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鑑定士たちの平和な日常
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「でさ、アーヴァインってばムカつくのよ。甘い物食べすぎとか、しょっぱいもの食べすぎとか。そりゃ身重だから心配する気持ちはわかるけど」
「……あなた、先程からずっと同じことばかり」
「いいじゃん。バネッサだって似たようなものでしょ?」
「わたくしはちゃんと節制していますので」
ジュジュは、バネッサとお茶会を開いていた。
二人の対決から三年。二人は、親友になっていた。
ライメイレイン公爵夫人とボナパルト公爵夫人。対等な関係でお茶が飲めるというのは、ジュジュにとっても気持ちいい。それに、バネッサには遠慮しなくていいと思っている。
ちなみに、二人とも妊娠中だ。
「はぁ~……早く、お仕事したい」
「鑑定医でしたわね」
「うん。えへへ、おじいちゃんもすっごく喜んでるんだー」
「夢を実現させたんですもの。それは嬉しいに決まってますわ」
ジュジュは、一年ほど前に鑑定医になった。
だが、鑑定医として働き始めた頃に妊娠。今は静養中である。
バネッサは、公爵夫人として、貴族女性たちのリーダーのような存在になっている。夫のカーディウスともうまくやっているようだ。
「そういえば聞いた? ゼロワン王子も結婚だって。相手のこと知ってる?」
「ええ。他国の鑑定士と聞きましたわ。平民出身で、家が鑑定屋を営んでいるそうで、祖母と二人暮らしをしていたそうで……たまたま視察に来ていたゼロワン王子と出会い、恋に落ちたとか」
「ロマンティックねぇ~……なんか既視感あるけど」
「ふふ、あなたそっくりじゃない」
「そうかな?」
ジュジュは首を傾げた。
なんとなくバネッサは感じていた。恐らくゼロワン王子は、ジュジュが……。
「さて、そろそろ帰りますわ。また来ます」
「ん、じゃあね」
バネッサは優雅に一礼し、笑顔で去って行った。
これからもきっと、バネッサは友人のままだ。
子供が生まれても、きっと。
◇◇◇◇◇◇
アーヴァインが戻り、ジュジュと夕食を取っていた。
「ねぇアーヴァイン。お肉……」
「駄目だ。ノーマン、ジュジュに菓子は与えるな。子供が生まれるまで、国中のシェフから意見を聞いて作った完全栄養食だけを食べさせろ」
「は、はい……あの、旦那様。あまり気を使いすぎると、ストレスになるのでは」
「そうよ! お肉くらい食べさせないさいよ!」
「む、しかし……」
ジュジュの妊娠は、アーヴァインを激変させた。
ジュジュとしては嬉しいが、あまりにも神経質すぎる。
睡眠時間、食事を徹底的に管理。医者が十人以上常に待機しており、護衛に兵士が十人以上付いている。
あまりの徹底ぶりに、ジュジュは疲れていた。
「あのさ、おじいちゃんに会いたいな」
「…………まぁ、それくらいなら。ノーマン、手配しろ」
「違う違う! 家に帰りたいの」
「何!? だ、だが……」
「大丈夫だって。何なら、アーヴァインも一緒に行かない?」
「それなら行こう」
「よし! じゃあ、明日ね」
「……ノーマン、馬車の手配を。揺れを感じさせないようにクッションを大量に準備」
「かしこまりました」
やはり、アーヴァインは神経質になっていた。
◇◇◇◇◇◇
翌日。
馬車に揺られ、ボレロ鑑定屋に到着。
鑑定屋の中は、もう何年も変わっていない。
ボレロは相変わらず、カウンターで新聞を読んでいた。
「おお、ジュジュ。おかえり」
「ただいま、おじいちゃん!」
「公爵様も、いらっしゃいませ」
「……その、公爵様というのは」
「ふふ。冗談です」
ボレロはにっこり笑い、お茶の支度をする。
その間、ジュジュはカウンターへ。
「おじいちゃん、あたしが留守番してていい?」
「かまわんが……身体は大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫。まだ予定日前だし、それに……やっぱり、ここがいいの」
「……わかった。ではアーヴァイン、ジュジュを頼むよ」
「わかりました」
アーヴァインとジュジュは、並んでカウンターへ入った。
「なんか、懐かしいね」
「何がだ?」
「アーヴァイン、真っ黒なコート着てさ、この店に入ってきたよね」
「そうだったな……」
「ふふ。今ではあたしの旦那様。そして、この子の父親」
「ああ……」
ジュジュはお腹を撫でる。新しい命の鼓動を感じる。
ジュジュは、アーヴァインの手をそっと掴み、笑顔で言う。
「アーヴァイン、これからもよろしくね」
「ああ。末永く」
二人の顔が近づき、唇が重なろうとした瞬間───チリンチリンと、ドアが開いた。
ジュジュはキス寸前でアーヴァインから離れ、笑顔で呟いた。
「いらっしゃいませ! ボレロ鑑定屋へようこそ!」
─完─
「……あなた、先程からずっと同じことばかり」
「いいじゃん。バネッサだって似たようなものでしょ?」
「わたくしはちゃんと節制していますので」
ジュジュは、バネッサとお茶会を開いていた。
二人の対決から三年。二人は、親友になっていた。
ライメイレイン公爵夫人とボナパルト公爵夫人。対等な関係でお茶が飲めるというのは、ジュジュにとっても気持ちいい。それに、バネッサには遠慮しなくていいと思っている。
ちなみに、二人とも妊娠中だ。
「はぁ~……早く、お仕事したい」
「鑑定医でしたわね」
「うん。えへへ、おじいちゃんもすっごく喜んでるんだー」
「夢を実現させたんですもの。それは嬉しいに決まってますわ」
ジュジュは、一年ほど前に鑑定医になった。
だが、鑑定医として働き始めた頃に妊娠。今は静養中である。
バネッサは、公爵夫人として、貴族女性たちのリーダーのような存在になっている。夫のカーディウスともうまくやっているようだ。
「そういえば聞いた? ゼロワン王子も結婚だって。相手のこと知ってる?」
「ええ。他国の鑑定士と聞きましたわ。平民出身で、家が鑑定屋を営んでいるそうで、祖母と二人暮らしをしていたそうで……たまたま視察に来ていたゼロワン王子と出会い、恋に落ちたとか」
「ロマンティックねぇ~……なんか既視感あるけど」
「ふふ、あなたそっくりじゃない」
「そうかな?」
ジュジュは首を傾げた。
なんとなくバネッサは感じていた。恐らくゼロワン王子は、ジュジュが……。
「さて、そろそろ帰りますわ。また来ます」
「ん、じゃあね」
バネッサは優雅に一礼し、笑顔で去って行った。
これからもきっと、バネッサは友人のままだ。
子供が生まれても、きっと。
◇◇◇◇◇◇
アーヴァインが戻り、ジュジュと夕食を取っていた。
「ねぇアーヴァイン。お肉……」
「駄目だ。ノーマン、ジュジュに菓子は与えるな。子供が生まれるまで、国中のシェフから意見を聞いて作った完全栄養食だけを食べさせろ」
「は、はい……あの、旦那様。あまり気を使いすぎると、ストレスになるのでは」
「そうよ! お肉くらい食べさせないさいよ!」
「む、しかし……」
ジュジュの妊娠は、アーヴァインを激変させた。
ジュジュとしては嬉しいが、あまりにも神経質すぎる。
睡眠時間、食事を徹底的に管理。医者が十人以上常に待機しており、護衛に兵士が十人以上付いている。
あまりの徹底ぶりに、ジュジュは疲れていた。
「あのさ、おじいちゃんに会いたいな」
「…………まぁ、それくらいなら。ノーマン、手配しろ」
「違う違う! 家に帰りたいの」
「何!? だ、だが……」
「大丈夫だって。何なら、アーヴァインも一緒に行かない?」
「それなら行こう」
「よし! じゃあ、明日ね」
「……ノーマン、馬車の手配を。揺れを感じさせないようにクッションを大量に準備」
「かしこまりました」
やはり、アーヴァインは神経質になっていた。
◇◇◇◇◇◇
翌日。
馬車に揺られ、ボレロ鑑定屋に到着。
鑑定屋の中は、もう何年も変わっていない。
ボレロは相変わらず、カウンターで新聞を読んでいた。
「おお、ジュジュ。おかえり」
「ただいま、おじいちゃん!」
「公爵様も、いらっしゃいませ」
「……その、公爵様というのは」
「ふふ。冗談です」
ボレロはにっこり笑い、お茶の支度をする。
その間、ジュジュはカウンターへ。
「おじいちゃん、あたしが留守番してていい?」
「かまわんが……身体は大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫。まだ予定日前だし、それに……やっぱり、ここがいいの」
「……わかった。ではアーヴァイン、ジュジュを頼むよ」
「わかりました」
アーヴァインとジュジュは、並んでカウンターへ入った。
「なんか、懐かしいね」
「何がだ?」
「アーヴァイン、真っ黒なコート着てさ、この店に入ってきたよね」
「そうだったな……」
「ふふ。今ではあたしの旦那様。そして、この子の父親」
「ああ……」
ジュジュはお腹を撫でる。新しい命の鼓動を感じる。
ジュジュは、アーヴァインの手をそっと掴み、笑顔で言う。
「アーヴァイン、これからもよろしくね」
「ああ。末永く」
二人の顔が近づき、唇が重なろうとした瞬間───チリンチリンと、ドアが開いた。
ジュジュはキス寸前でアーヴァインから離れ、笑顔で呟いた。
「いらっしゃいませ! ボレロ鑑定屋へようこそ!」
─完─
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