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風聖剣エアキャヴァルリィと雷魔剣ホノイカズチ②/格上
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ララベルは、自分の状態を確認する。
(左腕……あとでくっつけてもらう。くそ、一番得意な武器が双剣って見破られたせいか、腕を落とされた。あの野郎……嫌らしいわ)
ララベルは、双剣を投げてもう一本の剣と合体、双刃の槍を手にしクルクル回転させ、切っ先をライハに向ける。
ライハは首を傾げ、剣すら抜かずに困ったように微笑んだ。
「おや……まだやるのですか?」
「当たり前。アンタが聖剣士の家系とか、魔族になったとかどうでもいい!! アタシは、アンタを倒すために来たのよ!!」
「そうですか。では」
ライハは一瞬で抜刀。ララベルは構えたが……斬撃が来ない。
眉をひそめた瞬間、ライハの背後にあった『吸魔の杭』が砕け散った。
唖然とするララベル。
「は? な、なんで……」
「ふふ、実はですね……この杭、壊れても問題ないんです」
「はぁ? ど、どういう」
「全て、ササライ様の計画通り……と、いうわけです」
ライハはにっこり笑う。
その笑みが妙に鼻につき、ララベルはライハを睨んだ。
「アンタ、なに? なんでそんなヘラヘラしてんの? アンタ、アタシを馬鹿にしてんの!?」
「滅相もない。もともと、こういう性格なもので。それに……まだわからないのですか?」
「はぁ?」
ライハが消えた。
同時に、ララベルの背後にライハが立ち、雷魔剣の切っ先をララベルの背中……心臓部分に向ける。
「あなたでは勝てませんよ。そもそもの実力が違います。仮に『鎧身』を使ったとしても変わりありません。私、アークレイ、グレコドローマの三人は、七魔剣士の中でも別格の強さ……こうして生きているのは、私の気まぐれと、ササライ様のおかげということをお忘れなく」
「……っ」
ララベルの背筋が凍った。
ライハは、全く本気ではない。
「ササライ様の偉大な『計画』は進んでいます。七聖剣士……あなた方にも役割があることをお忘れなく」
「…………」
「さて。このくらいにしておきましょうか……では」
ライハは着物を翻し、ゆっくりと徒歩でその場を去った。
ララベルはその背中に向けて槍を投げることもできた。だが、当たるイメージが全く湧かない。それどころか、槍を投げた瞬間、自分の首が落ちるイメージを叩き込まれ、冷や汗が止まらなかった。
剣士としてのレベルが違い過ぎる。
ライハが見えなくなった頃、ララベルはようやくその場に崩れ落ちる。
「……ぅ、ぅぅ」
涙が止まらなかった。
自分が弱いわけじゃない。そう言い聞かせてはいるが、何の意味もない。
見向きもされなかった。
役割とやらに救われた。
それが、ララベルの心を折り……立つ気力すら奪うのだった。
◇◇◇◇◇
ロイは、ララベルの結果を見ながら歯を食いしばった。
「ララベル先輩……」
『相手が悪すぎたな。あのライハとかいう剣士……底が見えん強さだ。まだ本気ではなさそうだし、お前の援護なしには勝ち目はあるまい』
「俺の援護ね……援護は続けてるんだがっ!!」
矢を何度も放つが、悉くセレネの矢で弾かれる。
もう数百の矢をライハに向けて放ち、同時にララベルに向けて放たれる矢を全て撃ち落とす。聖剣士と魔剣士の戦いに妨害が入らないのが、ロイの『援護』による力だった。
「デスゲイズ。ライハが言う『役割』ってなんだ?」
『恐らく……七聖剣士と七魔剣士の戦いはササライの計画通り。その先にあるのは間違いなく……七聖剣士とササライの戦いだ。奴は『魔王』として最後に、人類の希望である七聖剣士を屠る……チッ、あの劇作家め』
「劇作家……ササライのやつ、こだわりすぎだろ」
『そういうヤツだ。あいつは……とにかく、ロイ、お前にも『役割』がササライから与えられていると見ていい。その役割から逸脱し、出し抜くことができれば、勝機はあるかもしれないぞ』
勝機。
ロイは不思議な気持ちだった。
サリオスが勝ち、ロセが負け、アオイが勝ち、ララベルが負けた。そして、全ての結果で『吸魔の杭』が破壊された。
何もかもが、ササライの手のひらの上……そう思えて仕方ない。
(……嫌な予感がする)
ロイは魔弓デスゲイズを強く握る。
『───……ロイ、向こうを見ろ。あの吸血男……死ぬぞ』
「っ!! スヴァルト先輩!!」
思考を切り替え、スヴァルトと光魔剣士アークレイが戦っている方を見る。
そして、そこで見たのは……血濡れのスヴァルトと、無傷のアークレイ。
ライハが『格上』と言った意味がわかるほど、スヴァルトはボロボロにされている光景だった。
(左腕……あとでくっつけてもらう。くそ、一番得意な武器が双剣って見破られたせいか、腕を落とされた。あの野郎……嫌らしいわ)
ララベルは、双剣を投げてもう一本の剣と合体、双刃の槍を手にしクルクル回転させ、切っ先をライハに向ける。
ライハは首を傾げ、剣すら抜かずに困ったように微笑んだ。
「おや……まだやるのですか?」
「当たり前。アンタが聖剣士の家系とか、魔族になったとかどうでもいい!! アタシは、アンタを倒すために来たのよ!!」
「そうですか。では」
ライハは一瞬で抜刀。ララベルは構えたが……斬撃が来ない。
眉をひそめた瞬間、ライハの背後にあった『吸魔の杭』が砕け散った。
唖然とするララベル。
「は? な、なんで……」
「ふふ、実はですね……この杭、壊れても問題ないんです」
「はぁ? ど、どういう」
「全て、ササライ様の計画通り……と、いうわけです」
ライハはにっこり笑う。
その笑みが妙に鼻につき、ララベルはライハを睨んだ。
「アンタ、なに? なんでそんなヘラヘラしてんの? アンタ、アタシを馬鹿にしてんの!?」
「滅相もない。もともと、こういう性格なもので。それに……まだわからないのですか?」
「はぁ?」
ライハが消えた。
同時に、ララベルの背後にライハが立ち、雷魔剣の切っ先をララベルの背中……心臓部分に向ける。
「あなたでは勝てませんよ。そもそもの実力が違います。仮に『鎧身』を使ったとしても変わりありません。私、アークレイ、グレコドローマの三人は、七魔剣士の中でも別格の強さ……こうして生きているのは、私の気まぐれと、ササライ様のおかげということをお忘れなく」
「……っ」
ララベルの背筋が凍った。
ライハは、全く本気ではない。
「ササライ様の偉大な『計画』は進んでいます。七聖剣士……あなた方にも役割があることをお忘れなく」
「…………」
「さて。このくらいにしておきましょうか……では」
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剣士としてのレベルが違い過ぎる。
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涙が止まらなかった。
自分が弱いわけじゃない。そう言い聞かせてはいるが、何の意味もない。
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役割とやらに救われた。
それが、ララベルの心を折り……立つ気力すら奪うのだった。
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「ララベル先輩……」
『相手が悪すぎたな。あのライハとかいう剣士……底が見えん強さだ。まだ本気ではなさそうだし、お前の援護なしには勝ち目はあるまい』
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「劇作家……ササライのやつ、こだわりすぎだろ」
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「っ!! スヴァルト先輩!!」
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そして、そこで見たのは……血濡れのスヴァルトと、無傷のアークレイ。
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