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勝負の行方
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「アーヴァイン公爵閣下、鑑定数889!」
「カーディウス公爵閣下、鑑定数889!」
アーヴァインとカーディウスに付いていた記録係が、二人の鑑定数を同時に叫ぶ。
すると、声が重なった。まさかの同数だったのだ。
これには、アーヴァインとカーディウスも頭を抱えた。
「ッチ……おい、間違いなく889か? 一個数え間違えてるんじゃないか?」
「いえ、そんなことは……」
「アーヴァイン。記録係を責めるのは可哀想だ。ふふ、まぁいいじゃないか」
「何?」
「引き分けでもいいじゃないか。その方が、面白い」
「……何を考えている」
「ジュジュさんに決めてもらえばいいのさ。ボクとアーヴァイン、どちらとデートしたいのか」
「…………」
アーヴァインは、ムッとしたまま動かない。
そして、気が付いた。
「……ところで、あいつはどこだ?」
「え? あれ? そういえば……あ」
二人がキョロキョロしていると、宝物庫の隅でぽけーっとしているジュジュがいた。
ジュジュの元へ向かう二人。
そして、アーヴァインを見たジュジュは言う。
「アーヴァイン。今って夢?」
「…………は?」
カーディウス様。あたし、起きてますよね?」
「え、ええと……?」
さすがの二大公爵も、どう返答したらいいのかわからない。
ジュジュは自分の頬を捻ってみた。
「お、おい!? 何してる!!」
「か、顔に傷が付きますよ!!」
「うー……やっぱり、夢じゃない。さっきの、現実だった……あ」
と、ジュジュは細長い棒……『妖精の笛』を持っていたことに気付く。
その笛を、アーヴァインに見せた。
「これ、遺物です。妖精の笛……吹くと、妖精を呼べるみたい」
「これが、王家の遺物?」
「うん。あのね、聞いてほしいの」
「落ち着け。とりあえず、これが遺物で間違いないんだな?」
「うん」
「なら、仕事は終わりだ。引き上げるぞ」
アーヴァインは、ジュジュの手を掴んだ。
そして、妖精の笛をカーディウスへ渡す。
「カーディウス、後は任せる」
「あ、ズルいな。全く……」
全てを押し付けられたカーディウスは、苦笑しつつ笛を掲げた。
◇◇◇◇◇◇
ライメイレイン家に戻ったジュジュは、アーヴァインに全て話した。
「まさか、妖精の王だと……?」
「うん。あたし、妖精の笛を吹いて、すっごくキレイな花畑に連れて行かれて、そこには妖精がいっぱいいてね、王様がすーっごくカッコよかったの! で、お茶もらって、あたしの眼について教えてくれた……」
「……お前の眼、か?」
すーっごくカッコいい王様がアーヴァインには気になった。が、今はそれどころではない。
ジュジュは、目をそっと抑えた。
「あたしの眼。アーレント王国の初代国王様とおんなじだって……あたし、王族の血を引いてるみたい」
「間違いないのか?」
「うん……妖精の王様が言うんだもん。間違いないよ」
「……お前に噓を教える理由もないな。で、お前はどうしたい?」
ジュジュは顔を上げ、強い笑みを浮かべていた。
「変わらないよ」
「変わらない?」
「うん。あたしは、鑑定医になって、おじいちゃんを楽させてあげたい。あたしを育ててくれたおじいちゃんに、恩返ししたいの。だからアーヴァイン……あたしが何であれ、あたしを鍛えるって約束は守ってもらうからね!」
「……ふっ」
アーヴァインは笑った。
そして、ジュジュの顔をまっすぐ見る。
「約束は守る。お前を、立派な鑑定士にしてやろう」
「うん!」
ジュジュはニカッと笑い、アーヴァインに向けて手を差し出す。
アーヴァインは、その手を取り、優しく握った。
柔らかで、しなやかで、強く握ると折れてしまいそうな繊細な手。だが、弱々しさは感じられず、力強く握ってくる。
「明日から、さらに厳しく指導する……根を上げるなよ?」
「うっ……よ、よろしく」
師匠と弟子。
二人の関係が変化するのは、もう少し後になってからだった。
「カーディウス公爵閣下、鑑定数889!」
アーヴァインとカーディウスに付いていた記録係が、二人の鑑定数を同時に叫ぶ。
すると、声が重なった。まさかの同数だったのだ。
これには、アーヴァインとカーディウスも頭を抱えた。
「ッチ……おい、間違いなく889か? 一個数え間違えてるんじゃないか?」
「いえ、そんなことは……」
「アーヴァイン。記録係を責めるのは可哀想だ。ふふ、まぁいいじゃないか」
「何?」
「引き分けでもいいじゃないか。その方が、面白い」
「……何を考えている」
「ジュジュさんに決めてもらえばいいのさ。ボクとアーヴァイン、どちらとデートしたいのか」
「…………」
アーヴァインは、ムッとしたまま動かない。
そして、気が付いた。
「……ところで、あいつはどこだ?」
「え? あれ? そういえば……あ」
二人がキョロキョロしていると、宝物庫の隅でぽけーっとしているジュジュがいた。
ジュジュの元へ向かう二人。
そして、アーヴァインを見たジュジュは言う。
「アーヴァイン。今って夢?」
「…………は?」
カーディウス様。あたし、起きてますよね?」
「え、ええと……?」
さすがの二大公爵も、どう返答したらいいのかわからない。
ジュジュは自分の頬を捻ってみた。
「お、おい!? 何してる!!」
「か、顔に傷が付きますよ!!」
「うー……やっぱり、夢じゃない。さっきの、現実だった……あ」
と、ジュジュは細長い棒……『妖精の笛』を持っていたことに気付く。
その笛を、アーヴァインに見せた。
「これ、遺物です。妖精の笛……吹くと、妖精を呼べるみたい」
「これが、王家の遺物?」
「うん。あのね、聞いてほしいの」
「落ち着け。とりあえず、これが遺物で間違いないんだな?」
「うん」
「なら、仕事は終わりだ。引き上げるぞ」
アーヴァインは、ジュジュの手を掴んだ。
そして、妖精の笛をカーディウスへ渡す。
「カーディウス、後は任せる」
「あ、ズルいな。全く……」
全てを押し付けられたカーディウスは、苦笑しつつ笛を掲げた。
◇◇◇◇◇◇
ライメイレイン家に戻ったジュジュは、アーヴァインに全て話した。
「まさか、妖精の王だと……?」
「うん。あたし、妖精の笛を吹いて、すっごくキレイな花畑に連れて行かれて、そこには妖精がいっぱいいてね、王様がすーっごくカッコよかったの! で、お茶もらって、あたしの眼について教えてくれた……」
「……お前の眼、か?」
すーっごくカッコいい王様がアーヴァインには気になった。が、今はそれどころではない。
ジュジュは、目をそっと抑えた。
「あたしの眼。アーレント王国の初代国王様とおんなじだって……あたし、王族の血を引いてるみたい」
「間違いないのか?」
「うん……妖精の王様が言うんだもん。間違いないよ」
「……お前に噓を教える理由もないな。で、お前はどうしたい?」
ジュジュは顔を上げ、強い笑みを浮かべていた。
「変わらないよ」
「変わらない?」
「うん。あたしは、鑑定医になって、おじいちゃんを楽させてあげたい。あたしを育ててくれたおじいちゃんに、恩返ししたいの。だからアーヴァイン……あたしが何であれ、あたしを鍛えるって約束は守ってもらうからね!」
「……ふっ」
アーヴァインは笑った。
そして、ジュジュの顔をまっすぐ見る。
「約束は守る。お前を、立派な鑑定士にしてやろう」
「うん!」
ジュジュはニカッと笑い、アーヴァインに向けて手を差し出す。
アーヴァインは、その手を取り、優しく握った。
柔らかで、しなやかで、強く握ると折れてしまいそうな繊細な手。だが、弱々しさは感じられず、力強く握ってくる。
「明日から、さらに厳しく指導する……根を上げるなよ?」
「うっ……よ、よろしく」
師匠と弟子。
二人の関係が変化するのは、もう少し後になってからだった。
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