追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう

文字の大きさ
上 下
44 / 109
第五章

闘技大会

しおりを挟む
「つ、疲れた……」

 夜、門限ギリギリに部屋に戻った。
 マルセイはまだ寝ている。俺は部屋に備え付けのシャワーで身体を洗い、そのままベッドに寝転んだ。
 休みは終わり、明日から授業だ。
 これからは、放課後まで学園。放課後以降はリンドブルムの浮島で特訓だ。
 スヴァローグというドラゴンが俺を狙っていると知った以上、少しでも闘気の使い方に慣れる必要がある。リンドブルムは言った。
 
「最低でも、わたしより強くなって。じゃないと、スヴァローグお兄ちゃんに殺される」

 と……リンドブルムよりも強く? 
 はっきり言う。不可能だ。
 俺はドラゴンの両腕を使い、リンドブルムを全力で殴った。だが、リンドブルムには傷一つ付かない。それどころか、俺が殺されてもおかしくなかった。
 ベッドで寝転んでいると、睡魔が襲ってくる。

「…………くぁぁ」

 そのまま目を閉じ───……俺は静かに眠りについた。

 ◇◇◇◇◇

「腹減った」

 翌朝、マルセイと一緒に朝食を食べて学園へ。
 Dクラス教室に向かい、レノとサリオがすでにいたので挨拶する。

「よ、レノ、サリオ」
「おう」
「おはよ、リュウキくん」

 席に座ると、サリオがニヤニヤする。

「聞いたよ? 昨日、アピアさんとデートしてたんだって?」
「は? デート?」
「へ、隅に置けねぇなぁ?」
「……」

 ここで、俺はようやく気付いた。
 デート。休日に、女の子と二人で買い物をしたり、食事をしたり、公園でのんびり過ごしたり……これは、デートなのではないか、と。
 俺はサリオの肩を軽く叩く。

「で……デートじゃないし。話があるっていうから聞いただけだ」
「「ふーん」」
「そ、そういうお前らは何してたんだよ」
「オレは短期労働」
「幼馴染の実家のパン屋で働いてた、ってことね。ぼくは王立図書館で勉強してた」
「王立図書館!? そんなのあるのか!?」
「う、うん。あの……レノのパン屋、気にならないの?」
「おいサリオ、余計なこと言うな!!」

 レノの幼馴染のパン屋、王立図書館。
 まだまだ知らないことが多いな。

「レノには幼馴染がいるんだ。彼女、実家のパン屋を継ぐために修行中なんだけど、レノってば休みの日はそこに通ったり、仕事を手伝ったりしてるんだよねぇ~」
「ほほう。ちなみに、幼馴染ってのはどんな子だ?」
「ぼくらと同い年の女の子。かわいいよ~?」
「お前らブチ殺すぞ!!」

 レノをからかい、ホームルームの時間となった。
 担任教師のホスホルが教壇へ立ち、いまいちやる気のなさそうな声であいさつする。

「じゃ……授業を始めます。教科書を開いて」

 最近知ったが、ホスホル先生はやる気がなさそうに見えるだけだ。
 授業はわかりやすいし、質問にもちゃんと答えてくれる。
 見てくれは酷いが、それ以外は真面目だった。
 午前中の座学が終わり、俺、レノ、サリオはショッピングモールへ。
 お昼は学生で混むが、地下商店の数は半端じゃない。入ろうと思えばどの店にも入れる。
 すると、ショッピングモール入口でレイとアピアに会った。

「リュウキくん、こんにちは」
「アピア。昨日はいろいろありがとな」
「いえ。私こそ、お土産までもらっちゃって」
「…………」

 すると、レイがムスッとしているのに気付いた。
 サリオが俺の肩を叩き、耳打ちする。

「リュウキくん、レイさんのこともフォローしないと」
「フォロー?」
「……ダメだこりゃ」
「おい、なんだよそれ」

 レイが俺の背中をバシッと叩く。

「リュウキ、何食べたい?」
「そうだな。肉を食べつつ、最後に甘いの食べたい」
「じゃ、焼肉ね。行くわよ」

 レイは歩きだす。
 アピアが申し訳なさそうに隣に並び、サリオが肩をすくめて歩きだす。
 俺はレノに聞いた。

「なんで怒ってるんだ?」
「……馬鹿かお前?」
「は?」

 そう言って、レノも歩きだした。

 ◇◇◇◇◇

 焼肉を食べ、締めにアイスを食べた。
 喫茶店に移動し、のんびりコーヒーを飲むと、レノが言う。

「聞いたか? 学園長主催の《闘技大会》のこと」
「とうぎ、大会?」
「ああ。あの学園長、見ての通り武闘派だからよ、『学園最強の生徒は誰だ!!』みたいなコンセプトで、闘技大会を毎年開催してるんだとさ。優勝者にはなんと、『学園最強』の称号、準優勝以下の4人に『四天王』の称号を与えるって」
「し、四天王?」
「ああ。一学園最強と、その下にいる四天王。だとさ」

 く、くだらねぇ。
 よく見ると、レイも似たような顔をしていた。
 サリオ、アピアも苦笑している。

「え、じゃあ……今の二年、三年生にも『学園最強』と『四天王』がいるのか?」
「ああ」
「ぶっ……くく、馬鹿みたいねぇ」

 レイが噴き出した。
 俺もすごく気持ちがわかる。
 サリオはお冷を飲みながら言う。

「ぼくは遠慮しておこうかなぁ。そもそも、ぼくは回復系だし」
「オレは出るぜ。へへ、腕が鳴る」
「あたしも出る。面白そうだしね」
「私は……んー、遠慮しておきます」
「俺はどうすっかな……」

 出てもいいけど、あまり目立ちたくない。
 すると、予冷が鳴った。

「さて、そろそろ出るか。そういえば、みんなはどんな部門取ってるんだ?」

 そういや、みんなの部門はあまり知らない。

「あたしはこれから『護衛部門』に行く。守ることも覚えないといけないし」
「私は『音楽部門』を取りました。ふふ、実は音楽が好きでして」
「リュウキとオレはこれから『筋力トレーニング部門』だ。行こうぜ」
「ぼくは『薬草学部門』に行くよ」

 みんな別々の部門で学ぶ。俺とレノは一緒だけどな。
 さて、筋力トレーニング部門……いっぱい肉食べたし、いい汗掻くか!!
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

処理中です...