追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう

文字の大きさ
上 下
53 / 109
第五章

新たなる敵

しおりを挟む
 俺はゆっくりと地上に降り、最後の一撃を放った中心地へ。
 そこにいたのは、バラバラになった人間型のスヴァローグだ。
 首が千切れているが、髪がメラメラ燃え、俺を睨みつける。

「テッメェェェェ!! 殺す、殺してやる!! 丸呑みしてやるァァァァァァ!!」
「すごいな……こんな状態でも生きてるのか」
「ええ。ドラゴンは頭にある『核』を潰さないと死なないのよ。この状態でも放っておけば回復するわ」
「ッ!?」

 俺の傍に、女が立っていた。
 青い髪の女は俺を素通りし、メラメラ燃えるスヴァローグの頭を掴む。

「アンフィスバエナ!! こいつを、こいつを「いやよ」……あ?」
「あなたの負けよ、スヴァローグ」
「アァァァァァッ!? ンだとテッメェェェェ!!」
「うるさいわね……」
「もがっ!?」

 アンフィスバエナとかいう女は、スヴァローグの口を『凍らせ』た。
 そして、俺を見る。

「最後の一撃、本当に素晴らしかった……お父様を思い出したわ」
「……お前は、やらないのか?」
「ええ。あなたもボロボロだしね」
「……チャンスだぞ?」
「そうかもね。でも、面白くないもの」

 アンフィスバエナはふわりと浮き上がる。
 
「わたしが興味を持つくらいだもの。お兄様やお姉様もきっと、あなたに興味津々。ふふ……生き残ってね? リュウキ」
「…………」
「じゃ、またね」

 そう言って、アンフィスバエナは飛んで行った。
 俺はようやく変身を解き、地面にがっくり膝をつく。

「はぁ、はぁ、はぁ……や、ヤバかった」

 体力の限界だった。
 特に、最後の一撃……『真龍神光砲エンシェント・ノウヴァ』はかなりキツイ。一日一発くらいが限度だろうな。
 すると、俺の背後に。

「リュウキ」
「……り、リンドブルム」
「すごかった。リュウキ、わたしより強くなった」
「リンドブルム……っ!!」

 俺はリンドブルムを抱きしめた。
 生きていた。というか、怪我一つない。

「わたし、再生力だけは家族で一番なの。アンフィスバエナお姉ちゃんは気付いてたみたいだけど」
「そうか……でも、よかった」
「うん」

 とりあえず……これで終わりかな。
 なんだかどっと疲れた。

「じゃあ、帰るか。闘技大会の決勝を無視してきたから、優勝はキルトだろうな……まぁいいけど」
「大丈夫?」
「ああ。別に不戦勝でもいい。ここでお前を助けなかったら、後悔してただろうし」
「……うん」

 リンドブルムと一緒に、クロスガルドへ帰る。
 リンドブルム、あんな大怪我だったのにもういつもと変わらない。飛行速度もいつもと同じだし……再生能力ってホントにすごいな。
 そして、リンドブルムと一緒に闘技場へ戻る。一応、リンドブルムは来賓なので来賓室へ。どうやら、スヴァローグたちの気配を感じて飛び出し、捜索されていたようだ。
 リングでは、二年生の試合が始まっている。とりあえず俺はレイのいる医務室へ。
 医務室に入ると……一斉に目を向けられた。
 レイは、すでに起き上っている。

「リュウキ、あんた……どこ行ってたのよ」
「あー……ちょっとな」
「試合開始からの『棄権』はまだ許せる。でもね……どんな理由があろうと、敵前逃亡だけは許せない」
「え……」
「待てよ。リュウキにも事情があったんだろ」
「そ、そうだよレイさん」
「甘いわね。少なくとも……今後、あんたは『臆病者』のレッテルが貼られるわ。キルトのやつ、あんたが臆病者だって周りに吹聴してるわ」

 レノとサリオも気まずそうだ。
 すると、アピアは。

「大丈夫です。リュウキくんは、逃げるような人ではありません。それは、私たちが一番よく知っています」
「「「……」」」

 すると、レイは。

「あーもう、悪かったわよ。どうせどっかで戦ってたんでしょ?」
「……まぁ、うん」
「でも、今後あんたは少しやりづらいかも。そこは覚悟しなさいよ!」
「ああ。ありがとう、レイ」
「ふ、ふん……別に」

 たとえ、どんなに俺の評判が地に落ちようとも、リンドブルムを助けに向かったことに、後悔なんてない。

 ◇◇◇◇◇◇

 クロスガルドから離れた遥か上空にて、アンフィスバエナはスヴァローグの頭を掴んでゆっくり飛んでいた。
 ムームー唸る声がうっとおしいので、アンフィスバエナは口元の氷を剥がしてやる。
 すると、スヴァローグは。

「くっそガァァァァァァーーーーーーッ!! アンフィスバエナ、テメェ何逃げてんだコラァァァァァァ!!」
「逃げてないわよ。それに、つまんないし」
「アァァァァァッ!? だったら戻せ!! オレが、オレがやる!!」
「頭だけで何言ってんだか……それに、一度敗北したあんたに、次なんてないわ」
「アァァァァァッ!?───あ、あぁ……」

 スヴァローグの頭を持ち上げ、前方へ向ける。
 そこには、一人の青年が浮かんでいた。
 若い、二十歳ほどの青年だ。白銀の長髪を風になびかせ、笑顔で手を上げた。

「やぁ」
「ぁ……ぁ、あに、兄貴」
「やられたねぇ、スヴァローグ」

 青年は、笑顔を崩さずにゆっくり近づいてくる。
 そして、スヴァローグの頭をポンポン撫でた。

「父君の力を継承した子に負けたのはいい。でもね、理由がよくない……僕らの上に立つ、だっけ?」
「ッひ……」
「残念だよ。きみのことは好きだった。馬鹿なやつほど愛しいって言うだろう?」
「ま、待ってくれ兄貴。ま、まさか」

 アンフィスバエナの手からスヴァローグの頭が落ちた瞬間、スヴァローグの頭がバラバラに刻まれた。
 そして、赤い宝石のような球体が青年の手に。
 青年は、その宝石に軽くキスし、口の中に入れてボリボリ咀嚼した。

「ふぅ、で、アンフィスバエナ。お前はどうする?」
「何もしない。関わらない。見てるだけ……ダメ?」
「いいよ」

 青年は笑顔で頷く。
 どこか、作り物めいた笑顔だった。

「さて、帰ろうかな。ふふ、パーティーが近くてね、衣装合わせをしなくちゃね」
「……相変わらず、人間の生活に馴染んでいますね。どうせお父様の死とか、継承した人間のことだって知ってたでしょうに」
「まぁね。でも、僕も正直あまり興味はない。今の生活が気に入ってるからね。ふふ、こう見えて爵位もあるんだよ?」
「……力は、奪わないので?」
「ん~……悩み中かな? 正直、姉上たちがうっとおしい気持ちはよくわかる。スヴァローグみたいに強引な手じゃなく、彼を仲間に引き込めないかは考えてるけどね」
「仲間?」
「ああ。ふふ、言っただろう? 近々、パーティがある。ムーン公爵家主催のパーティーがね」
「…………」
「さて、行きますか」

 彼の名は、フリードリヒ・ムーン公爵。
 またの名を───『銀嵐旋龍』ファフニール。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

処理中です...