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第三章

極凶悪級呪装備『次元蟷螂』ヴァルケン③

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「ケケケッ!! さあ、楽しもうぜ!!」

 気を失ったラクレスの代わりに、ダンテの意識が前に出た。
 現在、ラクレスの四肢は拘束されている。だが、暗黒鎧が一気に膨張し破裂すると、ヴァルケンの触手鎌が弾けとんだ。
 同時に、暗黒物質が周囲に飛ぶ。生身のラクレスの身体が露わになるが、一瞬で鎧が形成された。

「ラクレス!! テメェはいい子ちゃんぶって、心の奥底ではオレ様のことを恐れている!! だからオレ様を完全に使えない!!」

 鎧が膨張する。グネグネと意思を持つようにうごめき、背中に蜘蛛の足のような触手が生えると、まるでそれこそが本当の足のように地面に接地する。
 そして、両手に暗黒物質の剣、背中には大量の砲身が形成され、露出した目元、口元が狂気に歪んだ。

「教えてやる!! いい子ちゃんじゃない、オレ様のチカラをなぁ!!」

 ダンテの蜘蛛脚が、まるで本物の蜘蛛のように走り出す。

「な、なんだこいつ、か、変わりすぎだろ!!」
『ヴァルケン、油断すんな!!』

 すると、ダンテの背中にある大量の砲身から、魔力の砲撃が放たれる。
 『黒の殺戮砲ブラックジェノサイド』……ラクレスとは比べ物にならない魔力の密度で放たれる砲撃は、防御するだけで鎌が砕け散る。
 ヴァルケンは、魔力で鎌を復元。

「ギャハハハハ!! まだまだぁ!!」

 そして、ヴァルケンの全身に付着していた暗黒物質が固まり、ヴァルケンの足が硬直した。
 関節可動域に暗黒物質が付着していた。ガキン!! と、いきなり足が止まる。
 すると、いつの間にか背後にいたダンテが砲撃。
 そして、真横にいたダンテが剣で斬りつけ、反対側にいたダンテが巨大な暗黒物質の槍をヴァルケンの腹に突き刺す。
 そして、真正面にいたダンテが、右腕に暗黒物質を集中させ、巨大な拳を形成していた。

「な、なにが」
『は、はや』

 速すぎる。
 後ろで砲撃、横から斬撃、反対側から槍を突き刺し、真正面に拳を構えたダンテ。そして、なぜか上空から大量の剣、槍、斧、鎌、鉄球などが落ちてきて全身に突き刺さり、そこで背後から向かっていた砲撃が背中に直撃、足、触手が砕け散り、ダンテに向かって飛ばされた。

「いらっしゃぁぁぁぁい!!」
「ぐぼっっがぁぁぁ!?」

 そして、カウンターの拳が顔面に叩きこまれ、鎧が砕け散ったヴァルケンが吹っ飛び、近くの岩石に激突……そのまま倒れた、と思ったら。

「ッ!? な、っが」

 足に絡みついた黒い糸のような暗黒物質が、吹き飛ばされたヴァルケンを引き戻す。
 ダンテが、左手で放った『黒の糸ブラックスレッド』を引き戻したのだ。

「終わりなんてねぇぜェェェェェェェ!?」
「うっげぇぇぁ!?」

 引き戻され、再び殴られ吹き飛ぶ。
 もはや、呪装備も半壊。核が剥き出しになる。
 七度、ヴァルケンは殴られては吹っ飛び、殴られては吹っ飛びを繰り返し、顔面があり得ないくらい腫れあがり、鎧が解除されほぼ裸の状態で、四肢が粉々に砕けた状態で宙吊りにされ、ダンテの前に吊るされた。

「ほま、なに、もの……」
「ケケケ……何だと思う? なあ、なあ? なあああ!?」

 口を開け、牙を剥き出しにする。
 ダンテは、核が剥き出しになった『次元蟷螂』を掴み、ヴァルケンに言う。

「ケケケ、どーやらオマエの仲間ぁ見てるようだな。なあ、冥府六将とかいうクソ雑魚について質問だ。オマエ……|どの魔神の配下だ?」
「ふ、ぇ……?」
「冥府六将。そして六魔神。どーせ、六将とかいうのは魔神のパシリみてぇなモンだろ? オマエ、魔神は同列みたいな言い方してたが、使えてる神はいるはずだ。どいつだ?」
「…………」

 こいつは、何なんだ。
 ヴァルケンは、目の前にいる黒い鎧の呪装備が、もうただの呪装備には見えなかった。
 ヴァルケンは、四つある呪装備の等級の中でも最上位である『極凶悪級』だ。配下の魔装者とは比べ物にならない強さを持つのに、手も足も出なかった。
 魔人であるラクレスとは、まるで別物。ヴァルケンは恐怖する……が、ダンテが手にナイフを作ると、何のためらいもなくヴァルケンの頬に刺す。

「聞こえてんのか? 魔神だよ、魔神」
「ほがぁぁぁぁ!?」
「言うつもりねぇならいいわ。死ね」
「まま、まて、いう、いう、り、リンボ……おれら、『辺獄魔神リンボ』様の、崇拝者」
「……リンボね」

 そう言い、ダンテは『次元蟷螂』の核を握りつぶした。

「あ、ぁ、ァァァァァッ!! お、オレの、オレのマンティスぅぅぅぅぅ!!」

 すると、核を破壊されたことで、ヴァルケンの身体が青く燃える。
 その様子を見てダンテは言う。

「なるほどな。オレ様とラクレスみたいに、魂で呪装備と繋がってんのか。その『魔装』とかいうチカラぁ使うのに関係してるのかね?」
「オマエ、オマエ……許さねぇぞ!! オレの敵、エクスパシオン様が確実に取る、オマエなんか!!」
「あぁ、最後にいいこと教えてやる」

 ダンテはぐちゃりと笑い、燃えるヴァルケンの身体を触手で持ち上げ、耳打ちするような態勢へ。
 そして、ヴァルケンに向かって言う。

「──……だ」
「……え」
「ケケケ、あばよ」

 ヴァルケンの全身に糸が絡みつくと、そのまま一気に握りつぶした。
 バラバラになったヴァルケンは、青い炎に包まれ……その欠片すら残らない。
 ダンテは、近くを浮遊していた『次元蟷螂』マンティスの魂を捕まえ、その場で飲み込んだ。

「いい味してやがる。ケケケ……でもまあ、今回のせいで、補填したラクレスの魂を全部使っちまった。コイツの魂で補填しても、残りカスくらいのチカラしか残らねぇな。まあ……チャンスはまだいくらでもある。さてラクレス、そろそろ起きる時間だぜ」

 兜が修復され、散らばった暗黒物質も鎧の元へ。
 ラクレスの意識が戻る前、ダンテは小さく呟いた。

「……リンボ。オレ様が必ず殺してやる」
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