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第一章
VS七曜騎士『雷』のエクレシア
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剣を構えたはいいが、ラクレスはビビッていた。
(ど、どうすりゃいい……!? 魔人とか呪装備とか俺が生きてるとか言いたいこと山ほどあるのに、なんでエクレシア様と戦うことになってるんだ……!?)
『はっはっは。面白い人生だよなあ』
(お前なあ!! そもそも、お前のせいで)
『ま、いきなりな展開でテンパるのも仕方ねぇ。少しアシストしてやる。ほれ、来たぞ』
エクレシアは剣を構えると、全身に『紫電』を帯びた。
『……チッ、胸糞悪い雷だぜ』
ダンテが忌々しそうにつぶやく。
ラクレスは、全く別なことを考えていた。
(あれが、七曜騎士に選ばれた騎士が与えられる女神カジャクトの『神器』……エクレシア様の雷神器、『イナンナ』か)
雷神器イナンナ。
雷を自在に操る細剣であり、エクレシアは突きを最も得意とする騎士。
突きの速度は七曜騎士で最速。まさに、雷のごとし。
すると、首が勝手に傾いた。
「あら、お上手」
(えっ)
エクレシアの突きが、ラクレスの鼻先を狙って放たれたのだ。
サーッと顔が青くなる。今、首が動いたのは間違いなく。
『ケケケ、オレ様のアシストがなきゃ死んでたぜ? まあ、この女……手ぇ抜いてやがるけどな』
ダンテのサポートがなければ、死んでいた。
『ある程度の攻撃はオートで躱してやる。お前は攻撃に専念しろ』
(専念って……まだ戦うこともよくわかってないのに)
『いいからやれ。さっきも言ったが、七曜騎士になれたらいろいろ説明してやるし、オマエの疑問も答えられる範囲で応えてやる。スッキリしたいだろ? だったら、ごちゃごちゃ考えるのは後にして、目の前にいる敵に集中しな』
(…………)
その通りだった。
ラクレスは呼吸を整え、再び剣を構えた。
◇◇◇◇◇◇
「…………ぇ?」
「どったの、レイアースちゃん」
「……その『ちゃん』付け、やめろと言ったはずなのだがな」
七曜騎士『風』のエリオをジロっと睨むレイアース。
言えるわけがない。
剣を構えた黒騎士の姿とラクレスがダブって見えた。
ラクレスはもういない。黒騎士曰く『死体がないということは生きている』だが……あれだけ大量の出血をして、助けを待つではなくどこかへ行くなど、ラクレスらしくない。
「それにしても……あの黒騎士、すげぇな。エクレシア姐さんの突きを回避するとは」
七曜騎士なら誰でもできるレベルだが、初見で回避はレイアースもできなかった。
正直、黒騎士はそんなに強くない。隙のない構え、人間が持たない『闇』の魔力には警戒したが……レイアースは、全力で戦えば勝てると思っていた。
「…………」
それでも、レイアースは黒騎士から目が離せなかった。
◇◇◇◇◇◇
『参る』
走り出すと、勝手に声が出た。
背中に『噴射口』が展開され、魔力を放出して一気に接近。
「へえ、そういう鎧なのね」
一刀両断。だがエクレシアは半歩避けて回避。
ラクレスは左腕に小さな砲身を作り、魔力の弾丸をエクレシアに向けて連射した。
「『黒の機銃』」
「ッ!!」
エクレシアは細かなステップを刻んで全ての弾丸を回避……そして、回避しながらラクレスに接近し、紫電を帯びた一閃を放つ。
ラクレスも、交差するように剣を振る。
愚直な訓練の結果現れる剣筋は、一直線にエクレシアに向かって飛ぶ。
そして、互いの剣が交差し、それぞれの急所に突きつけられ……止まった。
「……と、こんなところでしょう。これ以上は殺し合いになるので」
エクレシアはニッコリ笑って剣を引く。
ラクレスも剣を引き、腰に納める。
『……ありがとうございました』
「ええ、こちらこそ。ふふ……次はもう少し、お互いに本気を出したいわね」
エクレシアと握手。
すると、イグニアスが頷く。
「いいだろう。黒騎士ダンテ……お前の実力を認める。それでは、決を採る。黒騎士ダンテが七曜騎士に相応しいと思う者、挙手せよ」
(え、け、決って……た、多数決で決めるの? だったら、この戦いの意味は?)
エクレシア、エリオ、そしてイグニアスが挙手すると……残りの者もしぶしぶ挙手。
「決まりだ。これより黒騎士ダンテを七曜騎士『闇』に認定する!! 七曜騎士の証であるマントを受け取るがよい」
『…………』
どういう流れなのか、いつの間にか司祭のような人がいて、手に黒いマントを持っていた。
ダンテが疑問の声を出す。
『おいおい、今更だがこういうのってオーサマが授与するモンじゃねぇの? この赤ひげの騎士、いろんな手順無視してオマエのこと騎士にするつもりなのか?』
(イグニアス様は、ソラシル王国騎士団の最高責任者であり、最強の騎士なんだ。騎士に関わることは全てイグニアス様が仕切ってるし、国王陛下も逆らえないって話だ。それとイグニアス様……堅苦しい挨拶とか嫌いらしいよ)
ラクレスはマントを受け取り、その場で羽織る。
すると、ダンテが気を遣ったのか、留め金のようなものを生成し、マントを固定。
「本来なら、女神カジャクトの神器を渡し七曜騎士として迎え入れるのだが、知っての通り女神カジャクトは『闇』の神器を遺していない。理解しろ」
『わかりました』
つい、素のラクレスの反応で返してしまうが、特に怪しまれなかった。
「では、黒騎士ダンテ。貴様を七曜騎士として迎える。七曜騎士に関しては……レイアース、お前が教えてやれ」
「なっ……っぐ、は、はい」
物凄く嫌そうだった。
こうして、ラクレスの人生が終わり、黒騎士ダンテとしての新しい人生が始まる。
早々に七曜騎士たちは帰り、残されたレイアースと向かい合うラクレス。
「……チッ、仕事だから仕方ない。これから七曜騎士としての仕事を教える。感謝しろよ」
『ああ、感謝する……ありがとう』
「…………ふん」
憧れの騎士になれた。幼馴染のレイアースとの約束も果たせた。
だが、ラクレスとレイアースの距離は、あまりにも遠かった。
(ど、どうすりゃいい……!? 魔人とか呪装備とか俺が生きてるとか言いたいこと山ほどあるのに、なんでエクレシア様と戦うことになってるんだ……!?)
『はっはっは。面白い人生だよなあ』
(お前なあ!! そもそも、お前のせいで)
『ま、いきなりな展開でテンパるのも仕方ねぇ。少しアシストしてやる。ほれ、来たぞ』
エクレシアは剣を構えると、全身に『紫電』を帯びた。
『……チッ、胸糞悪い雷だぜ』
ダンテが忌々しそうにつぶやく。
ラクレスは、全く別なことを考えていた。
(あれが、七曜騎士に選ばれた騎士が与えられる女神カジャクトの『神器』……エクレシア様の雷神器、『イナンナ』か)
雷神器イナンナ。
雷を自在に操る細剣であり、エクレシアは突きを最も得意とする騎士。
突きの速度は七曜騎士で最速。まさに、雷のごとし。
すると、首が勝手に傾いた。
「あら、お上手」
(えっ)
エクレシアの突きが、ラクレスの鼻先を狙って放たれたのだ。
サーッと顔が青くなる。今、首が動いたのは間違いなく。
『ケケケ、オレ様のアシストがなきゃ死んでたぜ? まあ、この女……手ぇ抜いてやがるけどな』
ダンテのサポートがなければ、死んでいた。
『ある程度の攻撃はオートで躱してやる。お前は攻撃に専念しろ』
(専念って……まだ戦うこともよくわかってないのに)
『いいからやれ。さっきも言ったが、七曜騎士になれたらいろいろ説明してやるし、オマエの疑問も答えられる範囲で応えてやる。スッキリしたいだろ? だったら、ごちゃごちゃ考えるのは後にして、目の前にいる敵に集中しな』
(…………)
その通りだった。
ラクレスは呼吸を整え、再び剣を構えた。
◇◇◇◇◇◇
「…………ぇ?」
「どったの、レイアースちゃん」
「……その『ちゃん』付け、やめろと言ったはずなのだがな」
七曜騎士『風』のエリオをジロっと睨むレイアース。
言えるわけがない。
剣を構えた黒騎士の姿とラクレスがダブって見えた。
ラクレスはもういない。黒騎士曰く『死体がないということは生きている』だが……あれだけ大量の出血をして、助けを待つではなくどこかへ行くなど、ラクレスらしくない。
「それにしても……あの黒騎士、すげぇな。エクレシア姐さんの突きを回避するとは」
七曜騎士なら誰でもできるレベルだが、初見で回避はレイアースもできなかった。
正直、黒騎士はそんなに強くない。隙のない構え、人間が持たない『闇』の魔力には警戒したが……レイアースは、全力で戦えば勝てると思っていた。
「…………」
それでも、レイアースは黒騎士から目が離せなかった。
◇◇◇◇◇◇
『参る』
走り出すと、勝手に声が出た。
背中に『噴射口』が展開され、魔力を放出して一気に接近。
「へえ、そういう鎧なのね」
一刀両断。だがエクレシアは半歩避けて回避。
ラクレスは左腕に小さな砲身を作り、魔力の弾丸をエクレシアに向けて連射した。
「『黒の機銃』」
「ッ!!」
エクレシアは細かなステップを刻んで全ての弾丸を回避……そして、回避しながらラクレスに接近し、紫電を帯びた一閃を放つ。
ラクレスも、交差するように剣を振る。
愚直な訓練の結果現れる剣筋は、一直線にエクレシアに向かって飛ぶ。
そして、互いの剣が交差し、それぞれの急所に突きつけられ……止まった。
「……と、こんなところでしょう。これ以上は殺し合いになるので」
エクレシアはニッコリ笑って剣を引く。
ラクレスも剣を引き、腰に納める。
『……ありがとうございました』
「ええ、こちらこそ。ふふ……次はもう少し、お互いに本気を出したいわね」
エクレシアと握手。
すると、イグニアスが頷く。
「いいだろう。黒騎士ダンテ……お前の実力を認める。それでは、決を採る。黒騎士ダンテが七曜騎士に相応しいと思う者、挙手せよ」
(え、け、決って……た、多数決で決めるの? だったら、この戦いの意味は?)
エクレシア、エリオ、そしてイグニアスが挙手すると……残りの者もしぶしぶ挙手。
「決まりだ。これより黒騎士ダンテを七曜騎士『闇』に認定する!! 七曜騎士の証であるマントを受け取るがよい」
『…………』
どういう流れなのか、いつの間にか司祭のような人がいて、手に黒いマントを持っていた。
ダンテが疑問の声を出す。
『おいおい、今更だがこういうのってオーサマが授与するモンじゃねぇの? この赤ひげの騎士、いろんな手順無視してオマエのこと騎士にするつもりなのか?』
(イグニアス様は、ソラシル王国騎士団の最高責任者であり、最強の騎士なんだ。騎士に関わることは全てイグニアス様が仕切ってるし、国王陛下も逆らえないって話だ。それとイグニアス様……堅苦しい挨拶とか嫌いらしいよ)
ラクレスはマントを受け取り、その場で羽織る。
すると、ダンテが気を遣ったのか、留め金のようなものを生成し、マントを固定。
「本来なら、女神カジャクトの神器を渡し七曜騎士として迎え入れるのだが、知っての通り女神カジャクトは『闇』の神器を遺していない。理解しろ」
『わかりました』
つい、素のラクレスの反応で返してしまうが、特に怪しまれなかった。
「では、黒騎士ダンテ。貴様を七曜騎士として迎える。七曜騎士に関しては……レイアース、お前が教えてやれ」
「なっ……っぐ、は、はい」
物凄く嫌そうだった。
こうして、ラクレスの人生が終わり、黒騎士ダンテとしての新しい人生が始まる。
早々に七曜騎士たちは帰り、残されたレイアースと向かい合うラクレス。
「……チッ、仕事だから仕方ない。これから七曜騎士としての仕事を教える。感謝しろよ」
『ああ、感謝する……ありがとう』
「…………ふん」
憧れの騎士になれた。幼馴染のレイアースとの約束も果たせた。
だが、ラクレスとレイアースの距離は、あまりにも遠かった。
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