追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう

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第二章

筋トレ

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「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ……ふぅぅ」
「ちょっと。晩ご飯……って、何してんの?」
「腕立て……っと」

 俺は腕立てを中断し、立ち上がる。
 うん。まだまだ余裕だ。基礎的な体作りは、公爵家にいたころも毎日やっていた。
 レイは、何やら怪訝な目で見ている。

「いきなりの腕立てね……あんた、トレーニング方法変えたの?」
「変えたというか、これからは筋トレメインでいく。もちろん、レイとの勉強や魔力操作の鍛錬も続けるぞ」
「今更だけど、あんたって真面目よね。ほら、ご飯」
「ああ」

 今日はルイさん特製の野菜シチューだ。
 栄養たっぷりで身体にもいい。勉強疲れと腕立て疲れで三杯もおかわりしてしまった。
 食事を終え、片付けをしようとするとルイさんが言う。

「ここはぼくに任せて、きみは勉強するといい」
「でも」
「いいって。大事な受験生に手伝いなんてさせられない。それに、聖王国へ行けるのはきみのおかげでもあるからね。ゆっくりしてくれ」
「お、俺のおかげ?」
「ああ、言ってなかったね。実は、うちの商会に支店を出す計画があってね……資金的な問題だったんだが、きみのくれた『ドラゴンの牙』を競売に掛ければ、なんとかなりそうなんだ」
「そうなんですか?」
「うん。聖王国の土地、建物は高くてね……あそこに支店を出せれば、うちの商会は安泰なんだ。それに、聖王国支店の店長はぼくだしね」
「ルイさんが、支店長!?」
「ふふふ。これも全てきみのおかげさ。もし、うちの支店が出たら御贔屓に」
「兄さん、ご飯の後に商売の話やめてよ。リュウキ、ちょっと休んだら試験勉強するわよ」

 レイは、荷車の幌を閉め、魔導カンテラを付ける。
 ちなみに、荷車はレイ、俺とルイさんはテントで寝る。

「まぁ、そういうことで。きみとレイは試験勉強を頑張ってくれ」
「わかりました。でも、何か手伝えることがあったら言ってください」
「ああ、ありがとう」

 片付けをルイさんに任せ、俺は勉強のためにレイのいる荷車へ入った。

 ◇◇◇◇◇◇

 翌日から、本格的に筋トレを始めた。
 身体強化を使わない筋トレ。

「で、こんなものでいいの?」
「ああ、ありがとう」

 レイに、俺が持てそうな岩石を運んできてもらう。その岩石を大きな籠に入れて背負い、俺は歩きだす。
 馬車はゆっくり走り出し、俺は馬車に付いて行く。
 まずは軽めの岩石。慣れてきたら徐々に重しを追加する。

「ふぅ、ふぅ……けっこうキツイぞ、これ」

 足腰を鍛えるにはもってこいだ。
 レイは、馬車から俺を眺めつつ言う。

「身体を鍛えるのはわかるけど……あんな古典的な方法でいいのかな」
「いいんだ。こういう地味な鍛錬は必ず身に付くって、体術を教えてくれた先生が言ってた」
「ふぅん」

 歩き始めて三十分。
 重さにも慣れて来たので石を追加……だが、急に足が重くなった。

「はぁ、はぁ……はぁ、はぁ」
「ほらほら、遅れてるわよー」
「レイ、馬車のペース、少し落とそうか?」
「駄目。最初から甘やかしちゃ身に付かないわ。ほらリュウキ、置いてくわよ!」
「わ、わかって、る……」

 まだまだいける。
 足腰、この程度でへばるな。
 神童と呼ばれていた頃、俺はその魔力に相応しい人間になるため、鍛錬を繰り返してきた。 
 武器の扱い方、身体強化、身体を鍛える。全部、やってきたことだ。

「負け、るか……!! レイ、石を追加!!」
「お、やる気満々ね……倒れても起こさないからね!!」

 さらに石を追加。
 だが、俺は止まらない。
 足に力を込めろ。歩き方を意識しろ。身体に一本の芯を通せ。
 歩け、歩け、歩け───……来た!!」

「お……ペース、上がってる」

 レイが驚く。
 体術を教えてくれた先生が言っていた。
 限界を超えると、一時的に疲労が消えることがある。
 だが、おかしい。
 全く疲労を感じない。
 それどころか、身体のエネルギーに変わり何かが燃えている気がする。

「───……そうか、『闘気」が」

 今の俺は、闘気で動いていた。
 全く疲れない。だが、筋肉を酷使しているのがわかる。
 いける。これなら鍛えられる!!

「レイ、石追加!!」
「え、でも……もう百キロ以上」
「大丈夫!!」
「……知らないからね」

 さらに石を追加。
 だが軽い。まだまだ歩ける。

「お、おお?」
「ちょ、リュウキ!?」

 俺は馬車を追い越した。
 歩ける。歩ける。歩ける───……!!

 ◇◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇◇

「……あんた、バカ?」
「………」

 野営する場所で止まり、闘気を解除すると同時に俺はぶっ倒れた。
 全身疲労。もう声も出ない。
 ああ、そうか……闘気を解除すれば、疲労が一気に襲ってくるのは当然だよね。疲労が消えたわけじゃなくて、感じなかっただけだし。

「…………」
「兄さん、晩ご飯こいつの口に無理やり詰め込んで。あとはテントに放り込んで」
「え、でも」
「駄目。食わないと筋肉は疲れたまま。ちゃんと回復させないと」
「あ、ああ」

 俺は無理やりメシを流し込まれ、そのまま気を失った。
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