追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう

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第五章

新たなる敵

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 俺はゆっくりと地上に降り、最後の一撃を放った中心地へ。
 そこにいたのは、バラバラになった人間型のスヴァローグだ。
 首が千切れているが、髪がメラメラ燃え、俺を睨みつける。

「テッメェェェェ!! 殺す、殺してやる!! 丸呑みしてやるァァァァァァ!!」
「すごいな……こんな状態でも生きてるのか」
「ええ。ドラゴンは頭にある『核』を潰さないと死なないのよ。この状態でも放っておけば回復するわ」
「ッ!?」

 俺の傍に、女が立っていた。
 青い髪の女は俺を素通りし、メラメラ燃えるスヴァローグの頭を掴む。

「アンフィスバエナ!! こいつを、こいつを「いやよ」……あ?」
「あなたの負けよ、スヴァローグ」
「アァァァァァッ!? ンだとテッメェェェェ!!」
「うるさいわね……」
「もがっ!?」

 アンフィスバエナとかいう女は、スヴァローグの口を『凍らせ』た。
 そして、俺を見る。

「最後の一撃、本当に素晴らしかった……お父様を思い出したわ」
「……お前は、やらないのか?」
「ええ。あなたもボロボロだしね」
「……チャンスだぞ?」
「そうかもね。でも、面白くないもの」

 アンフィスバエナはふわりと浮き上がる。
 
「わたしが興味を持つくらいだもの。お兄様やお姉様もきっと、あなたに興味津々。ふふ……生き残ってね? リュウキ」
「…………」
「じゃ、またね」

 そう言って、アンフィスバエナは飛んで行った。
 俺はようやく変身を解き、地面にがっくり膝をつく。

「はぁ、はぁ、はぁ……や、ヤバかった」

 体力の限界だった。
 特に、最後の一撃……『真龍神光砲エンシェント・ノウヴァ』はかなりキツイ。一日一発くらいが限度だろうな。
 すると、俺の背後に。

「リュウキ」
「……り、リンドブルム」
「すごかった。リュウキ、わたしより強くなった」
「リンドブルム……っ!!」

 俺はリンドブルムを抱きしめた。
 生きていた。というか、怪我一つない。

「わたし、再生力だけは家族で一番なの。アンフィスバエナお姉ちゃんは気付いてたみたいだけど」
「そうか……でも、よかった」
「うん」

 とりあえず……これで終わりかな。
 なんだかどっと疲れた。

「じゃあ、帰るか。闘技大会の決勝を無視してきたから、優勝はキルトだろうな……まぁいいけど」
「大丈夫?」
「ああ。別に不戦勝でもいい。ここでお前を助けなかったら、後悔してただろうし」
「……うん」

 リンドブルムと一緒に、クロスガルドへ帰る。
 リンドブルム、あんな大怪我だったのにもういつもと変わらない。飛行速度もいつもと同じだし……再生能力ってホントにすごいな。
 そして、リンドブルムと一緒に闘技場へ戻る。一応、リンドブルムは来賓なので来賓室へ。どうやら、スヴァローグたちの気配を感じて飛び出し、捜索されていたようだ。
 リングでは、二年生の試合が始まっている。とりあえず俺はレイのいる医務室へ。
 医務室に入ると……一斉に目を向けられた。
 レイは、すでに起き上っている。

「リュウキ、あんた……どこ行ってたのよ」
「あー……ちょっとな」
「試合開始からの『棄権』はまだ許せる。でもね……どんな理由があろうと、敵前逃亡だけは許せない」
「え……」
「待てよ。リュウキにも事情があったんだろ」
「そ、そうだよレイさん」
「甘いわね。少なくとも……今後、あんたは『臆病者』のレッテルが貼られるわ。キルトのやつ、あんたが臆病者だって周りに吹聴してるわ」

 レノとサリオも気まずそうだ。
 すると、アピアは。

「大丈夫です。リュウキくんは、逃げるような人ではありません。それは、私たちが一番よく知っています」
「「「……」」」

 すると、レイは。

「あーもう、悪かったわよ。どうせどっかで戦ってたんでしょ?」
「……まぁ、うん」
「でも、今後あんたは少しやりづらいかも。そこは覚悟しなさいよ!」
「ああ。ありがとう、レイ」
「ふ、ふん……別に」

 たとえ、どんなに俺の評判が地に落ちようとも、リンドブルムを助けに向かったことに、後悔なんてない。

 ◇◇◇◇◇◇

 クロスガルドから離れた遥か上空にて、アンフィスバエナはスヴァローグの頭を掴んでゆっくり飛んでいた。
 ムームー唸る声がうっとおしいので、アンフィスバエナは口元の氷を剥がしてやる。
 すると、スヴァローグは。

「くっそガァァァァァァーーーーーーッ!! アンフィスバエナ、テメェ何逃げてんだコラァァァァァァ!!」
「逃げてないわよ。それに、つまんないし」
「アァァァァァッ!? だったら戻せ!! オレが、オレがやる!!」
「頭だけで何言ってんだか……それに、一度敗北したあんたに、次なんてないわ」
「アァァァァァッ!?───あ、あぁ……」

 スヴァローグの頭を持ち上げ、前方へ向ける。
 そこには、一人の青年が浮かんでいた。
 若い、二十歳ほどの青年だ。白銀の長髪を風になびかせ、笑顔で手を上げた。

「やぁ」
「ぁ……ぁ、あに、兄貴」
「やられたねぇ、スヴァローグ」

 青年は、笑顔を崩さずにゆっくり近づいてくる。
 そして、スヴァローグの頭をポンポン撫でた。

「父君の力を継承した子に負けたのはいい。でもね、理由がよくない……僕らの上に立つ、だっけ?」
「ッひ……」
「残念だよ。きみのことは好きだった。馬鹿なやつほど愛しいって言うだろう?」
「ま、待ってくれ兄貴。ま、まさか」

 アンフィスバエナの手からスヴァローグの頭が落ちた瞬間、スヴァローグの頭がバラバラに刻まれた。
 そして、赤い宝石のような球体が青年の手に。
 青年は、その宝石に軽くキスし、口の中に入れてボリボリ咀嚼した。

「ふぅ、で、アンフィスバエナ。お前はどうする?」
「何もしない。関わらない。見てるだけ……ダメ?」
「いいよ」

 青年は笑顔で頷く。
 どこか、作り物めいた笑顔だった。

「さて、帰ろうかな。ふふ、パーティーが近くてね、衣装合わせをしなくちゃね」
「……相変わらず、人間の生活に馴染んでいますね。どうせお父様の死とか、継承した人間のことだって知ってたでしょうに」
「まぁね。でも、僕も正直あまり興味はない。今の生活が気に入ってるからね。ふふ、こう見えて爵位もあるんだよ?」
「……力は、奪わないので?」
「ん~……悩み中かな? 正直、姉上たちがうっとおしい気持ちはよくわかる。スヴァローグみたいに強引な手じゃなく、彼を仲間に引き込めないかは考えてるけどね」
「仲間?」
「ああ。ふふ、言っただろう? 近々、パーティがある。ムーン公爵家主催のパーティーがね」
「…………」
「さて、行きますか」

 彼の名は、フリードリヒ・ムーン公爵。
 またの名を───『銀嵐旋龍』ファフニール。
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