聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~

さとう

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彼方永久・純白の至高魔王ササライ④/開戦

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 全ての準備が完了した。
 七聖剣士、王国内の聖剣士、学生の剣士たち、そして聖剣士ではない兵士たち。
 それぞれ王国の周辺に部隊を展開……開戦の時を待つ。
 同時に、エレノアたち七聖剣士たちも、完全装備。
 城壁に横一列で並び、戦いのときを待つ。
 ロイは、城壁に付属している見張り塔のてっぺんに立ち、周囲を確認していた。

『ササライの『魔王聖域アビス』が展開され、周囲には魔界貴族と数えるのも馬鹿らしい数の魔獣……さらにこの後も追加で現れる予定とはな』
「言うなよ、気が滅入る……」
『こちらの援軍とやらは?』
「エレノアたちがロセ先輩に伝えた。いちおう、それを含めたうえでの部隊展開になってるはず」
『……まあいい。そちらの方は人間に任せる。いいかロイ、吾輩たちは』
「ササライの討伐、七聖剣士の援護……だろ」

 ロイには見えていた。
 ササライの展開した聖域、『忘却王城彼方永久ぼうきゃくおうじょうかなたとこしえ』……真っ白な王城のテラスに、七人の聖剣士が並んでいた。
 まるで、城壁に並ぶ七聖剣士と対になるように。 
 そして……王城の一番高い屋根の上に、白い人影……『月光鳥アルテミス』のセレネが、可変式の弓を手にし、ロイに向かって人差し指を向けた。

『挑発されているな』
「…………」

 ロイは、親指で喉を掻っ切る真似をする。奇しくもエレノアと同じ挑発だった。
 
『まもなく正午……始まるぞ』
「…………ちょっと行くわ」
『え?』

 ロイは跳躍、一瞬で七聖剣士たちの前に現れた。
 驚くサリオス。やや敵意を向けて言う。

「な……『八咫烏ヤタガラス』!! お前、どこに」
『始まったら真っすぐ進んで七魔剣士を倒せ。道中の敵は全て俺が排除する』
「い、いきなり何を言うんだ。そもそも、お前は一体何なんだ? こんな土壇場で聞くことじゃないけど……いい加減、何者か教えてくれてもいいだろう」
『…………』

 ロイは笑いたくなった。
 傲慢で自信家だったサリオスは、改心して立派な聖剣士になった。
 エレノアは『ロセ会長に惚れてる』と言っていたが、どうなのだろうか。
 すると、ロセが言う。

「八咫烏。あなたのことを信用するわ。あなたの援護、期待している……だから、全てが終わったら、その仮面の内側を見せてくれる? きっと、あなたが誰でも、私たちは仲良くできるわ」
『…………』

 ロセの笑顔は、こんな状況でもふんわり優しい。
 魔弓を強く握ると。

『ササライを倒せば終わる。秘密はもう……隠すべきものではない。だが、今はやめておけ。余計な混乱を戦いに持ち込む可能性があるしな』

 ロイは頷いた。

『終わったら、教えてやる』
「お、マジか。へへ、楽しみができたぜ」
「確かにね。もしかして絶世の美女だったりして~!!」

 スヴァルト、ララベル。
 なんとなく似た者同士の二人。ロイはあまり交流がなかったが、正体を打ち明ければ驚くだろう。
 からかわれるような気もしたが、もう教えると言ってしまった。

「…………うん」
「…………」
「うむ………」

 エレノアは頷き、ユノは無言、アオイは腕組みをして頷いた。
 この三人はもう正体を知っている。正体をばらしたあと「実は知っていました~」とエレノアは言うかもしれない。そう言ったときのサリオスの反応は、少し見てみたい気がした。
 七聖剣士。
 デスゲイズとつながりのある、七本の聖剣。その使い手たち。
 そしてロイ……デスゲイズを手に、前を向く。

『さあ──始めようか』

 矢を何本か抜くと同時に、一瞬で跳躍。
 同時に──正午を告げる鐘の音が鳴り響き、戦いが始まった。

 ◇◇◇◇◇◇

 始まると同時に、ロイは叫ぶ。

『七聖剣士はそれぞれ「杭」の元へ!!」
「へ、言われねーでも!!」
「行くに決まってるし!!」

 スヴァルト、ララベルが飛び出す。
 ロセは「ふふっ」と笑い、サリオスは「よし!!」と気合を入れて飛び出す。
 城壁の下では、すでに戦いが始まっていた。
 魔獣、魔界貴族、聖剣士、兵士たち……それぞれが武器を手に、戦いを始めている。
 ロイが周囲を確認する。

『ある。聖域を維持している七本の杭……それぞれに強敵がいる』
「それが七魔剣士ね」
「わたし、倒すよ」
「拙者も因縁の相手がいる。今度は……必ず勝つ」

 エレノア、ユノ、アオイが互いに顔を見合わせ、城壁から飛び降りた。
 ロイには見える。
 七聖剣士たちが、それぞれの戦いをするために、聖域を維持している杭に向かっているのを。
 それを確認し、ミスリル製の矢を七本手に持った。

『やれ、ロイ』
「ああ。大罪権能『嫉妬エンヴィー』装填」

 弓の形状が変わる。コートと仮面も変わる。
 弓は、あまりにも歪な大型弓に変わり、コートも禍々しい突起や装飾が施され、仮面はより凶悪な『髑髏』のマスクへと変わった。

『最後の権能『嫉妬』……その姿、『聖剣形態ロストフォーム』は……聖剣を作り出す能力・・・・・・・・・だ。ククク……さあ、見せてやれ。あらゆる聖剣を生み出す力』

 マスクの下でロイは笑う。
 デスゲイズが作り出した友人にして、最初の権能。
 嫉妬。どういう意味でその名を冠したのかは、ロイにはわからない。
 七聖剣という最高傑作を作り、その意思は消滅したと聞いた。でも……全ての根源はデスゲイズであり、デスゲイズはロイと共にある。
 今、七聖剣を握る剣士を援護するため、七聖剣を生み出した権能をロイは解放する。

「さあ行け、『聖剣ノ矢ホーリーストライク』!!」

 ミスリル製の矢が飛ぶと同時に、その形状が変化する。
 聖剣鍛冶師が聖剣を打つように、ロイは矢から聖剣を創造……空中で『聖剣』と変化した矢は、エレノアたちに襲い掛かる魔獣、魔界貴族たちを貫通した。

「その聖剣に付与した能力は『追尾』だ。さて……実験だ。俺の想像力で生み出せる聖剣。どこまでの物が生み出せるか、試してやる」

 ロイは楽しそうにミスリル製の矢を番え、聖剣士たちの援護を始めた。
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