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誕生パーティー、そして
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アーヴァイン、バネッサの到着は、パーティー会場内に衝撃を走らせた。
バネッサは、アーヴァインのエスコートを受けての到着だ。すでに会場入りしていた貴族令嬢たちは、その光景に目が離せない。
バネッサは、ニヤリと心の中で笑う。
噂好きの令嬢たちなら、アーヴァインとバネッサが誕生会に腕を組んで現れたという事実だけで、茶会のネタにするだろう。
バネッサは、優越感を感じながら会場内を見る。
「…………」
ジュジュはいない。
いたらいたで面白かったのだが、仕方ない。
アーヴァインは、バネッサの手を放すと、小さく言う。
「やってくれたな」
「あら、なんのことでしょう?」
「…………」
「では、私はご挨拶があるので。失礼しますわ」
バネッサは、令嬢たちが集まる場所へ。
本来、誕生会の主役であるアーヴァインは最後に登場するものだが……バネッサを連れて最後に登場したくなかったので、それらを無視して会場入りした。
それが、仇となってしまった。余計に目立っている。
アーヴァインの元に、貴族たちが集まる。
「お久しぶりです、公爵。ははは、公爵もついに婚約者を?」
「違います」
「ははは。そう照れなくても。若い者同士、いいですなぁ」
「…………」
アーヴァインは、舌打ちしたい気持ちだった。
婚約者のいない公爵と、和解伯爵令嬢。誕生日に一緒に会場入りするなど、どうように見られるかなんて、考えるまでもなかった。
後で、しっかり否定せねば。
アーヴァインは、パーティーが始まる前から疲れていた。
そんな時だった。
「ゼロワン第一王子の、ご到着です」
そう聞こえ、ドアが開かれた。
アーヴァインは、何気なくそちらを見た。
「……………………何?」
ゼロワンの隣に立ち、歩いてくるのは……ジュジュだった。
綺麗なドレスに宝石を身に着け、菫色の髪はシャンデリアの光でキラキラ輝いていた。
美しかった。
どこか儚げな表情が光に照らされ、守ってやりたくなるような庇護欲をそそられる。
そして、相手はゼロワン。この国の第一王子。
アーヴァインは、ジュジュに見惚れつつ、ゼロワンを見た。
さすが王族というべきか、堂々とした姿でジュジュと腕を組んでいる。
「…………ッ」
アーヴァインは、なぜか胸がチクりと痛んだ。
一緒にいてほしくない。そんな気持ちが胸をよぎる。
そして、ジュジュが……アーヴァインをチラリと見た。
「あ……」
申し訳なさそうな表情だった。
なぜ、ゼロワンと一緒なのか。気になることはある。
アーヴァインは、さっそく動きだす。
ゼロワンの腕に絡んでいた手が離れると同時に、ジュジュに詰め寄った。
「ジュジュ、どういうつもりだ?」
「あ、公爵様。えっと……」
「まさか、ゼロワンと一緒に来るとはな。ゼロワン、お前、どうしてジュジュを連れている?」
公の場では『殿下』と呼ぶべきなのだが、アーヴァインは興奮しているのか素のままだった。
ゼロワンは、驚きつつも言う。
「ジュジュが家で落ち込んでるみたいだったから。オレが連れ出した」
「おまえ、何勝手なことを」
「勝手じゃない。アーヴァイン兄ぃ、招待状だけ送って放置したじゃん。ジュジュ、落ち込んでたんだろ? だったら、アーヴァイン兄ぃが連れて行けばよかったんだ」
「……無理やり、か?」
「無理やりでもだよ。オレが連れてこなかったら、ジュジュは家で傷ついたままだったよ」
「…………」
「…………」
ジュジュを挟む形で、アーヴァインとゼロワンの間に火花が散っていた。
「え、えっと……二人とも、落ち着いて。その、目立ってる」
まるで、一人の姫を取り合う王子たち。
誕生会の主役と、この国の王子が、一人の少女を挟んで喧嘩。目立たないはずがない。
すると、この状況を止めるかのように、一人の紳士が割って入った。
「はいはい。二人とも、喧嘩は後で」
「カーディウス……」
「カーディウス兄ぃ……」
カーディウスは、二人の間に入り、そのままジュジュに頭を下げた。
「お久しぶりです。ジュジュ嬢」
「こ、公爵様」
ドレスの裾をつまんで一礼。
アーヴァインとゼロワンの二人は毒気を抜かれたのか、二人同時に息を吐く。
そして、カーディウスはジュジュに顔を近づけ……ポツリと呟いた。
「ジュジュ嬢。少し、二人きりでお話したいことが」
「え?」
「あなたの『妖精眼』について、わかったことがあります」
「!」
ジュジュは、カーディウスの腕を取った。
「公爵様、殿下、気分が優れないので、少し外の空気を吸って参ります。ボナパルト公爵様。ご案内を頼めるでしょうか?」
「え、あ、はい」
「では、失礼します!!」
ジュジュは、カーディウスを連れ、パーティーが始まる前だというのに会場を出て行った。
「「…………」」
残されたアーヴァインとゼロワン。
全てをカーディウスに持って行かれた。そんな話声が聞こえてきた。
バネッサは、アーヴァインのエスコートを受けての到着だ。すでに会場入りしていた貴族令嬢たちは、その光景に目が離せない。
バネッサは、ニヤリと心の中で笑う。
噂好きの令嬢たちなら、アーヴァインとバネッサが誕生会に腕を組んで現れたという事実だけで、茶会のネタにするだろう。
バネッサは、優越感を感じながら会場内を見る。
「…………」
ジュジュはいない。
いたらいたで面白かったのだが、仕方ない。
アーヴァインは、バネッサの手を放すと、小さく言う。
「やってくれたな」
「あら、なんのことでしょう?」
「…………」
「では、私はご挨拶があるので。失礼しますわ」
バネッサは、令嬢たちが集まる場所へ。
本来、誕生会の主役であるアーヴァインは最後に登場するものだが……バネッサを連れて最後に登場したくなかったので、それらを無視して会場入りした。
それが、仇となってしまった。余計に目立っている。
アーヴァインの元に、貴族たちが集まる。
「お久しぶりです、公爵。ははは、公爵もついに婚約者を?」
「違います」
「ははは。そう照れなくても。若い者同士、いいですなぁ」
「…………」
アーヴァインは、舌打ちしたい気持ちだった。
婚約者のいない公爵と、和解伯爵令嬢。誕生日に一緒に会場入りするなど、どうように見られるかなんて、考えるまでもなかった。
後で、しっかり否定せねば。
アーヴァインは、パーティーが始まる前から疲れていた。
そんな時だった。
「ゼロワン第一王子の、ご到着です」
そう聞こえ、ドアが開かれた。
アーヴァインは、何気なくそちらを見た。
「……………………何?」
ゼロワンの隣に立ち、歩いてくるのは……ジュジュだった。
綺麗なドレスに宝石を身に着け、菫色の髪はシャンデリアの光でキラキラ輝いていた。
美しかった。
どこか儚げな表情が光に照らされ、守ってやりたくなるような庇護欲をそそられる。
そして、相手はゼロワン。この国の第一王子。
アーヴァインは、ジュジュに見惚れつつ、ゼロワンを見た。
さすが王族というべきか、堂々とした姿でジュジュと腕を組んでいる。
「…………ッ」
アーヴァインは、なぜか胸がチクりと痛んだ。
一緒にいてほしくない。そんな気持ちが胸をよぎる。
そして、ジュジュが……アーヴァインをチラリと見た。
「あ……」
申し訳なさそうな表情だった。
なぜ、ゼロワンと一緒なのか。気になることはある。
アーヴァインは、さっそく動きだす。
ゼロワンの腕に絡んでいた手が離れると同時に、ジュジュに詰め寄った。
「ジュジュ、どういうつもりだ?」
「あ、公爵様。えっと……」
「まさか、ゼロワンと一緒に来るとはな。ゼロワン、お前、どうしてジュジュを連れている?」
公の場では『殿下』と呼ぶべきなのだが、アーヴァインは興奮しているのか素のままだった。
ゼロワンは、驚きつつも言う。
「ジュジュが家で落ち込んでるみたいだったから。オレが連れ出した」
「おまえ、何勝手なことを」
「勝手じゃない。アーヴァイン兄ぃ、招待状だけ送って放置したじゃん。ジュジュ、落ち込んでたんだろ? だったら、アーヴァイン兄ぃが連れて行けばよかったんだ」
「……無理やり、か?」
「無理やりでもだよ。オレが連れてこなかったら、ジュジュは家で傷ついたままだったよ」
「…………」
「…………」
ジュジュを挟む形で、アーヴァインとゼロワンの間に火花が散っていた。
「え、えっと……二人とも、落ち着いて。その、目立ってる」
まるで、一人の姫を取り合う王子たち。
誕生会の主役と、この国の王子が、一人の少女を挟んで喧嘩。目立たないはずがない。
すると、この状況を止めるかのように、一人の紳士が割って入った。
「はいはい。二人とも、喧嘩は後で」
「カーディウス……」
「カーディウス兄ぃ……」
カーディウスは、二人の間に入り、そのままジュジュに頭を下げた。
「お久しぶりです。ジュジュ嬢」
「こ、公爵様」
ドレスの裾をつまんで一礼。
アーヴァインとゼロワンの二人は毒気を抜かれたのか、二人同時に息を吐く。
そして、カーディウスはジュジュに顔を近づけ……ポツリと呟いた。
「ジュジュ嬢。少し、二人きりでお話したいことが」
「え?」
「あなたの『妖精眼』について、わかったことがあります」
「!」
ジュジュは、カーディウスの腕を取った。
「公爵様、殿下、気分が優れないので、少し外の空気を吸って参ります。ボナパルト公爵様。ご案内を頼めるでしょうか?」
「え、あ、はい」
「では、失礼します!!」
ジュジュは、カーディウスを連れ、パーティーが始まる前だというのに会場を出て行った。
「「…………」」
残されたアーヴァインとゼロワン。
全てをカーディウスに持って行かれた。そんな話声が聞こえてきた。
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