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鑑定勝負
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国王の前で、盛大に喧嘩を売られ……買った。
ジュジュとバネッサの鑑定勝負は、なぜか王城内に広まり、話が面白いくらいこじれてしまう。
「聞いた? ライメイレイン公爵を巡って、ボナパルト公爵の令嬢とサイレンス伯爵令嬢が鑑定勝負するんだって!」
「きゃあ! ロマンティックねぇ~……一人の男を奪い合う令嬢の戦い!」
「でもさ、こういうのって普通、令嬢を取り合う騎士の決闘とかじゃない?」
「ふふ、ライメイレイン公爵様は、さしずめお姫様ね!」
と、アーヴァインはいつの間にが『お姫様』ポジションだ。
当然、アーヴァインは面白くない。
アーヴァインはカーディウスを公爵邸に呼び出し、思いきり睨みつけていた。
「やってくれたな、カーディウス」
「あはは。悪いね、お姫様……ごめんごめん、剣を抜かないで」
ジュジュはいない。
アーヴァインを巡っての鑑定勝負だ。互いに好き合っていても、会うことなど許されない。
カーディウスは、紅茶を飲みながら言う。
「うちの娘、バネッサ令嬢に勝つ!って気合が入ってるよ」
「……その件も、話さないとな」
「あはは。もしかして迷惑だった?」
「……てっきり、お前はジュジュに好意を抱いているのかと」
「んー……あの子は確かに可愛いね。でも、きみしか見ていない。ボクのことは、頼れるお兄さん、としか見てないんじゃないかな? むしろ、ゼロワンのが心配だよ」
「……あいつ、やっぱり」
「うん。好きだったんだろうね……ま、彼も王族だ。恋愛結婚なんてできるとは思ってないだろうけど」
「…………」
アーヴァインは、紅茶のカップを手に取る。そのまま飲もうと思ったが、飲まずにカップを戻した。
「それで、なんでジュジュを養子にした。ボレロ殿は知っているのか?」
「ちゃんと説明したよ。いやはや、あの方は実に聡明だ。ジュジュちゃんの幸せを理解して、快く了承してくれたよ」
「…………」
「それと、きみのためにジュジュちゃんを迎えたというけど……あながち、ボクの理もある。ボナパルト公爵家とライメイレイン公爵家が親戚同士になったんだ。ボクとキミが存命中の間は問題ないだろうけど、二台公爵家同士で争うことが、未来で起きるかもしれない。だから、血のつながりっていう強固な関係を作りたかった」
「……というのは建前だろう。お前の本心は?」
「さぁ?」
カーディウスはおどけた。
言えるわけがなかった。
永遠に、胸に秘めておく秘密。
「アーヴァイン、キミは……ジュジュちゃんのこと、好きなんだろう?」
「…………まぁな」
「バネッサ令嬢が横入りしなかったら、あのまま婚約者はジュジュちゃんに決まっていただろうね」
「……ああ」
アーヴァインは、無自覚に微笑んだ。
嬉しさが伝わってくる。それが嬉しくて……ちょっぴり、胸が痛む。
カーディウスは、紅茶を飲み干した。
「アーヴァイン、幸せになりなよ」
「……まだ勝負は始まってすらいないぞ」
「ふふ、確信してる。きっとジュジュちゃんは勝つよ」
「…………そうだな」
カーディウスは立ち上がり、ドアへ向かう。
「じゃ、またね」
「ああ。カーディウス……その、礼を言う」
「気にしないでよ、親友」
そう言って、部屋から出た。
カーディウスは、ドアをそっと眺め……呟く。
「幸せに、か……」
言えるわけがなかった。
カーディウスは、アーヴァインに……親友以上の想いを寄せている。だから、アーヴァインには誰よりも幸せになってほしいから、なんて。
◇◇◇◇◇◇
ジュジュは、ボレロ鑑定屋に戻り本を読んでいた。
「クッソ~~~~!! バネッサ令嬢になんか負けるもんか!!」
鑑定勝負は、なぜか国王が取り仕切ることになった……今になって思えば、国王の前で令嬢同士が喧嘩をしたのだ。当然と言えば当然の采配だ。
鑑定は三本勝負。遺物ではなく、国が用意する骨董品を、より深く鑑定できた方が勝利。審査員は特級鑑定士の三人。アーヴァイン、カーディウス、ゼロワンの三人だ。
公平な審査を。それが国王の出した条件だ。
「負けないし!!」
ジュジュは気合を入れる。
だが、少しだけ沈んだ。
「でも……バネッサ令嬢、まさか上級鑑定士だったなんて」
バネッサは、上級鑑定士の資格を持っている。
嫌味な令嬢。それがジュジュの見たバネッサだったが、どうも違うようだ。
「でも……負けない」
この勝負には、アーヴァインが繋っている。
「…………」
そういえば……と、ジュジュが気付いた。
「……アーヴァインに、ちゃんと伝えないと」
勝負の先にあるのは、アーヴァインとの結婚。
でも、その前に……きちんと、愛を伝えたかった。
ジュジュとバネッサの鑑定勝負は、なぜか王城内に広まり、話が面白いくらいこじれてしまう。
「聞いた? ライメイレイン公爵を巡って、ボナパルト公爵の令嬢とサイレンス伯爵令嬢が鑑定勝負するんだって!」
「きゃあ! ロマンティックねぇ~……一人の男を奪い合う令嬢の戦い!」
「でもさ、こういうのって普通、令嬢を取り合う騎士の決闘とかじゃない?」
「ふふ、ライメイレイン公爵様は、さしずめお姫様ね!」
と、アーヴァインはいつの間にが『お姫様』ポジションだ。
当然、アーヴァインは面白くない。
アーヴァインはカーディウスを公爵邸に呼び出し、思いきり睨みつけていた。
「やってくれたな、カーディウス」
「あはは。悪いね、お姫様……ごめんごめん、剣を抜かないで」
ジュジュはいない。
アーヴァインを巡っての鑑定勝負だ。互いに好き合っていても、会うことなど許されない。
カーディウスは、紅茶を飲みながら言う。
「うちの娘、バネッサ令嬢に勝つ!って気合が入ってるよ」
「……その件も、話さないとな」
「あはは。もしかして迷惑だった?」
「……てっきり、お前はジュジュに好意を抱いているのかと」
「んー……あの子は確かに可愛いね。でも、きみしか見ていない。ボクのことは、頼れるお兄さん、としか見てないんじゃないかな? むしろ、ゼロワンのが心配だよ」
「……あいつ、やっぱり」
「うん。好きだったんだろうね……ま、彼も王族だ。恋愛結婚なんてできるとは思ってないだろうけど」
「…………」
アーヴァインは、紅茶のカップを手に取る。そのまま飲もうと思ったが、飲まずにカップを戻した。
「それで、なんでジュジュを養子にした。ボレロ殿は知っているのか?」
「ちゃんと説明したよ。いやはや、あの方は実に聡明だ。ジュジュちゃんの幸せを理解して、快く了承してくれたよ」
「…………」
「それと、きみのためにジュジュちゃんを迎えたというけど……あながち、ボクの理もある。ボナパルト公爵家とライメイレイン公爵家が親戚同士になったんだ。ボクとキミが存命中の間は問題ないだろうけど、二台公爵家同士で争うことが、未来で起きるかもしれない。だから、血のつながりっていう強固な関係を作りたかった」
「……というのは建前だろう。お前の本心は?」
「さぁ?」
カーディウスはおどけた。
言えるわけがなかった。
永遠に、胸に秘めておく秘密。
「アーヴァイン、キミは……ジュジュちゃんのこと、好きなんだろう?」
「…………まぁな」
「バネッサ令嬢が横入りしなかったら、あのまま婚約者はジュジュちゃんに決まっていただろうね」
「……ああ」
アーヴァインは、無自覚に微笑んだ。
嬉しさが伝わってくる。それが嬉しくて……ちょっぴり、胸が痛む。
カーディウスは、紅茶を飲み干した。
「アーヴァイン、幸せになりなよ」
「……まだ勝負は始まってすらいないぞ」
「ふふ、確信してる。きっとジュジュちゃんは勝つよ」
「…………そうだな」
カーディウスは立ち上がり、ドアへ向かう。
「じゃ、またね」
「ああ。カーディウス……その、礼を言う」
「気にしないでよ、親友」
そう言って、部屋から出た。
カーディウスは、ドアをそっと眺め……呟く。
「幸せに、か……」
言えるわけがなかった。
カーディウスは、アーヴァインに……親友以上の想いを寄せている。だから、アーヴァインには誰よりも幸せになってほしいから、なんて。
◇◇◇◇◇◇
ジュジュは、ボレロ鑑定屋に戻り本を読んでいた。
「クッソ~~~~!! バネッサ令嬢になんか負けるもんか!!」
鑑定勝負は、なぜか国王が取り仕切ることになった……今になって思えば、国王の前で令嬢同士が喧嘩をしたのだ。当然と言えば当然の采配だ。
鑑定は三本勝負。遺物ではなく、国が用意する骨董品を、より深く鑑定できた方が勝利。審査員は特級鑑定士の三人。アーヴァイン、カーディウス、ゼロワンの三人だ。
公平な審査を。それが国王の出した条件だ。
「負けないし!!」
ジュジュは気合を入れる。
だが、少しだけ沈んだ。
「でも……バネッサ令嬢、まさか上級鑑定士だったなんて」
バネッサは、上級鑑定士の資格を持っている。
嫌味な令嬢。それがジュジュの見たバネッサだったが、どうも違うようだ。
「でも……負けない」
この勝負には、アーヴァインが繋っている。
「…………」
そういえば……と、ジュジュが気付いた。
「……アーヴァインに、ちゃんと伝えないと」
勝負の先にあるのは、アーヴァインとの結婚。
でも、その前に……きちんと、愛を伝えたかった。
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