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愛に飢えた天使は海へ
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『……核に亀裂が入った』
デスゲイズが、ポツリと言った。
もう、助からない。
バビスチェの身体に、青い炎が灯った。
「……あぁ、もう……やっちゃったわねぇ」
バビスチェは地面に落ちたが、すぐに立ち上がる。
同時に、ロイの聖域が解除……エレノアたちの鎧が解除されると同時に、七人がその場に崩れ落ちた。聖域の補助があっても、連続で鎧身形態を使った反動である。
互いに、満身創痍。
だが、ロイは気付いた……バビスチェにはもう、戦う意思がない。
少しずつ燃える身体を引きずると、翼を広げた。
羽が舞い、エレノアたちの身体に触れると……エレノアたちは、崩れ落ちた。
「ッ!!」
「安心して。眠りの羽……すぐに起きるわ」
バビスチェは、ゆっくりとロイの元へ。
身体が少しずつ崩れている。だが、そこに苦しみはない。
そして、ロイに手を伸ばした。
「教えて。どうして……彼女のことを、アスモダイのことを知っているの?」
「……それは」
何と応えればいいのか迷った───が、ふと、ロイの胸が熱くなる。
身体の内側から、声が聞こえてきた。
『ロイ……バビスチェにこう言ってくれ』
「…………」
ロイは、バビスチェに言う。
「……アスモダイは、デスゲイズの権能から生まれた『色欲』そのものだから。あの子は『愛』を、天使であるお前の中に見た。だからお前の傍にいたんだ」
「……です、ゲイズ。ああ、そう……ずいぶんと懐かしい名前」
バビスチェはの身体は燃えているが、バビスチェは微塵も興味がなさそうだった。
「あなたは、何者?」
「…………」
『かまわん。言え、ロイ』
「…………俺は、デスゲイズの力を借りて戦ってる。お前たち魔王を滅ぼすために」
「……そう。フフ、そういうこと……デスゲイズ。ああ、あなたが傍にいるなら納得。聖域を展開できたのも、八咫烏が普通の聖剣士ではないということも。そう……封印の仕返しに来たのね」
『…………』
すると、魔弓デスゲイズがブルブルと震えた。
『久しいな、バビスチェ』
「……本当に久しぶり。長く封印したせいで、あなたの意志なんてとっくに消えたと思ってたわ」
『フン。もうお前の死は絶対だ。いくつか聞かせろ……なぜ、トリステッツァを倒したのに、我輩の封印が解けない? この封印は、四人の魔王による封印だ。一つでも欠ければ弱まるはず』
「それは、ササライがトリステッツァの『魔王宝珠』を取り込んだからよ。封印そのものを、そしてトリステッツァの力そのものを取り込んでる。だから封印が解けないの……あの子、あなたの封印のことなんて忘れて、力だけを取り込んだつもりでしょうけどねぇ」
『……ッチ』
「ふふ。今の魔界貴族は、あなたのことなんて知らないからねぇ……いろいろと納得だわ。あなたがこの子と組んでから、魔王を二人も倒すのに至った……本当に、すごいことね」
「…………」
ロイは無言だった。
デスゲイズは、もう自分のことを隠すのを止めたのか言う。
『あと二つだ。パレットアイズ、ササライ……奴らを倒し、我輩の封印を解く』
「……そう。でも、気を付けてね? ササライは……あの子は、魔王のルールを逸脱した『何か』をするつもり。勘だけど……あの子、ずっと準備してたみたいねぇ」
『何?』
「四人の魔王の力は拮抗してる。でも……トリステッツァが死んで、あの子はその力を取り込んだ。そして、弱体化したパレットアイズちゃん、今こうして負けた私……恐らく、あの子はもう隠さない。私が死んだあとで、自分の『手番』で何かを始める。きっと、人間界も魔界も巻き込んで、ね」
『……バビスチェ』
「デスゲイズ。私はね……あなたを封印したの、間違いじゃなかったと思う。だってあなた、強すぎるもの……そして、誰よりも人を愛して、魔族を愛していた。危ういって、思ったの」
『…………』
「ふふ、あなたの言う通りね……アスモダイ、あの子の愛が羨ましくて、あの子をまねたけど、ずっと満たされなかった。あの子の愛に、嫉妬してた……天使なのに、ヒトを導く存在なのに、私は不自由で、愛に縛られて……でも、もうおしまい」
バビスチェは笑い───そっと、ロイの頬に触れた。
何故だろうか。ロイは……涙を流していた。
「ね、これだけは覚えておいて。私はね……戦いは嫌い。本当に人を、愛したかったの」
「…………」
バビスチェの手は、温かい。
ロイはその手に触れる。
すると───デスゲイズではない、温かな力が流れてくるのを感じた。
ロイの身体がぼんやり光り、形となる。
『バビスチェ』
「…………アスモダイ」
『一緒に行こう、あの海へ』
大罪権能『色欲』の、本来の姿。
色欲の魔獣アスモダイが、ロイの中から現れ、青い炎に包まれるバビスチェを、そっと抱きしめた。
バビスチェは涙を流し、光に包まれる。
「ああ、わかった───……私、もう一度……」
誰よりも愛に飢えていたのは、『愛の魔王』だった。
光が消えると、小さな桃色の宝石が落下……チャリンと音を立てて、転がった。
バビスチェは消えた。
色欲の魔獣と共に、ロイの中へと戻って消えた。
『……さよならだ、バビスチェ』
デスゲイズの声は、今にも涙を流しそうなほど、悲しく響いた。
◇◇◇◇◇
愛の魔王バビスチェ、討伐。
エレノアたちはまだ気を失っている。
ロイは、目の前に落ちた桃色の宝石を見た。
「これは……」
『魔王宝珠。魔王の力の結晶であり、我輩の封印を担う物だ。破壊しろ』
「……でも、あんなの見た後じゃなあ」
バビスチェは消えた。
二人目の魔王を討伐したのだ。だが……なんとも後味が悪い。
「愛の魔王バビスチェ。もしかしたら……分かり合えたのかな」
『……さぁな』
ロイは、桃色の宝石を拾おうとしゃがみ、手を伸ばした。
◇◇◇◇◇
次の瞬間、白い矢が、ロイが手を伸ばした先に突き刺さった。
◇◇◇◇◇
「!?」
ロイは瞬間的に意識を周囲に向け、デスゲイズを拾い近くの木に飛び移る。
すると、再び白い矢が飛んできた。
ロイはミスリル矢を抜き放ち、矢を落とす。
「う、ぐ……」
「ん……」
すると、エレノアたちが起きた。
ロイは叫ぶ。
「起きろ!! まだ敵がいる!!」
「「!!」」
起きたのはエレノア、ユノ。
遅れてサリオスたちも起き上がり、聖剣を構え周囲を見る。
バビスチェを討伐した喜びを感じる前に、敵襲だ。
そして───……そいつは、現れた。
「や、お疲れ~♪」
十六歳ほどの少年だった。
白い学生服、金髪、整った顔立ちだ。
どこにでもいそうな少年が、スタスタと歩き、魔王宝珠を拾った。
「……お疲れ、バビスチェ。きみのこと、忘れないよ」
そして、口を開けると……魔王宝珠を飲み込んでしまった。
エレノアは気付いた。
「このタイミングで出てくるなんてね……あんた、魔王でしょ」
「うん。『忘却の魔王』ササライさ。よろしくね、エレノアちゃん」
「あんたにちゃん付けなんてしてほしくないし!! ってか、なんでここに……!!」
「そりゃ、見物さ。ふふ、面白い収穫が大漁だね……八咫烏くん。いや、デスゲイズ」
『……ササライ』
「すっかり忘れてたよ。きみのこと。てっきり、長い封印で意識が風化しちゃったのかと。パレットアイズやトリステッツァが負けたのも当然だけど……ふふ、きみも不完全かな?」
『…………』
「ま、いいや。バビスチェに免じて今日はここまでにするよ。ああ、しばらくは準備期間。ボクの手番は少し先になる。七聖剣士のみんながあっと驚くアトラクション、用意しておくからさ」
「ふざ、けんなっ!!」
エレノアが飛び出した。
ロイが援護しようとするが、再び白い矢が飛んで来る。
同時に、ササライの影から飛び出した少女が、炎を纏った剣でエレノアの剣を受け止める。
「なッ……何よ、あんた」
「主を守る」
「……邪魔すんな!!」
エレノアが剣を振り上げると同時に、少女……ヴェスタも剣を振り上げた。
「『灼炎楼・一閃』!!」
「『冥炎楼・一閃』」
炎の剣がぶつかり合い、互いに弾き飛ばされる。
エレノアは驚いた。ヴェスタの持つ剣が、自分と同等の力を持っていることに。
「あはは、どうだいヴェスタ、エレノアちゃんは何分で倒せる?」
「…………二分。でも、わからない」
「おお、それはいいね。じゃあ、ここまでにしようか」
「ふざ」
「じゃあね~」
ササライが指を鳴らすと、その姿が消えた。
エレノアが飛び出すが───ロイが矢を放ち、エレノアの足元に矢が刺さる。
すると、エレノアの足元に白い矢が刺さった。
「え、白い……矢?」
ロイが木から飛び降り、エレノアの前に立つ。
すると───近くの建物から、何かが飛び降りた。
「…………」
「…………」
それは、白いコートを着ていた。
黒い仮面をしていた。
白いブーツを履き、白い髪がなびいていた。
仮面の隙間から見えるのは、青い瞳。
手には、白い弓を持っていた。
「……し、白い、八咫烏?」
サリオスが言う。
ロイは、目の前に現れた『白い八咫烏』から目を離さない。
男である自分に対し、女だった。
黒髪の自分に対し、白髪だった。
黒装束の自分に対し、白装束だった。
黒い弓に対し、白い弓だった。
全てが、ロイと正反対だった。
ロイは確信していた。目の前にいる白い弓士は、自分の敵だと。
白いカラスは、ロイを指さした。
「私は、セレネ……『月光鳥』のセレネ」
「…………」
「『八咫烏』……あなたは、私が倒す」
それだけ言い、セレネは消えた。
これは『八咫烏』に対する、『月光鳥』の宣戦布告だった。
デスゲイズが、ポツリと言った。
もう、助からない。
バビスチェの身体に、青い炎が灯った。
「……あぁ、もう……やっちゃったわねぇ」
バビスチェは地面に落ちたが、すぐに立ち上がる。
同時に、ロイの聖域が解除……エレノアたちの鎧が解除されると同時に、七人がその場に崩れ落ちた。聖域の補助があっても、連続で鎧身形態を使った反動である。
互いに、満身創痍。
だが、ロイは気付いた……バビスチェにはもう、戦う意思がない。
少しずつ燃える身体を引きずると、翼を広げた。
羽が舞い、エレノアたちの身体に触れると……エレノアたちは、崩れ落ちた。
「ッ!!」
「安心して。眠りの羽……すぐに起きるわ」
バビスチェは、ゆっくりとロイの元へ。
身体が少しずつ崩れている。だが、そこに苦しみはない。
そして、ロイに手を伸ばした。
「教えて。どうして……彼女のことを、アスモダイのことを知っているの?」
「……それは」
何と応えればいいのか迷った───が、ふと、ロイの胸が熱くなる。
身体の内側から、声が聞こえてきた。
『ロイ……バビスチェにこう言ってくれ』
「…………」
ロイは、バビスチェに言う。
「……アスモダイは、デスゲイズの権能から生まれた『色欲』そのものだから。あの子は『愛』を、天使であるお前の中に見た。だからお前の傍にいたんだ」
「……です、ゲイズ。ああ、そう……ずいぶんと懐かしい名前」
バビスチェはの身体は燃えているが、バビスチェは微塵も興味がなさそうだった。
「あなたは、何者?」
「…………」
『かまわん。言え、ロイ』
「…………俺は、デスゲイズの力を借りて戦ってる。お前たち魔王を滅ぼすために」
「……そう。フフ、そういうこと……デスゲイズ。ああ、あなたが傍にいるなら納得。聖域を展開できたのも、八咫烏が普通の聖剣士ではないということも。そう……封印の仕返しに来たのね」
『…………』
すると、魔弓デスゲイズがブルブルと震えた。
『久しいな、バビスチェ』
「……本当に久しぶり。長く封印したせいで、あなたの意志なんてとっくに消えたと思ってたわ」
『フン。もうお前の死は絶対だ。いくつか聞かせろ……なぜ、トリステッツァを倒したのに、我輩の封印が解けない? この封印は、四人の魔王による封印だ。一つでも欠ければ弱まるはず』
「それは、ササライがトリステッツァの『魔王宝珠』を取り込んだからよ。封印そのものを、そしてトリステッツァの力そのものを取り込んでる。だから封印が解けないの……あの子、あなたの封印のことなんて忘れて、力だけを取り込んだつもりでしょうけどねぇ」
『……ッチ』
「ふふ。今の魔界貴族は、あなたのことなんて知らないからねぇ……いろいろと納得だわ。あなたがこの子と組んでから、魔王を二人も倒すのに至った……本当に、すごいことね」
「…………」
ロイは無言だった。
デスゲイズは、もう自分のことを隠すのを止めたのか言う。
『あと二つだ。パレットアイズ、ササライ……奴らを倒し、我輩の封印を解く』
「……そう。でも、気を付けてね? ササライは……あの子は、魔王のルールを逸脱した『何か』をするつもり。勘だけど……あの子、ずっと準備してたみたいねぇ」
『何?』
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『……バビスチェ』
「デスゲイズ。私はね……あなたを封印したの、間違いじゃなかったと思う。だってあなた、強すぎるもの……そして、誰よりも人を愛して、魔族を愛していた。危ういって、思ったの」
『…………』
「ふふ、あなたの言う通りね……アスモダイ、あの子の愛が羨ましくて、あの子をまねたけど、ずっと満たされなかった。あの子の愛に、嫉妬してた……天使なのに、ヒトを導く存在なのに、私は不自由で、愛に縛られて……でも、もうおしまい」
バビスチェは笑い───そっと、ロイの頬に触れた。
何故だろうか。ロイは……涙を流していた。
「ね、これだけは覚えておいて。私はね……戦いは嫌い。本当に人を、愛したかったの」
「…………」
バビスチェの手は、温かい。
ロイはその手に触れる。
すると───デスゲイズではない、温かな力が流れてくるのを感じた。
ロイの身体がぼんやり光り、形となる。
『バビスチェ』
「…………アスモダイ」
『一緒に行こう、あの海へ』
大罪権能『色欲』の、本来の姿。
色欲の魔獣アスモダイが、ロイの中から現れ、青い炎に包まれるバビスチェを、そっと抱きしめた。
バビスチェは涙を流し、光に包まれる。
「ああ、わかった───……私、もう一度……」
誰よりも愛に飢えていたのは、『愛の魔王』だった。
光が消えると、小さな桃色の宝石が落下……チャリンと音を立てて、転がった。
バビスチェは消えた。
色欲の魔獣と共に、ロイの中へと戻って消えた。
『……さよならだ、バビスチェ』
デスゲイズの声は、今にも涙を流しそうなほど、悲しく響いた。
◇◇◇◇◇
愛の魔王バビスチェ、討伐。
エレノアたちはまだ気を失っている。
ロイは、目の前に落ちた桃色の宝石を見た。
「これは……」
『魔王宝珠。魔王の力の結晶であり、我輩の封印を担う物だ。破壊しろ』
「……でも、あんなの見た後じゃなあ」
バビスチェは消えた。
二人目の魔王を討伐したのだ。だが……なんとも後味が悪い。
「愛の魔王バビスチェ。もしかしたら……分かり合えたのかな」
『……さぁな』
ロイは、桃色の宝石を拾おうとしゃがみ、手を伸ばした。
◇◇◇◇◇
次の瞬間、白い矢が、ロイが手を伸ばした先に突き刺さった。
◇◇◇◇◇
「!?」
ロイは瞬間的に意識を周囲に向け、デスゲイズを拾い近くの木に飛び移る。
すると、再び白い矢が飛んできた。
ロイはミスリル矢を抜き放ち、矢を落とす。
「う、ぐ……」
「ん……」
すると、エレノアたちが起きた。
ロイは叫ぶ。
「起きろ!! まだ敵がいる!!」
「「!!」」
起きたのはエレノア、ユノ。
遅れてサリオスたちも起き上がり、聖剣を構え周囲を見る。
バビスチェを討伐した喜びを感じる前に、敵襲だ。
そして───……そいつは、現れた。
「や、お疲れ~♪」
十六歳ほどの少年だった。
白い学生服、金髪、整った顔立ちだ。
どこにでもいそうな少年が、スタスタと歩き、魔王宝珠を拾った。
「……お疲れ、バビスチェ。きみのこと、忘れないよ」
そして、口を開けると……魔王宝珠を飲み込んでしまった。
エレノアは気付いた。
「このタイミングで出てくるなんてね……あんた、魔王でしょ」
「うん。『忘却の魔王』ササライさ。よろしくね、エレノアちゃん」
「あんたにちゃん付けなんてしてほしくないし!! ってか、なんでここに……!!」
「そりゃ、見物さ。ふふ、面白い収穫が大漁だね……八咫烏くん。いや、デスゲイズ」
『……ササライ』
「すっかり忘れてたよ。きみのこと。てっきり、長い封印で意識が風化しちゃったのかと。パレットアイズやトリステッツァが負けたのも当然だけど……ふふ、きみも不完全かな?」
『…………』
「ま、いいや。バビスチェに免じて今日はここまでにするよ。ああ、しばらくは準備期間。ボクの手番は少し先になる。七聖剣士のみんながあっと驚くアトラクション、用意しておくからさ」
「ふざ、けんなっ!!」
エレノアが飛び出した。
ロイが援護しようとするが、再び白い矢が飛んで来る。
同時に、ササライの影から飛び出した少女が、炎を纏った剣でエレノアの剣を受け止める。
「なッ……何よ、あんた」
「主を守る」
「……邪魔すんな!!」
エレノアが剣を振り上げると同時に、少女……ヴェスタも剣を振り上げた。
「『灼炎楼・一閃』!!」
「『冥炎楼・一閃』」
炎の剣がぶつかり合い、互いに弾き飛ばされる。
エレノアは驚いた。ヴェスタの持つ剣が、自分と同等の力を持っていることに。
「あはは、どうだいヴェスタ、エレノアちゃんは何分で倒せる?」
「…………二分。でも、わからない」
「おお、それはいいね。じゃあ、ここまでにしようか」
「ふざ」
「じゃあね~」
ササライが指を鳴らすと、その姿が消えた。
エレノアが飛び出すが───ロイが矢を放ち、エレノアの足元に矢が刺さる。
すると、エレノアの足元に白い矢が刺さった。
「え、白い……矢?」
ロイが木から飛び降り、エレノアの前に立つ。
すると───近くの建物から、何かが飛び降りた。
「…………」
「…………」
それは、白いコートを着ていた。
黒い仮面をしていた。
白いブーツを履き、白い髪がなびいていた。
仮面の隙間から見えるのは、青い瞳。
手には、白い弓を持っていた。
「……し、白い、八咫烏?」
サリオスが言う。
ロイは、目の前に現れた『白い八咫烏』から目を離さない。
男である自分に対し、女だった。
黒髪の自分に対し、白髪だった。
黒装束の自分に対し、白装束だった。
黒い弓に対し、白い弓だった。
全てが、ロイと正反対だった。
ロイは確信していた。目の前にいる白い弓士は、自分の敵だと。
白いカラスは、ロイを指さした。
「私は、セレネ……『月光鳥』のセレネ」
「…………」
「『八咫烏』……あなたは、私が倒す」
それだけ言い、セレネは消えた。
これは『八咫烏』に対する、『月光鳥』の宣戦布告だった。
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