追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう

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第二章

妹のレイ

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 ルイさんが紹介してくれた宿屋に泊まった翌日。
 僕は着替えを済ませ、カバンを背負って宿を出た。
 宿の前には、ルイさんがいた。

「おはよう。よく寝れたかい?」
「はい。すごくいい宿でした」
「ははは。じゃあ、朝食を食べながらいろいろ話そうか」

 朝食は、中央広場にある露店。
 ルイさんは野菜と肉のサンドを買い、僕へ渡す。
 ベンチに座り、二人で食べた。

「中央諸国は、小国が集まってできた大きな一つの国。その全ての国を統括するのが、聖王国クロスガルドだ。こことは比べ物にならない大国だよ。きみが目指すのは、クロスガルドにある聖王国魔法学園。この世界最大の育成機関で、ちょうどいま、新入生の募集が始まっている」
「え、そうなんですか?」
「ああ。昨日、いろいろ調べておいた」

 ルイさんは、何枚もの学園案内を僕へ手渡す。

「筆記試験、実技試験の総合得点で合否が決まる。これは過去問、実技試験は魔力操作に関する試験らしいが……詳しくはわからない」
「か、過去問がこんなに」
「ここから中央諸国まで馬車で一か月。ちょうど、聖王国へ行く予定があるんだ」
「え、まさか」
「一緒に行こう。それに……うちからも、試験を受ける子がいてね」
「え?」

 すると、こっちに向かって来る女の子が。

「兄さん、準備できたから」
「ああ。っと、紹介するよ。我が妹のレイだ。冒険者で、今年の聖王国魔法学園試験を受ける」
「…………あなたが、ロイを?」

 どこか、責めるような眼だった。
 僕は立ち上がり、頷く。

「ああ。僕が彼の最後を看取った」
「……そう」

 それだけ言い、レイは行ってしまった。

「すまないね。ロイは、レイに憧れて冒険者になったんだ。ぼくや兄さん、姉さんみたいな商才がなく、レイみたいに生まれながらに『スキル』を持っていた天才でもない。でも……ロイは、レイに憧れていた」
「……」
「リュウキくん。頼みがある……あの子の、友人になってくれないか?」
「俺でよければ」
「……ありがとう」

 レイ、か。
 長い金髪をツインテールにした、どこかきつめの少女。
 プリメラとはずいぶん違うタイプだ。

 ◇◇◇◇◇

 ルイさんが「今日、レイは討伐依頼を受けるようだ」と言っていたので、冒険者ギルドへ。
 出発準備はできたがすぐに出発はしない。ルイさんが最終確認をしてから出発なので、数日後に聖王国クロスガルドへ向けて出発する。
 冒険者ギルドへ行くと……いた。掲示板の前で依頼を見てる。

「レイ、こんにちは」
「……ああ、あなたね」
「リュウキでいい。ところで、依頼を受けるのか?」
「ええ。兄さんの準備ができるまで暇だしね。それに、兄さんは几帳面だから、準備や確認に時間をかけるの。全く……準備はできたって言ったのに」
「あはは。いい兄さんだな」
「ふん。で……あなたも依頼?」
「ああ。あのさ、討伐依頼を受けるつもりなんだけど……一緒にどうだ?」
「……あなた、等級は?」
「えっと、Eだけど」
「あたしはBよ」
「え!?」

 び、B……って、まじ?
 レイは僕と同じくらいの歳なのに、もうB級なのか。

「どうせ、兄さんに何か言われたんでしょ? 仕方ないわね……付き合ってあげる。新人の指導も、高位冒険者の仕事だしね」
「ぐ……お、お願いします」

 レイはクスっと笑った。なんだ……笑えるじゃないか。
 さて、どんな依頼を受けるか。

「あたしがやろうと思ってたのは、このオーガ退治。C冒険者から受けることができるわ。あなたのレベルに合わせると……この、コボルト退治ね」
「コボルト。確か、犬の魔獣か」
「正解。じゃあこうしましょう。コボルト退治を手伝ってあげる。コボルト退治が終わったら解散して、あたしはオーガ退治に行くから」
「……一人で大丈夫なのか?」
「平気よ。あたしは生まれながらの『スキル』持ちだからね」
「…………」
「なに? 驚いて声も出ないのかしら」

 ツインテールを揺らし、得意げに胸を張るレイ。
 うーん……これ、言ったら怒られそうな気がする。

「あのさ、スキルって何だ?」
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