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第六章
まさかの出来事
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鉱山奥へ進んでいると、レイが立ち止まる。
いきなり立ち止まったので、すぐ後ろを歩いていたサリオがレイの背中にぶつかった。
「あいたっ」
「…………」
「れ、レイさん。いきなり立ち止まらないで……って、どうしたの?」
「……これ」
レイはしゃがみ込み、何かを拾う。
小さな紙の筒だ。みんなが顔を近づけると、レノが言う。
「煙草じゃねぇか。それがどうかしたか?」
「あのね。見てわかんない?」
「???」
レノは首を傾げる。
俺、アピアもよくわからない。だが、サリオがハッとした。
「え、どうして……煙草、だよね」
「ええ。おかしいわ」
「待て待て。おいサリオ、わかるように説明しろよ」
「……あり得ないんだ」
サリオは煙草をレイから受け取る。
「鉱山内で煙草は吸えないんだよ。粉塵に着火すれば爆発の危険があるからね。こんな坑道のど真ん中に、紙巻き煙草の吸殻が落ちているなんておかしい」
「……これ吸ったの、作業員じゃないわね。見て、紙が真新しい。アピア、この鉱山が閉鎖されたのって、いつ?」
「……もう三ヶ月以上前です」
「鉱山が閉鎖されてるなら、粉塵も起きない。堂々と煙草を吸えるわ……間違いなく、ここに誰かいる。誰かが来ている」
「「「「…………」」」」
「確認するけど、あたしたち以外の冒険者が入った可能性は?」
「な、ないと思います……ムーン公爵様は、私たちに頼むと言いましたから」
「……決まりね。オリハルコン狙いの泥棒がいる。ロックワームを恐れず、堂々と鉱山を歩くことのできる実力者。たぶん、複数名」
「おいおいおい。犯罪かよ……オレらの手に余るんじゃねぇか?」
「……」
レイは考えこみ、俺を見た。
「盗賊の数にもよるけど……奥で確認だけはした方がいいわ。四人以上なら手を出さず撤退。それ以下なら……あたしたちで仕留めるわ」
「仕留めるって、殺すのかよ」
「……身の安全を確保する場合。それと明確に命を狙われている場合、命を奪っても罰せられないわ」
「……マジかよ」
「できないなら援護だけして。あたしがやるから」
「ば、馬鹿言うな!! できるっての!!」
「……アピアは、無理しないでね」
「大丈夫です」
「リュウキ、あんたは?」
「問題ない。俺もやれる……それに、命を奪う心得は習った」
それこそ、嫌と言うほどな。
俺に戦い方を教えてくれた師匠たちは「命を奪うなら、奪われることを覚悟しろ」って言っていた。俺は、奪う覚悟も、奪われる覚悟もある。
俺たちは全員で鉱山奥へ。そして、やはり落ちていた……紙巻き煙草の吸殻。
それだけじゃない。鉱山の最奥は広い採掘場になっていた。
「───……撤退、か?」
採掘場手前の入口で、青ざめたレノがポツリと呟く。
採掘場再広場には、十五名ほどの人間がいた。
レイは口を押さえ首を振る。喋るなということだ。
「…………?」
俺は気付いた。
広場奥に、檻がある。
そこに、何人か女性が閉じ込められていた。全員、服を着ておらずがっくり項垂れている。
察した───ここにいる連中、全員が男だ。そういうことか。
すると、リーダー格らしき男が言う。
「チッ……おい、救援はまだか?」
「へい。そろそろだと思うんですが……」
「ついてねぇぜ。冒険者ギルドの連中、覚えていやがれ……オレら『ギガントマキア』を舐めた報い、テュポーン様とエキドナ様にお願いして、目にモノ見せてやるぜ」
ギガントマキア……?
すると、レイとアピアがギョッとしたのが見え、俺に向かって何度も首を振る。
アピアも何かを知っているようだ。
とりあえず、今は撤退───。
「───むぐ!?」
「動くな」
「「「「っ!!」」」」
油断した。
俺たちの背後から男が現れ、アピアの首を掴んでナイフを突きつけた。
「動くなよ? スキルも使うな。お前らがスキル使うのと、このナイフが嬢ちゃんの首かっ切るの、どっちが速いかわかるよな?」
「……くっ」
「おい!! ガキどもを捕まえたぞ!!」
すると、広場にいた盗賊たちが全員こちらを見た。
レノが左右を見て歯を食いしばっている。すると。
「カッ……」
「れ、レノ、っが」
「レノ、サリオ!!」
レノとサリオが倒れた。いつの間にか背後にいた男が、人差し指で二人の首を突いた瞬間、二人はいきなり気絶し倒れた。
なんだ、こいつ……強いぞ。
「殺したのか?」
「いや、眠らせた。無鉄砲なガキは面倒だからな。そっちのお前と、そこの女はなかなかやるようだ……まぁ、もう動けんがな。仲間を見殺しにはできまい」
盗賊が、レノとサリオの身体を引きずり、鎖で縛り牢の近くへ転がした。
レイは武器を投げ捨て両手を上げる。俺も、持っていた武器を全て捨てた。
「いやぁ!!」
「へへへ、動くんじゃねぇよ。おい、そっちの女も脱がしちまえ。男は……いいや」
「アピア「リュウキ、動かないで」
アピアの服が脱がされていく。アピアは泣いていた。
そして、レイも羞恥に耐えながら脱がされた。俺は顔を反らし、こみ上げる怒りと闘気を必死に押さえた……ダメだ。皆殺しにはできるけど、アピアたちが。
俺は背中を蹴られ、広場へ。
裸にされ、両手を拘束されたレイとアピアは、牢に入れられた。
俺は鎖で両手を拘束され、レノたちの傍へ。
そして、ガタイのいいスキンヘッドの男が、俺をジッと見ていた。
「さて、質問しよう。お前たちはなんだ?」
「……冒険者だ。鉱山を所有する公爵家の依頼で、この鉱山に住み着いている魔獣を退治しに来た」
「魔獣退治? ふふ、お前たちのような子供が? 笑わせる」
「……あんたたちは、何なんだ? 冒険者か?」
「冒険者? く、ははははは!! 我々は『ギガントマキア』……偉大なるテュポーン様と、エキドナ様に力を与えられた選ばれし者である。それと、魔獣?……ククク、魔獣とはこいつのことか?」
「……え」
今、気付いた。
広場の天井には、無数の穴が空いていた。しかも、穴の一つ一つがかなり大きい。
リーダー格の男が口笛を鳴らす。すると……穴から、巨大な緑色の大蛇が現れた。
でかい、でかすぎる。しかも、普通の蛇じゃない。鱗が鉱石なのか、濃い緑色のゴツゴツした鱗に包まれ、大きな口を開けると長い舌がシュルシュル出た。
リーダー格の男は言う。
「エキドナ様にいただいたスキル、『マスターテイム』の力でモノにした魔獣だ。この大蛇は『大罪魔獣』の一体。『傲慢なる大蛇』ミドガルズオルムだ。ふふ、まさかこの鉱山をねぐらにしていたとは、組織にいい土産ができた」
「…………」
「まぁいい。少年、きみたち三人はミドガルズオルムの餌に、女は奴隷として売らせてもらう。恨むなら、きみたちをここに送った公爵家を恨むんだな」
「奴隷……?」
「ああ。西の地で見つけたエルフだ。くく、エルフはいい金になる」
檻を見ると、若い女性たちがいた。
よく見ると、女性は全員、耳が長い。
そういえば、俺に弓を教えてくれた師匠もエルフだったっけ。
さて……そろそろいけるかな。
「詰めが甘かったな」
「なに?」
「裸にして、両手を拘束して檻に閉じ込めれば安心か? 気絶させれば安心か? 鎖で拘束すれば安心か? 子供だから何もできないと思って安心してるか?」
「あぁ?」
「子供だと思って舐めるなよ───『龍人変身』」
両手を拘束していた鎖がはじけ飛び、俺は変身した。
「スキルイーター、ストック……『樹龍闘気』」
リンドブルムの闘気をセットし、地面に闘気を流し込む。
すると、倒れているレノとサリオを包むように蔦が伸び、レイたちのいる檻に細い枝が絡みつく。これでもうこいつらは手が出せない。
「この、『獣化』だと!? お前ら、このガキを始末───……って、おい。その姿、まさかオブァ!?」
俺はリーダー格の男をぶん殴る。男は吹き飛ばされ壁に激突した。
すると、天井の穴から巨大なヘビ……ミドガルズオルムが現れ、大きな口を開け威嚇した。
そして、十五人の盗賊たち。起き上がったリーダー格の男は、鼻血をダラダラ流しながら怒り叫ぶ。
「殺せ!!」
「やってみろ。さぁ……やろうか」
レイとアピアを辱めて、レノとサリオを気絶させた報いを受けさせてやるよ。
いきなり立ち止まったので、すぐ後ろを歩いていたサリオがレイの背中にぶつかった。
「あいたっ」
「…………」
「れ、レイさん。いきなり立ち止まらないで……って、どうしたの?」
「……これ」
レイはしゃがみ込み、何かを拾う。
小さな紙の筒だ。みんなが顔を近づけると、レノが言う。
「煙草じゃねぇか。それがどうかしたか?」
「あのね。見てわかんない?」
「???」
レノは首を傾げる。
俺、アピアもよくわからない。だが、サリオがハッとした。
「え、どうして……煙草、だよね」
「ええ。おかしいわ」
「待て待て。おいサリオ、わかるように説明しろよ」
「……あり得ないんだ」
サリオは煙草をレイから受け取る。
「鉱山内で煙草は吸えないんだよ。粉塵に着火すれば爆発の危険があるからね。こんな坑道のど真ん中に、紙巻き煙草の吸殻が落ちているなんておかしい」
「……これ吸ったの、作業員じゃないわね。見て、紙が真新しい。アピア、この鉱山が閉鎖されたのって、いつ?」
「……もう三ヶ月以上前です」
「鉱山が閉鎖されてるなら、粉塵も起きない。堂々と煙草を吸えるわ……間違いなく、ここに誰かいる。誰かが来ている」
「「「「…………」」」」
「確認するけど、あたしたち以外の冒険者が入った可能性は?」
「な、ないと思います……ムーン公爵様は、私たちに頼むと言いましたから」
「……決まりね。オリハルコン狙いの泥棒がいる。ロックワームを恐れず、堂々と鉱山を歩くことのできる実力者。たぶん、複数名」
「おいおいおい。犯罪かよ……オレらの手に余るんじゃねぇか?」
「……」
レイは考えこみ、俺を見た。
「盗賊の数にもよるけど……奥で確認だけはした方がいいわ。四人以上なら手を出さず撤退。それ以下なら……あたしたちで仕留めるわ」
「仕留めるって、殺すのかよ」
「……身の安全を確保する場合。それと明確に命を狙われている場合、命を奪っても罰せられないわ」
「……マジかよ」
「できないなら援護だけして。あたしがやるから」
「ば、馬鹿言うな!! できるっての!!」
「……アピアは、無理しないでね」
「大丈夫です」
「リュウキ、あんたは?」
「問題ない。俺もやれる……それに、命を奪う心得は習った」
それこそ、嫌と言うほどな。
俺に戦い方を教えてくれた師匠たちは「命を奪うなら、奪われることを覚悟しろ」って言っていた。俺は、奪う覚悟も、奪われる覚悟もある。
俺たちは全員で鉱山奥へ。そして、やはり落ちていた……紙巻き煙草の吸殻。
それだけじゃない。鉱山の最奥は広い採掘場になっていた。
「───……撤退、か?」
採掘場手前の入口で、青ざめたレノがポツリと呟く。
採掘場再広場には、十五名ほどの人間がいた。
レイは口を押さえ首を振る。喋るなということだ。
「…………?」
俺は気付いた。
広場奥に、檻がある。
そこに、何人か女性が閉じ込められていた。全員、服を着ておらずがっくり項垂れている。
察した───ここにいる連中、全員が男だ。そういうことか。
すると、リーダー格らしき男が言う。
「チッ……おい、救援はまだか?」
「へい。そろそろだと思うんですが……」
「ついてねぇぜ。冒険者ギルドの連中、覚えていやがれ……オレら『ギガントマキア』を舐めた報い、テュポーン様とエキドナ様にお願いして、目にモノ見せてやるぜ」
ギガントマキア……?
すると、レイとアピアがギョッとしたのが見え、俺に向かって何度も首を振る。
アピアも何かを知っているようだ。
とりあえず、今は撤退───。
「───むぐ!?」
「動くな」
「「「「っ!!」」」」
油断した。
俺たちの背後から男が現れ、アピアの首を掴んでナイフを突きつけた。
「動くなよ? スキルも使うな。お前らがスキル使うのと、このナイフが嬢ちゃんの首かっ切るの、どっちが速いかわかるよな?」
「……くっ」
「おい!! ガキどもを捕まえたぞ!!」
すると、広場にいた盗賊たちが全員こちらを見た。
レノが左右を見て歯を食いしばっている。すると。
「カッ……」
「れ、レノ、っが」
「レノ、サリオ!!」
レノとサリオが倒れた。いつの間にか背後にいた男が、人差し指で二人の首を突いた瞬間、二人はいきなり気絶し倒れた。
なんだ、こいつ……強いぞ。
「殺したのか?」
「いや、眠らせた。無鉄砲なガキは面倒だからな。そっちのお前と、そこの女はなかなかやるようだ……まぁ、もう動けんがな。仲間を見殺しにはできまい」
盗賊が、レノとサリオの身体を引きずり、鎖で縛り牢の近くへ転がした。
レイは武器を投げ捨て両手を上げる。俺も、持っていた武器を全て捨てた。
「いやぁ!!」
「へへへ、動くんじゃねぇよ。おい、そっちの女も脱がしちまえ。男は……いいや」
「アピア「リュウキ、動かないで」
アピアの服が脱がされていく。アピアは泣いていた。
そして、レイも羞恥に耐えながら脱がされた。俺は顔を反らし、こみ上げる怒りと闘気を必死に押さえた……ダメだ。皆殺しにはできるけど、アピアたちが。
俺は背中を蹴られ、広場へ。
裸にされ、両手を拘束されたレイとアピアは、牢に入れられた。
俺は鎖で両手を拘束され、レノたちの傍へ。
そして、ガタイのいいスキンヘッドの男が、俺をジッと見ていた。
「さて、質問しよう。お前たちはなんだ?」
「……冒険者だ。鉱山を所有する公爵家の依頼で、この鉱山に住み着いている魔獣を退治しに来た」
「魔獣退治? ふふ、お前たちのような子供が? 笑わせる」
「……あんたたちは、何なんだ? 冒険者か?」
「冒険者? く、ははははは!! 我々は『ギガントマキア』……偉大なるテュポーン様と、エキドナ様に力を与えられた選ばれし者である。それと、魔獣?……ククク、魔獣とはこいつのことか?」
「……え」
今、気付いた。
広場の天井には、無数の穴が空いていた。しかも、穴の一つ一つがかなり大きい。
リーダー格の男が口笛を鳴らす。すると……穴から、巨大な緑色の大蛇が現れた。
でかい、でかすぎる。しかも、普通の蛇じゃない。鱗が鉱石なのか、濃い緑色のゴツゴツした鱗に包まれ、大きな口を開けると長い舌がシュルシュル出た。
リーダー格の男は言う。
「エキドナ様にいただいたスキル、『マスターテイム』の力でモノにした魔獣だ。この大蛇は『大罪魔獣』の一体。『傲慢なる大蛇』ミドガルズオルムだ。ふふ、まさかこの鉱山をねぐらにしていたとは、組織にいい土産ができた」
「…………」
「まぁいい。少年、きみたち三人はミドガルズオルムの餌に、女は奴隷として売らせてもらう。恨むなら、きみたちをここに送った公爵家を恨むんだな」
「奴隷……?」
「ああ。西の地で見つけたエルフだ。くく、エルフはいい金になる」
檻を見ると、若い女性たちがいた。
よく見ると、女性は全員、耳が長い。
そういえば、俺に弓を教えてくれた師匠もエルフだったっけ。
さて……そろそろいけるかな。
「詰めが甘かったな」
「なに?」
「裸にして、両手を拘束して檻に閉じ込めれば安心か? 気絶させれば安心か? 鎖で拘束すれば安心か? 子供だから何もできないと思って安心してるか?」
「あぁ?」
「子供だと思って舐めるなよ───『龍人変身』」
両手を拘束していた鎖がはじけ飛び、俺は変身した。
「スキルイーター、ストック……『樹龍闘気』」
リンドブルムの闘気をセットし、地面に闘気を流し込む。
すると、倒れているレノとサリオを包むように蔦が伸び、レイたちのいる檻に細い枝が絡みつく。これでもうこいつらは手が出せない。
「この、『獣化』だと!? お前ら、このガキを始末───……って、おい。その姿、まさかオブァ!?」
俺はリーダー格の男をぶん殴る。男は吹き飛ばされ壁に激突した。
すると、天井の穴から巨大なヘビ……ミドガルズオルムが現れ、大きな口を開け威嚇した。
そして、十五人の盗賊たち。起き上がったリーダー格の男は、鼻血をダラダラ流しながら怒り叫ぶ。
「殺せ!!」
「やってみろ。さぁ……やろうか」
レイとアピアを辱めて、レノとサリオを気絶させた報いを受けさせてやるよ。
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