97 / 227
魔界貴族侯爵『拳骨』のママレードと『猫背』のジガート①/猫の恐怖
しおりを挟む
魔界貴族侯爵『猫背』のジガート。
その名の通り、とんでもない猫背だった。
薄青い肌、鮫のような鱗が生え、伸びっぱなしの髪、頭にはツノが生えている。
薄気味悪い。スヴァルトがペッと唾を吐く。
「汚いなぁ」
「はっ……疫病撒き散らすテメェらのが汚ねぇだろうが。どの口がほざきやがる」
「キミ、口も汚いね。今までの聖剣士はけっこう、礼儀正しい子が多かったけど」
「そりゃお上品なお嬢ちゃんたちだ。オレみてぇなのもいるって勉強になったか? さぁて……話は終わりだ。薄気味悪い猫背野郎、テメーは───……」
すると、『鋸剣』が分離し、柄が伸び、刀身部分に漆黒の刃が伸びる。
大鎌形態。スヴァルトの身長よりも高い、死神の持つような大鎌を、スヴァルトはクルクル器用に回転させ構える。
すると、ジガートは口を大きく───……人間を数人、丸呑みできるほど大きく口を開いた。すると、ズルズルと人間サイズの《猫魔獣》が吐き出される。
「やっちゃって」
「クソボケか? こんな雑魚───……」
大鎌を構え、真横に薙いだ瞬間───スヴァルトはその場から一歩も動いていないのに、猫魔獣たちは綺麗に両断された。
「オレ様の敵じゃあねぇんだよ。クソ雑魚」
「あらら」
「テメェよぉ……ほんとに侯爵級なのか? 雑魚すぎじゃねぇか」
「あー……ボク、戦うのは魔獣任せで、自分ではあんまり戦わないんだよね。今まで戦った聖剣士は全員、ボクの『猫』に殺られちゃったからさぁ」
「じゃあ、今日がテメェの命日だなぁ? 命日って知ってるか? テメェが死ぬ日……つまり、今日だ」
「キミ、ほんと口悪いね……魔界でも、キミみたいなヤツいないよ」
「カカッ、最高の褒め言葉だぜ」
大鎌をジガートへ向け、舌を出して笑うスヴァルト。
息も絶え絶えに見ていたサリオスだったが、こればかりはジガートに同意した……さすがに、スヴァルトは凶悪すぎる。
「まぁ、いいや。たまにはボクも戦わないとね」
「いいね。じゃあかかってきな、細切れにしてやるからヨォ!!」
「うん。じゃあ、少し遊ぼうか───『魔性化』」
すると、ジガートが四つん這いになる。
そして、全身がボコボコと肥大化し、鮫肌のような表皮が鋭利に、強靭になる。
尾が十メートル以上伸びて止まり、顔がネコのような、虎のように変わる。
「…………マジかよ」
『ボクさぁ……魔族の中でも、魔獣の血が濃く出てるんだよね』
魔性化。
魔族の切り札。最終奥義ともいうべき技。
自らの肉体を変化させ、戦闘形態へと成る技。
ジガートの魔性化は、ジガート自身が《猫魔獣》となる姿だった。
『じゃ、行くよー』
「───!!」
スヴァルトは、大鎌の柄を分離させ、両手に一本ずつ持つ『双鎌形態』へ変形させる。
そして、高速で飛んできたジガートの『尾』を何とか弾いた。
「ッッ!!」
『あれ? なにその顔……まさか、見えなかった?』
「はっ……欠伸が出るぜ」
ツゥ───と、スヴァルトの頬から血が流れた。
ほんの少し、冷や汗を流している。
サリオスには、全く見えなかった。
「は、速……」
スヴァルトがその場で鎌を振ると、ギィン!! ギィンギィン!! と、鉄をひっかくような音が響く。
サリオスにはジガートの尾がブレたようにしか見えず、高速で操られる尾による攻撃を、スヴァルトが辛うじて捌いているのが全く見えなかった。
「チッ───」
『ほらほらほらほらほらぁ!!』
「ぐっ……っが、ぁぁ!?」
バチィン!! と、尾に弾かれスヴァルトが吹っ飛び、地面を転がった。
素早く立ち上がり、その場から横っ飛び。すると、いつの間にか跳躍していたジガートが、スヴァルトを押しつぶそうとした。
ジガートが着地すると、地面に亀裂が入る。
そして、大きく口を開けると───。
『フシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!』
「───ッ!?」
口から発生した衝撃波に、スヴァルトは全身を叩かれる。
双鎌が吹き飛び、基本形態である鋸剣に戻ってしまう。
「スヴァルト先輩!!」
『きみ、ヒトの心配してる場合?』
「えっ」
サリオスの眼前に、ジガートがいた。
凶悪なネコのような顔が、サリオスの顔の数十センチ前にいた。
ドッと汗が流れる。サリオスは動けない。
『きみ、強くなるね。さっきの『能力』とか、ヤバそうだ……ここで食べておこうかな』
「…………」
『じゃ、いただきまーす』
大きな口が、サリオスの頭を噛み砕こうとしていた。
動けない。
サリオスは、剣を構えることもできず───。
「だらぁぁぁっしゃぁぁ!!」
『ブッ!?』
横から飛び蹴りを食らわせるスヴァルト。
剣ではなく、蹴り。
ジガートは吹っ飛び、地面を転がった。
『痛いなぁ……』
「カカカカッ!! いやぁ、こっちも痛かったぜぇ? さぁさぁ続きといこうじゃねぇか!!」
鋸剣を構え、スヴァルトが笑う。
ジガートはため息を吐き、尻尾をユラユラ動かし始めた。
その名の通り、とんでもない猫背だった。
薄青い肌、鮫のような鱗が生え、伸びっぱなしの髪、頭にはツノが生えている。
薄気味悪い。スヴァルトがペッと唾を吐く。
「汚いなぁ」
「はっ……疫病撒き散らすテメェらのが汚ねぇだろうが。どの口がほざきやがる」
「キミ、口も汚いね。今までの聖剣士はけっこう、礼儀正しい子が多かったけど」
「そりゃお上品なお嬢ちゃんたちだ。オレみてぇなのもいるって勉強になったか? さぁて……話は終わりだ。薄気味悪い猫背野郎、テメーは───……」
すると、『鋸剣』が分離し、柄が伸び、刀身部分に漆黒の刃が伸びる。
大鎌形態。スヴァルトの身長よりも高い、死神の持つような大鎌を、スヴァルトはクルクル器用に回転させ構える。
すると、ジガートは口を大きく───……人間を数人、丸呑みできるほど大きく口を開いた。すると、ズルズルと人間サイズの《猫魔獣》が吐き出される。
「やっちゃって」
「クソボケか? こんな雑魚───……」
大鎌を構え、真横に薙いだ瞬間───スヴァルトはその場から一歩も動いていないのに、猫魔獣たちは綺麗に両断された。
「オレ様の敵じゃあねぇんだよ。クソ雑魚」
「あらら」
「テメェよぉ……ほんとに侯爵級なのか? 雑魚すぎじゃねぇか」
「あー……ボク、戦うのは魔獣任せで、自分ではあんまり戦わないんだよね。今まで戦った聖剣士は全員、ボクの『猫』に殺られちゃったからさぁ」
「じゃあ、今日がテメェの命日だなぁ? 命日って知ってるか? テメェが死ぬ日……つまり、今日だ」
「キミ、ほんと口悪いね……魔界でも、キミみたいなヤツいないよ」
「カカッ、最高の褒め言葉だぜ」
大鎌をジガートへ向け、舌を出して笑うスヴァルト。
息も絶え絶えに見ていたサリオスだったが、こればかりはジガートに同意した……さすがに、スヴァルトは凶悪すぎる。
「まぁ、いいや。たまにはボクも戦わないとね」
「いいね。じゃあかかってきな、細切れにしてやるからヨォ!!」
「うん。じゃあ、少し遊ぼうか───『魔性化』」
すると、ジガートが四つん這いになる。
そして、全身がボコボコと肥大化し、鮫肌のような表皮が鋭利に、強靭になる。
尾が十メートル以上伸びて止まり、顔がネコのような、虎のように変わる。
「…………マジかよ」
『ボクさぁ……魔族の中でも、魔獣の血が濃く出てるんだよね』
魔性化。
魔族の切り札。最終奥義ともいうべき技。
自らの肉体を変化させ、戦闘形態へと成る技。
ジガートの魔性化は、ジガート自身が《猫魔獣》となる姿だった。
『じゃ、行くよー』
「───!!」
スヴァルトは、大鎌の柄を分離させ、両手に一本ずつ持つ『双鎌形態』へ変形させる。
そして、高速で飛んできたジガートの『尾』を何とか弾いた。
「ッッ!!」
『あれ? なにその顔……まさか、見えなかった?』
「はっ……欠伸が出るぜ」
ツゥ───と、スヴァルトの頬から血が流れた。
ほんの少し、冷や汗を流している。
サリオスには、全く見えなかった。
「は、速……」
スヴァルトがその場で鎌を振ると、ギィン!! ギィンギィン!! と、鉄をひっかくような音が響く。
サリオスにはジガートの尾がブレたようにしか見えず、高速で操られる尾による攻撃を、スヴァルトが辛うじて捌いているのが全く見えなかった。
「チッ───」
『ほらほらほらほらほらぁ!!』
「ぐっ……っが、ぁぁ!?」
バチィン!! と、尾に弾かれスヴァルトが吹っ飛び、地面を転がった。
素早く立ち上がり、その場から横っ飛び。すると、いつの間にか跳躍していたジガートが、スヴァルトを押しつぶそうとした。
ジガートが着地すると、地面に亀裂が入る。
そして、大きく口を開けると───。
『フシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!』
「───ッ!?」
口から発生した衝撃波に、スヴァルトは全身を叩かれる。
双鎌が吹き飛び、基本形態である鋸剣に戻ってしまう。
「スヴァルト先輩!!」
『きみ、ヒトの心配してる場合?』
「えっ」
サリオスの眼前に、ジガートがいた。
凶悪なネコのような顔が、サリオスの顔の数十センチ前にいた。
ドッと汗が流れる。サリオスは動けない。
『きみ、強くなるね。さっきの『能力』とか、ヤバそうだ……ここで食べておこうかな』
「…………」
『じゃ、いただきまーす』
大きな口が、サリオスの頭を噛み砕こうとしていた。
動けない。
サリオスは、剣を構えることもできず───。
「だらぁぁぁっしゃぁぁ!!」
『ブッ!?』
横から飛び蹴りを食らわせるスヴァルト。
剣ではなく、蹴り。
ジガートは吹っ飛び、地面を転がった。
『痛いなぁ……』
「カカカカッ!! いやぁ、こっちも痛かったぜぇ? さぁさぁ続きといこうじゃねぇか!!」
鋸剣を構え、スヴァルトが笑う。
ジガートはため息を吐き、尻尾をユラユラ動かし始めた。
10
お気に入りに追加
382
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界クラス転移した俺氏、陰キャなのに聖剣抜いたった ~なんかヤバそうなので学園一の美少女と国外逃亡します~
みょっつ三世
ファンタジー
――陰キャなのに聖剣抜いちゃった。
高校二年生である明星影人(みょうじょうかげと)は目の前で起きた出来事に対し非常に困惑した。
なにせ異世界にクラス転移した上に真の勇者のみが引き抜けるという聖剣を引き抜いてしまったからだ。どこからどう見ても陰キャなのにだ。おかしいだろ。
普通そういうのは陽キャイケメンの役目じゃないのか。そう考え影人は勇者を辞退しようとするがどうにもそういう雰囲気じゃない。しかもクラスメイト達は不満な視線を向けてくるし、僕らを転移させた王国も何やらキナ臭い。
仕方ないので影人は王国から逃亡を決意することにした。※学園一の美少女付き
ん? この聖剣……しゃべるぞ!!※はい。魔剣もしゃべります。
ギフト争奪戦に乗り遅れたら、ラストワン賞で最強スキルを手に入れた
みももも
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたイツキは異空間でギフトの争奪戦に巻き込まれてしまう。
争奪戦に積極的に参加できなかったイツキは最後に残された余り物の最弱ギフトを選ぶことになってしまうが、イツキがギフトを手にしたその瞬間、イツキ一人が残された異空間に謎のファンファーレが鳴り響く。
イツキが手にしたのは誰にも選ばれることのなかった最弱ギフト。
そしてそれと、もう一つ……。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる