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第六章 学園社交界
調査
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放課後、シャドウの部屋。
シャドウ、ヒナタ、ライザー、ルクレ。そして外部協力員のラウラの五人は集まっていた。
表向きは『新入生社交界』についての話し合い……だが、実際は違う。
「ユアンくんの様子がおかしい、って……レスティアが?」
ラウラが首を傾げる。
ここにラウラを呼んだのは、社交界でユアンのパートナーだからだ。
シャドウは言う。
「ああ。お前はユアンのパートナーだ。念のため社交界は用心しておけ」
「う、うん……」
「何度も言いますが、我々のことを少しでも漏らしたら、あなたを殺しますので」
ヒナタが付け加えると、ラウラは少しだけ悲しそうな顔をした。
「わかってる。信じてもらえないかもだけど……ちゃんと協力するから」
「……わかっているなら」
ヒナタは、少しだけ後悔したのか、それ以上は何も言わない。
やや重い空気になり、シャドウは軽く咳払いする。
「こほん。それと、レスティアから新情報……ユアンの様子がおかしくなったのは、『死神』の襲撃以降。指を追って医務室に行ってからだそうだ」
「医務室~? なんじゃそりゃ?」
首を傾げるライザー。ルクレも同じだった。
「医務室で、なにかされたってことなのかなあ?」
「わからん。情緒不安定になったり、体調不良になることが増えたらしい。で、医務室に行って処置してもらうと一時的に治ったそうだ……それの繰り返しをするたびに、様子が変わっていったそうだ」
「マジか……わかるもんなのか?」
「レスティアは気付いたそうだ。とりあえず、追って連絡するとは言ったけど……」
すると、ルクレが挙手。
「あの~……そもそも、それって『黄昏旅団』と関係あるのかな」
「わからん。でも、今は『恋人』以外の情報もないし、怪しい情報があるなら調査はすべきだと思う。黄昏旅団、まだ十五人もいるしな」
「そ、そうだね……」
十五人。そう、まだ十五人もいるのだ。
確定ではないが、元風魔七忍のラムエルテが倒されたのだ。そして、新星『風魔七忍』を名乗った以上、黄昏旅団はシャドウたちを放置することはないだろう。
「最初の情報じゃ数人って話だったけど……おそらく、ハンゾウを名乗ってラムエルテを倒した以上、黄昏旅団は確実に人員を送り込む。とりあえず、三年……学園卒業までに、黄昏旅団は始末する」
シャドウがそう言うと、ライザーは拳を打ち付け、ヒナタは頷き、ルクレもウンウン頷く。そして、ラウラはどこか嬉しそうだった。
「……なんか嬉しそうだな」
「えへへ。その……不謹慎だけどさ、シャドウくんたちと三年間一緒に学園生活送れるのは、やっぱり嬉しいかな……って」
「……のんきなヤツだな」
どこか能天気なラウラの発言だが、シャドウは知らずに笑っていた。
ライザーも笑いながら言う。
「はっはっは。ま、せっかくの学園生活だ。楽しもうぜ? それに……あと二人、仲間にするんだろ?」
「え、え? あと二人?」
ルクレはわかっていないのか、ライザーを見て首を傾げた。
「アホ。風魔七忍だろ? オレ、シャドウ、お前、ヒナタ、ヴライヤで五忍、あと二忍揃えば七忍だ」
「あ、そっかあ……あの、ラウラさんは?」
「お姫様は無理だろ。あの硬そうな女騎士が告げ口して、あっという間に素性バレしちまう。こうして外部協力員として雇うのもリスクたけぇしな」
「……ごめん」
ライザーの正論に、ラウラは頭を下げる。
その通りなのでシャドウも言い返さないが、ラウラを雇うと決めたのはシャドウなので反論はする。
「ライザー、王族には王族の情報だってある。リスクばかりじゃない、いいことだってあるぞ。それに、ラウラはユアン殿下のパートナーだし、自然と近づける」
「お、おお。まさかお前が庇うとはな……」
「……べ、別にいいだろ」
「……えへへ。ありがと、シャドウくん」
ラウラは、嬉しそうにほほ笑んだ。
シャドウは咳払いをして再び話題を変える。
「こほん。それと、六人目だけど……レスティアを引き抜けないか考えている」
「……シャドウ様。本気ですか? 彼女はラウラさんにとってのヒナタさんみたいなお方です。我々のことを知られれば……」
「……わかってるけど。なんというか、勘というか」
「……私は反対です」
「まあ、候補だ。覚えておくだけでいいよ」
「……」
やや不機嫌なヒナタ。再び会話が止まってしまう。
すると、ルクレが部屋にあった礼服を見て言った。
「えっと……社交界、もうすぐだね。クラスでもドレスとか、アクセサリーとかのお話で持ち切りだよね」
「だな。正直、クソめんどくせえ。まあ……あの女が来るって言うだけど、少しはやる気でるけどな」
黄昏旅団『恋人』のクピド。ライザーの継母であり、実母の仇。
シャドウは釘をさす。
「ライザー、一人で動くなよ」
「……わーってるよ」
新入生社交界まで、あと数日。
そこで何が起きるのか、まだ誰にもわからない。
シャドウ、ヒナタ、ライザー、ルクレ。そして外部協力員のラウラの五人は集まっていた。
表向きは『新入生社交界』についての話し合い……だが、実際は違う。
「ユアンくんの様子がおかしい、って……レスティアが?」
ラウラが首を傾げる。
ここにラウラを呼んだのは、社交界でユアンのパートナーだからだ。
シャドウは言う。
「ああ。お前はユアンのパートナーだ。念のため社交界は用心しておけ」
「う、うん……」
「何度も言いますが、我々のことを少しでも漏らしたら、あなたを殺しますので」
ヒナタが付け加えると、ラウラは少しだけ悲しそうな顔をした。
「わかってる。信じてもらえないかもだけど……ちゃんと協力するから」
「……わかっているなら」
ヒナタは、少しだけ後悔したのか、それ以上は何も言わない。
やや重い空気になり、シャドウは軽く咳払いする。
「こほん。それと、レスティアから新情報……ユアンの様子がおかしくなったのは、『死神』の襲撃以降。指を追って医務室に行ってからだそうだ」
「医務室~? なんじゃそりゃ?」
首を傾げるライザー。ルクレも同じだった。
「医務室で、なにかされたってことなのかなあ?」
「わからん。情緒不安定になったり、体調不良になることが増えたらしい。で、医務室に行って処置してもらうと一時的に治ったそうだ……それの繰り返しをするたびに、様子が変わっていったそうだ」
「マジか……わかるもんなのか?」
「レスティアは気付いたそうだ。とりあえず、追って連絡するとは言ったけど……」
すると、ルクレが挙手。
「あの~……そもそも、それって『黄昏旅団』と関係あるのかな」
「わからん。でも、今は『恋人』以外の情報もないし、怪しい情報があるなら調査はすべきだと思う。黄昏旅団、まだ十五人もいるしな」
「そ、そうだね……」
十五人。そう、まだ十五人もいるのだ。
確定ではないが、元風魔七忍のラムエルテが倒されたのだ。そして、新星『風魔七忍』を名乗った以上、黄昏旅団はシャドウたちを放置することはないだろう。
「最初の情報じゃ数人って話だったけど……おそらく、ハンゾウを名乗ってラムエルテを倒した以上、黄昏旅団は確実に人員を送り込む。とりあえず、三年……学園卒業までに、黄昏旅団は始末する」
シャドウがそう言うと、ライザーは拳を打ち付け、ヒナタは頷き、ルクレもウンウン頷く。そして、ラウラはどこか嬉しそうだった。
「……なんか嬉しそうだな」
「えへへ。その……不謹慎だけどさ、シャドウくんたちと三年間一緒に学園生活送れるのは、やっぱり嬉しいかな……って」
「……のんきなヤツだな」
どこか能天気なラウラの発言だが、シャドウは知らずに笑っていた。
ライザーも笑いながら言う。
「はっはっは。ま、せっかくの学園生活だ。楽しもうぜ? それに……あと二人、仲間にするんだろ?」
「え、え? あと二人?」
ルクレはわかっていないのか、ライザーを見て首を傾げた。
「アホ。風魔七忍だろ? オレ、シャドウ、お前、ヒナタ、ヴライヤで五忍、あと二忍揃えば七忍だ」
「あ、そっかあ……あの、ラウラさんは?」
「お姫様は無理だろ。あの硬そうな女騎士が告げ口して、あっという間に素性バレしちまう。こうして外部協力員として雇うのもリスクたけぇしな」
「……ごめん」
ライザーの正論に、ラウラは頭を下げる。
その通りなのでシャドウも言い返さないが、ラウラを雇うと決めたのはシャドウなので反論はする。
「ライザー、王族には王族の情報だってある。リスクばかりじゃない、いいことだってあるぞ。それに、ラウラはユアン殿下のパートナーだし、自然と近づける」
「お、おお。まさかお前が庇うとはな……」
「……べ、別にいいだろ」
「……えへへ。ありがと、シャドウくん」
ラウラは、嬉しそうにほほ笑んだ。
シャドウは咳払いをして再び話題を変える。
「こほん。それと、六人目だけど……レスティアを引き抜けないか考えている」
「……シャドウ様。本気ですか? 彼女はラウラさんにとってのヒナタさんみたいなお方です。我々のことを知られれば……」
「……わかってるけど。なんというか、勘というか」
「……私は反対です」
「まあ、候補だ。覚えておくだけでいいよ」
「……」
やや不機嫌なヒナタ。再び会話が止まってしまう。
すると、ルクレが部屋にあった礼服を見て言った。
「えっと……社交界、もうすぐだね。クラスでもドレスとか、アクセサリーとかのお話で持ち切りだよね」
「だな。正直、クソめんどくせえ。まあ……あの女が来るって言うだけど、少しはやる気でるけどな」
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シャドウは釘をさす。
「ライザー、一人で動くなよ」
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