
 「こら、止めなさい」

 父さんが、俺とセエレの頭を撫でる。
 
 「いいかライト、セエレが強くなれば、お前を負かす日がきっと来る。だから、セエレに負けないように、強くなれ」
 「当たり前じゃん‼」
 「セエレ、お前が二刀流に拘るならそれでいい。その代わり、ライトを倒せるくらいに強くなれ」
 「はい‼」
 「もちろん、リリカもな」
 「はーい‼」

 これが俺たちの日常。
 約束するワケでもなく集まり、日が暮れるまで遊ぶ。
 父さんが居るときは剣を習い、模擬戦を繰り返す。


 俺ことライトと、リリカとセエレの日常だった。
しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...