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仮面舞踏会
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特別に仕立ててもらったドレスに身を包んだアデリーナ。
白と銀を基調とした、アデリーナの髪に合うドレスだ。さらに、メイドたちが気合を入れて化粧をし、髪も整えた。
どこぞの国のお姫様にも見える。アデリーナは、鏡の前で驚いていた。
「化けたわねぇ」
「お嬢様は美しいから当然のことです」
「エレン……あまり恥ずかしいこと言わないの」
照れるアデリーナ。
すると、エレンは顔を完全に隠してしまう仮面と帽子を差し出した。
「こちらを、馬車の中でお付けいただきます。旦那様はすでに、王城前でお待ちだそうです」
「そう……ようやく、ちゃんと挨拶できるわね」
今さらだが、挨拶なんてしなくてもいい気がする。
アデリーナは、少し悲し気な顔で言う。
「じゃ、行きましょうか。最初で最後のパーティーに」
公爵家の馬車に乗り込み、王城へ向かう。
馬車の中で、帽子と仮面をかぶる。
「どう?」
「お似合いです」
「嘘ばっかり」
シオンの世辞に、アデリーナは苦笑で答えた。
◇◇◇◇◇
馬車は、王城へ到着した───そして。
馬車のドアが開くと、アデリーナの目の前に仮面を被った礼服姿の男性が立っていた。
藍色を基調としたスーツだ。ところどころに、金色の刺繍が施されている。
仮面は、アデリーナとお揃い。白いシンプルな仮面だった。
男性は、そっと手を差し伸べる。
「初めまして、と言いたいが……こんな仮面を被ってはな」
「仕方ありません。それが仮面舞踏会のルールですから」
アデリーナは、カルセインの手をそっと取り、馬車から降りた。
ようやく、会えた。
身長は高く、細身の男性だ。仮面で顔は見えないが、黒髪というのはわかる。
互いに手袋をしているが、カルセインの手はゴツゴツしていた。
「カルセイン・ルクシオンだ。初めまして、我が妻」
「アデリーナです。お目にかかれて光栄ですわ」
「ふっ、それは皮肉か?」
「なんとでも」
仮面の顔に、お目にかかれてもクソもない。
カルセインは笑い、アデリーナもクスっと笑った。
そして、二人は会場内へ。
会場内は、全員が仮面を被っていた。仮面舞踏会んまのだから当然だ。
ここでは、仮面を外し素顔を晒すのはルール違反。現国王は悪戯好きと聞いていたアデリーナだが、意外にも面白かった。
そして、チラッと仮面のカルセインを見る。
「───…………?」
「どうした?」
「い、いえ」
不思議な感覚だった。
隣に立つカルセインは、間違いなく初めて見る。
だが───その雰囲気、佇まいが、どうも見覚えがある。
「あ、あの「始まるぞ」
と───ここで、豪華な仮面を被った国王が現れ、挨拶を始めた。
さすがに、王の言葉を聞かないわけにはいかない。
アデリーナは、カルセインをチラチラ見ながら、王の言葉を聞いていた。
◇◇◇◇◇◇
王の挨拶が終わり、ダンスタイムとなった。
カルセインは、アデリーナに手を差し出す。
「一曲、踊ってくれないか?」
「ええ、もちろん」
音楽に合わせ、ダンスを踊る。
アデリーナは、ダンスが得意だ。ややぎこちないカルセインに合わせるようにステップを踏んでいると、カルセインは少し驚いていた。
「やるな」
「ふふ、ダンスは得意なので」
「ふっ」
仮面の内側で、カルセインが笑ったような気がした。
ダンスが終わり、二人で飲み物をもらう。すると、カルセインが言う。
「少し、挨拶をしてくる」
「仮面を被っているのにですか?」
「ああ。歩き方で、だいたいわかる」
「仮面舞踏会なのに、王様が挨拶をしたり、貴族に挨拶をしたり、不思議ですわね。仮面舞踏会というのは、身分や立場に関係なく、パーティを楽しむものだと思っていましたけど」
「確かにな。だが、王だけは王であることを偽るわけにはいかんのだ」
「まぁ、確かに」
「では、すぐ戻る」
カルセインは行ってしまった。
アデリーナは、仮面の口部分を外し、白ワインを飲む。
「はぁ……」
初めて話した夫は、仮面の夫だった。
でも……不思議と、嫌な感じはしない。
むしろ、話しやすかった。
「……似てる」
常連さんに、と、アデリーナは呟いた。
そういえば、常連さんの名前を知らない。
いつも濃いコーヒーを飲み、たまに肉料理を楽しむ常連さん。向こうも、アデリーナの本当の名前を知らない。女主人のアディのことしか、わからない。
「……」
会いたい、と思ってしまう。
夫が嫌いなわけではない。常連さんの方が好きなのだ。
「最悪……」
アデリーナは、ため息を吐いた。
座っていると自己嫌悪に陥りそうだったので、パーティ会場外へ。すぐ外は中庭になっており、月明かりに照らされた花々がキラキラ輝いているように見えた。
アデリーナは、空を見上げた。
綺麗な月が、キラキラと輝いている。
「…………はぁ」
ため息ばかりが出る。
この、やり場のないモヤモヤが、アデリーナの胸から消えない。
すると……アデリーナの背後に。
「一人で散歩か?」
「……ええ」
仮面を被った、カルセインが現れた。
なんとなく……アデリーナは、ここで向き合わねばならないと感じていた。
白と銀を基調とした、アデリーナの髪に合うドレスだ。さらに、メイドたちが気合を入れて化粧をし、髪も整えた。
どこぞの国のお姫様にも見える。アデリーナは、鏡の前で驚いていた。
「化けたわねぇ」
「お嬢様は美しいから当然のことです」
「エレン……あまり恥ずかしいこと言わないの」
照れるアデリーナ。
すると、エレンは顔を完全に隠してしまう仮面と帽子を差し出した。
「こちらを、馬車の中でお付けいただきます。旦那様はすでに、王城前でお待ちだそうです」
「そう……ようやく、ちゃんと挨拶できるわね」
今さらだが、挨拶なんてしなくてもいい気がする。
アデリーナは、少し悲し気な顔で言う。
「じゃ、行きましょうか。最初で最後のパーティーに」
公爵家の馬車に乗り込み、王城へ向かう。
馬車の中で、帽子と仮面をかぶる。
「どう?」
「お似合いです」
「嘘ばっかり」
シオンの世辞に、アデリーナは苦笑で答えた。
◇◇◇◇◇
馬車は、王城へ到着した───そして。
馬車のドアが開くと、アデリーナの目の前に仮面を被った礼服姿の男性が立っていた。
藍色を基調としたスーツだ。ところどころに、金色の刺繍が施されている。
仮面は、アデリーナとお揃い。白いシンプルな仮面だった。
男性は、そっと手を差し伸べる。
「初めまして、と言いたいが……こんな仮面を被ってはな」
「仕方ありません。それが仮面舞踏会のルールですから」
アデリーナは、カルセインの手をそっと取り、馬車から降りた。
ようやく、会えた。
身長は高く、細身の男性だ。仮面で顔は見えないが、黒髪というのはわかる。
互いに手袋をしているが、カルセインの手はゴツゴツしていた。
「カルセイン・ルクシオンだ。初めまして、我が妻」
「アデリーナです。お目にかかれて光栄ですわ」
「ふっ、それは皮肉か?」
「なんとでも」
仮面の顔に、お目にかかれてもクソもない。
カルセインは笑い、アデリーナもクスっと笑った。
そして、二人は会場内へ。
会場内は、全員が仮面を被っていた。仮面舞踏会んまのだから当然だ。
ここでは、仮面を外し素顔を晒すのはルール違反。現国王は悪戯好きと聞いていたアデリーナだが、意外にも面白かった。
そして、チラッと仮面のカルセインを見る。
「───…………?」
「どうした?」
「い、いえ」
不思議な感覚だった。
隣に立つカルセインは、間違いなく初めて見る。
だが───その雰囲気、佇まいが、どうも見覚えがある。
「あ、あの「始まるぞ」
と───ここで、豪華な仮面を被った国王が現れ、挨拶を始めた。
さすがに、王の言葉を聞かないわけにはいかない。
アデリーナは、カルセインをチラチラ見ながら、王の言葉を聞いていた。
◇◇◇◇◇◇
王の挨拶が終わり、ダンスタイムとなった。
カルセインは、アデリーナに手を差し出す。
「一曲、踊ってくれないか?」
「ええ、もちろん」
音楽に合わせ、ダンスを踊る。
アデリーナは、ダンスが得意だ。ややぎこちないカルセインに合わせるようにステップを踏んでいると、カルセインは少し驚いていた。
「やるな」
「ふふ、ダンスは得意なので」
「ふっ」
仮面の内側で、カルセインが笑ったような気がした。
ダンスが終わり、二人で飲み物をもらう。すると、カルセインが言う。
「少し、挨拶をしてくる」
「仮面を被っているのにですか?」
「ああ。歩き方で、だいたいわかる」
「仮面舞踏会なのに、王様が挨拶をしたり、貴族に挨拶をしたり、不思議ですわね。仮面舞踏会というのは、身分や立場に関係なく、パーティを楽しむものだと思っていましたけど」
「確かにな。だが、王だけは王であることを偽るわけにはいかんのだ」
「まぁ、確かに」
「では、すぐ戻る」
カルセインは行ってしまった。
アデリーナは、仮面の口部分を外し、白ワインを飲む。
「はぁ……」
初めて話した夫は、仮面の夫だった。
でも……不思議と、嫌な感じはしない。
むしろ、話しやすかった。
「……似てる」
常連さんに、と、アデリーナは呟いた。
そういえば、常連さんの名前を知らない。
いつも濃いコーヒーを飲み、たまに肉料理を楽しむ常連さん。向こうも、アデリーナの本当の名前を知らない。女主人のアディのことしか、わからない。
「……」
会いたい、と思ってしまう。
夫が嫌いなわけではない。常連さんの方が好きなのだ。
「最悪……」
アデリーナは、ため息を吐いた。
座っていると自己嫌悪に陥りそうだったので、パーティ会場外へ。すぐ外は中庭になっており、月明かりに照らされた花々がキラキラ輝いているように見えた。
アデリーナは、空を見上げた。
綺麗な月が、キラキラと輝いている。
「…………はぁ」
ため息ばかりが出る。
この、やり場のないモヤモヤが、アデリーナの胸から消えない。
すると……アデリーナの背後に。
「一人で散歩か?」
「……ええ」
仮面を被った、カルセインが現れた。
なんとなく……アデリーナは、ここで向き合わねばならないと感じていた。
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